グーグル株式会社・営業戦略企画マネージャーの長谷川氏にお話をうかがった

Webサイト運営をビジネスの一環として取り組んでいくとなると、Google検索などの検索結果経由で集客するだけではなく、よりアクティブに顧客を取り込んでいく手段が必要になってくる。このとき良く使われるのが、Googleの主力広告商品「Google AdWords(アドワーズ)」だ。すでにパソコン向けサイトで活用している人も多いだろう。実はこのGoogle AdWords、パソコン向けサイトだけでなく、ケータイ向けサイトでも利用できるので、モバイルサイト運営者にとっても利用価値のあるものになっている。

全体的な話をすれば、ケータイでの検索サイト利用は、確実に増えつつある。マクロミル社による「モバイルユーザーのインターネット利用実態調査」(2008年9月)によれば、「携帯電話でのインターネット利用目的」の第1位が「情報を検索」の64.3%で、前年から4ポイントのアップとなっている。ケータイ向けの検索サイトに直接広告を出すことは、モバイルサイトへの集客を最大化する上でますます重要になってきているのだ。

今回はこのGoogle AdWordsについて、そもそもの仕組み・概要から、ケータイならではの応用方法まで、グーグル株式会社の営業戦略企画マネージャーの長谷川 玲氏に話を聞きながら解説する。


連載第3回の今回は、モバイルサイトが発展するにつれ重要度を増してくる、広告による集客について解説する。カギとなるのはGoogle AdWordsだ

低予算で幅広いサイトに広告を出せるGoogle AdWords
PC向けの「Google AdWords」の表示例
ケータイ向けのGoogle AdWords表示例

Google AdWordsでは、Googleの検索結果ページなどにテキスト広告を出すことができる。たとえば「花 ギフト」を広告のキーワードとして設定しておけば、Google検索の利用者が「花 ギフト」を検索したとき、検索結果ページに広告が表示される。これを「検索連動型広告」という。仕組みはパソコン向けもケータイ向けも同じだ。Googleで検索する人というのは、そのキーワードについて知りたかったりする、いわば潜在的な顧客なわけで、その検索結果と一緒に広告が表示されれば広告効果は高くなるというわけだ。

さらにGoogle AdWordsでは、検索連動型広告に加え、Googleが提携するパートナーサイトのサイト内で、ページの内容に合わせてテキストないしバナー広告を表示させるという「コンテンツ連動型広告」も提供している。このパートナーサイトというのが非常に幅広く、コミュニティやニュース情報などの大手サイトから個人ブログまでが対応している。たとえばここ、Impress WatchもPC向けのパートナーサイトとして参加しているので、記事の内容にあわせた広告が自動的に表示されるようになっている。このように幅広いサイトに対し、個々のサイトと直接交渉をせずに広告掲載できるのも、Google AdWordsの魅力だ。

当然ケータイ版のGoogle AdWordsでも、「検索連動型広告」と「コンテンツ連動型広告」の両方に対応している。さらに、ドコモやKDDIなどのケータイキャリアのポータルトップページでもGoogle検索を採用しているので、その検索結果ページにもGoogle AdWordsの広告が表示される。これはかなり大きなポイントだ。

以上のように、広告を出せる場所は多いが、Google AdWordsは意外にもかなりの低予算から利用できる。Google AdWordsは、広告のリンクがクリックされた回数に応じて料金が発生するが、予算の上限を設定できるので、想定外の出費を防ぐこともできる。クリックに対する料金以外は、最初のアカウント登録に500円がかかる。あと必要なのは、広告を設定する手間と、広告からのクリックを受け入れるためのページを作っておくことだけだ。

1クリックの単価は条件や設定によって異なるが、たとえば1クリック10円だったとして、1日の予算上限を1,000円にしておけば、1日に100回クリックされると広告の表示が自動的に停止し、その日に1,000円以上の出費はない仕組みになっている。極端な話、1日に1クリックもなければ、それはそれで広告効果的にイロイロ見直した方がよいところだが、出費は0円だ。

また、広告配信を開始したあとでも、いつでも広告の再編集や配信停止ができるので、随時調整・試行錯誤しながら広告を作っていくことも可能だ。配信中の広告のパフォーマンスについての細かいデータも参照できるので、弱点を補ったり効果の高いところを強化する、といったこともしやすい。

ちょっと変わった使い方としては、長谷川氏は「フレキシブルに出稿や停止をできるので、別のサイトに出す予定の広告の効果をテストするような用途にも向いている」とも提案する。たとえば、複数の広告クリエイティブを同時に運用できるので、両者の効果を比較することもできる。こうした柔軟性・応用性を持っていることも、Google AdWordsの利点だ。

時間とユーザーを意識したケータイならではの効果的な広告を!

Google AdWordsの広告は、広告を出稿する側があらかじめキーワードを設定し、そのキーワードのGoogle検索結果ページや、パートナーサイトの中でそのキーワードに関する内容を持つページに表示される仕組みとなっている。

キーワードをたくさん設定すれば、広告が露出する機会は増えるわけだが、広告効果の低いクリックを量産しても予算を無駄に消費するだけなので避けたいところ。たとえば自社の製品を効果的に宣伝したいならば、製品を欲しいと思ってもらえそうな潜在顧客に見せるようにキーワードを設定するべき、というわけだ。

効率的なキーワード設定については、パソコン向けもケータイ向けも基本は同じだが、一方で長谷川氏は、パソコンとケータイで検索傾向に違いがあることも指摘する。

モバイルからの検索と、PCからの検索数の比率をあらわしたグラフ

たとえば「中古車」や「株価」といった、じっくり調べるような情報については、パソコンからの検索が多い。しかし「恋愛」や「仕事」「ダイエット」といった内容は、ケータイからの検索がパソコン並みにあるという。ケータイユーザーの傾向としては、若年層・女性の割合がパソコンに比べて多く、趣味のことやプライベートな検索が多い、と考えられる。

また一方で、地域性や緊急性のあるような外出先での検索というのも、ケータイならではの特徴だという。たとえば「今晩泊まれるホテルを探したい」「バスの時刻表を調べたい」「すぐ見たい映画の上映館を知りたい」といった検索ニーズは、ケータイならではの特徴と言えるだろう。

こうした傾向の違いは、キーワード設定だけでなく、広告の文言作成時にも考慮するべきところだろう。とくにケータイ版のGoogle AdWordsは、パソコン向けに比べると広告の表示が大きめ(ほかのコンテンツより小さくない)なので、よりクリックされやすくなっている。余計なクリックは増やさず、なおかつ必要な顧客はつかめるような広告作成を心がけよう。

ケータイによる検索は、昼休みと終業後、いわゆるオフタイムに集中している
ケータイによる検索が増えるのは、平日よりもむしろ週末。とくに土曜日がピークだ

このほかにもGoogle AdWordsでは、キーワードだけでなく広告を配信する時刻を15分単位で指定することも可能となっている。長谷川氏は、検索が利用される時間帯も、パソコンとケータイでは傾向が異なることを指摘する。

まず、1日の検索件数で言うと、パソコンの場合はビジネスマンの就業時間中の検索が多く、昼休みや17時以降に検索件数は少し落ちる。一方のケータイの場合、パソコンとは逆に昼休みや17時以降に検索件数が急増するという。1週間の検索件数を見ると、パソコンは平日に多く休日は少ないが、ケータイの場合は休日、とくに毎週土曜日に検索数が多いという傾向があるという。配信時刻を指定するときも、これらパソコンとケータイの違いをしっかり考慮すると、広告効果を高めることができるわけだ。

さらに長谷川氏は、時事性が高いのもケータイからの検索の特徴だと指摘する。それが特に顕著なのが、テレビなど他メディアからの影響だ。たとえばテレビ番組で、あるダイエット方法が紹介されると、そのダイエット方法についてのケータイからの検索が瞬間的に急増するという。同様の傾向はテレビだけでなく、雑誌や電車の中吊り広告などでも見られるという。テレビを見ながらや雑誌を読みながら、あるいは外出中でも使われやすいケータイならではの特徴と言えるだろう。ちなみにパソコンからの検索も同じように増えるが、検索されるのは次の日以降など、ケータイに比べるとタイムラグがあるという。

ケータイ向けサイトだけの話ではないが、他メディアへの露出で検索の急増が予想される場合は、注意が必要だ。Google AdWordsの予算を増やす、特別なキャンペーン広告を出してクリック率を高める、といった対策を取ることで、大きなチャンスを得る可能性があるわけだ。

まずは低予算から広告効果を確かめよう
Google AdWordsからリンクをクリックして直接電話をかけられる「Click-to-Call」。ちなみに、この機能はサイトを所有していない人でも利用できる。

Google AdWordsには解説本が何冊もあるくらい、いろいろな活用・応用方法がある。今回紹介した以外にも、ケータイ向けのGoogle AdWords独自の機能として、アクセスしてきたケータイのキャリア別に広告を配信したり、広告に電話をかけるためのリンク「Click-to-Call」を入れることができる。Google検索から直接、電話窓口に顧客を誘導するといった、ケータイならではの活用方法も可能なのだ。

正直に言えば、最初からこういったノウハウをすべて活用するのは困難かもしれない。しかしGoogle AdWordsは低予算でも使えるので、まずはテスト運用で試行錯誤してみて、自分のサイトにとって効率的な広告を模索すると良いだろう。

【Reported by 白根雅彦】

8月11日公開予定!