I-O DATA text by 清水理史
二重三重の障害対策でデータをしっかり保護  eSATAミラーリングに対応したLAN接続ハードディスク
LANDISK HDL-GXシリーズ
大切なデータをいかに保護するか?

 「ハードディスクのトラブルや操作ミスで大切なデータが一瞬にして失われてしまった!」。そんな経験が誰にも一度くらいはあることだろう。かく言う筆者も、子供が生まれたまさにその日の写真をうっかり削除してしまいひどく落ち込むとともに、家族からの非難を浴びたことがあった。また、ある時はハードディスクのトラブルで途中まで仕上げておいた原稿が読み出せなくなり、担当編集に平謝りしつつ、泣く泣く一から原稿を書き直したこともあった。大切なデータが失われること自体も大きな損失だが、それを復旧するために多大な労力と時間が必要になるのも大きな痛手だ。

 では、どのようにして大切なデータを保護すればいいのだろうか? 一般的にはバックアップが適切な対策とされているが、それだけではデータを完全に保護することはできない可能性がある。なぜなら、データが失われる可能性がある要因には以下のようにいくつかのケースがあり、それぞれに適切な対処方法が異なるからだ。


データが失われる可能性がある要因とその対策
要因 ごみ箱 バックアップ ファイルシステム
/
エラーチェック
RAID
(ミラーリング)
誤操作によるファイル削除など (*1) × ×
突然の停電や電源OFFなど × (*1) ×
HDD故障などの障害 × (*1) (*2)
※1:前回のバックアップ時まで復旧可能
※2:セクタエラーなどの軽微な障害に対応可能


 たとえば、バックアップは確かに多くのトラブルに対応可能だが、リアルタイムなデータの保護が難しい(頻度を高くすることも可能だが限界がある)。リアルタイムにデータを保護するにはミラーリングなどのRAIDが適しているが、この機能は誤操作によるファイルの削除など、ユーザーによるオペレーションミスには対応できない。誤操作によるミスを防ぐには、削除したファイルが一旦ごみ箱に入るようなしくみが必要となる。

 つまり、データを完全に保護するには、二重三重の対策によってさまざまな危険に対応できるような体制を整えておくことが必要ということになる。
意識せずにあらゆる対策が可能なLANDISK HDL-GXシリーズ

 とは言え、これらの対策を家庭や個人で行なうのには限界がある。そもそも、それが面倒だからバックアップなどのデータ保護対策をしていないという人も少なくないことだろう。では、これらの対策がカンタンにできるとしたら、どうだろうか? 実はアイ・オー・データ機器から新しく発売された「LANDISK HDL-GXシリーズ」を利用すれば、前述したさまざまな対策を初心者でも手軽に実現可能だ。


eSATAポートを搭載したSATA HDD内蔵の「HDL-GXシリーズ」
前面には電源、コピーボタンの他、USB 2.0ポートを1ポート搭載
背面にはeSATAポート、USB 2.0ポートを1ポート、ネットワークポートを搭載


 「HDL-GXシリーズ」は、ネットワークに接続して利用するLAN接続ハードディスクで、USB接続のハードディスクなどと同様に外付けハードディスクとして利用したり、ネットワークに接続された複数台のPCでデータを共有することができる製品だ。同様の製品はさまざまなメーカーから発売されているが、これまでの製品は主に使いやすさや転送速度に重点が置かれたものが多かった。しかし、この「HDL-GXシリーズ」は、使いやすさなどはもちろんのこと、さらに大切なデータをいかに保護するかに重点が置かれて開発されているのが特徴だ。

 具体的には以下のようなデータ保護機能を利用することができる。


■ごみ箱機能
共有フォルダに保存されたファイルを削除した場合でも、一旦ごみ箱に入るためオペレーションミスによるファイル削除を防止可能
■セルフバックアップ
USB接続の外付けハードディスクにデータをバックアップ可能。スケジュール指定による自動バックアップにも対応


■ミラーリング
eSATAインターフェイスを搭載し、外付けのeSATAハードディスクと内蔵ハードディスクの間でミラーリングを構築可能。
■パトロールリード/スポットリペア機能
ハードディスクに故障箇所がないかを定期的にチェックし、ユーザーに通知したり、スポットリペア機能で修復したりすることが可能


■ジャーナリングファイルシステムの採用
突然の停電などでもデータを保護できる信頼性の高いファイルシステムを採用


 前述したように、データの保護にはさまざまな方法を組み合わせる必要があるが、これらの対策がHDL-GXシリーズでは網羅されていることになる。つまり、ネットワーク上にHDL-GXシリーズを設置し、そこにデータを保管するようにすれば、これらのデータ保護機能によって、ユーザーに負担をかけることなく、さまざまな要因から大切なデータを保護できるというわけだ。
eSATAミラーリングを実際に利用してみる

ミラーリングのためにeSATAに対応した外付けハードディスクに接続
【ミラーリング設定】管理者用設定ページから「詳細メニュー」を選択し、「ディスクメニュー」にある「ミラーリング」を選択
 それでは、前述したデータ保護機能の中でも特に注目されるeSATAによるミラーリングを実際に利用してみよう。HDL-GXシリーズでミラーリング環境を構築するには、eSATAに対応した外付けハードディスクが別途必要になる。HDL-GXシリーズの背面に用意されているeSATAインターフェイスに同社製のHDC-UXシリーズなどを接続しておこう。

 ハードウェアの準備ができたら、ミラーリングの設定を行なう。ブラウザを利用して設定画面を表示し、管理者用設定ページから「詳細メニュー」を選択し、「ディスクメニュー」にある「ミラーリング」を選択する。HDL-GXシリーズの内蔵ハードディスクとeSATAハードディスクの情報が表示されるので、ここで「内蔵HDDからeSATA HDD1へミラーリング開始」ボタンをクリックすればミラーリングの構築が開始される。物理的な接続と設定画面からのミラーリング開始というわずか2ステップでミラーリング環境が構築できるのは実に手軽だ。

 ミラーリング環境の構築が完了すると、PCからHDL-GXシリーズの共有フォルダに保存したデータがリアルタイムにeSATAハードディスクにも記録されるようになる。これで、常に内蔵ハードディスクとeSATAハードディスクが同じ状態に保たれるというわけだ。
ノンストップ運用が可能でスピーディな復旧が可能

 では、ミラーリングを構築した環境で、万が一、障害が発生した場合はどうなるのだろうか? たとえば、内蔵のハードディスクが故障した場合の例を見てみよう。

 一般的なLAN接続ハードディスクの場合、内蔵ハードディスクが故障した場合のダメージは非常に大きい。致命的な障害の場合、本体が起動しなくなるうえ、保存されているデータも基本的には失われてしまう。データをバックアップしてあれば、修理するか、新しい本体を購入し、データをリカバリすることで復旧させることもできるが、バックアップ後に更新したファイルは失われるうえ、修理が完了するまでの待ち時間や購入するまでの時間、さらにデータをリストアして使えるようになるまでに時間的なロスが発生してしまう。

 これに対して、ミラーリングを構築したHDL-GXシリーズの場合、被害は最小限で済む。特に時間的なロスはほとんど発生しないと考えて良い。HDL-GXシリーズでは、共有フォルダに保存されたデータだけでなく、本体の起動に必要な情報やシステムなどの情報もすべてeSATAハードディスクにミラーリングされるようになっている。このため、万が一、本体のハードディスクが故障した場合でも、eSATAハードディスクからHDL-GXシリーズを起動させることが可能となっている。

 このため、前述した一般的なLAN接続ハードディスクと異なり、ほんの数分もあれば故障が発生する直前のデータにアクセスできるようになる。もちろん、本体のハードディスクが故障したままにしておくことはできないので、修理するか、新しく本体を購入して交換する必要はあるが、取り急ぎeSATAで起動し、重要なデータをPCなどにコピーしておけば、本体を修理に出したとしても戻ってくるまで、急ぎの作業などを中断する必要はない。

「eSATA HDD1から内蔵HDDへのミラーリング」を実行してeSATAハードディスクのデータを内蔵ハードディスクに書き戻せる
 修理や交換後の再構築も簡単だ。初期状態のHDL-GXシリーズに以前のeSATAハードディスクを接続して起動すると、「ピ、ピー、ピピ」という警告音が発せられ、特殊なモードで起動する。この状態でPCからブラウザで「http://192.168.0.200」にアクセス後、「eSATA HDD1よりシステム起動」を選んで起動し、今度は「eSATA HDD1から内蔵HDDへのミラーリング」を実行してeSATAハードディスクのデータを内蔵ハードディスクに書き戻せば良い。当然のことながら、再構築中もPCからeSATAハードディスクのデータにはアクセスできるため、ここでもPCでの作業を中断する必要は一切ないわけだ。
複数台のeSATAハードディスクで世代管理も可能

 このようにHDL-GXシリーズのeSATAミラーリング機能は障害時の素早い復旧に非常に便利だが、使い方次第ではバックアップ的な使い方も可能となる。ミラーリングは、言わばハードディスクの最新のスナップショットをリアルタイムに取得する機能だと言えるが、場合によっては最新の状態ではなく、1日前、2日前といったように以前の状態に戻したいというケースも考えられる。たとえば、ハードディスクのデータがウィルスに感染してしまった場合、もしくは間違って内容を更新してしまったファイルを更新前の状態に戻したい場合などがそうだ。

運用に合わせて複数台のミラードライブを用意すれば、いつでも好きな時点に戻れる

 このような場合、バックアップを併用するという手もあるのだが、HDL-GXシリーズの場合、eSATAハードディスクを複数台利用したミラーリングによってデータの世代管理をすることも可能となっている。たとえば、月曜日用のハードディスク、火曜日用のハードディスク、水曜日……、と曜日ごとに利用するeSATAハードディスクを用意し、毎朝、ハードディスクをつなぎ換えて内蔵ハードディスクの内容をeSATAハードディスクに次々とミラーリングしていけば、一週間サイクルでデータのバックアップを世代管理することができる。

 このように運用すれば、曜日ごとの各ハードディスクにデータが個別に保存されるようになるため、数日前のデータに復元することが手軽にできる。eSATAハードディスクから内蔵ハードディスクに再構築することですべてのデータを以前の状態に戻すことも可能だが、eSATAハードディスクからHDL-GXシリーズを起動すれば、eSATA内に保存されている以前のファイルに個別にアクセスできるので特定のファイルだけを元に戻すことももちろん可能だ。ミラーリングとバックアップの両方のメリットを合わせたような方法で、企業ユースなどでより確実にデータを保護したいという場合に向いているだろう。
大切なデータだからこそHDL-GXに保存すべき

 このように、データ保護機能を中心にHDL-GXシリーズの機能を検証してみたが、ミラーリングを代表として、二重三重の構えでデータを確実に保護できるようになっているうえ、しかもそれらの機能を手軽に利用できるように工夫されているあたりは他の製品にはないHDL-GXシリーズならではの特徴と言えそうだ。

 これまでのLAN接続ハードディスクは、データを複数のユーザーまたはPCで共有することが主な目的とされていたため、大切なデータはPCのローカルに保存し、共有したいデータをLAN接続ハードディスクに保存するというように、二次的なデータの保存場所として使われることが多かった。しかし、HDL-GXシリーズの場合、数々のデータ保護機能によってローカルよりも確実にデータを保護できるようになっているため、一時的なデータの保管場所としても十分に利用できる。むしろ大切なデータだからこそHDL-GXシリーズに保存するという使い方が適していると言えそうだ。個人的には、PCのマイドキュメントをHDL-GXシリーズにリダイレクトしてしまっても良いのではないかとさえ感じたところだ。

 eSATAハードディスクなども含めて購入するとそれなりにコストはかかるが、万が一のトラブルを考えれば、投資としては決して高くはない。LAN接続ハードディスクはもちろんのこと、USB接続のハードディスクなど、ストレージ機器の購入を考えている場合は、ぜひ本製品の購入を検討すべきだろう。
■関連情報
「LANDISK HDL-GX」製品ページ
オンラインショップ「ioPLAZA」

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清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。
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