近年、消費電力の減少や利用効率の改善、さらに安定化や管理コストの軽減を目的としたサーバやネットワーク環境の見直しが企業で積極的に進みつつある。

 大企業などではブレードサーバや仮想化技術を利用したサーバ統合などが1つのトレンドとなりつつあるが、情報システム部門や専任の管理者が存在しない中小企業やSOHO環境においても、既存のサーバをよりエネルギー効率の高い製品や運用管理の手間とコストが軽減できる製品へのリプレースが目立っている。

 これまで、中小・SOHO環境のPCサーバは、より高いスペックを低い価格で導入できる製品がもてはやされてきた。つまり、初期導入のコストが重視される傾向が強かったわけだ。

 しかし、この傾向は、最近では別の視点へと移り変わりつつある。消費電力などの運用コストをどれくらい押さえられるか、数年間のスパンで見たときにトラブルや故障などによる損失を最小限に抑えられる品質があるか、万が一のサポート体制はしっかりと確保されているか、ハードウェアだけでなくサービスと組み合わせたトータルソリューションが提供されているかなど、より長期的な視点でPCサーバを選ぶ方向へと、その基準が変化しつつあるわけだ。

 言わば、中小・SOHO環境でも、PCサーバへの投資を単純なコストとして考える時代から、その投資からどのような価値やキャッシュフローが生まれるかを考える時代へと変化してきた現れとも言えるだろう。

 では、このような視点で見たときに、これからの中小・SOHO環境に適したPCサーバとは具体的にどのような製品なのだろうか? この1つの答えとして富士通が提案しているのが、PCサーバ「PRIMERGY」シリーズのエントリーモデルだ。中でもエントリーサーバの「ECONEL(エコネル) 100 S2」やコンパクトサーバの「TX120」は、中小・SOHO環境での利用に最適な製品となっている。

 このようなPRIMERGYシリーズのコンセプトや具体的な製品の特長について、富士通株式会社 パーソナルビジネス本部 PCサーバ事業部 プロダクトプランニング部 部長 藤巻 秀明氏、同じく同社 パーソナルビジネス本部 パーソナルマーケティング統括部 PRIMERGYグループ プロジェクト部長 芝本 隆政氏に話を伺った。

ごく当たり前のように聞こえてしまうが、この言葉に込められた意味は意外に深い
富士通株式会社 藤巻 秀明氏
 「Made in Japan」。富士通のPCサーバ「PRIMERGY」シリーズの特長としてカタログやWebサイトで語られてるコピーだが、この言葉に込められた意味は意外に深い。

 「Made in Japan」とは、部品受入検査・CPU組込み・装置組込み・最終組立て・出荷試験(品質管理)をすべて国内で実施しているという意味で、これにより高い品質、顧客の希望に応じた柔軟なコンフィグレーション、充実のサービスを提供していることを表現している言葉だ。

 単純に考えてしまうと、ごく当たり前のことのように聞こえてしまうが、実はそうではない。藤巻氏によると「日本のお客さまは品質に関して非常に厳しい目をお持ちですが、その事を実際に製品を作る側の人間がわかっているかどうかというのはとても大切で、それが実際の品質に大きく影響します」という。

 つまり、作る側と使う側が同じ考え方であれば、なぜ品質を高めなければならないのか、顧客が望んでいる真意は何か、具体的にどのように品質を高めればいいのかという点をより深いレベルで追求できるわけだ。これは、単に「品質、品質」とお題目として唱えられた場合とでは、その根幹が異なる。

 また、最近では「Made in Japan」とともに「Made for Japan」という言葉が使われることもある。「in」と「for」の違いだが、この言葉には富士通のものづくりに対するコンセプトがよく現れている。芝本氏によると、「国内で作っていることによって、お客さまによって育てられているという面もあります。国内の一番厳しいお客さまの声をすばやく取り入れることができますので、品質や使い勝手という面で製品をブラッシュアップさせていくことができています」という。

 つまり、富士通のPCサーバのコンセプトの根幹には、常に「顧客」という視点が存在するわけだ。顧客に対してどうすれば満足してもらえる製品を提供できるか? そのために、国内という顧客にもっとも近い場所で、顧客を知り尽くした作り手によって、しかも顧客の声をタイムリーに受け入れながらPCサーバを製造していることになる。

ECONEL 100 S2
 このような顧客起点のコンセプトは製品の設計レベルから活かされており、PRIMERGYシリーズには、まさにこのような顧客の声から生まれたPCサーバが実際にラインナップしている。

 たとえば、中小・SOHO環境の業務アプリサーバやファイルサーバに適したエントリーサーバ「ECONEL 100 S2」は、静音性に非常にこだわった製品となっており、空冷式ながらわずか21dBという「木葉のふれあう音」並の静音性を実現している。

 藤巻氏によると、「サーバというと床や机の下に置くというイメージがあるかもしれませんが、実際のお客さまの声をお聞きすると机の上に置くケースが多いことがわかりました。机の上の場合、人のすぐそばに音を発生するサーバが存在することになりますので、音が気にならないように静音化に徹底的にこだわりました」とのことだ。

 確かに、中小やSOHOといった環境では、サーバやプリンタを空いているデスクの上に設置するケースが多い。そういった顧客の生の声をニーズとしてうまく捉え、それを確実に製品へと落とし込んでいると言えるだろう。

 実際、ECONEL 100 S2の内部を見てみると、内部のエアフローがうまく考えられており、前面から取り入れられた空気がCPUのヒートシンクを通って、うまく背面へと流れる設計になっている。この際、必要な風量をきちんと確保するために、ファンを可能な限り大型化し、その一方で低速で回転させるようにして音がなるべく出ないように注意したという(藤巻氏)。ハードディスクもサイドカバー側にベイを搭載し、効率的に冷却できるようにするなど、かなりの工夫が見られる製品だ。

ECONEL 100 S2 の内部。前面から取り入れられた空気がCPUのヒートシンクを通って、うまく背面へと流れるエアフロー設計になっている
 
背面側に配置されているファン。筐体サイズぎりぎりまで大型化している
 
ハードディスクはサイドカバー側にベイを搭載。冷却効率が考えられているおり、アクセスもしやすい
 なお、静音化という意味では、水冷式を採用することも可能だが、富士通としては空冷式にこだわっているという。水冷式は静音化という点では効果が期待できるが、その分、内部にポンプを搭載する必要があるなど、余計な消費電力が必要とされてしまう。「富士通は静音化に加えて、エコという点にも配慮していますので、空冷にこだわっています(藤巻氏)」という通り、音だけでなく、消費電力、さらにはメンテナンス性の高さなど、どの点にも妥協しない姿勢の現れと言えるだろう。
TX120
設置場所を選ばない省スペース設計のTX120。デスクの上に置いていても、全く違和感の無いコンパクトなサイズ
 もう1台、富士通ならではのこだわりが見えるのが小規模・SOHO環境向けに適した1wayサーバ「TX120」だ。

 本製品の特長は、何と言っても高い性能をコンパクトに凝縮している点だろう。設置面積は現行のタワー型サーバ(TX150 S6)のわずか1/3、容積比でも1/4というコンパクトなサイズは、まさにデスクの上などに設置するのに最適となっている。

 その一方で、24時間365日稼働に耐える高い信頼性を備えており、ホットプラグ対応で、耐障害性の高いSASハードディスク(2.5インチ)をアレイ化(RAID 1)したモデルをラインナップしている。

 この製品は設置場所が限られる場合でも、信頼性の高いサーバが必要なユーザのニーズに応えるために設計された製品だ。「TX120なら、病院など設置場所が限られている環境にも設置できます。しかも、SASハードディスクは24時間365日稼働でも5年間利用できるほどの耐久性がありますので、小規模な環境でのサーバなどにも適しています(藤巻氏)」とのことだ。

 さらに、本製品にはリモートサービス機能を標準搭載しており、専用ハードウェアの機能により、遠隔地からのサーバ操作や電源ON/OFFなども可能となっている。

 これにより、全国各地に拠点が存在するような場合でも、各拠点のスペースを占有することなく、常時稼働が必要なサーバを設置することができ、しかも各サーバを本社などから統合管理できるようになる。

 大企業などであれば、各拠点のサーバをデータセンターなどに統合してしまうことも可能かもしれないが、ネットワークインフラに制約がある中小規模の企業では、拠点ごとの個別のダウンサイジングを検討する方が現実的で、その上で分散環境をいかに統合管理するかが重要になる。本製品は、このようなニーズにきちんと応えられる貴重な存在と言えるだろう。

ホットプラグ対応で耐障害性の高いSASハードディスクを搭載。標準でRAID 1構成が可能
 
CPUの冷却にヒートパイプ方式を採用。効率のよい冷却設計により優れた静音性を実現
富士通株式会社 佐藤 勇治氏
 このほか富士通のサーバは、カスタムメイドサービスも充実しており、サーバのハードディスクなどの構成を納品時にカスタマイズできるだけでなく、RAIDの設定やラックへの搭載(ラックマウントサーバの場合)、ソフトインストールまでを工場側で事前に行ってから納品する「カスタムメイドプラスサービス」を提供するなど、とにかく顧客ニーズに応えるためのサービスが豊富だ。

 たとえば、サーバをリプレースする場合などでも、現状のサーバの用途や構成などを伝えれば、同様の構成をカスタムメイド、およびカスタムメイドプラスサービスで実現できると言う。たとえば、全国展開の飲食店などで同じ仕様のサーバを大量導入する場合などにも便利だろう。同社のサーバは販売店経由で購入することができるが、このようなサービスなどに精通した販売店に相談してみるのが近道だ。

 また、富士通は、購入時のみだけでなく、購入後の運用管理も含めた提案にも優れている。たとえば、内蔵データカートリッジドライブユニットの活用が良い例だ。

 富士通株式会社 プラットフォームビジネス本部 プラットフォーム拡販戦略室(PCサーバ担当) 佐藤 勇治氏によると、「これまで、サーバのバックアップはテープドライブを利用する場合が多くありましたが、テープドライブはクリーニングなどの定期的なメンテナンスをしないとエラーなどでバックアップがうまくできないケースがありました。その一方で、情報システム部門や専任の管理者が不在の中小・SOHO環境では、そこまでのメンテナンスが実質的にできないという悩みもありました。富士通では、この点にいち早く着目し、販売店と協力して、メンテナンスがあまり必要なく、手軽にバックアップが可能な内蔵データカートリッジドライブユニットの導入メリットや活用方法の紹介に積極的に取り組んでいます」という。

 テープドライブのクリーニングなど、実際の運用面のユーザの声は、通常、メーカーには届きにくいものだが、これを販売店と協力してきちんと吸い上げて、ソリューションとしてユーザにフィードバックしている。これにより、ユーザは単に高性能なサーバを手に入れられるだけでなく、その高い安全性、そしてメンテナンス作業の一部からも開放されるというわけだ。

 つまり、富士通は、顧客が何を必要としているのか、何に困っているのかをしっかりと考え、そのためのソリューションをきちんと提供しているわけだ。最近では“ものづくり”を単なるモノを作るだけでなく、それを顧客が利用することによって生まれる価値まで考慮する“ことづくり”を目指すことが重要視されているが、まさにそれを実践している例と言えるだろう。

清水理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ

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