果たして猫とNUCは、相性がいいのか?

NUCで無理に実現させた、Neko-Friendly All-In-One(NFAIO)

 「大原さん、NUCで何かやって」いつでも連絡は唐突である。NUCは御存知、Intelが提唱している「NUC(Next Unit of Computing)」のこと。ベアボーンキットだけでなく、最近ではマザー単体とか専用ケースなど色々登場している。が、「何って何よ」「何か面白いことを」面白いといっても、実はNUCそのものに手を加えるのは案外に難しい。なにせあのサイズに丸ごとPCを押し込めているから、拡張性は限られているからだ。むしろ、NUCを使って「何か新しい使い方」を考えたほうがよい。ということで、PC Watch代表でなぜか筆者がNUCの新しい使い方を御紹介することになった。

AIO(All-In-One)的な使い方

 実はNUCの場合、当初からAIO的な使い方が考慮されている。AIOというのは液晶と一体になったタイプのこと。ノートとは異なり、あくまでデスクトップの範疇に含まれるが、なにせ小さいから液晶の裏に簡単に収まることになる。「これで何かできないかしらん」ということで、まずはAIO的な使い方を少し模索してみることにした。

 さて、今回使ってみたのはIntel NUC Kit DC3217IYEである(Photo01)。Intelからは他に、NUCボード単体での販売となるD33217CKなんかもあるのだが、こちらはEthernetがなく、代わりにThunderbolt端子が用意されている製品である。残念ながら筆者のところにはThunderboltの環境がないので、今回はDC3217IYEの方を使ってみることにした。ちなみに蓋を開けるとIntelのテーマ音が鳴り響く(Photo02)。これ、箱の端に光センサーと組み合わせたサウンドデバイス(Photo03)が入っており、これが鳴っているわけだ。

 簡単に外観を紹介しておくと、背面(?)にはUSB×2とHDMI×2、Ethernet、それとACアダプタ端子がある。前面はUSB×1のみ(Photo05)。側面は何もない。上面は電源スイッチと、HDDアクセス用LEDのみが用意される(Photo06)。底面はアクセスパネルとVESAマウント用の穴がある(Photo07)。ちなみにこのVESAマウント用のネジ(Photo08)とマウントアダプタ(Photo09)も同梱されている。

 ちなみに内部はこんな具合(Photo10)。左にDDR3のSO-DIMM×2が、右にはMini PCI Expressのスロットが用意されている。今回はIntelのSSD 525 Series SSDMCEAC180B301の180GB品、それに同じくIntelのCentrino Advanced-N 6235を組み合わせてみた(Photo11)。

 さて、AIO的に使うと具体的はどんな感じになるのか?ということで、実際にモニターに取り付けてみた。今回利用したモニターは75mmのVESAマウント用の穴が用意されている(Photo12)。ここにNUCのVESAマウントアダプタをまず固定し(Photo13)、ここに先のPhoto09の容量で取り付けるだけである(Photo14)。この場合、本体は横方向にケーブルが出る形である(Photo15,16)。

 さて、ここまでは割ときれいに収まっているのだが、では実際に配線までするとどんな感じか?というと、こんな具合である(Photo17)。とりあえず本体だけだとUSBポートが絶対的に少ないので、外付USB Hubは割と必需品である。また用途にもよるだろうが、光学ドライブはあったほうが便利だと思う。キーボード/マウスは有線にするか無線にするかは個人の好みではあるが、筆者の様に有線タイプが好みのユーザーにはその分配線が必要になる。またここには出ていないが、実際はスピーカも必要となる。

 というわけで、コンセプトはともかく、実際にNUCを使ってAIOを作ろうとすると、背面の配線が割とひどいことになる。また使い勝手の面で言うと、本体の電源スイッチが完全に背面に廻ってしまうので、電源On/Offに慣れが必要になる。このあたりはNUCのケースを加工して配線を引っ張り出すとかになるが、これはこれでみっともない。

Photo01:外形寸法は22cm×17cm×7cmで、Mini-ITXのマザーボードの箱よりちょい小さい程度。
Photo02:この手前でテーマ音が。なかなかなサプライズ演出ではあるが、深夜にいきなり鳴り響くとちょっと慌てる。
Photo03:このデバイスをHackした方がむしろ面白いんじゃないか、と思ったのはここだけの秘密。
Photo04:コネクタ類の上には排気口も用意されている。まだこの時点では傷防止用のフィルムを上面に貼り付けたまま。
Photo05:せめてUSB 3.0だったら、というのがちょっと残念ではある。
Photo06:ちなみに稼動させると上面はちょっと暖かい(←伏線)。
Photo07:MemoryやHDDなどの増設は、この底面のゴム足の置くのネジを外して行う。
Photo08:VESAマウント用ネジを取り付けると、こんな具合に底面からやや浮く形になる。Photo09:で、浮いたところにマウントを挟み込む形。
Photo09:で、浮いたところにマウントを挟み込む形。
Photo10:他の拡張コネクタは、フロントパネル用端子(電源SW/Reset SW/電源LED/HDD LED)と、USB 2.0×2のみ。
Photo11:右端が180GB SSD、その脇が無線LAN。NUCの方にはあらかじめ無線LANのアンテナが用意されているので、接続は容易。
Photo12:今回このモニターを選んだのは、安価で入手できたこともさることながら、この裏面のフラットさが魅力だった。詳細は後述。
Photo13:なんか標準添付の様にしっくりきている。
Photo14:これもまた違和感が無いというか、しっくりと収まっている。
Photo15:こちらに前側が。
Photo16:後側はこんな感じに。
Photo17:とにかくこのテーブルタップをまずは何とかしたいところ。

NF(Neko-Frendly)AIOを作る

 もう少し、システマチックにAIOを自作できないだろうか?ということに加え、もう一つ気が付いたのは、先ほどPhoto06のキャプションにも書いたが、結構NUCのケースが暖かくなること。熱いまではいかないが、猫用のヒーターとかよりもちょっと暖かい。「これ、冬になると猫が喜んで乗りそうだなぁ」と気が付いた瞬間に、アイディアが固まった。ということで、以下製作過程を写真でご覧下さい(Photo18〜)。

Photo18:まずモニターを分解、裏板を引っぺがす。若干リブがある程度でフラットになっており、加工しやすい反面、強度はあんまりない。
Photo19:裏板の補強用に1.5mm厚のアルミ板を入れることを考える。100mm×300mmのアルミ板を当てたところ、左右の2枚はリブだけ削ればそれでOK。中央の1枚だけ、若干の加工が必要。
Photo20:ニッパーとカッターナイフでリブを切り取る。きれいに仕上げるにはやすりがけをすると良いが、どうせ見えなくなる部分なのでそこまでの手間はかけなくてもいいだろう。
Photo21:アルミを張るところに接着剤(コニシボンドのウルトラ多用途S・Uプレミアムハード)を塗り、この上からアルミ板を張るが、これはやや多すぎた。色が白なのは、たまたま自宅にあったのが白だったから。透明か黒を手に入れるべきだったかも。
Photo22:中央の1枚はこんな具合に布テープでマスキング
Photo23:まず左端をドリリング。この後手で折り切る。
Photo24:切った後をハンドニブラとリューターで整形後。見えない箇所なので、まぁ怪我しなければ良し。
Photo25:同様に中央の切り欠き部もまずドリリング。この後ニッパーなどを使って切り取る。
Photo26:リューターで整形後。
Photo27:こちらも接着剤で固定。
Photo28:裏側からの補強はこんな具合。接着剤の完全硬化には24時間ほどかかるので、このまましばらく放置。
Photo29:翌日、今度は表面側の加工。DIYショップとかホームセンターで売ってる1×4材を1本買ってきて、適当な長さに切る(裏面のアルミ板と位置をあわせる感じで)。
Photo30:更に1×4材からもう1本切り出し、NUCが収まるように位置あわせ。
Photo31:位置あわせができたら穴を開け、のこぎりで切る。2つの穴を繋ぐのは糸鋸とかが便利だが、丁度手持ちがなかったので、筆者はまたもやドリリング。
Photo32:リューターで切った後を整える。こうしてみると、ペーパーくらい掛けるべきだったか。
Photo33:最後に、今度は1×4材をやっぱり接着剤で固定し、硬化までしばらく放置。
Photo34:接着剤が硬化したら、アルミ板側から穴をあける。
Photo35:あけたところにタッピングビスをねじ込むことで、アルミ板と1×4材でもともとのモニターの裏板を挟み込んで固定する形にする。これで裏板に色々取り付けることができるようになった。
Photo36:ショート防止のために、念のため塩ビのカッティングシートを張る。
Photo37:さて1×4材側の方だが、先ほどNUCにあわせて中ぐりしたものをこんな具合にLアングルで固定。数Kgの荷重に耐えられるよう、Lアングルは幅広のものとした。
Photo38:先ほどは出てこなかったが、1×4材からもう一本短いものを切り出し、これにNUCを乗せる形にする。
Photo39:仮止めをして位置合わせが終わったら、いったんはずしてあらためて接着剤を塗布。
Photo40:固定完了の図。
Photo41:Photo40のままだとアレなので、こちらにもカッティングシートを貼る。
Photo42:次にDVDドライブの固定。今回は正面から見てモニター左にDVDドライブが飛び出す形を考えた。ということで位置あわせ。ケースそのものはOwltechの薄型ドライブ用USB 2.0ケースで、これに薄型のSATAドライブを組み合わせている。
Photo43:1×4材にネジ止め3箇所で固定。あまりスペースのゆとりがないので、ネジ頭が飛び出さないように工夫が必要。
Photo44:USB HubはBUFFALOの5ポート「どっちもUSBハブ」を選択。セルフパワーにしたのは、USBポートから電源を取りたいケースもあるだろうと判断したため。ちなみにポート数はお好みで。また液晶モニターにそもそもUSB Hubがついていれば、これを使えばよいという話は当然ある。で、最初にやるのはケースの分解。
Photo45:これを1×4材の側面にネジ止め。
Photo46:こちらもショート防止にカッティングシートで絶縁。
Photo47:配線については、こんな具合に19mmのタイベースを使う。ただ両面テープだけだと間違いなくはずれるので、3mmφくらいのネジを使って固定する。
Photo48:結束バンドをつかってまとめる。
Photo49:お次は電源。今回の場合、NUCと液晶モニター、どちらもACアダプタの電源ケーブルが3Pタイプであった。そこで、ELECOMのT-ACTAP22の先端を削って、3Pタイプに差し込めるように改造した。3P用のものが販売中止になってしまったのはとても残念である。
Photo50:2つのACアダプタを組み合わせた図。上がNUC用のACアダプタで、ELECOMの直結用プラグと組み合わせている。下がモニター用のACアダプタで、Photo49で作ったアダプタを組み合わせている。
Photo51:ACアダプタの固定用には28mmのタイベースを4組用意した。
Photo52:下側のタイベースは1×4材の幅に合わせて横を切ってネジ止め。今から思えば、アルミのLアングルなんかを用意しても良かったかも。
Photo53:ACアダプタの固定。ACアダプタを完全に密着して積み重ねると温度が上がりすぎるので、間に結束バンドを挟むなどして少し間隙を作ってやる。
Photo54:電源ケーブルもタイベースで固定することで、簡単に抜けないようにする。
Photo55:一応配線完了の図。まだケーブルは束ねていない。
Photo56:この時点で一応動作確認する。ちゃんと動作した。
Photo57:裏面。配線の乱れ具合はまだ酷い。このあと、結束バンドやタイベースなどを使って、配線を束ねてゆく。

思惑と誤算

 ということで、4日ほど掛けてやっとNFAIOのコンセプトモデルが完成した。前から見ると、液晶モニターの上が少し張り出しており、ここに水平にNUCがマウントされる形になる(Photo58)。これで何がうれしいかというと

・NUCの操作(電源On)がやりやすいし、ちょっと背伸びすればLEDも見える。
・液晶モニターの上に、10cmほどの幅があるので、猫が乗りやすい(というか、乗ってくれる事を期待できる)
・NUCの温度がちょうど猫に好まれる程度なので、冬などには暖房器具として活躍する(というか、活躍して欲しい)

というあたりである。裏面から見るとこんな感じ。まだ多少ごちゃごちゃしている感はあるが、Photo17に比べるとずっとシステマチックになったと思う。右にはDVDドライブとUSBポートが集中しており、まとめて操作が可能となっている(Photo60)。電源アダプタは左に集中させたので、メンテも容易だ(Photo61)。

 ということで、さて猫の評判は?というと、近寄ってはくれるのだが、乗ってはくれなかった。まぁこのくそ暑いさなかに暖房は要らんわな、という当然の理由ではあるのだが(Photo62〜64)、他にも問題があった。それはモニターのスタンドの強度不足である。もともとLGの22EN33T-Bは軽い(スタンド込みで2.4Kg)こともあり、スタンドの強度は低いし、前後もさることながら左右への踏ん張りはそれほどないのはスタンドの形状を見れば明白である。おまけに1×4材やらアルミ板やらNUCにACアダプタやらで、全体的にかなりトップヘビーな構造だから、安定するわけもない。試しにスタッフ2号を乗せてみたところ、左右に結構揺れてしまい、安定しないということで速攻で降りられてしまった。

 もっともこれ、解決は難しくない。手っ取り早いのは、もう少し強度のあるモニタースタンドをVESAマウントで取り付けることである。Photo59を見ていただくとわかるとおり、VESAマウントはそのまま残っているので、ここにVESAマウントのスタンド(例えばこれを取り付けることで大分改善されるだろう。もっと積極的には、1×4材に直接スタンドを付ける(あるいは、今2本の縦方向に1×4材を2本入れているが、これを更に伸ばしてそのままスタンドにする)といった対応で、十分な強度と安定性が確保できるだろう。

Photo58:上のみカッティングシートを貼っていない理由は、猫の爪とぎとかに使われることを考慮しているため。カッティングシートを貼ると爪とぎがやりにくいだろう、と。
Photo59:改良の余地があるのはHDMIの配線で、手持ちのものが2mだったので、無駄にとぐろを巻く結果になった。これを1mのものにすればもっとすっきりするし、自分で50cm位のものを作るともっとベターだろう。またACアダプタの配線が長いのも一因で、これは手頃な箱などを裏に貼り付け、その箱の中に入れてしまえばもっとすっきりかも。
Photo60:USB Hubの下にぶら下がっているのはUSB Audioアダプタ。NUCはHDMI経由での音声出力しかサポートしておらず、一方このモニターはDVI入力なので、別途音声出力アダプタが必要になった。このあたりは、HDMIでの音声出力をサポートしたモニターを選べば解決する。
Photo61:こちらはACアダプタが固まっている。突き出しているのはUSB Hub用のACアダプタで、これはもう少し配置を考えたほうがいいかもしれない。
Photo62:ウチの連中の定位置は何故か「モニターとキーボードの間」。チビ(スタッフ2号)は何とか収まる。というか、既に邪魔。
Photo63:「狭くて入れない」(スタッフ1号)。ちょっとこの体格だと、モニターのアームに強度的な不安が...
Photo64:あくまでも間に入れないかを研究するスタッフ1号。あとどうでもいいからキーボードに乗るな>スタッフ2号
Photo65:モニターの乗り心地を試すスタッフ2号(ヤラセあり)。

まとめ

 というわけで、NUCと組み合わせるための「液晶モニター改造」講座になった感はあるが、手前味噌ながらこういうのもアリではないかと思う。この先は、例えばフロント側のUSBを使えるようにするとか、ケーブルを自作してもっとすっきりさせるのもありだし、内部からUSBポートやフロントパネル配線をフラットケーブルで引っ張りだすのも良いかもしれない。何もケースに収めるだけが自作ではなく、こんな具合の加工も結構面白いと思う。何より、NUCがこの大きさで収まることの自由度は大きいわけで、筆者の記事を参考に、もっと激しくカスタマイズした独自AIOにチャレンジしてほしいと思う。

※製品の改造を行った場合はメーカーの保証は受けられなくなりますので、ご注意ください。