カメラはケータイに欠かすことができない機能のひとつだ。ケータイにはじめてカメラが搭載され、すでに10年近くになるが、今やカメラを搭載しないケータイはほとんどないほど、標準的に搭載されており、日本で生まれたカメラ付きケータイの文化は世界へと拡がっている。カメラの利用シーンも幅広く、普段のちょっとした電子メモ的な使い方に始まり、家族や恋人、ペットなど、自分が大切に思う日常の一コマを撮影したり、その場で見かけた驚きや感動を記録し、誰かに伝えたいときに写真に収めたりするなど、さまざまなシチュエーションで活用されている。撮った写真もケータイで楽しむだけでなく、友だちや仲間にメールで送ったり、ここ数年はブログやアルバム共有サイトへの公開などにも活用されている。

 ただ、カメラ付きケータイの高画素化や高機能化が進む一方、実際に活用されているのは静止画が中心で、ムービーを撮影する活用法はそれほど拡がっていない。その一方で、ケータイで再生されるコンテンツは昨年からスタートしたauの「LISMO Video」をはじめ、動画対応のものが急速に増えており、インターネットでもユーザー投稿による動画共有サイトが人気を集めている。さらに、ビデオカメラやデジタルカメラなどでもハイビジョン撮影対応機が広くラインナップされていることや、YouTubeがハイビジョン動画の投稿に対応したことなど、近年確実にハイビジョン動画のニーズは増えてきている。

Mobile Hi-Vision CAM Wooo
1280×720ドットのハイビジョン画質でのムービー撮影を実現

 今回発表されたauの日立製端末「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」は、こうしたムービーに対するユーザーの期待に応え、ケータイで高画質のムービーを撮影することに注力した端末だ。もちろん、これまでのケータイでもムービーを撮影することはできたが、基本的にはケータイ上で再生することを主眼に置いており、比較的最新のモデルでも撮影できるサイズは最大640×480ドット/30fps程度に留まっている。

 これに対し、Mobile Hi-Vision CAM Woooは最大1280×720ドットのハイビジョン画質での撮影を実現しており、ケータイで楽しむことに加え、HDMIケーブル(別売)と本体に装備されたHDMI端子を薄型テレビと接続することで、大画面テレビでも撮影したムービーを楽しめるように仕上げている。撮影したムービーの画質も従来のケータイムービーのような少し眠いものではなく、ハイビジョン画質の名に相応しいクリアで鮮やかな映像を記録できる。

 ところで、ムービーと言えば、ビデオカメラではハイビジョン画質の撮影に対応したモデルが広くラインアップされており、コンパクトデジタルカメラでも動画撮影に対応した製品が多い。しかし、これらの専用機器は結婚式や運動会、旅行といった何らかのイベントがあるときに持っていくスタイルが多く、普段、持ち歩くには少々かさばる。これに対しMobile Hi-Vision CAM Woooは、毎日持ち歩くケータイでハイビジョン画質のムービー撮影機能を実現しているため、日々の生活の中で出会った感動や驚き、発見、楽しさを手元にあるケータイですぐに記録し、家族や友だち、同僚に伝えたり、いっしょに楽しむことができるわけだ。

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約500万画素のCMOSイメージセンサーを採用したカメラ。日立製端末としては初となる光学3倍ズームも備える

 手軽にハイビジョン画質でのムービー撮影を実現したMobile Hi-Vision CAM Woooだが、内容はどうなっているのだろうか。

 まず、撮影できるムービーが1280×720ドットのハイビジョン画質であることは前述の通りだが、単純に高解像度のムービー撮影を可能にしたというわけではなく、日立が薄型テレビやビデオカメラなどで採用している「Wooo」のブランドが冠されていることからもわかるように、映像にこだわるWoooシリーズで培われたノウハウを活かした画像処理エンジン「Picture Master for Mobile」を搭載しており、クリアで自然な映像を実現している。ムービーの撮影時、あるいは撮影したムービーをケータイで再生するとき、撮影するシーンや再生するムービーに合わせた補正をすることで、リアルで鮮やかな映像を撮影し、再生できるようにしている。

 ムービーや静止画を撮影するためのカメラは、約500万画素のCMOSイメージセンサーを採用する。これに日立製端末では初となる光学3倍ズームを搭載しており、離れた被写体にもグッと寄った迫力ある映像を撮影することができる。光学ズームはデジタルズームと違い、レンズで拡大をするため、きれいな映像のままズームができる。

ズーム時にも自動で手ブレを補正してくれる

 そして、この光学3倍ズームをムービー撮影時に活かすため、音声ズームや手ブレ補正も搭載する。被写体と離れていても静止画では音声を記録しないため、気にならないが、ムービーの場合、離れた被写体にズームをして撮影すると、声が聞こえにくいといったことが起きやすい。そこで、トップパネル側に内蔵された2つのマイクと、キー側にある通話用のマイクの計3つのマイクを使い、離れた被写体の声や音もクリアに録音できる音声ズームを実現している。同様に、光学ズーム時はボディの動きによって、手ブレが起きやすくなってしまうが、Mobile Hi-Vision CAM Woooでは自動的にブレを補正するため、落ち着いた映像を撮影することが可能だ。

 実際の撮影シーンで役立つ機能としては、最大5人までの顔を検出し、自動で明るさを補正しつつ、ピントを合わせる「顔ピタ」という機能を搭載する。顔ピタでは顔検出に加え、被写体が動いているようなときでも見つけた顔を自動的に追尾する機能も備える。なかなかジッとしていてくれない子どもを撮影するときや動きのある映像を撮影するときにも効果的だ。日立製ビデオカメラで培われたノウハウも活かされており、撮影シーンに合わせた設定が可能な「プログラムAE」、約1秒でムービーを起動できる「秒撮」モードも用意されている。プログラムAEは設定項目として、「オート」「ポートレート」「スポットライト」「サーフ&スノー」「ローライト」が用意されており、それぞれのシーンに最適な撮影設定が行なわれる。秒撮モードは言わば、スタンバイモードに相当するもので、カメラは起動しないが、すぐにムービーの撮影ができるように待ち構えておきたいときに設定する。秒撮モードに設定中、メールを見たり、通話をしていてもすぐにムービー撮影に切り替えることが可能だ。

   
5種類のプログラムAEが用意されている
 
秒撮モードに設定しておけば、すぐにムービー撮影に切り替えられる

 また、操作面でもムービー撮影の使いやすさを追求している。ムービー撮影は端末を開き、ダイヤルボタンの右下にある[HDムービー起動/秒撮]キーを押すだけで、すぐに起動できる。本体を、ディスプレイ部とボタン部を90度に開いたムービーオープンスタイルに切り替え、ビデオカメラと同じように構えると、本体右側面のムービー操作キーで「ズーム」や録画の「開始/停止」を操作することができる。ムービー操作キーは録画キーとシーソー式のズームキーを組み合わせたもので、片手でも操作しやすい形状に仕上げている。ムービーの撮影ではカメラを高く持ち上げたり、低く構えたりするなど、いろいろなアングルで撮影することが多いが、Mobile Hi-Vision CAM Woooに採用されている3.0インチIPS液晶は視野角も広いうえ、見る方向による色調の変化も少なく、非常に視認性が良い。

 ムービーカメラ起動時の操作については、[アプリ]キーで各機能の設定メニューを呼び出すことができるが、主な機能についてはダイヤルボタンにショートカットが割り当てられており、ワンタッチで簡単に切り替えることができる。ショートカットの割り当てはカメラ起動時に[5]キーで確認できるが、なかでも利用頻度が高い「音声ズーム」や「顔ピタ」、「逆光」、「WB(ホワイトバランス)」については、ムービーオープンスタイルでも使いやすいように、ダイヤルボタンの右側面寄りの[3]、[6]、[9]、[#]キーにそれぞれ割り当てられている。

   
右側面には片手で操作しやすい形状のムービー操作キーが用意されている
 
カメラ起動時に[5]キーでショートカットが確認できる
 
利用頻度が高いショートカットは、ダイヤルボタンの右側面寄りに割り当てられている

 録画されるハイビジョンムービーのフォーマットは3GPP2形式で、目的に応じて、「高画質モード(HQ)」「標準モード(HM)」「長時間モード(HL)」の3つの録画モードから選んで保存できる。パッケージには1GBのmicroSDメモリーカード(試供品)が付属しており、購入すれば、すぐにハイビジョンムービーの撮影が楽しめるが、Mobile Hi-Vision CAM Woooはより大容量のmicroSDHCメモリーカードにも対応しており、8GBのmicroSDHCメモリーカードを利用すれば、高画質モードで最長約2時間ものハイビジョンムービーを撮影することが可能だ。ちなみに、1つのムービーファイルの容量は最大2GBまでで、連続撮影時間はHQで最長約30分、HMで約最長約45分、HLで最長約1時間となっている。

■録画モード
  1GB(試供品) 8GB(別売)
高画質モード(HQ) 最長約15分 最長約2時間
標準モード(HM) 最長約22分 最長約3時間
長時間モード(HL) 最長約30分 最長約4時間

 また、撮影したムービーはMobile Hi-Vision CAM Woooで簡単に編集できる。たとえば、ハイビジョンムービーのままでは他のケータイで再生できないが、VGAサイズに変換すれば、赤外線通信やBluetooth通信で他のケータイに転送し、他のケータイでも再生しやすくなる。メールに添付する場合は、QCIFサイズの500KBに制限されるが、これもMobile Hi-Vision CAM Wooo内で変換することが可能だ。

 さらに、撮影したハイビジョンムービーの不要な部分を削除したり、複数のムービーを結合したり、ムービーの気に入ったシーンの静止画をキャプチャするといった使い方もできる。後述するように、パソコンで利用する環境も用意されているが、ケータイのみである程度の編集ができるため、撮ったその場で友だちのケータイに転送するといった使い方もできる。いつでも手軽に撮影できるケータイだからこそ、こうした端末内での編集機能が搭載されているのは、非常に重要なポイントと言えるだろう。

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ワイドオープンスタイル
HDMI端子を本体側面に備えている
「Wooo」につなげば、テレビリモコンでメニューの操作もできる

 いつでも手軽に高品質なムービーを撮影できるMobile Hi-Vision CAM Woooだが、撮影した画像を楽しむための環境も整っている。

 まず、撮影したムービーはそのまま、Mobile Hi-Vision CAM Woooで再生できるが、W62HやH001に続き、ディスプレイ部を横方向にも開くワイドオープンスタイルに切り替えれば、480×854ドット表示が可能なIPS液晶の横画面いっぱいのサイズでムービーを再生できる。実際に撮った映像を視聴してみると、従来のVGAサイズで撮影したケータイムービーとは明らかに一線を画した美しいムービーが再生される。映像を見る人に、Mobile Hi-Vision CAM Woooで撮影したムービーがハイビジョンであることを伝えなくても明確に分かれるレベルの違いだ。

 そして、Mobile Hi-Vision CAM Woooがもうひとつ優れているのは、国内で販売されるケータイとしては初めてHDMI端子(HDMI Mini Connector)を装備し、薄型テレビとのAV機器連携を実現したことだ。本体に装備されたHDMI端子と日立のハイビジョンテレビ「Wooo」をはじめとした薄型テレビのHDMI端子を接続することで、ハイビジョンムービーを大画面で楽しむことができる。W62HやH001などで、従来のケータイでもTV出力機能を備えたモデルがラインアップされてきたが、これらの端末が対応していたのはアナログ方式によるコンポジット出力でしかなかった。これに対し、Mobile Hi-Vision CAM Woooで採用されているHDMI端子による接続は、ハイビジョンムービー本来の美しさを堪能することが可能だ。今年はグリーン家電普及促進事業『エコポイント』などもあり、例年にも増して、薄型テレビが好調な売れ行きだと言われているが、HDMI端子はこれらの薄型テレビなどで標準的に採用されており、まさにこれからの時代にマッチしたスペックという見方もできる。

 Mobile Hi-Vision CAM WoooをHDMI端子で接続すると、画面上には専用のメニューが表示され、端末を操作することで、本体メモリーやmicroSDメモリーカードに保存されたハイビジョンムービーを選び、再生することができる。接続したテレビが日立のハイビジョンテレビ「Wooo」の対応機種であれば、HDMIケーブルで接続したMobile Hi-Vision CAM Woooをテレビの横などに置いておき、Woooのテレビリモコンでメニューを操作することもできる。ちなみに、Mobile Hi-Vision CAM Woooに装備されているHDMI端子は、一般的に「HDMIミニ端子」といった名称で呼ばれているもので、日立のブルーレイカムWoooをはじめ、ハイビジョン対応ビデオカメラなどで広く採用されている。

 また、撮影したムービーをmicroSDメモリーカードに保存し、メモリーカードリーダーで読み込んだり、付属のUSBケーブル(試供品)でパソコンと接続して、パソコンにムービーを取り込めば、パソコン上での保存や再生も可能だ。保存されるムービーは前述の通り、3GPP2形式なので、QuickTimeがインストールされていれば、そのまま、再生することができる。さらに、Windows用のビデオ編集ソフト「CyberLink PowerDirector Ultra(体験版)」をダウンロードしてインストールすれば、カットやエフェクトなどを使った高度な編集もできる。DVDやブルーレイディスクに保存すれば、ケータイやパソコンを持っていない人に撮影したムービーを渡すこともできる。

 この他にもMobile Hi-Vision CAM Woooは、薄型テレビWoooで培われてきた映像技術を活かしたワンセグをはじめ、パソコンやau BOXで購入した映画やドラマを楽しめる「LISMO Video」、ワイドオープンスタイルの横画面で便利に使える「PCサイトビューアー」、オフィス文書やPDFファイルの閲覧や一部、編集にも対応した「PCドキュメントビューアー」、海外でも利用できる「グローバルパスポートCDMA」など、対応サービスや機能も充実している。日立製端末でおなじみの「しゃべるモバイル辞典」、日立エアコンの人気キャラクター「白くまくん」のケータイアレンジなど、オリジナル機能やコンテンツも揃っており、ハイビジョンムービー以外にもさまざまなシチュエーションで活用できる端末として、仕上げられている。

※1 対応テレビ:ハイビジョン液晶テレビWooo UT800・770・700シリーズ、ハイビジョンプラズマテレビWooo 03・02シリーズ、ハイビジョン液晶テレビWooo 03(XP03/WP03)・02シリーズ。但し、UT700シリーズは、TVリモコンでの操作をはじめ一部機能が使えません。

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左から、レイズブルー、マイカブラック、カシスレッドの3色展開となる

 通話やメールといったコミュニケーションのための道具として、着実に進化を遂げてきたケータイだが、ここ数年は「LISMO」などによる音楽再生、「ワンセグ」や「LISMO Video」による映像コンテンツなど、Audio&Visualの機能が充実してきている。同時に、ケータイでもっとも注目度の高い機能のひとつであるカメラも写真付きメールなど、幅広く利用されてきたが、これまでのカメラ付きケータイはどちらかと言えば、静止画の撮影などに注力されてきた印象が強い。しかし、地上デジタル放送の普及とともに、薄型テレビが好調な売れ行きを記録し、ビデオカメラもHDD方式やブルーレイディスク方式など、ハイビジョン画質での撮影を可能にしたモデルが人気を集めている。

 Mobile Hi-Vision CAM Woooは、こうした市場の反響やユーザーのニーズを的確に捉え、モバイルハイビジョンムービー時代を切り開く先進的な端末として、開発されている。ケータイにおいて、ムービー機能はやや脇役的な印象があったが、Mobile Hi-Vision CAM Woooは誰もが高画質のハイビジョンムービーを手軽に撮影できるように作り込まれており、今までのカメラ付きケータイの活用スタイルを大きく変える可能性を感じさせてくれる。実際に使いはじめると、静止画よりもムービーで撮ることが楽しくなってくるくらいだ。ムービーの撮影と言うと、題材に躊躇しそうだが、実はそんなに難しく考えることはなく、普段の生活で見かけた人や物、風景などを気軽に撮っているだけでもかなり楽しい映像を記録することができる。もちろん、パーティや旅行など、さまざまなイベントでも活躍することは間違いない。モバイルハイビジョンムービーの時代を切り開くMobile Hi-Vision CAM Woooは、Audio&Visualの楽しさとカメラ付きケータイを進化させた面白さを存分に楽しみたい人にぜひおすすめしたい端末だ。

法林岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるゼロからはじめるパソコン超入門 ウィンドウズ ビスタ対応」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。
 
関連情報

■ケータイLovers by HITACHI
http://klovers.jp/pc/

■「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」製品情報(HITACHI)
http://k-tai.hitachi.jp/cam_wooo/

■「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/ichiran/kishu/hv_wooo/

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■「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」開発者インタビュー 〜 映像にこだわる日立のビデオカメラケータイ
http://k-tai.impress.co.jp/docs/interview/20090729_305660.html

■au、Mobile Hi-Vision CAM Woooを7月30日より発売
http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20090729_305666.html

■ハイビジョン動画を撮影できる「Mobile Hi-Vision CAM Wooo」
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/45446.html