HP Pavilion Notebook PC dv6a
15型クラスの液晶を搭載する低価格A4ノートPC、いわゆる“スタンダードA4ノート”は、これから1台目のPCを購入しようとしている、エントリーユーザーの購入が多い。エントリーユーザーの場合、インターネットアクセスやメールの送受信、ワープロや表計算などのビジネス系アプリケーションの利用が中心となり、処理能力よりも価格面を重視する傾向がある。だが、エントリーユーザーだからといって処理能力の高さが必要ないのかというと、そうでもない。
一時、5万円程度と非常に安価に購入できることから、かなり多くのエントリーユーザーがネットブックに飛びついた。しかし、ネットブックの多くは、インターネットアクセスやビジネス系アプリケーションの利用程度であればそこそこ問題なく利用できるものの、Web動画やDVDを見ようとすると、とたんにパワー不足に陥ってしまう。最近ではWeb動画やデジカメの動画撮影機能などで、HDクオリティの動画に触れる機会が増えているが、ネットブックではHD動画の再生はほぼ不可能だ。もちろん、エントリーユーザーが持て余すほどの機能を備えた製品が必要だとは思わないが、エントリーユーザーだから処理能力は低くてもいいという考え方は、実際には間違っていると言っていい。
そしてこの問題は、スタンダードA4ノートにも当てはまる。スタンダードA4ノートは、ネットブックを凌駕するパフォーマンスを備える製品がほとんどだ。しかし、動画再生能力、特にHD動画の再生能力に関しては、ネットブック並とは言わないものの、なんとかギリギリ再生できる程度という製品も少なくない。
それに対し、「HP Pavilion Notebook PC dv6a」(以下、dv6a)では、AMD製の最新チップセット「AMD M880G」が採用されており、最小構成で52,500円という魅力的な価格ながら、他のスタンダードA4ノートを大きく凌駕する処理能力を備えており、音楽ファイルのエンコードなどの作業はもちろん、特に描画関連で優れた処理能力を発揮する。
AMD M880Gには、「ATI Mobility Radeon™ HD 4200」と呼ばれるグラフィックス(GPU)が統合されている。このATI Mobility Radeon HD 4200は、DirectX® 10.1に対応するが、それ以外にもAMDのHD動画再生支援機能「UVD 2.0」や、GPUを画面画像描画以外の処理にも利用するAMDのGPGPU技術「ATI Stream」などをサポートしているという大きな特徴がある。
このうち、HD動画再生支援機能のUVD 2.0は、MPEG2、MPEG4 AVC(H.264)、VC-1のハードウェアアクセラレーションをサポートするとともに、2ストリームの動画を同時に処理できる。これによって、デジカメやHDムービーカメラで撮影したHD動画はもちろん、YouTubeのHD動画をフルスクリーン再生や、Blu-rayディスクもCPUに負荷をかけることなくスムーズに再生できる。また、DVDなどの標準画質動画を、HDクオリティにアップコンバートする機能も備えており、標準画質動画もハイクオリティで楽しめるという特徴もある。
デジカメなどで撮影したHD動画もスムーズに再生できる
また、ATI Streamテクノロジーによって、動画の編集作業も高速化される。従来、動画の編集や再エンコードなどの処理は、全てCPUが担当していた。しかし、ATI StreamをサポートするGPUを搭載したPCでATI Stream対応の動画編集ソフトを利用すれば、それらの処理をCPUだけでなくGPUも分担して行うため、CPUのみの場合よりも高速で実行できる。
加えて、DirectX 10.1対応という点も見逃せない。ご存じの通り、DirectXと言えば、グラフィックやオーディオなどのマルチメディア処理を行うためのテクノロジだが、Windows 7では「Desktop Window Manager(DWM)」という描画システムによって画面描画が行われている。このDWMはDirectX 10.1をベースとしており、DirectX 10.1対応GPUが搭載されたPCでは、描画能力が大きく向上する。
現在市販されているスタンダードA4ノートでは、HD動画再生支援機能を持つ製品は増えつつあるが、2ストリームのHD動画再生支援や、標準画質動画のアップコンバートをサポートするものはほとんどない。同様に、DirectX 10.1対応GPUを搭載する製品も少ない。dv6aがこれらをサポートしているのは、チップセットとしてAMD M880Gを採用しているからこそであり、同価格帯で買える他のスタンダードA4ノートに対する大きな優位点なのである。
表示解像度1,366×768ドットの15.6型ワイドHDウルトラクリアビューディスプレイを搭載
dv6aには、表示解像度1,366×768ドットに対応する、15.6型ワイドHDウルトラクリアビューディスプレイが搭載されている。アスペクト比は16:9で、HD動画を再生させた場合でも、アスペクト比が4:3や16:10の液晶のように上下に黒い帯ができず、大迫力で楽しめる。既に紹介した、GPUによるHD動画再生支援機能と合わせ、HD動画との相性は非常に良い。
もちろん、表示品質も申し分ない。パネル表面は光沢処理が施されているため、若干外光の映り込みが気になるものの、発色は非常に鮮やかで、HD動画もクオリティを損なうことなく楽しめるし、もちろんデジカメで撮影した映像も美しく表示できる。
映像出力端子としてHDMI端子が用意されており、フルHD表示に対応した大画面テレビと接続すれば、フルHD動画もクオリティを損なわずに楽しめる。当然、フルHD動画も軽々再生できるのは言うまでもない。
HD動画を楽しむには、映像だけでなく高音質な音声も不可欠だが、dv6aならその点も心配無用。日本HP製ノートPCでおなじみの、名門オーディオブランドである「ALTEC LANSING」ブランドのステレオスピーカーと、米国SRS Labs, Inc開発の音響改善テクノロジー「SRS WOW HD」がdv6aにも搭載されており、他のスタンダードA4ノートと一線を画すクオリティのサウンド再生が可能。この点も、dv6aの大きな魅力のひとつだ。
もちろん、ワープロや表計算などのビジネスソフト、Webブラウザなどを利用する場合でも、これだけのサイズと表示解像度があれば、非常に快適に利用できる。ネットブックのような、表示解像度が低くWebアクセスすらままならないといった心配は一切不要だ。
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「ALTEC LANSING」ブランドのステレオスピーカーを、キーボード上部に備える
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「SRS WOW HD」が搭載されており、付属のサウンドユーティリティでイコライザの調整などが行える
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日本HPの個人向けノートPCでは、「ZEN-design」という独特のデザインを採用する製品が多い。そして、dv6aでは「“kirameki”(煌)」と呼ばれるデザインが採用されている。
ZEN-designは、デザインを加えたフィルムを樹脂に流し込み転写させる「HP Imprintテクノロジー」と呼ばれる技術を利用して実現されているものだが、その光沢感と、他にはない斬新なデザインが大きな特徴となっている。dv6aに採用されている「“kirameki”(煌)」は、光沢感の強いブラックカラーに、同心円状の模様がさりげなくちりばめられた、非常に落ち着いた印象のデザインとなっており、多くの人が満足できるデザインに仕上がっている。また、天板のHPロゴ部分が白く光るようになっている点や、本体側面にシルバーを採用している点もいいアクセントとなっており、好印象だ。
本体サイズは、幅378mm×奥行き256mm×高さ35.5〜45mm。15.6型ワイド液晶を搭載しているために、ボディサイズはやや大きいが、スタンダードA4ノートとしては標準的なサイズである。重量は約2.8kg。もともとモバイル用途を想定した製品ではないため、この重量でも特に問題はない。また、3kgを切っているため、家庭内で持ち歩く場合でも苦にならないはずだ。
dv6aは、日本HPの直販サイト「HP Directplus」での直販専用モデルとなっており、他の直販モデルと同じように、購入時に基本スペックのカスタマイズが可能となっている。
CPUは、「AMD Sempron™ プロセッサ M120 (2.1GHz)」または「AMD Athlon™ II デュアルコア・プロセッサ M320 (2.1GHz)」から選択可能。価格重視なら、シングルコアのAMD Sempron M120、スペック重視ならAMD Athlon II M320がおすすめとなる。メインメモリは、1GB/2GB/4GBから選択可能。またHDDは、250GBまたは500GBからの選択となる。ちなみに、HDDは容量に関わらず回転数7200rpmの高速ドライブが採用されており、どちらを選んでも優れたパフォーマンスが引き出される。
その他の機能は、DVDスーパーマルチドライブ、IEEE 802.11b/g/n対応の無線LAN、100BASE-TX対応の有線LAN、VGA解像度のWebカメラが標準搭載される。
本体側面に用意されているポート類は、左側面にアナログRGB出力用のミニD-sub15ピンコネクタ、HDMI出力、eSATA/USB 2.0共用ポート×1、USB 2.0ポート×1、ExpressCard/54スロット×1、SD/SDHCカードやメモリースティックなどに対応する5in1メディアスロットを用意。右側面にはUSB 2.0ポート×2がそれぞれ用意されている。ポート類は、このクラスのノートPCとしてはかなり豊富で、将来の機能拡張にも安心だ。
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本体左側面。アナログRGB出力、拡張コネクター、有線LAN、HDMI出力、eSATA/USB 2.0共用ポート、USB 2.0ポート、ExpressCard/54スロット、5in1メディアスロット。HDMI出力があるので、映像や写真などを大画面テレビで鑑賞する際にも便利
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本体右側面。電源コネクタ、セキュリティロック、USB 2.0ポート×2、DVDスーパーマルチドライブを用意
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キーボードは、キーピッチ19mm、ストローク2.5mmのフルサイズキーボードが搭載されている。適度な堅さとクリック感があり、キー配列も特殊な部分は一切なく、使い勝手はデスクトップ用キーボードに匹敵している。また、テンキーも標準搭載となっており数字の入力も軽快に行えるので、Excelなどの表計算ソフトを使用するときに便利だ。なお、細かいことではあるが、フルキーとテンキーの間には区切りが設けられておりキーの押し間違えがないように配慮されている。最近ノートPCでもテンキー付きのキーボードが増えてきたが、フルキーとテンキーの区切りがないものも多く、使いやすさという面ではこちらの方が好印象だ。
ポインティングデバイスのタッチパッドは、面積が広く確保されており、非常に使い勝手がいい。タッチパッドの動作をON/OFFするスイッチがパッドとキーボードの間に用意されており、マウス接続時の誤動作を防ぐよう配慮されている点も嬉しい配慮だ。
また、DVDの再生コントロールや、Windows 7 Home Premiumが持つマルチメディア再生機能「Windows Media Center」の操作に対応する「HPモバイルリモートコントローラー」も標準添付されている。キーボードやマウスを使わず、家電製品感覚でDVDなどの再生コントロールが行え、マルチメディア機能も快適に扱える。
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キーピッチ19mm、ストローク2.5mmのフルサイズキーボードを搭載。テンキーも標準搭載だ
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面積が広く確保されているタッチパッド。動作のON/OFFを切り替えるスイッチも用意されている
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キーボードと液晶の間には、音量調整や無線LANのON/OFF切り替えを行えるタッチセンサーを搭載する
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標準添付されている「HPモバイルリモートコントローラー」は、本体左側面のExpressCardスロットに収納できる
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では、ベンチマークテストを通してdv6aのパフォーマンスをチェックしていこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05 Build 1.2.0 1901」、「3DMark03 Build 3.6.0」、「3DMark06 Build 1.1.0 1901」、スクウェア・エニックスの「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」の4種類だ。ちなみに、今回利用した試用機のスペックは、下にまとめたとおりであった。
試用機のスペック
CPU |
AMD Sempron™ M120
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メインメモリ |
PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB(2GB×1)
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グラフィック機能 |
ATI Mobility Radeon™ HD 4200 (AMD M880Gに内蔵)
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ストレージ |
250GB HDD
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OS
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Windows 7® Home Premium
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HP dv6a (メモリ2GB) |
HP dv6a (メモリ4GB) |
CPU |
AMD Sempron M120(2.1GHz) |
AMD Sempron M120(2.1GHz) |
チップセット |
AMD M880G |
AMD M880G |
ビデオチップ |
ATI Mobility Radeon™ HD 4200 (AMD M880Gに内蔵) |
ATI Mobility Radeon™ HD 4200 (AMD M880Gに内蔵) |
メモリ |
PC2-6400 DDR2 SDRAM 2GB |
PC2-6400 DDR2 SDRAM 4GB |
OS |
Windows 7® Home Premium |
Windows 7® Home Premium |
PCMark05 Build 1.2.0 |
PCMark Score |
2927 |
3009 |
CPU Score |
3448 |
3467 |
Memory Score |
4115 |
4347 |
Graphics Score |
1924 |
2003 |
HDD Score |
5574 |
5658 |
3DMark03 Build 3.6.0 |
3DMark Score |
3651 |
4110 |
CPU Score |
911 |
1046 |
3DMark06 Build 1.1.0 0906a |
3DMark Score |
1588 |
1721 |
SM2.0 Score |
544 |
597 |
HDR/SM3.0 Score |
664 |
724 |
CPU Score |
901 |
906 |
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3 |
Low |
4975 |
5226 |
High |
2784 |
3030 |
今回試用した個体は、CPUとしてシングルコアCPUのAMD Sempron M120が搭載されていたため、パフォーマンスの点で少々不利になるのでは、と思っていたが、ベンチマークテストの結果を見る限りでは、十分な結果が出ている。実際に試用機でHD動画の再生や、各種アプリケーションを使ってみても、特に重いと感じることはほとんどなかった。これは、やはりチップセットとしてAMD M880Gが採用されていることが大きいはずだ。DirectX 10.1対応GPUが統合されているために、Windows 7の動作が軽くなり、シングルコアCPUでも、特に動作に不満を感じなかったのだろう。とはいえ、複数のアプリケーションを同時に起動しようとすると、どうしてももたつきは感じてしまう。そのため、パフォーマンスを優先させたいのであれば、デュアルコアCPUのAMD Athlon II M320の搭載をオススメしたい。
AMD M880G搭載の効果は、3D描画能力の結果にもはっきり表れている。3DMark03および3DMark06の結果は、同クラスのスタンダードA4ノートに対し、かなり優れた結果となっている。3DゲームのベンチマークテストであるFINAL FANTASY XI Official Benchmark 3の結果も、この価格帯の製品としては十分高く、軽めの3Dゲームであればかなり快適に楽しめると言っていい。
本体裏面のふたを開けたところ。試用機は2GBモジュールが1枚搭載されており、パフォーマンスを優先させるなら4GBの搭載がオススメ
ところで、試用機ではメインメモリとして2GBのモジュールが1枚のみ搭載されており、シングルチャネル動作となっていた。そこで、手持ちの2GBモジュールを追加し、4GBのデュアルチャネル動作の状態でのテストも行ってみた。すると、予想通り、ほぼ全てのテスト結果が向上した。この結果から、パフォーマンスを優先させたいなら、CPUだけでなく、メインメモリも4GBの搭載がオススメだ。
次にバッテリ駆動時間のチェックだ。dv6aはモバイル用途を想定した製品ではないものの、家庭内で移動させつつ利用することもあるため、一応計測してみた。Windows 7の省電力設定を「省電力」に、バックライト輝度を40%に設定するとともに、無線LANをオンにした状態で、BBenchを利用してキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測した。結果は、約3時間03分と、公称値の約4.3時間には及ばなかったものの、十分満足できる駆動時間が計測された。これなら、リビングルームや書斎など、家庭内で持ち歩いて利用する場合でも、短時間でバッテリーが切れる心配がなく安心だ。
dv6aは、チップセットにAMD M880Gを採用することにより、快適なHD動画再生能力や、3Dゲームもプレイできる優れた3D描画能力など、いわゆるスタンダードA4ノートを超える処理能力を実現。また、表示品質に優れる15.6型ワイド液晶、豊富なポート類による拡張性の高さ、高級感あふれる独特なデザインなど、他のスタンダードA4ノートとは一線を画す魅力が実現されている点も魅力で、競合製品に対する大きな優位点となっている。
しかも、これだけの性能を実現しながら、HP Directplus価格は52,500円からと、非常に安価に抑えられている。ちなみに、先ほどおすすめした、CPUにAMD Athlon II M320を選択し、メインメモリを4GBにした場合でも、78,750円と8万円を切る価格であり、スペック重視の仕様を選択した場合でも、コストパフォーマンスは圧倒的だ。
このように、性能面だけでなく、価格にも妥協のないdv6aは、Webアクセスやビジネス系アプリケーションを快適に利用するのはもちろん、HD動画の再生やゲームなど、マルチメディア関連の機能も思う存分楽しめる、価格以上の価値を備えた、魅力的なスタンダードA4ノートと言える。特に、家庭で利用する1台目のノートPCとして、大いにオススメしたい。
[Text by 平澤 寿康]
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