グーグル株式会社 アドセンス オンライン モバイル エバンジェリスト 井元直子氏にお話をうかがった

商用Webサイトを運営していく上で重要になっていくのは、当然のことながら、その収益力の向上だ。もちろん、ケータイ向けサイトも例外ではない。サイトを立ち上げたものの、収益化に悩んでいる、という人も多いのではないだろうか。

ケータイ向けのサイトであれば、キャリアの公式サイトになって、有料課金制とする手法もある。しかしこれにはキャリアへの申請・サイトの審査などがあり、小規模なサイトにはハードルが高い。また、公式サイトになれても、有料会員数を増やすのは簡単ではない。

かといって、サービスを無料で提供し、広告モデルで売上を立てようとしても、収益化への道はけわしい。通常の広告、いわゆる純広告だと、そもそもPV数が多いサイトでないと広告が入らない。また、PV自体が多くても、トップページ以外には広告が入りづらかったりもする。PC向けサイトに純広告を出稿していても、ケータイ向けサイトには出稿していない企業も多い。もちろん、広告主に広告を出稿してもらうためには、自サイトの営業コストも必要となる。

ケータイ向け・PC向けを問わず、立ち上げたばかりのサイトや規模の小さいサイトなどでは、こうした収益化の面で悩みを抱えることになる。規模の大きなサイトでも、ケータイ向けでは収益がなかなか伸ばせずにいるケースも多いはずだ。そんなときに試したいのが、Googleの「Google AdSense」、そしてその中でケータイ向けに最適化された「モバイル コンテンツ向け AdSense」である。グーグル株式会社のアドセンス オンライン モバイル エバンジェリストの井元直子氏は、「サイトの収益化について悩みを持たれているサイト運営者の方々は多いかと思います。そういった悩みを、モバイル コンテンツ向け AdSenseならば解決することができます」と語る。

今回はこのGoogle AdSenseについて、井元氏に話をうかがいつつ紹介しよう。


これまでの連載では、サイトのコンテンツを充実させ、なおかつ検索エンジンやGoogle AdWords経由でトラフィックを呼び込むまでを解説した。今回は最終回ということで、トラフィックを直接、収益に結びつける方法についてだ

小回りと機動力で収益力を上げるGoogle AdSense

Google AdSenseは、Google AdWordsに出稿された広告を、自サイトに掲載するためのサービスだ。いわばGoogleの広告ネットワーク内で、Google AdWordsの利用者が広告主、Google AdSenseの利用者が広告媒体となるわけである。

広告は、表示するページの内容(テキスト)に応じ、内容に関連性の高いクリエイティブ(広告原稿)が自動的に表示されるようになっている。Googleの検索連動型の広告と似たような仕組みだ。掲載するサイトが広告を選ぶわけではないというのが、通常の広告と異なるユニークなポイントである。


いまやWebブラウジング中に見ない日はないほど一般的になった、PC版のGoogle AdSense
モバイル コンテンツ向け AdSenseのサンプル。PC版にくらべて画面における占有面積の比率が高いのが特徴。つまり、よく目立つ

Google AdSenseでは、広告が読者によってクリックされる毎に、掲載サイトに広告掲載に対する収益が上がっていく仕組みになっている。掲載サイト側には利用料金は必要なく、Google AdSenseのオンライン手続きのみで簡単に利用開始できる。

すでにサイトに純広告を導入していても、Google AdSenseはそれとぶつかるものではない。井元氏は、「AdSenseは、純広告が入りにくく収益化しにくいトップページ以外の場所、とくに個々の記事ページや、ユーザーの書き込みページに掲載すると効果が上がりやすい」と語り、Google AdSenseと純広告は相互補完的な関係にあると説明する。

一般的に、純広告はPV数が多くて誰もが見るトップページには入れやすいが、個々の記事ページなどは入りにくい。しかし個々の記事ページにアクセスしている読者は、そのページの内容に興味があり、その記事を読む為にアクセスしているわけで、いわば読者に合わせてコンテンツ内容が絞り込まれている状態と言える。Google AdSenseは、こうして絞り込まれた読者に対して、ページの内容に即した広告クリエイティブを表示することで、より効果の高い広告を配信できるのだ。

また、Google AdSenseなら純広告と異なり、広告主を探す為の営業などは必要なく、Google AdSense のアカウントを開設するだけで広告掲載が可能なので、営業コストがかからない。しかも高いシェアを持つGoogle AdWordsに出稿されている膨大な量の広告が掲載候補となるので、広告が不足することもない。

以上のことは、モバイル版のAdSenseである、モバイル コンテンツ向け AdSenseにも当てはまる。個人サイトでも気軽に導入できるし、大規模なサイトでも運用できる、それがGoogle AdSenseであり、モバイル コンテンツ向け AdSenseなのだ。

カスタマイズし、より効果の高い広告を
Google AdSenseのスタートページ。利用登録のほか、ヘルプや各種事例にもアクセスできる
モバイル コンテンツ向け AdSenseは各種サーバーサイド言語に対応したスクリプトをページに貼り付けることで動作する

モバイル コンテンツ向け AdSenseの使い方は簡単だ。まずはGoogle AdSenseのサイトでアカウントを開設しよう。すでにPC向けのGoogle AdSenseなどを利用していてアカウントを持っているならば、それをそのまま使うこともできる。

アカウントの開設後、さらに広告のデザインなどを設定すると、サーバーサイド言語用のスクリプトが生成される。あとは広告を掲載したいページにこのスクリプトを貼り付ければよい。すると、約48時間程度で、Googleからの広告配信が開始される。

Google AdSenseのクローラーは自動で掲載ページの内容をチェックし、それに合わせた広告を配信してくれる。配信される広告は、モバイル コンテンツ向け AdSenseであれば、当然 AdWords モバイル広告に出稿されたものだけとなる。

掲載される広告はGoogleから自動で配信されるが、掲載したくない広告はリンク先URLをもとにフィルタリングをかけることもできる。

モバイル コンテンツ向け AdSenseの注意点としては、広告表示にJavaScriptを使用するPC版Google AdSenseと異なり、サーバーサイドスクリプトで処理する必要があるので、プレーンな静的HTMLページには掲載できない。また、広告を掲載するにはGoogle AdSenseのクローラーがそのページを巡回する為、クローラーのアクセスを許可する必要がある。アクセス端末の制限を行っている場合などは、Google AdSenseクローラーのUser Agentに文字列「Mediapartners-Google」が含まれているので、こちらをホワイトリストに追加しておこう。

モバイル コンテンツ向け AdSenseもPC版と同様、クリエイティブの種類を選ぶことができる。モバイル コンテンツ向け AdSenseの場合、テキスト広告とイメージ広告の2種類があり、さらにテキスト広告の場合、シングルユニット型とダブルユニット型が存在する。デフォルトではテキスト広告とイメージ広告の両方が配信される設定になっており、収益効果が最も高い組み合わせとなる。ちなみに井元氏によると、掲載可能な広告の絶対数が多い方が広告単価が上がりやすいため、デフォルト設定のままでテキスト広告とイメージ広告の両方を掲載するのがもっとも収益性を期待できるという。


モバイル コンテンツ向け AdSenseのクリエイティブはこの3種類となる

テキスト原稿のカラーリングを変更することができ、色の組み合わせを保存しておくことも可能。サイトのコンテンツに馴染む配色がセオリーだが、こまめな調整は欠かせない
セクションターゲットのタグを挿入することで、ページ内容と広告の関連性をより高めることができる

また、テキスト広告の場合、配色デザインもカスタマイズ可能だ。掲載ページのデザインに合わせつつ、かつ目を引いてクリックされやすいデザインを目指そう。ただし同じデザインで続けていると、読者も目が慣れてしまうため、定期的にデザインを変更すると良いという。井元氏によると、PC向けのGoogle AdSenseでも同様の傾向があるが、ケータイの場合はそれがより顕著だという。1カ月から1カ月半といったペースでデザインを変更するのが効果的ということだ。

実際に広告をどのページに掲載するかについても、Google AdSenseならではの考えが必要になる。井元氏は、「Google AdSenseは、純広告の代わりに掲載する、といった運用をするものではありません」と説明する。純広告にとって価値の高いところには純広告を掲載し、内容が絞られ、読者も絞られるページにGoogle AdSenseを使えば良い、というわけだ。たとえばImpress Watchでは、Google AdSenseは各記事ページに入れ、トップページにはすべての読者に見てもらうことを前提とした純広告を入れてすみ分けをしている。

ページ内のどの箇所に広告を掲載するかは、これはサイトやページごとに得手不得手があるので、いろいろと試行錯誤すると良いだろう。特にモバイル コンテンツ向け AdSenseの場合、1ページにつき1カ所しか掲載できないので、掲載位置に関しては吟味を重ねる必要がある。たとえばケータイの場合、画面が小さく一度にページ全体を表示できないので、トップページやインデックスページなどは、タイトルのすぐ下に邪魔にならないコンパクトなシングルユニットを入れるのが有効だ。一方、個々の記事のページでは、最下部にダブルユニットを入れると、邪魔になりにくく、記事を読んで内容に興味を持った読者に効率的に広告を届けられる。しかしケータイの場合は記事の途中で読者が離脱してしまうケースもあるので、小説、コラムなどの長いページでは記事途中にシングル型を掲載するのも効果的だという。

配信される広告自体の適合性を高めるという意味では、ページの内容と広告との連動度合いの強弱をつける「セクションターゲット」のタグを掲載ページ内に入れることも有効だ。たとえば、特定の単語や文に「強調」タグを入れたり、フッタなど記事内容に直接関係しない部分に「無視」タグを指定しておけば、そのページの内容に関連性の高い広告が配信されやすくなり、広告効果を高めることができる。

Google AdSenseでサイトビジネスを成長させよう
詳細な分析ツールが使用可能

トラフィックが増え、広告のクリック数も増えれば、Google AdWordsの広告主側から、広告掲載サイトの指名買い、つまり「プレースメント ターゲット」が入る可能性が出てくる。プレースメントターゲットが入るようになれば、広告の単価も上がるし、また、広告効果が高いことが伝われば、その広告主から直接、純広告を得る機会につながることだってある。モバイルサイトのビジネスを大きくするには、こういった方向を目指すことは重要だ。

そのためには、本シリーズでこれまで紹介してきたような、検索されやすくする工夫やGoogle AdWordsを使って集客し、トラフィックを増やしていくことが重要だ。また一方でコンテンツを充実させ、Google AdSense によって、あるトラフィックを最大限に収益化に結び付けることも可能だ 。

Google AdSenseでは、掲載ページのPV数やクリック率などのパフォーマンスを解析するレポートツールも提供していて、掲載したコンテンツと広告が効果的だったかを確認することができる。Google AdSenseは、いつでも開始・停止・変更ができるので、こうしたレポートツールを見ながら、試行錯誤しつつ臨機応変に効果の高い広告を追求していくことが可能だ。

Google AdSenseは、誰でも簡単に導入できる。とくに、有料課金や純広告による収益化にはまだ至っていないような新しいサイトや小規模なサイトでも利用できるのは、Google AdSenseならではのメリットと言える。すでに純広告などで十分な収益を得ているサイトはもちろんのこと、その前段階ながらビジネスの拡大を目指しているサイトにとって、Google AdSenseは活用するべきサービスに違いない。

【Reported by 白根雅彦】