スマートフォンの普及に伴い、ここ数年、PCの必要性に疑問を感じている人が増えている。学生の中には、スマートフォンがあればPCは不要と考える人が存在するほどだ。確かに、メールやWeb閲覧などは、スマートフォンがあれば事足りるかもしれない。しかし、ビジネスシーンはもちろんのこと、学生生活を送るうえでも、PCが不可欠な場面は非常に多く存在する。
例えば、ビジネスシーンでは、開発業務はもちろん、文書作成にもPCが利用されており、専門職から一般職まで、ほぼ全ての職種でPCが利用できなければ業務をこなせない。学生にとっても、レポート作成などはPCが不可欠で、文系理系問わず、PCを必要とする場面が少なくない。
また、個人のホビー用途としても、PCはスマートフォンより有効に活用できる。Web動画の視聴は大画面を持つPCのほうが迫力があるし、ゲームも豊富に存在する。さらに、写真や動画の編集なども自在に行える。
このように、PCがビジネスからホビーまで幅広い用途に利用できる重要なツールだという位置づけは、現在も大きく変わっていない。そういった意味で、この春からの新生活に備え、PCもしっかりと準備しておくべきなのだ。
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IdeaPad Z575
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ところで、PCが必要なのはわかっていても、高価だからなかなか手が出ない、と考えている人はいないだろうか。確かに、数年前までは、しっかり活用できるパフォーマンスを持つPCは10万円を超える価格の製品が中心だった。しかし現在は、コストの低下に加えて、搭載されるCPUなどのスペックが底上げされたことによって、10万円を大きく下回る価格のPCでも、十分に優れたパフォーマンスが備わるようになっている。そして現在では、10万円以下のノートPCが、メインマシンとして最も多く売れている。
そのような、数多く存在する価格10万円以下の低価格ノートPCの中で特にオススメしたい製品が、今回取り上げる、レノボの「IdeaPad Z575」だ。想定価格が6万5,000円前後と、10万円を大きく下回る価格のノートPCだ。この価格帯のノートPCは、スペック面がほぼ横並びで、デザインの違いぐらいしか選択ポイントがないように思われがちだが、IdeaPad Z575には、同価格帯の製品とは異なる大きな特徴がある。それは、CPUとしてAMDの「A8-3520M APU」(以下、A8-3520M)を採用しているという点だ。
A8-3520Mは、CPUとGPUを統合したAMD製CPU「Fusion APU」シリーズの、モバイル向け最新モデルだ。CPUコアを4個内蔵する、いわゆるクアッドコアCPUで、このクラスのノートPCに搭載されるCPUとしては非常にリッチな仕様となっている。複数の作業を行う場合でも快適に動作するのはもちろん、映像処理ソフトなど、マルチスレッド処理に対応したアプリケーションを利用する場合にも、優れたパフォーマンスが発揮される。当然、ワープロや表計算などのOffice系ソフトの動作も快適。IdeaPad Z575には、Office系ソフトとして「Kingsoft Office 2012」の体験版がプリインストールされているが、実際にそちらを利用してみたところ、ストレスを全く感じることなく利用できた。
また、「AMD Turbo CORE Technology」に対応する点も特徴のひとつ。A8-3520MのCPUコアの標準動作クロックは1.6GHzだが、高い処理能力が必要とされるソフトを利用する場合など、CPUの動作状況に応じてCPUコアの動作クロックが最大2.5GHzまで引きあげられる。つまり、高負荷のソフトを利用する場合にはCPUの動作クロックが自動的に上がって快適に動作し、負荷のかからない状態ではCPUの動作クロックが下がり消費電力が低減される。これによって、パフォーマンスと省電力性を両立しているわけだ。
A8-3520Mの魅力は、CPUコアを4個内蔵することによる優れた処理能力だけではなく、もうひとつ非常に大きな魅力がある。それは、統合されているグラフィクス機能の描画能力が優れるという点だ。
A8-3520Mに統合されているグラフィックス機能は、「Radeon HD 6620G」と呼ばれるものだ。特徴は、なんといってもDirectX 11対応の優れた描画能力を備えているという点だ。これにより、同価格帯のノートPCの中で、トップレベルの描画能力を実現している。
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HDMI出力を備えているので、大型液晶テレビなどに接続して、大画面で作業をしたりフルHD映像を楽しんだりすることができる
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キーボード上部にスピーカーを搭載。音質に優れ、比較的大音量でも音が割れず、かなり伸びのある音が再生される
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一般的な統合型CPUに内蔵されているグラフィックス機能は、以前よりはかなり高性能になっているが、それでも単体のGPUと比較するとかなり劣っている。特に、3D描画能力はかなり低く、3D描画のゲームをプレイするのはかなり厳しい。しかし、A8-3520Mに統合されているRadeon HD 6620Gは、AMDのデスクトップ向けGPUである「Radeon HD 5670」とほぼ同等のGPUを統合。動作クロックやビデオメモリなどの仕様は異なるものの、一般的な統合型CPUのグラフィックス機能とは次元の違う描画能力が発揮され、いわゆるソーシャルゲームはもちろん、比較的動作の軽い3Dゲームも快適にプレイ可能だ。
また、動画再生支援機能「UVD 3.0」を搭載している点も魅力。これにより、H.264やVC-1、MPEG2、MPEG4などの動画ファイルを、CPUに負荷をかけることなく再生できる。もちろん、フルHD動画もスムーズに再生できるので、Web動画をはじめ、様々な動画を快適に楽しめる。IdeaPad Z575に搭載されているのは、DVDスーパーマルチドライブだが、外付けのBlu-rayドライブを利用すれば、Blu-rayソフトの再生も全く問題がない。搭載する液晶ディスプレイはフルHD表示に対応しないが、HDMI出力があり、大型液晶テレビなどに接続すれば、手軽にフルHD映像も楽しめる。実際にYouTubeのフルHD動画やDVDビデオを再生してみたが、全くコマ落ちせず、快適に楽しめた。また、H.264形式やWMV形式のフルHD動画ファイルを用意して再生してみたが、そちらも全くコマ落ちせず再生できた。
加えて、内蔵されるスピーカーの音質が優れる点もポイントが高い。ノートPCに搭載されるスピーカーは、音がこもったり、大音量にすると音が割れる場合が多いが、IdeaPad Z575は比較的大音量でも音が割れず、かなり伸びのある音が再生される。また、SRS PREMIUM SURROUND SOUND対応で、音に包み込まれるようなサラウンドサウンドが再生される。優れた描画能力と音質に優れるスピーカーによって、AV用途への適応力はかなり高いと言っていいだろう。
レノボのノートPCと言えば、ビジネスユーザーやハイエンドモバイルユーザーを中心に人気の高い、ThinkPadシリーズがおなじみだ。ThinkPadシリーズが好まれる理由としては、製品としての品質の高さに加えて、搭載されるキーボードの品質の高さがあげられる。そして、IdeaPad Z575にも、ThinkPadゆずりの高品質キーボードが搭載されている。
このキーボードは、「AccuType キーボード」と呼ばれるものだ。キーの間隔が開いた、いわゆるアイソレーションタイプのキーボードだが、キートップをわずかに凹ませたキーは指への馴染みがいい。また、キーピッチはデスクトップ向けキーボードと同じ19mmとゆったり、クリック感もしっかりしており、非常に快適なタイピングが可能。また、テンキーも標準搭載しているので、Office系ソフト利用時など数字入力が多い場合でも快適な入力が可能だ。
ポインティングデバイスは、キーボード手前にタッチパッドを搭載している。このタッチパッドはパッド面の面積が広く、指を2本利用したマルチタッチ操作にも対応しており、こちらも非常に扱いやすい。また、外付けマウスの接続でタッチパッドの動作を自動的に切ることも可能なので、外付けマウスを利用する場合の誤動作も防げる。こういった細かな配慮は、まさにThinkPadクオリティだ。
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アイソレーションタイプのキーボードを搭載。テンキーも搭載しており、数字入力が多い場合でも快適な入力が可能だ
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「AccuType キーボード」と呼ばれる、キートップをわずかに凹ませたキーを搭載しており、指への馴染みがいい
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キーピッチはデスクトップ向けキーボードと同じ19mmとゆったりしている
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タッチパッドは面積が広く、指を2本利用したマルチタッチ操作にも対応している
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IdeaPad Z575は、基本スペックも充実している。メインメモリは標準で8GB(*)と、このクラスとしては圧倒的な容量を標準搭載。HDD容量も500GBと大容量。光学式ドライブは、前述のようにDVDスーパーマルチドライブを標準搭載する。
液晶ディスプレイは、1,366×768ドット表示対応の15.6型液晶を搭載。サイズや表示解像度はこのクラスの製品として一般的で、上下の視野角がやや狭いものの、発色は鮮やかで、動画やデジカメ写真も高品質に表示できる。LEDバックライト採用で、高輝度かつ低消費電力という点も嬉しい。液晶ディスプレイ上部には約200万画素のWebカメラが搭載され、ライブチャットなども行える。
液晶ディスプレイは、1,366×768ドット表示対応の15.6型液晶を搭載。サイズや表示解像度はこのクラスの製品として一般的で、上下の視野角がやや狭いものの、発色は鮮やかで、動画やデジカメ写真も高品質に表示できる。LEDバックライト採用で、高輝度かつ低消費電力という点も嬉しい。液晶ディスプレイ上部には約200万画素のWebカメラが搭載され、ライブチャットなども行える。
無線機能は、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LANとBluetooth 2.1+EDRを標準搭載。100BASE-TX対応の有線LAN機能も備えており、ネットワーク機能はこのクラスのノートPCとしては必要十分だろう。
側面の端子類は、左側面にUSB 2.0ポート×1とUSB 2.0/eSATA共用ポート×1、HDMI出力、アナログRGB出力が、右側面にUSB 2.0ポート×2と有線LANポート、ヘッドホン出力、マイク入力を備える。USB 3.0ポートが用意されない点は少々残念だが、eSATAポートを備えるため、eSATA対応の外付けHDDを利用すれば、大容量データも高速に転送できる。加えて、正面右にはSDカードやメモリースティックなど5種類のメモリーカードに対応する「5 in 1メディアカードリーダー」を備えるため、デジカメで撮影した写真データも手軽に転送可能だ。
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左側面には、USB 2.0ポート×1とUSB 2.0/eSATA共用ポート×1、HDMI出力、アナログRGB出力を備える
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右側面には、USB 2.0ポート×2と有線LANポート、ヘッドホン出力、マイク入力を備える
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本体サイズは、376×250×20〜35.5mm(幅×奥行き×高さ)と、15.6型液晶を搭載するノートPCとしては標準的な大きさだ。重量は約2.6kgとやや重く、モバイル用途には向かないが、家庭内で違う部屋に持ち運ぶ程度であれば苦にならないだろう。もともとIdeaPad Z575はメインマシンとして利用するノートPCであり、デスク上での利用が基本ということを考えると、この大きさや重さも特に問題はないはずだ。バッテリー駆動時間は約4.3時間あるため、家庭内で持ち運んで利用する場合でも支障はないだろう。
また、ガンメタル・グレイでヘアライン処理が施されたボディは高級感があり、10万円を切る価格帯のノートPCとは思えない魅力がある。買いやすい価格の製品とはいえ、デザインにこだわっている点も魅力のひとつだ。
IdeaPad Z575のパフォーマンスをチェックするために、いくつかベンチマークテストを行ってみた。利用したベンチマークソフトは、PCMark Vantage、PCMark 05、3DMark 11、3DMarkVantageの4種類だ。PCMark VantageやPCMark 05の結果は、このクラスのノートPCとしては、やや振るわない結果となっている。ただ、ここ数年のCPU処理能力の底上げにより、この価格帯のノートPCに搭載されるCPUでも、ビジネス系ソフトなどを快適に利用する上で必要となる処理能力は十分に確保されている。実際に各種ソフトを利用した場合でも、同価格帯のPCと比較して快適度に差を感じることはほぼない。
それに対し、3DMark Vantageや、ゲームのベンチマークである「モンスターハンター フロンティア オンライン ベンチマーク【大討伐】」の結果は、このクラスのノートPCとしてはかなり優れている。実際に3D描画のゲームなどを利用すると一目瞭然で、同価格帯の他のノートPCでは描画がカクつくような場面でも、IdeaPad Z575ではスムーズに動作する。ゲームなどが要求する3D描画能力はかなり高いため、描画能力の差が如実に表れる。おそらく、同価格帯のPCに比べると、かなり快適に感じるはずだ。
確かに、最新の3Dゲームを快適にプレイできるほどの描画能力ではないものの、モンスターハンター フロンティア オンラインをはじめ、比較的動作の軽い3Dゲームなら、十分プレイ可能。最近では、無料でプレイできるオンラインゲームでも3D描画を駆使したものが増えており、気軽に楽しめるゲームでも比較的優れた3D描画能力が不可欠となっている。そういった意味でも、IdeaPad Z575の優れた3D描画能力は大きな魅力と言えるのだ。
PCMark7
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PCMark score
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1515
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Lightweight score
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1279
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Productivity score
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942
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Creativity score
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1788
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Entertainment score
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1766
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Computation score
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1745
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System storage score
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1360
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PCMark Vantage x64
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PCMark Suite
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4165
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Memories Suite
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3142
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TV and Movies Suite
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3221
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Gaming Suite
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3877
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Music Suite
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4461
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Communications Suite
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4105
|
Productivity Suite
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3351
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HDD Test Suite
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2241
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PCMark 05
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CPU Score
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6021
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Memory Score
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4432
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Graphics Score
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6195
|
HDD Score
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4168
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3DMark11
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3DMark11 Score
|
830
|
Graphics Score
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746
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Physics Score
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2462
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Combined Score
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723
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3DMark Vantage
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3DMark Score
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3144
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GPU Score
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2727
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CPU Score
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5810
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MHF大討伐(1,280×720ドット)
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2597
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現在レノボは、2011年にNECパーソナルコンピュータ(株)と提携するとともに、日本最大のパソコン事業グループである「NECレノボ・ジャパン グループ」として日本で事業を展開している。これにより、以前はレノボが行っていた個人向けの電話サポートが、2011年10月より「レノボ・スマートセンター」としてNECパーソナルコンピュータが担当することとなった。NECのサポートはもともと定評があるが、そのサポートをレノボのPCでも受けられるようになったことで、レノボPCの魅力が大きく向上。特に、PC初心者にとって手厚い電話サポートは不可欠であり、これだけでも大きな選択理由となるはずだ。
このようにIdeaPad Z575は、6万5,000円前後と非常にハイコストパフォーマンスなノートPCで、優れた3D描画能力や動画再生能力など、マルチメディア関連の処理能力は同価格帯の製品を凌駕している。CPUの処理能力は、同価格帯の他の製品に劣る部分もあるが、一般的なビジネス系ソフトなどを利用する上で処理能力不足を感じることはなく、全く不安は無い。つまりIdeaPad Z575は、メールやWeb閲覧、Web動画の視聴といった基本的な用途はもちろん、ビジネスからホビーまで、幅広い用途に対応できる性能を備えている製品なのだ。サポート体制が充実していることや、価格が十分に安価なことも合わせ、これから新生活がスタートする新社会人や新入生が利用するメインノートとして、広くオススメしたい。
ちなみに、4月15日まで「春の新生活応援キャンペーン」として、レノボPCを購入したユーザーの中から抽選で100名に、新生活に役立つスキルアップグッズがプレゼントされるとともに、応募者の中から1名がレノボの広告モデルとして採用されるキャンペーンが開催されている。もちろん、IdeaPad Z575も対象商品となっているので、こちらも要チェックだ。
(平澤寿康)
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