Reported by 桃井一至(2013/11/22)
各社、コンパクトカメラが高級路線にシフトしつつあるのは、ご承知の通り。そのなかでも小さいながらも「品質」と「スピード」をウリとした富士フイルム「XQ1」を片手に秋の京都周辺を散策してきた。
旅に持ち出すカメラの条件として、写りの良さはもちろん、小型軽量などが筆頭に挙げられるが、いずれも本機は優等生。
独自の2/3型有効画素数1200万画素のX-Trans CMOS IIセンサーやワイド側でF1.8から始まる大口径レンズなど、プレミアム機にふさわしい内容だ。センサーは多くのコンパクトカメラで使われる1/2.3型や1/1.7型よりもひと回り大きな面積を持ち、ゆとりある画質で目を楽しませてくれる。
それもそのはずで本機のセンサーと画像処理エンジンは上位機種のX20ゆずり。レンズも薄型を目指したXF1から引き継いだ25ミリ〜100ミリ相当の良いとこ取り。さらにローパスレス構造と点像復元処理技術のコンビネーションで描写を引き立てる。また色再現がフィルム名で明記されているのも、フィルム黄金時代も知るベテランには心憎いポイントだ。
本誌の名称自体が「デジカメ Watch」となっているため、フィルムについてご存じない方に改めて説明すると、フィルムカメラでは色再現を変えるにはフィルム銘柄で選択した。なかでもハイアマチュアやプロに愛用されたリバーサルフィルムにおいて、同社はフジクロームとしてラインナップし、適度な鮮やかさで万人の好む「PROVIA(プロビア)」、鮮やかさと高いコントラストで風景向きの「Velvia(ベルビア)」、ソフトな階調と肌色を得意とする「ASTIA(アスティア)」の三本柱で展開。特にVelviaは風景写真派にとって定石とされ、目で見た以上に印象的に写ると発売以降、大人気となった銘柄だ。その看板商品の名を引き継いだのが、フィルムシミュレーションと呼ばれる本機の色再現機能だ。今回、多くは「Velvia/ビビッド」に設定したが、京都の秋をより鮮明なものとしてくれた。
また流行りのフィルター効果「アドバンストフィルター」も用意して、トイカメラ風など13種類から楽しめる。ベテランの中には難色を示す人もいるが、コンパクトカメラは遊びごころも大切。ちょっと肩の力を抜いて、楽しむのをおすすめする。旅の足を休めた先で、本機からスマートフォンへ転送すれば、FacebookなどSNSへのアップも即可能。そんな遊び写真が好評を博して、“いいね”の数が旅の疲れを癒してくれるかもしれない。
小型サイズのボディは旅の強い味方となるが、ポケットに入る身軽さで、お気に入りのシーンでサッと取り出せる。さらにクイックスピードを売りとする本機の場合、持った状態で自然に指を伸ばせば電源ボタンに届き、瞬時にレンズが飛び出して準備完了。操作のほとんどは右手で完結する。
人差し指でズーム操作を行い、シャッターボタンを押せば、すぐに撮影もできるが、レンズ周りにあるコントロールリングを廻せば、好みの設定をスムーズに変更可能。単なる記録だけでなく、自分なりのひと味を加えての撮影が迅速にできる。
コントロールリングでは、露出補正、ホワイトバランス、感度、フィルムシミュレーション、ズーム、連写、アドバンストフィルター、そしてマニュアルフォーカス選択時には、ピント合わせと多岐にわたる操作が割り当てられる。中でも先に紹介したアドバンストフィルターを割り当てるとクルクルと様子が変わり、普段あまり使わない人でも使いたくなる衝動に駆られるかも!。操作も高級オーディオの触感よろしく、滑らかで指先からも上質さが伝わってくる。
シャッターボタンを半押しするとほぼ同時にオートフォーカスの合焦を知らせる音がピピッと響く。メーカー公称値によれば約0.06秒とのこと。オートフォーカスは贅沢にも像面位相差AFとコントラストAFの二本立てで、スピードと正確さを兼ね備えた内容でサポートしてくれる。マニュアルフォーカスも使用したが、コントロールリングを廻すと選択したフォーカスエリアが拡大されると共にピーキングを表示。さらに背面のセレクターボタンを左に押せば、AFも可能となり、ざっくりAFでピントを合わせて、あとはマニュアルフォーカスで追い込むマクロシーンなどで重宝した。このような小ワザやスピード、製品の質感などはカタログだけで分からないことも多いので、ぜひ店頭で確認して欲しい。特にチェックして欲しい確認ポイントは、製品の質感やデザイン(ブラックのシボ塗装も必見)。コントロールリングの滑らかさ。起動時間、AFスピード、シャッタータイムラグなどだ。
充電にはマイクロUSB端子を使用。スマートフォンと同形状の端子はパソコンからの充電や不意の電池切れにもポータブルバッテリーで対応できる汎用性がうれしい。
2日に渡る旅で約1500枚を撮影したが、コンパクトカメラとすれば非常に多い。振り返ってみると小型でレスポンスが良いので、つい撮ってしまうのが要因。身軽にフットワークよく廻れるのにも助けられた感がある。また大口径を活かしてボケなどを試行錯誤しながら撮るのが楽しく、ショット数も倍増した。たとえば下の作例[A]はF1.8の広角端側、絞り開放にして奥行きをぼかしてみた。そもそも広角側で焦点距離が短いのは特性上、ぼかすのを得意としないが、明るいレンズのお陰で近づくとボケ効果が確認できる。また描写性能にしても下の作例[B]などを参考に見てもらえれば、必要にして十二分な写りが堪能できるのがお分かり頂けるのではないだろうか。
夜景シーンも本来、コンパクトカメラはあまり得意とする場面でないが、下の作例[C]のようにレンズの明るさや手ぶれ補正、センサーや画像処理エンジンの恩恵で、美しい画像がいとも簡単に撮れるようになってきた。ポケットサイズで、これほどの写りを楽しめるなら筆者的にはこれはアリ。もちろん上を見ればX20やX100Sも用意されているが、この手軽さと画質のバランスがXQ1の魅力といえるだろう。気の利いたもてなしや写りに感心することしきりで、楽しい散策旅行となった。
実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
■作例
■感度別作例
URL
- 富士フイルム
- http://fujifilm.jp/
- FUJIFILM XQ1 | 富士フイルム
- http://fujifilm.jp/personal/digitalcamera/x/fujifilm_xq1/