パナソニックのレッツノートに冬モデルが登場した。その全容についてはパナソニックの直販サイトを見ていただくとして、ここでは、その中でも従来モデルから特に大きなパワーアップを果たした「レッツノート CF-S8」(以下、CF-S8)を紹介する。CF-S8は、12.1型ワイド液晶と光学ドライブを備える、約1.32kg(重さは構成によって異なる)のモバイルノートだ。このモデルでは、レッツノートシリーズが持つ、軽い、頑丈、長時間駆動という3つの特徴に、“高い処理能力”という新しい特徴が加わった。CF-S8は、モバイルノートにハイエンドに匹敵する高性能を付与することで、モバイルノートの新たな段階に進んだと言えるだろう。
今回一新されたレッツノートのラインアップは、14.1型ワイド液晶搭載で光学ドライブ付きの「レッツノート Fシリーズ」、12.1型ワイド液晶搭載で光学ドライブ付きの「レッツノート Sシリーズ」(旧Wシリーズ)、12.1型ワイド液晶搭載の「レッツノート Nシリーズ」(旧Tシリーズ)、10.4型液晶を搭載する「レッツノート Rシリーズ」の4シリーズとなっている。
レッツノートは全ての製品がモバイル用途に特化しており、頻繁に持ち歩くような過酷な使い方をするビジネスユーザーからの人気が高い。その理由は、モバイルノートには必須となる、“軽い”、“頑丈”、“長時間駆動”という分かりやすい3つの特徴を備えているからだろう。実のところ、この3つを満たしているモバイルノートは多くない。
ここで紹介するCF-S8は、その3つの特徴に新たに4つ目の特徴を加えてさらに完成度を高めたモデルだ。それが、従来のモバイルノートに欠けていた“高い処理能力”である。
CF-S8は高い処理能力を実現するために、モバイルノートにも関わらず、CPUに標準電圧版の「インテル Core 2 Duo プロセッサー」を搭載している。
標準電圧版とCULV版で具体的に何が異なるのかというと、もっとも大きな違いとしてはクロックが違う。たとえば、CF-S8の店頭モデルが搭載する標準電圧版のCore 2 Duo P8700は、動作クロックが2.53GHzでFSBクロックが1,066MHzだ。対して、多くのモバイルノートが採用しているCULV版のCore 2 Duo SU9400では、動作クロックが1.40GHzでFSBクロックが800MHzである。両者の動作クロックの差は、約1.8倍にもなる。
これだけの性能差があるのに、何故多くのモバイルノートが標準電圧版のCore 2 Duoを採用しないのかというと、高性能な分だけ発熱量も多いからだ。標準電圧版のCore 2 Duo P8700のTDP(Thermal Design Power:熱設計上の最大消費電力)は25W、CULV版のCore 2 Duo SU9400のTDPは10Wなので、その差は2.5倍もある。モバイルノートにとって、CPUの消費電力というのは重要な要素だ。発熱量の多いCPUを小さな筐体に入れると、放熱が追い付かずに正常に動かすことができなくなることもある。また、消費電力が多いのだから、当然バッテリー駆動時間も短くなる。これは、モバイルノートにとっては致命的だ。
しかし、CF-S8は標準電圧版のCore 2 Duoを搭載しながらも、その2つの問題を解決してしまった。
CF-S8では、CPUの発熱を処理するために、独自開発の冷却ファンを搭載している。既存パーツを単に組み込むのではなく、羽部分の形状と大きさの検討を行い、直径を小さくしながらも厚みで風量を確保することで、このクラスのモバイルノートに入る、サイズを約30%縮小化した小型の冷却ファンの開発に成功しているという。
こうしてCF-S8は、標準電圧版Core 2 Duoを12.1型ワイドサイズに搭載することに成功した。しかし、発熱量が多いCPUを採用するノートでは、たとえハードウェアに問題がなかったとしても、パームレスト部分が熱くなるなどして人間側が気分良く使えない製品もある。では、CF-S8はどうかというと、排気口付近が熱いのは当然だが、キーボードやパームレスト部分ではほとんど熱さを感じることはない。机に置いて3時間ほど使用してみたが、使い始めと使い終わりでほとんど温度は変わらなかった。熱対策を徹底しているだけあり、これはかなり優秀な結果だ。
標準電圧版のCore 2 Duoを搭載しているということで、もう1つ気になるのはバッテリー駆動時間だ。消費電力が大きなCPUを使っているのだから、通常であれば当然バッテリー駆動時間も短くなる。しかし、CF-S8では7.2V/12.4Ah/84Whの大容量リチウムイオンバッテリーを標準採用し、なおかつ独自の省電力技術を多数つぎこむことで、約16時間もの長時間駆動を実現している。液晶の明るさやコントラストの調整、ファンの回転数、光学ドライブの電源など、さまざまな電力管理を行うアプリケーション「電源プラン拡張ユーティリティ」も、ノート全体の消費電力を抑えることに貢献している。CF-S8は、見事に“高い処理能力”と“長時間駆動”を両立したわけだ。
バッテリー駆動時間とは関係ないが、バッテリーをフル充電せずに約80%の充電に制限することで、バッテリーの耐久年数を約1.5倍に延ばす「エコノミーモード(ECO)」という動作モードを備えていることもユーザーにとってはうれしい。外で使う機会が少ないときなど、コンセントに接続して使用するときにこのモードにしておけば、バッテリーをより長期間使用できる。バッテリーは消耗品なので、やはりできるだけ長い間使い続けたいものだ。
レッツノートシリーズは、前述したとおり“軽い”、そして“頑丈”だ。重量は、光学ドライブを搭載していることを考えると、かなり軽い約1.32kgだ。本体サイズは、幅282.8mm×奥行209.6mm×高さ23.4mm(最薄部)〜41.4mm(最厚部)なので、フットプリントはA4用紙よりも若干小さいサイズに収まっている。さらに、別売りの軽量バッテリーを使用すれば、バッテリー駆動時間は約8時間になるが、重量を約1.16kgまで抑えることができる。
この軽さの理由は徹底的な軽量化にある。光学ドライブには、通常のトレー式と比べて約25%も軽量化を行った独自形状のシェルドライブを搭載している。ボディの素材に、軽くて丈夫なマグネシウム合金を採用していることも、強度と軽さの両立を実現した。
さらに液晶のガラス板まで、通常よりも0.3mm薄い、約0.2mm厚の軽量なものを使用して重量を抑えている。このガラス板は、フレームの強度を上げることで、強度を維持しつつ、ここまで薄くできたのだという。 ちなみに、レッツノートが採用するマグネシウム薄肉板材を使用した液晶リアパネルの設計技術は、2004年5月にIMA(International Magnesium Association:国際マグネシウム協会)から認められて、Design Awardを受賞している。同じ年の6月には、日本マグネシウム協会からも技術賞を受賞しており、実はかなり凄い技術なのだ。
重量の面では、モバイルノートなのでACアダプターの重さも気になるところ。その点、CF-S8のACアダプターの重量は約185g(電源コードを除く)しかないので、本体と合わせても約1.5kgと、12.1型ワイドサイズのモバイルノートとしては十分合格と言える軽さだ。
モバイルノートの破損原因のトップは、落下と言われている。持っているときに滑って落としてしまったり、机の上から落ちてしまったりといったことによる破損だ。まあ、落とせば壊れてしまうのは当たり前である。ところが、パナソニックは落下しても壊れないモバイルノート作りに真剣に取り組み、それをレッツノートで完成させた。CF-S8では、一般的な机と同じ76cmの高さからの動作状態での落下テストを行っている。また、30cmの高さから、本体の各面、各辺、各角の計26方向からの非動作時での落下テストも行うという徹底ぶりだ。これらのテストにクリアできるように設計することで、落下しても破損しにくいモバイルノートが生まれたのである。
都心に向かう朝の満員電車に乗ったことがある方はご存じだと思うが、満員電車へのモバイルノートの持ち込みはかなり危険だ。最悪の場合、圧力で液晶が割れるなど、使用できない状態になることもある。そこでパナソニックが取り組んだのが、耐圧性能だ。朝の満員電車の状態を想定し、モバイルノートに対して100kgfの加圧テストを行い、それをクリアできる設計を実現した。CF-S8も、もちろんそのテストをクリアしている。
ほかにも、キーボードにうっかり飲み物をこぼしてしまうという事故も意外に多い。CF-S8では、キーボードが全面防滴仕様になっており、液体をこぼしても本体内部に液体が浸入しないようになっている。飲み物をこぼしたとしても、基板がショートして使えなくなるというような最悪の状態にはならない。これだけで、使用時の安心感はかなり違う。
“軽い”、“頑丈”、“長時間駆動”、“高い処理能力”という4つの特徴に加えて、CF-S8はもう1つ大きな特徴を備えている。それが、モバイルWiMAXへの標準対応だ。本体に、モバイルWiMAXに対応する無線チップを搭載しており、別途通信業者と契約することで本体だけで直接インターネットに接続できる。モバイルWiMAXの魅力は、その高速な転送速度にある。CF-S8では、受信が最大13Mbps、送信が最大3Mbpsという、ほかの無線通信手段ではなかなか得ることが難しい高速な通信を行える。モバイルWiMAXのサービス地域内にいる方にとっては、かなり魅力的な特徴だ。
さて、CF-S8を実際に使用してみての評価だが、まず手に持ってすぐに分かることとして、確かに軽くて頑丈そうだ。12.1型ワイド液晶サイズで約1.32kgという重量は、バッグに入れても重いというほどの重量感は感じず、なかなか快適である。
頑丈さというのは、短期間の試用では評価し辛い部分だが、手に持った瞬間に、これは壊れにくそうだなという安心感があった。極端に言えば、そのまま床に放り投げても大丈夫なのではないかという印象だ。ちょっと、ほかのモバイルノートでは感じない雰囲気と感触である。
12.1型ワイドの液晶は、モバイルノートの液晶サイズとしては十分な大きさで、1,280×800ドットの解像度も広くて使いやすい。S8の先代モデルであるW8の解像度(1,024×768ドット)に不満を持っていた方もいると思うが、それが解消されたかたちだ。
また、特に良好だと感じたのは、キーボードとタッチパッドだ。キーは、19mmのキーピッチを確保しており、問題なくブラインドタッチを行える。とりわけキーボードの剛性感が素晴らしく、キーボードの中央付近を強く押してもほとんどたわまない。キーボードの下にバネでも入れてあるのではないかと思うほど「たわみ」のあるモバイルノートが多い中、これは大変優秀だ。安心して気分良く、高速な入力を行える。
独特の円形のタッチパッドも、見た目がユニークなので抵抗を感じる人がいるかもしれないが、実際に試してみると使いやすい。ウィンドウのスクロールを、パッドの外周をクルクルなぞることでおこなえ、縦に長いWebページなども快適にスクロールできる。ボタンもキチンと押した感触が残るボタンで、固くもなくやわらか過ぎるわけでもなく、押しやすい。
さすが、長いあいだ人気を維持しているレッツノートだけあり、人が直接触れるインターフェース周りは本当に良く出来ている。しばらく使い続けても、特に不満や気になる部分は出てこなかった。性能もまったく問題なく、ビジネスアプリケーションがサクサク動作する。やはり、標準電圧版Core 2 Duoは強力だ。
マイレッツ倶楽部とは、パナソニックの直販Webサイトのことだ。CF-S8には、店頭モデルとマイレッツ倶楽部モデルがあり、マイレッツ倶楽部モデルではワンランク上のスペック構成となっている。また、カラーを選択したり、メモリを強化したりと、自分の好きなように構成を変更できる。
店頭モデルとの主な違いは、まずCPUだ。店頭モデルのCPUは2.53GHzの標準電圧版Core 2 Duo P8700だが、マイレッツ倶楽部では2.66GHzの標準電圧版Core 2 Duo P8800を搭載している。メモリは、店頭モデルでは標準2GBだが、マイレッツ倶楽部なら4GB、HDDも250GBに対して500GBと、大幅に強化できる。さらに、「S8 プレミアムエディション」ならば、160GBのSSDと8GBのメモリを搭載可能だ。OSも、店頭モデルはWindows 7 Professionalの32bit版だが、マイレッツ倶楽部では64bit版を搭載している。
ほかにも、店頭モデルにはないBluetooth機能の標準搭載や、NTTドコモのFOMA HIGH-SPEEDに対応のモデルを用意するなど、通信機能も充実している。
見た目も変更可能で、天板の色を4色(プレミアムエディションの場合6色)から、ボディの色も3色から選択できる。かな文字のないローマ字すっきりキーボードにすることや、自分だけのネームプレートを底面に取り付けることまで可能だ。
このように、マイレッツ倶楽部では、店頭モデルにはない魅力がある。どうせ買うのならマイレッツ倶楽部モデルをオススメする。
“軽い”、“頑丈”、“長時間駆動”というレッツノートの基本的な特徴だけでなく、新たに“高い処理能力”という特徴を加えたCF-S8は、現時点で購入できる光学ドライブ付きのモバイルノートの中では、出色の出来である。モバイルノートに「性能」を望んでいた多くの人にとって、待望の一台と言えるだろう。
(Reported by 小林輪)
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■関連情報
- □レッツノート S8製品情報 - マイレッツ倶楽部
http://club.panasonic.jp/mall/mylets/open/s/ - □レッツノート S8 プレミアムエディション 製品情報 - マイレッツ倶楽部
http://club.panasonic.jp/mall/mylets/open/premium/s_performance.html - □レッツノート直販サイト - マイレッツ倶楽部
http://www.mylets.jp
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〜通常電圧版のCore 2 Duo P8700、12.1型ワイド液晶搭載
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/20090930_318220.html
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