「ググる」という言葉、ネットを使っている多くの人は耳にしたことがあるのだろう。Googleで検索する、という意味だ。わからないこと、調べたいこと、捜し物があったら真っ先に「ググる」、そんな人も多いのではないだろうか。

しかし、Googleが提供するツールは検索だけではない。Googleは検索される側、つまりサイト運営者にとって役に立つツールも提供している。それも、コンテンツのリッチ化から収益化まで、さまざまなツールが用意されている。

まずサイト構築段階では、YouTube や Googleマップなどのツールが役に立つ。動画や地図を自分で用意して配信するのは手間もコストもかかるところだが、これらGoogleのツールを使えば、大幅に手間もコストも削減できる。

サイトを構築したら、次にサイト運営者が悩むのは集客だろう。ここでも当然、強力な検索エンジンを持ち、利用者も多いGoogleが役に立つ。Googleの検索エンジンで検索されやすいようにサイトを作り込めば、大きな集客につなげることができる。

さらに大きな集客を集めたい、というときに役立つのが、モバイルのビジネスをより強力にプッシュしてくれるGoogle AdWordsだ。AdWordsを利用すれば、Googleの検索結果に広告を出したり、豊富なパートナーサイトに広告を出したりすることができる。費用はかかるものの、パートナーサイトの関連性のあるコンテンツに自分のサイトを表示させることは、強力な集客効果がある。

グーグル株式会社プロダクト・マネージャーの岸本氏にお話しをうかがった

そして、サイトのトラフィックが増えてくれば、それをGoogle AdSenseで収益につなげることができる。広告主と直接コミュニケーションをする必要はなく、 サイト内の各ページの内容にターゲティングされた広告が自動で表示され、読者がそれをクリックすることが収益につながる。

パソコン向けにサイトやブログを運営している人ならば、これらGoogleのモバイルサイト向けサービスを使ったことがある人は多いだろう。これらのサービスは、実はパソコン向けサイトだけでなくケータイ向けサイトでも利用できる。ともすれば「簡易版」になりがちなケータイ向けサイトも、Googleのサービスで一歩進んだものにできるのだ。

本シリーズでは4回にわたり、これらGoogleのモバイルサイト向けサービスを紹介していく。第1回目となる今回は、YouTube や Google マップといった、サイト構築時に役に立つツールについて、グーグル株式会社のプロダクト マネージャーの岸本豪氏に話を聞きながらご紹介しよう。


モバイルサイトの成長段階に応じて、Googleのサービスが便利に利用できる。本連載では今後4回にわたって、それぞれについて解説していく予定

簡単にケータイ向け動画も配信できてしまう「YouTube」

ケータイ向けサイト構築に役立つGoogleツールとして、まず最初に岸本氏が挙げるのは、動画配信サービスの「YouTube」だ。

ケータイで動画が必要なのか、とも思われるかもしれないが、これがけっこう使われている。日本のケータイはほとんどが動画再生に対応していて、ケータイ版のYouTubeも、ドコモ、au、ソフトバンクの主要3キャリアで利用可能だ。ユーザーにしてみると、パケット料金が必要になるところだが、最近では多くの人がキャリアのパケット定額サービスを利用しているので、通信料金を気にせず気軽にケータイ動画を楽しむ人は増えている。

しかしサイト運営者からすると、ケータイに動画を配信するのは、かなり手間がかかることである。というのも、ケータイで再生できる動画は、キャリアや端末の世代によって仕様が異なるため、配信するとなると、それぞれの仕様ごとに動画ファイルを用意し、アクセスしてきた端末ごとに適した動画へと誘導する、といった仕組みが必要になるからだ。

そこでYouTubeが役に立つ。岸本氏は「ケータイ向けに動画を配信するのは本来手間がかかりますが、YouTubeにアップしていただければ、リンクを張るだけでケータイに動画を配信できます」と紹介する。

モバイル版YouTubeのトップページ(クリックで拡大します)
端末ごとに最適化された動画を配信することができる(クリックで拡大します)
この部分からリンクを取得する。そのURLにモバイル端末からアクセスすれば、自動的に最適なページへリダイレクトされる(クリックで拡大します)
URL中の「watch」の後ろに「_limited」という文字列を追加すると、ご覧の通り、関連動画の表示がないシンプルなページへと飛ぶ(クリックで拡大します)
モバイル版ページにアクセスし、右クリックなどから画像のURLを調べれば、そのまま自分のサイトに流用できる

ケータイ版YouTubeには、アクセスしてきた端末を自動で判別し、その端末に最適化変換された動画を配信する仕組みがある。アップロードする動画は1本のみでも、各端末仕様にあわせた動画を自動生成してくれるのだ。そのままではケータイで全編を再生できないような比較的長い動画も、YouTubeは自動で分割してくれる。

機能はすごいが、使い方はいたって簡単だ。まずはケータイに配信したい動画をYouTubeにアップロードする。すでにパソコン向けに動画をアップロードしているならば、それをそのままケータイに配信することもできる。ただしケータイの画面で表示できるように自動縮小されるので、テロップや被写体が小さく表示される動画は、ケータイ向けに流用するには適さないので注意しよう。

アップロードしてしまえば、ケータイで配信するための操作は不要だ。通常の動画再生ページのURLにケータイでアクセスすれば、そのケータイに最適化された動画へと自動でリダイレクトされる。このURLを自分のサイトに貼れば、それだけで動画配信ができてしまうわけだ。

さらに岸本氏は、いくつかの裏技も紹介する。「関連動画の表示が邪魔な場合は、URLにパラメーターを付加することで、関連動画表示なしのページを作れます。また、動画のサムネイル画像も外部から見られますので、リンク元のページで使うことができます」

「キャリアや端末を問わず、YouTubeならばお金をかけずに動画を配信できます」と岸本氏は説明する。YouTubeでケータイ向け動画配信に必要なのは、動画を用意し、YouTubeにアップロードするための「手間」だけである。自前で動画配信をするのに比べると破格に低コストで手間いらずだ。

ただし、権利処理には注意が必要となる。たとえば音楽については、YouTubeの場合、JASRACが管理する曲や歌詞を使えるが、普通のCDに入っている曲はレコード会社の著作物なので、レコード会社の許諾なしに使うことはできない。JASRAC管理曲のうち、動画で使えるのは自前で演奏したり歌った曲などとなる。しかし逆に言うと、自分で歌ったり演奏した曲ならばOKなのは便利なポイントだ。ちなみにYouTubeでは、アップロードする際に著作権フリーの音楽をかぶせる機能も搭載している。

YouTubeにアップロードした動画は、特に設定を変更しなければ、YouTube全体に公開される。自分のサイト用にアップロードした動画が、自分のサイト以外でも見られてしまうのは気になるところかもしれないが、これは逆に集客にもつなげられる。動画をアップロードする際には、コメント部分に自サイトのURLを記述するとともに、検索されやすいタグを入れておくのも良いだろう。

「Google マップ」の地図を自分のサイトで活用

Google マップもケータイ向けサイト構築で役に立つツールだ。たとえばグルメ系のモバイルサイトを運営しているなら、オススメの飲食店の場所を地図で簡単に示すことができるようになる。

Google マップというと、パソコン向けにはマウスでグリグリ動かせる地図を提供しているが、このグリグリ動く地図は、残念ながらケータイのWebブラウザでは表示できない。しかしケータイ向けサイトでも、指定した位置の地図を画像で出力する「Google Static Maps API」が利用できる。

■サイトに地図画像を追加する Google Static Maps API
http://code.google.com/intl/ja/apis/maps/documentation/staticmaps/

Goolge Static Maps APIで実際に表示している画像
実際にGoogle Static Maps APIを使って表示した画像。サイズ等を調整すれば、このようにPCサイトにも、モバイルサイトにも貼り込むことができる

地図くらい自分で用意できる、と思われる人も多いかもしれないが、地図は準備するのが意外と面倒なものでもある。地図は著作物なので、地図帳や地図サイトから勝手にコピーするのは著作権違反になってしまう。自前で地図を書くにしても、誰にでもわかりやすい地図を書くのは、慣れていないと意外と難しい。

Google Static Maps APIを使えば、Google マップと同じ地図画像を、自分のサイトで利用できるようになる。それも、ただの地図画像ではない。地図の上にマーカーや線を追加したり、地図画像の解像度や縮尺も設定可能だ。表示文字が大きめになっているケータイ版地図や航空写真も利用できる。

ただし、利用するにはサイト管理者が「Maps APIキー」を登録・取得する必要があり、ある一定以上の規模(1日5万インプレッション以上だから、かなりの規模だが)では有料となる。また、使い方の詳細はデベロッパーガイドを参照してもらいたいが、座標などの指定はそれなりの慣れが必要になる。

そこで岸本氏は、「Static Maps APIが面倒くさい、という人は、Googleのローカル検索を使うという手もあります」と紹介する。

ローカル検索とは、お店やサービスを簡単に検索できる機能のことだ。ケータイ版のローカル検索でもパソコン版と同様に、施設名や住所で検索をすると、その対象となる場所のデータがGoogleにある場合検索結果の中に「ローカル検索結果」や地図が表示される。

ローカル検索の検索結果。ためしに一つ目のリンクをクリックしてみると…(クリックで拡大します)
その住所・地名についての詳細な結果が得られる。地図のほか、乗換案内へのリンクやWeb検索結果も表示される(クリックで拡大します)
PC用のWebブラウザでモバイル向け検索を表示してみた例。このほかにも、GoogleのサービスはルートURLに「m/」を付加すると、モバイル版にアクセスできることが多い

ローカル検索の結果をクリックすると、そこの住所や施設の地図が表示されるとともに、施設ならば情報やレビュー、画像などが表示される。また、乗換案内サービスへのリンクも表示されるほか、Google マップの地図アプリを搭載するドコモのケータイならば、そのままアプリを起動することもできる。

自分のサイトからリンクを張るには、当然ではあるがケータイ版ローカル検索の結果ページのURLが必要になる。「http://www.google.co.jp/m/」は、PC用のWebブラウザでアクセスした場合でもモバイル向けページを表示できるので、ここで実際に検索結果ページを表示し、URLを知ることができる。

ローカル検索の結果ページは、YouTubeなどと同様に、アクセスしてきた端末に最適化して表示される。ディスプレイ解像度の高い端末ならば、それに合わせて大きな地図が表示されるなど、実はGoogle Static Maps APIを使うより便利な部分も多い。しかし検索結果に直接リンクを張るのは、Googleが推奨するオフィシャルな方法ではなく、場合によっては内容が変わったり消えたり、あるいはURLが変更されることもあるので注意しよう。

Googleのツールでサイトの利便性向上を

YouTube、Google マップ以外にも、Googleにはケータイ向けサイト構築に役立つツールがある。たとえば自分のサイトにGoogleの検索ボックスを設置するのは、パソコン向けサイトではよく見られるが、ケータイ向けのサイトでも利用可能だ。登録が必要だが、無料で利用できる。

■サイト内にGoogleの検索ボックスを追加する Google Search for Mobile Websites
http://www.google.co.jp/mobile/partners/signup/

「Picasa ウェブアルバム」のアルバムや単独の画像も、このURLにアクセスするだけでモバイル端末に最適化されたページを表示してくれる

この検索ボックスも、いろいろと裏技的に応用が利かせられる。たとえばあらかじめ検索ボックスにキーワードを埋め込んだりもできる。「site:(ドメイン名)」をキーワードにしておけば、特定ドメイン内のケータイ向けサイトを検索、といった使い方も可能だし、自サイト内限定の検索にも利用できる。

動画だけでなく、静止画の配信をサポートするツールもある。Googleが提供している写真の共有サービス「Picasa ウェブ アルバム」もケータイ向けサイトで利用できる。Picasaで公開したアルバムは、パソコンでもケータイでもスマートフォンでも、アクセスしてきた端末に最適な表示をしてくれる。たくさんの画像を公開するときなどはとくに便利だ。やり方としては、アルバムを「全体公開」もしくは「限定公開」にして、そのURLにリンクを張るだけでよい。

Googleが提供しているツールを使えば、サイトのリッチ化もより簡単にできてしまう。とくにケータイ向けサイトの場合、パソコンと異なり、ケータイごとに仕様が異なるところが多いので、それぞれの仕様に合わせたコンテンツを作るのは非常に手間のかかることである。YouTubeなどのツールは、ケータイ向けサイトを作る上ではかなり便利なものと言える。

便利かつ低コストなGoogleのツールで、自分が運営するケータイ向けサイトを単なる「簡易版」ではなく一歩進んだものにしてみよう。

Reported by 白根 雅彦

7月14日公開予定!