ARROWS V F-04Eは、NTTドコモから今年の冬モデルとして登場する、クアッドコアのCPUを搭載したハイスペックモデルのAndroidスマートフォンだ。おサイフケータイや赤外線通信、ワンセグといった国内向け機能や防水にも対応し、NTTドコモのスマートフォン向け放送サービス「NOTTV(ノッティーヴィー)」や、次世代の標準的な近距離無線通信技術として期待されている「NFC」もサポートするなど、いわゆる「全部入り」のスマートフォンだ。

 とはいえ、以前は国内向け機種ばかりがサポートしていた、おサイフケータイやワンセグ、赤外線通信といった機能は、最近では海外メーカーも積極的に対応するようになり、ハイスペックモデルでこれらの機能は珍しいものではなくなりつつある。また、クアッドコアも半年前の夏モデルでは富士通のみが搭載していたのに対し、冬モデルではハイスペックモデルの多くがクアッドコアCPUを搭載。こうしたカタログ上での機能はほぼ横並び状態で、スペックだけでスマートフォンを選ぶのは難しい時代になっている。

 しかし、こうしたハイスペックな機能はもちろん、実際に購入してはじめて体感する「使いやすさ」も追求しているのがF-04Eの魅力。カタログスペックだけではわからない、使いやすさに対する富士通の“こだわり”を前編、後編に渡ってレポートする。

docomo with series ARROWS V F-04E

 使いやすさを最初に体感できるのが、F-04Eの本体サイズ。F-04Eでは、1280×720ドットでHD表示が可能な4.7インチのTFTディスプレイを搭載。1280×720ドットのディスプレイはスマートフォンとしてトップクラスの解像度だが、解像度や画面が大きくなると当然ながら本体も大きくなってしまい、片手で扱うには難しいサイズにもなってくる。

 しかし、F-04Eは表示モジュールの小型化や防水テープ狭幅化といった独自の技術により、液晶ディスプレイ両端の額縁を狭めることで、約65mmという本体幅を実現。前モデル「ARROWS X F-10D」と比較すると画面サイズが0.1インチ広くなりながらも本体幅は約2mm縮まっている。また、同じドコモ冬モデルのラインナップで比較しても、同じ4.7インチクラスではもっとも幅が狭く、4.3インチクラスの製品と同等の幅と、画面の大きさを感じさせないコンパクトな本体サイズになっている。

 実際に手にした印象も、画面サイズの割には片手でしっかりとホールドしやすく、親指も画面の反対側まで十分に届くので文字も入力しやすい。高解像度な画面と持ちやすい本体幅は、カタログ値はもちろんのこと、実際に触ってみるとより体感しやすいポイントだ。

4.7インチの大画面ディスプレイを搭載しながら、額縁を狭めることで、本体幅約65mmというコンパクトさを実現。片手でしっかりとホールドしやすく、画面の大きさを感じさせないサイズになっている

 購入を検討している時点で体感することが難しいスペックが、本体外装デザインの強度。購入したてのころは新品同様で輝いていた端末が、ポケットや鞄に出し入れを繰り返しているうちに、すこしずつ塗装が取れたり傷がついたりしてしまうという経験は、携帯電話を日常的に使ったことがあるユーザーなら一度は体験したことがあるだろう。

 そうした「購入後のつかいやすさ」もF-04Eは追求している。ディスプレイには耐傷性に優れたコーニング社の特殊強化ガラスを採用し、ディスプレイの傷を防止。さらに表面には、「サラサラコートディスプレイ」と呼ばれる表面処理が施されており、親水性、親油性が高く、指の脂がついた場合もディスプレイになじむことで指紋や皮脂が目立ちにくい仕様になっている。

 使っていくうちに剥がれやすい塗装についても、傷がつきにくく汚れや指紋がふきとりやすいという「ウルトラタフガードplus」を採用。前モデルのF-10Dで採用していた「ウルトラタフガード」は通常塗装と比較して7倍の耐力だったのに対し、ウルトラタフガードplusでは耐力が10倍に向上しているという。

 実際の使用感も、日常的にポケットからF-04Eを取り出したり画面を操作している範囲ではさほど指紋の残りなどは気にならない。飲み会の後などで手に脂がまみれているような状態では脂も目立つが、その時もさっとディスプレイや本体を拭くだけで奇麗な状態に戻る。さすがに塗装の耐久性は試せなかったが、従来製品よりもさらに耐久性が向上しているというのは、長年使うスマートフォンとしては心強い。

「さらさらコートディスプレイ」と呼ばれる表面処理により、指紋や皮脂が目立ちにくくなっている 美しい塗装をキープする「ウルトラタフガードplus」により、傷がつきにくく、塗装も剥がれにくいという
背面に搭載されているスマート指紋センサーは、押すことでスリープ解除、なぞることでロック解除ができる

 本体に搭載されたボタン類も、スマートフォンの使いやすさを考える上で重要なポイント。F-04Eの特長は、富士通端末独自の機能でもある、背面に搭載されたスマート指紋センサー。複雑なパスワードを入力することなく、指でなぞるだけでロックを解除できるスマート指紋センサーの魅力は、後編で詳しくお伝えする予定だが、このスマート指紋センサーは、本体の「使いやすさ」という面でも一役買っており、スリープ解除の際に電源ボタンを押す以外にこのスマート指紋センサーを1回押すことでもスリープが解除できるようになっている。

 F-04Eを含めたAndroidスマートフォンでは、電源ボタンが本体側面か本体上部に配されているのがほとんどだが、電源ボタンが本体の高い位置にある場合、指を伸ばしたり本体を持ち替えたりして電源ボタンを押す必要があり、そうした持ち替えの際に持ち手が不安定になってスマートフォンを落としてしまう、という危険性もある。

 その点、背面のスマート指紋センサーを押すだけでスリープ解除できるF-04Eは、本体を片手でしっかり包み込み、本体裏側を人差し指で押すだけで、安定した持ち方でスリープ解除が可能。スリープ解除はスマートフォン利用時で頻度の高い操作だけに、本体をしっかりホールドした状態で利用できる便利さは嬉しい。また、背面中央にあるため、右利き、左利きどちらでも同じように扱えるボタン配置は、左利きのユーザーにも嬉しいポイントだ。

F-04Eにプリインストールされている「DEMONS' SCORE(デモンズスコア)」体験版をプレイ。非常に快適にプレイでき、クアッドコアCPUのハイスペックさを体感できた

 本体スペックでは、前モデルのF-10Dに引き続きクアッドコアCPUとして「Tegra 3」を搭載。クアッドコアCPUは4つのCPUコアを搭載することで、動画やゲームといった重い処理を必要とするアプリも高速なレスポンスを実現できる。さらに、PCのグラフィックメモリで知られるNVIDIAの「GeForce」テクノロジーを搭載したGPUも組み込んでいるため、高速描画や解像度の高いグラフィックのゲームも快適にプレイできる。

 F-04Eには、クアッドコアの性能を体験できるアプリとして、スクウェア・エニックスの新作ゲーム「DEMONS' SCORE(デモンズスコア)」体験版をプリインストール。美しいグラフィックが特長のリズムアクションゲームで、体験版では操作を学べるチュートリアルのほか、ステージが2つ収録されている。

 大容量アプリのためゲーム開始までの読み込みにはやや時間がかかるものの、ゲーム自体は非常に快適。キャラクターが高速に進んでいくステージもコマ落ちすることなく滑らかに表示され、クアッドコアCPUのハイスペックさを体感できる。ただし難易度は非常に高く、チュートリアルが終わった程度ではステージのクリアは難しい。体験版ながらも十分なやり込み要素を備えている。

 クアッドコアというとハイスペック性ばかりが注目されがちだが、実はバッテリーの持ちを向上するための低消費電力性も重要な機能の1つ。Tegra 3では4つのCPUコアのほか、CPUの能力を下げるとともに低消費電力性を向上する省電力コアを搭載。文字入力など高い処理性能を必要としない操作では、省電力コアが動作することでバッテリー消費を抑えている。また、通常のアプリでもWebサイト閲覧といったクアッドコアCPUを必要としないようなシーンでは、4つすべてのCPUを動作せず、1~3までのCPUを必要なだけ動作する仕組みになっており、常にハイパフォーマンスでの動作を行なわないことで、電池持ちを向上させている。

 クアッドコアCPUに加えてチェックしておきたいのがメモリ容量。メモリ容量が大きければ大きいほど容量が大きなアプリを起動したり、アプリを同時起動した時も快適に動作できる。F-04Eのメモリ容量は、スマートフォン最大クラスの2GBで、ドコモのハイスペックモデルに位置付けられる「NEXT」シリーズはすべて2GBを搭載するものの、「with」シリーズではF-04Eのほかに1機種のみ。同時にいくつものアプリを起動できるのがAndroidスマートフォンの魅力なだけに、メモリ容量の大きさは非常に嬉しいポイントだ。

 ファイルやアプリを保存するための内蔵ストレージ容量も64GBとドコモ冬モデル最大の容量を搭載。20MB程度のアプリ容量なら約2,750本分、10MbpsのフルHD対応動画は約11時間、1300万画素の最高画質で撮影した写真は約5万枚もの保存が可能。容量を気にすることなく写真を撮ったりファイルを保存できる。外部ストレージも最大64GBのmicroSDXCカードに対応している。

内蔵ストレージ容量64GBは、ドコモ冬モデルで最大容量となる。表の数値は、ROM空き容量を50GBとした場合の理論値。実際の保存時間や枚数は、利用条件により異なる

 ただし、microSDカードで容量を拡張した場合、データの保存領域自体は増えるものの、アプリによってはSDカードに保存できないものもあるため、内蔵ストレージとまったく同じ感覚で利用できるわけではない。また、取り外しができるmicroSDカードの場合、紛失した際にせっかく本体をパスワードでロックしていても、microSDカードに保存したデータを盗まれてしまう、という危険性もある。セキュリティ面でも内蔵ストレージに好きなだけファイルを保存しておける大容量さは重要なポイントだ。

取り外しが可能な、2420mAhの大容量バッテリーを搭載

 もう1つの重要な「大容量」がF-04Eのバッテリー容量。前モデルのF-10Dは1800mAhのバッテリーを搭載していたが、F-04Eは本体が小型化されたにもかかわらず2420mAhという大容量バッテリーを搭載。ドコモの冬モデルでは最大クラスの容量となっている。

 どれくらいバッテリーが持つかの実験として、画面輝度を最低にした状態で無線LANとGPSをオフにし、LTE回線でTwitterクライアントの新着確認を3分単位で実施。同時にフルHD動画を連続再生したところ、4時間30分で電池が残り少ないアラートが表示され、5時間30分でバッテリーが空になった。常にLTEで通信し続けつつ動画を再生するというのはかなりハードな利用状況だが、それでも5時間以上もの連続起動が可能だったのはさすが大容量バッテリーといったところ。利用状況にもよるが、メールやWeb閲覧といった基本的な利用が中心であれば利用時間はもっと伸びるだろう。

「NX!エコ」は、3つのモードから設定可能 エコレベルの設定は、3モード+カスタマイズ設定が選択できる

 さらにF-04Eでは、バッテリー動作時間を向上させるための「NX!エコ」機能も搭載。設定時間帯で自動的に起動する「タイマーエコモード」、設定した電池残量を下回ると起動する「電池残量エコモード」、すぐに起動する「今すぐエコモード」の3モードが用意されている。さらに、それぞれのモードに対してエコレベルの設定が可能で、画面を暗くするだけの「お手軽エコモード」、CPUの動作を抑える「通常エコモード」、無線LAN、Bluetooth、GPSの通信もオフにする「しっかりエコモード」の3種類から選択が可能なほか、細かい項目を自由にカスタマイズできる「オリジナルエコモード」も選択できる。

 個人的なオススメはCPU動作を抑える「通常エコモード」。CPU動作を抑えるというと使い勝手が悪くなるのでは……、という心配もありそうだが、もともとクアッドコアCPUでハイスペックなF-04Eでは、CPU動作を抑えても十分に快適な操作が可能。ノートPCも電源がない外出時などは省電力設定に切り替えてバッテリー駆動時間を伸ばすように、スマートフォンも設定を切り替えることで長時間の利用が可能だ。

 それでも電池容量が心配……、という人に見逃せないのが、バッテリーが本体一体型ではなく取り外しが可能なこと。バッテリーが本体一体型のスマートフォンは、本体サイズをより小さくしたりバッテリー容量を向上できるというメリットがあるものの、バッテリーが空になると外部から給電しない限り利用できないというデメリットもある。その点取り外し可能なバッテリーであれば、別途充電したバッテリーを持ち歩くことで、余計なケーブル接続を意識せず利用時間を向上できる。外出利用が多く電池持ちが気になるユーザーには目立たないながらも重要なポイントだ。

 Androidスマートフォン操作の基本となすホーム画面は、NTTドコモ標準の「Palette UI」のほかに、富士通独自の「NX!ホーム」を搭載。NX!ホームについて詳しくは後編で取り上げるが、最大の特長は高速なレスポンス。ホーム画面の移動やアプリ一覧表示などの操作感が非常に滑らかで快適な操作が可能だ。

 解像度の高さを活かした広いホーム画面は、スクリーンの枚数をカスタマイズでき、最小1枚、最大で7枚まで自由にカスタマイズ可能。さらにAndroid 4.0で搭載したフォルダー機能もNX! UIではサポートしており、ホーム画面のアプリを重ね合わせることで複数のアプリを1つのフォルダーで管理できる。アプリケーション一覧もタイル表示やリスト表示の選択、アプリ表示順を名前やカテゴリ、利用履歴でソートが可能なうえ、アプリアイコンの表示パターンも、横4×縦4~横5×縦6まで変更が可能だ(カテゴリ順表示以外)。シンプルながらも自分の使いやすさに合わせてカスタマイズできる柔軟な機能が備わっている。

「NX!ホーム」のホーム画面 「NX!ホーム」のアプリ一覧画面 アプリ一覧画面のアイコンの表示パターンを変更できる。これは、最大表示の[横5×縦6]表示

裏面照射型CMOSセンサーによる1310万画素カメラを搭載

 カメラは、「Exmor(エクスモア)」のモバイル機器向けCMOSセンサー「Exmor R for mobile」に、高感度や低ノイズを特長とする富士通の画像処理エンジン「Milbeaut(ミルビュー) Mobile」を搭載。1310万画素の裏面照射型CMOSセンサーにより、最大4128×3096ピクセルの静止画と、フルHD動画の撮影が可能だ。

 カメラについても、ハイスペックながら綺麗な写真を簡単に撮影できるよう、使いやすさを重視した機能を搭載。撮影は画面に表示されるシャッターボタンのほか、本体上部の音量ボタンを使ってデジタルカメラのような持ち方で撮影したり、画面のタッチした部分にピントを合わせて自動でシャッターを切ったりと、自分の好みの撮影方法を選択できる。

 カメラの起動と撮影間隔は最短0.5秒と高速で、実際に使ってみても1秒も経たずにカメラアプリが立ち上がり待たされる感がない。画像の保存も非常に高速で、最大サイズで撮影した際でもすぐに次の写真を撮影できる。画像の保存に時間がかかってシャッターチャンスを逃してしまう、という経験があるユーザーにはとても魅力的な機能だ。

 撮影機能も非常に豊富。光の量が少ないため撮影が難しい夜景を撮影するための「スーパー夜景モード」では、従来の「夜景モード」よりも手ぶれやノイズによる画質劣化を抑えることができる。また、シャッターボタンを押している間写真を連続で撮影し続ける「無限連写」、シャッターを切ると自動で7枚の写真を撮影し、一番よく撮れている画像を選んでくれる「ベストショットセレクト」といった便利な機能に加え、エフェクト機能も多数用意。ハイダイナミックレンジ(HDR)合成やパノラマ撮影はもちろん、画面の1色だけをカラーにして残りをモノクロにする「クロマキー」、写真をジオラマのように加工する「ジオラマ」など、楽しいエフェクトが多数用意されている。

F-04Eによる撮影サンプル。4128×3096ドット、リンク先の画像は無加工
[エフェクト:クロマキー]の撮影サンプル。4128×3096ドット、リンク先の画像は無加工 [エフェクト:ジオラマ]の撮影サンプル。4128×3096ドット、リンク先の画像は無加工

 スマートフォンとしての基本機能である通信面も、NTTドコモ冬モデルで対応が始まったドコモ LTE Xiの高速化に対応し、一部エリアでは下り最大100Mbpsの速度で通信できる。テザリングも最大8台まで接続できるため、外出時のPC利用が多いユーザーも安心だ。

 ハイスペックかつ充実した機能を持ちながらも、手に取りやすい本体サイズや操作しやすいボタンの配置、ファイル容量を気にしないですむ大容量ストレージ、バッテリーの持ちを気にせず使える大容量バッテリーとNX!エコなど、実際に購入してからの使いやすさも重視したF-04E。ハイスペックと使いやすさを両立したという点で、今期冬モデルでもっとも注目の1台と言える。

 そしてF-04Eの使いやすさはこれだけではない。富士通独自の「ヒューマンセントリックエンジン」により、使う場所や使う人に応じた使いやすさを実現する機能や、スマート指紋センサーを活用した多彩なセキュリティ機能もF-04Eの魅力の1つだ。後編ではこれらヒューマンセントリックエンジンを活用した機能やセキュリティ面を中心にレポートする。

(甲斐祐樹)


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