フュージョン・コミュニケーションズがスマホ向けに提供するIP電話サービス「IP-Phone SMART」をご存じだろうか。今春、正式サービスが始まったばかりだが、050から始まる自分専用の電話番号を持てて、スマホのアプリで簡単に導入でき、しかも基本料は無料で通話料も格安という、いま注目のIP電話サービスだ。

 「友だちとはメッセージングサービスで連絡とるからあまり通話しないし、いまの通話料金で満足しているからIP電話とか必要ないよ」と考えている人も少なからずいるかもしれない。だとしても、お店の予約などで電話が必要な機会は以外とある。そんなとき、050電話番号のIP電話サービスを使えば、コストを最小限にできる。

 IP-Phone SMARTなら、月々の基本料金が0円なので、登録しておくだけでは支払いが発生しない。もちろん通話料金の単価も安いので、毎月そこそこの通話料金を支払っている人にとってもお得なサービスだが、基本料金がかからないため、毎月100円分くらいしか通話しない人でも、十分に利用価値のあるサービスとなっている。

 今回はこのIP-Phone SMARTについて、概要を紹介しつつ、使用レビューをお届けする。

 

月額基本料0円! そんなのありえる?

 IP-Phone SMARTの最大の特長は、なんといっても月々の基本料が「0円」であることだ。維持費なしで、通話を発信するときの通話料金だけで利用できる。着信はもちろん無料。発信しないなら、完全に無料で050電話番号を維持できてしまう(ただし約款によると、12ヶ月課金がないと自動解約になることもあるらしい)。


※1.同じクレジットカードで複数番号を取得する際、または以前にご利用されていたカードを再登録する際は番号発行手数料が1回につき500円
※2. 転送先の電話までの通話料はFUSION IP-Phone SMART契約者負担

 通話の音声はデータ通信でやりとりするので、データ通信の料金はかかるが、スマホユーザー必須の定額データプランを契約していれば、追加料金はかからない。自宅などのWi-Fiでも利用可能だ。

 「なんで月額0円でサービス提供できるの?」と疑問に思ってしまうが、これには当然、理由がある。IP-Phone SMARTを提供しているフュージョン・コミュニケーションズは、NTTのマイライン開始当初から、VoIP技術を使ったサービスなどを提供する、いわばIP電話の老舗的な事業者だ。すでにIP電話のシステムを自社内に持っており、しかも各種システム開発も可能な限り自社内で行なって言えるため、運用コストを下げることができている。結果、(それほど)無理をせずとも、050電話番号を無料でユーザーに発行できているというわけ。しかも、電話番号が発行されると、当然生じるのがユニバーサルサービス料を、IP-Phone SMARTではフュージョン・コミュニケーションズが負担している。

 ユーザーが支払うのは、電話をかけたときにかかる通話料だけ。この通話料(およびかかってきたときの接続料)だけで収益を上げるのが、IP-Phone SMARTのビジネスモデルというわけだ。IP電話の老舗フュージョン・コミュニケーションズならではのサービスである。

 では通話料が高いかというと、そんなことはない。国内の固定電話・ケータイ・PHSいずれにかけても30秒で8.4円。各キャリアの一般的なスマートフォンでの通話料(30秒で21円程度)に比べると半額以下だ。また、欧米やアジアなどの主要な国・地域への国際電話については、消費税がかからないため、30秒で8円と、国内通話よりも安く設定されている。

 IP-Phone SMARTなどフュージョン・コミュニケーションズのIP電話サービスおよび提携プロバイダーのIP電話サービスとの通話は、無料で可能だ。フュージョン・コミュニケーションズのIP電話を使う店舗や企業もけっこう多いのが地味に嬉しいポイントともなっている。

通話相手 通話料
国内の携帯電話/PHS
一律
8.4円/30秒
国内の固定電話
有料の050番号
8円/30秒
IP-Phone SMART同士
24時間通話無料
0円

 IP-Phone SMARTでは専用の機器は必要なく、スマートフォン上のアプリから利用できる。このため、ユーザー側の機器のレンタル料金などもかからない。スマホ向けの公式アプリも当然無料だ。すでにiOSかAndroidの端末を持っているユーザーにとっては、初期費用一切なしで利用を開始できる。これも大きな魅力だ。

 

IP-Phone SMARTが活きるのはこんなとき!

 広告記事なのにいきなりこんなことを書くと怒られてしまうかも知れないが、家族や友人との連絡には、IP-Phone SMARTではなく、ケータイの同キャリア間無料通話や各種メッセンジャーアプリなど、無料で利用できる手段を使った方が良いと思う。IP-Phone SMART同士でも無料通話できるが、すでに友人や家族同士で無料通話を使える環境があるなら、IP-Phone SMARTを使う必要性は低い。

 IP-Phone SMARTが役に立つのは、無料で通話できる手段を確保できない相手との電話だ。

 たとえば飲食店や美容院の予約、デリバリーピザの注文、家電量販店の在庫確認、あまり親しくない知人への連絡、仕事上、一時的に必要な相手先への連絡などなど、いろいろなケースが考えられる。こういった電話は、たいてい通話時間も短いので、1回あたりの費用はたかが知れているが、回数を重ねるとばかにならない。しかも、スマートフォンの音声通話プランは、フィーチャーフォンのころに比べて全体的に割高になっているので、毎月の請求を見ると「こんなに通話したっけ!?」という事態にもなりうる。

 上記のような細かい通話のすべてを、キャリアの21円/30秒ではなく、IP-Phone SMARTの8.4円/30秒で済ませられれば、それは大きな違いになってくる。たとえば、1分の通話を月に30回すると仮定すれば、21円/30秒なら月額1260円。だが8.4円/30秒なら504円で、約60%の節約。さすがに市内通話の単価では固定電話に負けるが、しかし通話機会が少なければ、月額基本料金の差で、IP-Phone SMARTの方が安く済むことも多いはずだ。

 

固定電話として、仕事用番号として、海外利用も……こんな活用法もオススメ

 IP-Phone SMARTは固定電話代わりにも使いやすい。そもそも最近はケータイを持っているから、家に固定電話を引いていない人も多いが、家族と同居しているとなると、家族の誰もが使える「家の電話」があった方が良い。たとえば宅配便の在宅確認や親戚からの電話など、「家にいる誰か」が受ければ良い電話は、個々人のケータイよりも、「家の電話」の方が使いやすいはずだ。しかも、受けるだけなら費用もかからない。

 IP-Phone SMARTを「家の電話」として使うときは、機種変更で余ったスマートフォンなどをWi-Fi接続することで再利用できる。従来の固定電話に比べると、月々の基本料金がかからないメリットに加え、スマホ上のクラウド同期する電話帳が利用できるなどのメリットもある。

 自営業やSOHO環境でも活用できそうだ。ケータイの電話番号を個人用にして、IP-Phone SMARTの電話番号を仕事用にしておけば、公私で電話番号を別にしつつ、ひとつのスマホで両方の電話を受けることができる。複数人で仕事をしているならば、代表の電話をIP-Phone SMARTにするのも良いだろう。例えば担当者が休暇を取っても、代わりの担当者が自分のスマホでログインして引き継げる。営業時間中は共有端末でログインしておいて、営業時間外は責任者が自分のスマホでログインして着信できるようにする、といった使い分けもできる。


 海外で使うのも便利だ。現地のプリペイド回線などでデータ通信回線さえ確保できれば、海外でも同じ電話番号で着信でき、高額なローミング料金ではなく、国内と同じ安価な料金体系で利用できる。旅行のたびに現地でプリペイドSIMカードを調達しても、同じ電話番号で着信できるのも強みだ。

 少々極端な使い方としては、格安MVNOのデータ専用回線と組み合わせるパターンも考えられる。たとえばフュージョン・コミュニケーションズは、楽天ブロードバンドのブランドでMVNOサービスを提供している。こちらのLTEの最安プランは、月200MB(10月からは300MB)までの高速通信付き、月の超過後は最大100kbpsで月額875円の「エントリープラン」だ。また、月500MBまでの高速通信付き、超過後は最大256kbpsで月額945円の「エントリープラスプラン」もある。これらはいずれも、制限後の通信速度でもIP電話が可能であり、IP-Phone SMARTを組み合わせれば、月額1000円未満で音声通話も可能な「だいたいスマホ」の完成だ。毎日外出先で使うには容量が少なめだし、緊急通報やフリーダイヤルへの発信ができないので、メインに使うにはちょっと心許ないところもあるが、しかしコレで十分という人も少なくないだろう。

 タブレット端末で使うというのも、実は悪くない。多くのタブレットはスピーカーだけでなくマイクも内蔵していて、ハンズフリーで通話しやすいようにデザインされている。公式アプリのSMARTalkはエコーキャンセラーやノイスキャンセリングの機能も搭載しているので、音がおかしくなることもない。試しにNexus 7(初代)で試してみたが、卓上に置いたまま、ハンズフリーで普通に通話ができた。これを「家の電話」として使うのも良さそうだし、3G対応のNexus 7をMVNOで運用するのも良いだろう。

 

まずは登録! Webサイトから簡単

 では、さっそくIP-Phone SMARTに登録してみよう。IP-Phone SMARTの登録は、Webサイト上で行なう。パソコンからも登録手続きを行なえるが、スマートフォン向けページも用意されている。


まずはWebサイトから申し込み

 登録には、メールアドレス(アカウント名になる)と支払いに使うクレジットカード(日本国内発行のものに限る)、そして日本国内の住所が必要。普通のオンラインサービスと同様に、簡単に登録できる。

 登録後、すぐに確認のメールが送られてきて、Webページ上で自分のIP電話(SIP)アカウントを確認できる。IP電話を使うには、このSIPアカウントが必要になる。なお、番号を開通させ、着信できるようになるまでは、登録から1時間くらいが必要だ。逆に言うと1時間やそこらで電話番号を発行できるのだから、便利な世の中になったものである。

 1つのクレジットカードあたり、最大5回線までの050電話番号を取得可能となっている。1回線目は無料だが、2回線目以降には取得時に手数料が発生する。また、一度電話番号を取得すると、解約しても最大5回線の制限内でカウントされてしまうので注意しよう。

 

公式アプリ「SMARTalk」、無料で使えて多機能でやっぱり便利

 IP-Phone SMARTは、「SIP」というIP電話の標準規格を使ったサービスとなっている。汎用アプリを使えば、スマートフォンはもちろんWindowsやMacといったパソコンからも利用できるが、フュージョン・コミュニケーションズでは、iPhone/Android向けに公式アプリ「SMARTalk」を無料で提供している。IP電話アプリ開発に定評のあるAcrobits社と協同開発されており、スマホから利用するときは、この「SMARTalk」での利用がおすすめだ

 「SMARTalk」では、IP-Phone SMARTの登録後に発行された自分のSIPアカウント(050を抜いた電話番号)とSIPパスワードを設定する。設定に必要なアカウントなどは、IP-Phone SMARTのWebサイトにログインすると確認できる。ちなみに、Webサイトにログインするためのアカウント(メールアドレス)とSIPアカウント(電話番号)は別なので注意しよう。


SMARTalk初回起動時にアカウント入力画面が表示される



アカウント情報は公式WebサイトのMYページから確認できる。マイページはこちらからログインしよう。赤丸で囲ってある部分を確認し、SMARTalkに入力する

一度設定すれば、あとはオンラインなら自動で接続してくれる。

 「SMARTalk」アプリで発信する際は、頻繁に使う連絡先のための短縮ダイヤル、発着信履歴、キーパッドのほか、スマートフォンのアドレス帳からも発信できる。画面の構成も使い勝手も、スマホの一般的な通話アプリとほぼ同じだ。SMARTalk内からIP-Phone SMART経由ではない通常の電話発信も可能なので、スマホのデフォルトの通話アプリの代わりに使用することもできる。通話はスマホのレシーバースピーカーとマイクだけでなく、イヤホンマイクやBluetoothヘッドセットなどでも可能だ。


  • SMARTalk(iOS版)の画面。フラットなデザイン

  • 発信時、「発信」ボタンを長押しすると、IP-Phone SMARTを使わずにキャリアの回線で発信もできる

 ちなみに、電話番号を持つ相手にならば、ほぼ誰とでも通話できるが、050のIP電話の制限として、「110や119などの緊急電話番号」、「177(天気予報)と117(時報)」、「0120などのフリーダイヤル」、「0990のダイヤルQ2」には発信できない。データ通信専用端末で利用するときは、緊急通報できないことに注意が必要だ。

 着信すると、アプリを起動していなくても、着信音が鳴って通知が表示される。プッシュ通知を利用するため、アプリを常時起動しておく必要がなく、スマートフォンのバッテリーを節約できるのがメリットだ。


  • 画面オフの状態で着信すると、ロック画面に通知が表示。スライドすると応答できる(iOS版)

  • 起動中に着信が来ると通知センターのバナーに表示(iOS版)

 通話の音質は、固定電話同士に比べると劣るかな、という感じだが、ケータイの通話音質と比べると大きく劣るものではない。申し込み前の注意事項に、「3G環境では十分な通話品質を確保できない場合がございます」とあるが、正直、3G環境でもあまり差は感じられなかった。原理的には3G回線だと通信遅延が大きくなり、声が遅れて聞こえてくるはずなのだが、その遅延もあまり感じなかった。混雑している場所など、通信環境が悪いと影響が出そうだが、少なくともLTEでつながれば問題はなさそうだ。

 ちょっと技術的な話だが、音声をデータ化するコーデックは手動選択も可能で、デフォルトではWi-Fi接続時には高音質なG.711、LTE/3G接続時には圧縮率の高いiLBCというコーデックを使うように設定されている。iLBCは32kbpsあれば通話可能とのことだ。

音声コーデックの設定変更も可能……だが、通常はいじらないほうが良いだろう

 IP-Phone SMARTから電話をかけたときは、自分の050電話番号が相手側に発信者番号として通知されるので、相手が非通知番号拒否などを設定していても、普通の電話と同じように通話できる。これはけっこうありがたいポイントでもある。

 付加機能としては、留守番電話機能を無料で利用できる。録音されたメッセージは、最大10件が保存され、Webサイト上で再生できるほか、メールに添付して転送してもらうこともできる。普通のケータイの伝言サービスよりよっぽど便利だ。このほかにも着信転送機能も利用できる。応答できないとき、090の番号に転送することも可能だ。さらに、意外に要望が高いらしい「通話中の録音」機能も備えている。


留守番電話の録音はMYページから聴くことができる。スマートフォンからアクセスももちろん可

 


おなじくMYページからは着信転送の設定や留守番電話の設定が可能。不在着信をメールで通知し、
さらに留守電がある場合はそのメールに音声データを添付して送ってもらうことも


通話中はいつでも録音を開始/停止できる。
ちなみに留守番電話とは違い、保存されるのは端末本体となる

 

興味を持ったらまずは試してみて!

 IP-Phone SMARTは、とにかく簡単に導入できるので、気軽に登録して試してみて欲しいと思う。毎月、そこそこの金額を通話料金に払っている人ならば、決して無駄にならないサービスだし、そうでない人でも、やはり損はしないサービスだ。基本料金無料で初期費用が必要ないのに加え、最初に100円分の無料通話も付与されるので、とりあえず申し込んでみても良いだろう。

 普通のケータイの音声通話機能の代わりに使う以外にも、IP-Phone SMARTの応用の幅は非常に広い。本記事でもいくつかの利用シーンを挙げてみたが、ユーザー次第でもっといろいろな応用方法があることだろう。本記事を読んで、「こんな使い方すると便利かも」とか思いついた人は、是非とも気軽に試して欲しい。

(白根雅彦)