電子書籍新時代、はじまる  ついに登場した 電子書籍プラットフォーム専用端末 GALAPAGOS メディアタブレット
今日中にも読み切りたい分厚くて重いハードカバー。出がけにカバンに入れるのをためらう。でも、GALAPAGOSなら、その悩みを解決してくれる。ボリュームのある書籍を手のひらサイズで持ち運べるからだ。最新刊の単行本なのに、コンパクトな文庫本が同時発売されるイメージだ。

電子書籍プラットフォームにあわせて登場した専用端末メディアタブレット

メディアタブレット GALAPAGOSは、10.8型ホームモデル「EB-WX1GJ-B」と、5.5型モバイルモデル「EB-W51GJ-R/-S」の2サイズをラインアップ

今回は、5.5型モバイルモデルのシルバー「EB-W51GJ-S」を試用した。

メディアタブレット発売と同時にローンチした「TSUTAYA GALAPAGOS」

 2010年は電子書籍元年と言われながら、特に日本ではその環境整備がなかなか進まず、歳末を迎えてしまったが、そのギリギリのタイミングで、いくつかの注目電子書籍プラットフォームが稼働し始めた。シャープの「GALAPAGOS」もそのひとつだ。

 同社が電子ブックストアサービスを12月にスタートし、専用端末としてメディアタブレット GALAPAGOSを発売することを発表したのは9月も終わりに近かった。そして、約束通り、12月の頭に、専用端末であるメディアタブレットの予約が開始され、予定通り12月10日に電子ブックストアサービス「TSUTAYA GALAPAGOS」が始まった。

 専用端末としてのメディアタブレットは、2種類用意されるが、今回試したのは、そのモバイルモデルとされているもので、LEDバックライト方式の5.5型カラー液晶を装備した約220グラムの端末だ。液晶解像度は1024×600で、画面のアスペクト比はほぼ16:9となる。

 文庫本と比べたときのサイズ感は、ほぼ同等で、縦に少し長く、横に少し細いといったところか。今、手元にあった350ページほどの文庫本の重量を量ってみたところ180グラム程度だったので、ほんの少しだけ重いが、重量級のハードカバーを持ち歩くことを思えばはるかに軽い。

 本体を縦位置に置くと、画面下部には3つのキーが並ぶ。左が「バック」、右が「ホーム」となっていて、中央はトラックボールとしてさまざまな場面で使える。

 また、上側面の右側に電源キーが用意され、電源オンや省電力モード(サスペンド)・電源オフへの移行ができるようになっている。

片手にちょうどよくおさまるサイズ感のモバイルモデル

文庫本とのサイズ比較

左から「バック」、「トラックボール」、「ホーム」。トラックボールはカーソル操作やページめくりなどに使用。LEDライトが点灯するので暗所でも使いやすい

右上部にはオーディオ出力ジャック、電源キー、ストラップ取り付け穴

画面右上に通信状態ランプとバッテリー状態ランプ

下部にmicroSDスロットと、充電端子も兼ねるminiUSBコネクターを搭載

 メディアタブレットのためのコンテンツ入手も手軽だ。本体の無線LAN機能を使い、インターネット経由でストアにアクセスすることができるので、インターネット環境さえあれば、本体だけでのコンテンツ購入が可能だ。この点は、旅行や出張に持って行くようなときにもうれしい。小説があまりにおもしろくて、上巻を一気に読んでしまったときに、下巻をすぐに購入して続きを読めるというのは、当たり前のようで当たり前ではないのが今の日本の電子書籍状況だからだ。また、「GALAPAGOS サービス紹介サイト」からダウンロードできる専用のパソコンアプリケーション「GALAPAGOS Station」で購入して転送することも可能だ。

これが「新しい当たり前」。電子書籍ならではの使い勝手

 今回は、時間の関係で、ストアの利用ができなかったため、あらかじめさまざまなコンテンツを購入設定済みの評価用端末を試用してみた。

 「デスク」と呼ばれるホーム画面は、本棚を模していて、新着の本は「未読・おすすめ」、読みかけの本は「最近読んだ本」、よく読む本は「お気に入り」、定期購読している新聞や雑誌は「定期購読」といった分類分けがされており、気になる本、読みたい本にすぐに出会える。個々のコンテンツをロングタッチすると、メニューが画面下部に表示され、その本を「未読」にしたり、「お気に入りに登録」したりできるようになっている。

 ホーム画面の下には「ブックシェルフ」「ストア」「ツール」「アプリケーション」というボタンが並び、タップすることで、それぞれにアクセスすることができる。

ホーム画面は様々な電子書籍や機能にアクセスする起点となる。ホームキーを押すことでいつでも戻ってくることが可能

「定期購読」では、定期購読している新聞、雑誌をバックナンバー含めて管理できる

電子書籍の本棚であり、ファイリングツールともいえる「ブックシェルフ」

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ホーム画面~ブックシェルフ画面

 端末内のコンテンツから「もしドラ」として有名になった今年の超ベストセラー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」を読んでみた。

 本を開くと最初は表紙が表示される。書店で見慣れたカラーのイラストだ。

 ページ送りには、いろいろな方法が用意されている。紙の本のページをめくるように、フリックの操作でもいいし、トラックボールを回転させてもいい。トラックボールを押し込んで次ページに送ることも可能だ。

フリック操作なら実際に紙のページをめくるような所作でページ送りができる

トラックボールを使うと、片手持ちでもページ送りしやすい

ページ送りの際のエフェクトは、ページめくり風以外にもスライド風切り替えが設定できる

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小説を読んでみる。縦書き/横書きの切り替えができるものもある

 送り方向は、縦書きの本は右へページをめくるので右方向フリック、横書きの本は左へページをめくるので左方向フリックと、紙の書籍を読んでいるときと違和感がないように操作が実装されている。

 数ページ送ると目次のページが出てきた。この本は「プロローグ」から始まり、第一章~八章まで続き、エピローグで終わって、あとがきでしまる。それぞれが当該箇所へのリンクとなっていて目次から直接ジャンプできる。

 本文を読み進めよう。本文は1行38文字詰め14行で…と書きたいところだが、そこは電子書籍端末であり、この表現は正しくない。

 ピンチインとピンチアウトのズーム操作で、本文の文字組はいかようにでもなる。もっとも小さくピンチインすると、このコンテンツの場合、版面は二段組みで表示される。このサイズで十分という視力の方もいるだろう。逆に、大きくすると1ページには45文字程度しか入らないくらいに大きな表示となる。これは極端にしても、そのときの体調やユーザーの視力にあわせて文字サイズを変更できるのはうれしい。

書籍の表紙。「移動バー」でページを移動することが可能

ピンチイン/アウト操作で文字サイズを変更。写真はもっとも小さい状態

こちらは最大拡大状態

 ご存じのように、電子書籍コンテンツの多くは拡大操作にあわせて、リフローと呼ばれる処理が行われる。つまり、拡大鏡でページそのものを拡大し、スクロールさせながらページ全体を読んでいくのではなく、文字サイズに応じてページ全体がレイアウトしなおされるのだ。もちろん、文字サイズを大きくすることでページ数はどんどん増えていく。だから、ユーザーがどのような文字サイズを好んだとしても、頭から順に読んで行く行為に求められるのはページをめくるだけだ。基本操作は同じなのだ。

 困るとしたら、他人と同じ本を読んでいるときに「どこまで読んだ?」と聞かれて、「○ページまでだよ」と答えることに意味がないことくらいだろうか。ちなみに、全体のどこまで読んだかを知るには、画面をタップすると画面下部に機能ボタンが表示されるので、ここから「目次/移動バー」をタップする。コンテンツ全体がバーで表示され、TopとEndのうち、どの位置を読んでいるかがわかり、ドラッグ操作で任意の位置に移動することができる。

 ちなみに、コンテンツによっては設定で横書きにもできる。これまで、紙の書籍や単行本におけるデザインは完全に固定されているものであり、それを当たり前のこととして読み手は受け入れてきたわけだが、これからは、ユーザーが読みやすいようにデザインを変更できる電子書籍が増えていくのかもしれない(ちなみにGALAPAGOS用の電子書籍は、コンテンツごとに縦書き/横書き変更やフォントサイズ変更の可否などを編集者が指定でき、変更できないものもある)。

 本体を回転させることで横位置でも表示させることができる。寝っ転がって読む場合など、方向を固定したい場合はこの機能を禁止することもできるので、状況に応じて切り替えよう。

端末を横向きにすると、本のレイアウトも自動で切り替わる。この自動切り替えは設定で無効にすることもできる

設定で文字サイズやフォント種類、画面の回転や縦書き/横書きなどを切り替えできる

縦書き/横書き切り替え、回転などは読書画面からも直接設定可能

 ページあたりの文字数、文字のサイズ、書体、縦書き、横書き、ページの方向など、本のデザインの意義が電子書籍では希薄になっていく。かつての「手紙をワープロで書くなんて失礼論議」を思い出す。今は、多くの人々が普通に携帯メールではるかに緊密なコミュニケーションを楽しんでいるのだから、こうした状況も次第に受け入れられていくことになるのだろう。これが「新しい当たり前」だ。

 さて、コンテンツを読み進めているうちに「あれっ、登場人物Nがはいていた靴のブランドはなんだっけ」などと以前の部分が気になる場合がある。その場合は、フリックやトラックボールでササッとページを元の方に戻して確認するのだが、指での操作にきちんと表示がついてくる。

 さすがに単行本一冊相当のボリュームを一気に読むのはたいへんだし、通勤通学の途中に読むとなると、何度も読書を中断することになる。基本的に、自分だけが使っている端末なら、スタンバイとそこからの復帰を繰り返しながら使うことで、以前の状態が再現される。とはいうものの、このメディアタブレットには、多くのコンテンツを格納しておける。ストアでは雑誌の定期購読なども可能だ。また、人によっては複数のコンテンツを同時並行で読み進めるタイプの読書家もいる。そういうケースには、「しおり」と「マーカー」を上手に使って自分の読書状況を管理していくことを薦めたい。

 あるコンテンツを、自分がどこまで読んだのかをマークするのがしおりだ。ページをタップして下部に表示されるボタンから「しおり挿入」をタップすると、その位置にしおりが挿入される。一コンテンツあたり6つのしおりを挿入できるようになっている。

 本機では基本的に、他のコンテンツを開いたりしても、以前読んでいたコンテンツを開いた場合には、最後に読んでいた位置が開く。紙の本におけるしおりの役割はこれで十分だ。本機の「しおり」機能は、どちらかというと6つのしおりを使えることを活かして、とりあえず気になった箇所や、あとで改めて参照するだろう箇所などにはさんでいく「あとで読む」的な使い方が良いのかもしれない。

 マーカー機能も用意され、文中の文字列をマーキングすることもできる。特定の文字列をマーキングでき、しかもあとでしおり/マーカーリストで一覧できるため、重要だと思われる表現や気に入った台詞などをマークしておくと、あとで見返す楽しみが増えるだろう。

 「しおり」や「マーク」をつけた本は、「ブックシェルフ」の「しおり/マーカー」で一覧できる。読書の進度管理や読み返しのリマインダーとしてうまく活用していきたい。

「しおり」は、そのものずばりのしおり機能

気になった部分や覚えておきたい箇所に線を引く「マーカー」

しおりをはさんだり、マークした箇所を一覧可能。登場人物の多いミステリ小説などで、人物の初登場シーンにマークしておくと「あれ、この人誰だっけ…」となったときに便利かもしれない

しおりをはさんだりマークした本は「ブックシェルフ」で一覧することができる。「そういえばこの本は、まだ続きを読んでいなかったな…」「マーキングしていた気になる箇所を、あらためて検討してみよう」というような使い方ができる

電子辞書を内蔵しているので、文中の不明な単語をすぐに検索することができる

基本的なところだが、当然、本文検索機能も完備

端末サイズにあわせて表示を調整。リフローのメリット

 基本的に文字だけで構成される小説のようなコンテンツについては、リフローによって5.5型という画面サイズに応じた表示ができる。紙の本との比較でも読みにくさは感じなかった。「もしドラ」を読み終わるのに3時間はかからなかったので、読むスピードも似たようなものだと思う。

 問題は、雑誌のように、ページ単位、または見開き単位で、丁寧なデザインのレイアウトで構成されているコンテンツだ。

 こうしたコンテンツは読み手の視野の中にページ、または見開きがあることを前提としてデザインされている。そして、読み手は気になる部分の文字コンテンツを注目して読み進めることになる。

 だから、個人的には紙の雑誌や新聞のコンテンツの電子版は、実際のサイズと同等か、それ以上でないと意味がないと思っていることもあった。

 ところが、TSUTAYA GALAPAGOSで提供されている雑誌コンテンツの中にはリフローに対応しているものもあり、5.5型のメディアタブレットでも意外と楽しめる。具体的には、雑誌コンテンツのページ上部に目立たないようにボタンが表示されていて、それをタップすることで、文字部分だけを通常の書籍のような形式で読み進めることができるのだ。当然リフロー対応だ。

 もちろん、ページ全体をズームしてスクロールして読むこともできるが、ページ全体を見渡して、おもむろに本文を読むような週刊誌スタイルのコンテンツでは、この方式の使い勝手はなかなか良い。

 今後も、従来の紙の雑誌を、どのように電子化していくのかというさまざまな試みが模索されていくのだろう。デザインや装丁に力を注いできたアートディレクターには、こうした分野での活躍を期待したいところだ。

レイアウト表示とリフロー表示、両方の情報を内蔵した電子書籍もある。レイアウト表示時に左上のマークをタップすると…

文字部分だけの表示に切り替わる。文字サイズの変更も可能

動きや音声を組み合わせた新しいかたちの書籍も登場してくるだろう

あらためて「本を読もう」と思わせる端末

 ということで、短い期間の試用だったが、メディアタブレット「GALAPAGOS」は、電子書籍元年における最初の製品のひとつとして、十分に手応えを感じる出来に仕上がっていた。5.5型という画面サイズは、スマートフォンほど小さくなく、タブレットほどは大きくないという絶妙なモビリティが強みだ。大きすぎず、小さすぎずというのは重要な要素だ。バッテリでの駆動時間は約7時間。毎日の持ち歩きには毎日の充電が必要だが、それは携帯電話も同じだ。特に問題を感じることはないだろう。

 Twitterのタイムラインばかり追いかけてばかりいないで、移動中には昔みたいに本をきちんと読んでみようかと思わせる、そんな魅力を持った端末といえるだろう。

Webブラウザーも搭載

文庫には文庫カバー、GALAPAGOSにはGALAPAGOSカバー、ということで、サードパーティーからケースも発売。端末により愛着が増すはずだ。写真のケースは「PRO工房」ブランドで製作していた「エクストリームリミット社製

(山田祥平)

 

■関連情報
□シャープメディアタブレットストア http://mtstore.sharp.co.jp/
□メディアタブレット 製品情報 http://www.sharp.co.jp/mediatablet/
□GALAPAGOS ホームページ http://www.sharp.co.jp/galapagos/

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