突然だが、あなたは一年間にどれだけの枚数の写真を撮っているだろうか。普段からカメラを使用していて旅行や日常のなかで写真をたまに撮るというような人ならひと月に30〜50枚/年間400〜600枚くらい、カメラを趣味として毎週撮影している人ならば、ひと月700〜1000枚程度として年間で8000〜12000枚前後といったところだろうか。もちろんこれよりももっと多くて、年間10000枚を超えてしまうという人も少なくないはずだ。さらに最近ではスマホで気軽に写真を撮ることも定着したので、これらの写真を含めるとなると、一年間だけでもかなりの枚数となるに違いない。もちろんこのなかには家族を撮影した写真も相当な数が含まれていることになる。では、世のお父さんお母さんはこれらの家族写真をどのように整理されているのだろうか。

 私事で恐縮だが我が家にも6歳になったばかりの娘がいる。もちろん誕生したその日から写真を撮り続けており、いまでは膨大な数の写真データが複数のHDDに保存されている。これらの写真はフォルダ名に簡単な内容を年月日を共に記載した日付別フォルダに分けられている。例えば幼稚園の運動会なら「2012_10_10運動会」といった具合だ。写真データが必要な場合はここからファイルを開く。ただしフォルダには家族写真以外の日常的なスナップ写真やスマホで撮影したSNSネタ的な画像も混在しており、最終的な検索方法はかすかな記憶に頼るというアナログな管理方法となっている。

 このように写真データを保存管理してはいるが、それをきちんとセレクトしてプリントしアルバムに整理したり、画像編集ソフトでデジタルアルバムやスライドショームービーを作成するという、ある意味理想的なパパ像ともいえることは「ほぼ」できていない。これは言い訳にしかならないのだろうが、写真家として大量な仕事の撮影データを日々処理していかなければならず、なかなか家庭の写真までは手がまわらないのが現状だ。そのうえデータの管理は私が把握しているだけなので、うちの奥さんからはとても不評をかってしまっており、常日頃写真をプリントして欲しいと言われてしまっているのである。とはいっても、ここまで溜め込んでしまった写真をいまからセレクトする時間も気力もなく、さてどうしたもんかと悩んでいたところに見つけたサービスが富士フイルムの「Year Album」である。

 富士フイルムの「Year Album」は、一言でいってしまえばデジカメの写真データからオリジナルのアルバムを作ることができるサービスだ。同様のアルバム作成サービスは多く存在しているが、この「Year Album」の大きな特徴として挙げられるのが、アルバムに使用する写真を自動的に選んでくれるという点だ。しかもページのレイアウトまでも自動に行ってくれるという。これはまさしくずぼらな、、いや、時間に余裕のない自分に最適なサービスではないだろうか。

 ということで早速、実際にアルバムを作成してみることにした。幸いにも作成の為の写真データは山のようにある。ムスメが生まれて6年分の撮影データとなるとゆうに数万枚もあるので、これを自動で選り分けてアルバムを作成してくれるというのだから期待は非常に高まる。

まずは「Year Album」を作成するためのアプリケーションを、富士フイルムの「Year Album」Webサイトからダウンロード&インストールを行う(Windows版のみ)。「Year Album」のサービスを受けるには富士フイルムの写真サービス「Fotonoma」への会員登録が必要だ。インストール後にアプリケーションを起動させて、インターネットに接続した状態でユーザー登録ボタンを押せば会員登録のページへとリンクされる。会員登録が完了したら「Year Album」のログインボタンを押して表示されるウインドウに登録時のメールアドレス、パスワードを入力してログイン。ログインが完了すればこの後はアルバムが完成して発注を行うまでは特にオンラインでのやり取りはない。
ログインが完了したらトップ画面より「新しいアルバムを追加」ボタンを押す。ここからアルバムの新規作成が始まる。
「Year Album」では画像ファイルに書き込まれたExifデータから撮影日時を読み取って、画像を時系列に並べてくれる仕組みとなっている。そこで今回はムスメの誕生した日から1年ごとに1冊のアルバムを作成することにした。
「Year Album」で使用するデータの在処を指定する。今回はPCに繋いだ外付けHDDとDVD-Rに書き込まれたデータを使用するので、それぞれをクリックして選択した。
詳細設定ボタンを押して、PCに接続された外付けHDDを選択。HDDのなかのフォルダを個別に選択すことも可能だ。今回はムスメが生まれた2007年と1歳となった2008年を選択。写真の保存場所設定にもどり「次へ」ボタンを押すと画像の読み込みが始まる。
まずは指定したフォルダから画像をアプリケーションに取り込む。この時点ではデータの数や容量を確認しているだけで、まだセレクトやレイアウトは行っていないようだ。
画像データの読み込みが終了したら、作成するアルバムのページ設定画面が現れる。「Year Album」では16/24/32/40/48ページの5種類のアルバムが選択できるようになっている。今回はいちばんページ数の多い48ページのアルバムを作成することにした。
アルバムのページ数を選択するといよいよ画像の自動セレクトが始まる。読み込んだ画像の枚数やデータの大きさによってかかる時間は変わって来るが、最短では5分程度で処理が終わる場合もあるという。今回は9000枚近い画像数を読み込ませたので、処理に20分ほどかかった。
つづけてレイアウトの自動作成が始まる。写真の自動セレクトと自動レイアウトは、これまでに富士フイルムが蓄積してきた膨大な写真についての解析データを基に、明るさや構図、人物の顔の大きさなど様々な状況を基に判断しセレクトしたうえで、いくつかのレイアウトパターンに当てはめているとのことだ。
自動セレクトとレイアウトが終了すると暫定的なアルバムレイアウトが表示される。この時点でもすでによい感じで写真がセレクトされており、レイアウトもなかなか良い感じだ。
暫定アルバムのページ一覧。約9000枚の画像からセレクトされた画像が並んでいる訳だが、セレクトもレイアウトも自動とは思えないほど良いカットを選び並べてくれている。もうこのままアルバムとして確定してしまっても良いほどだ。
さてここからはアルバムをより好みのものに仕上げて行く。まずはアルバムの表紙の背景色を好みのものにする。カラーはカプチーノ、コーラルピンク、ライムグリーン、リネン、ラベンダー、ペールブルーの6色より選択できる。
次は中ページの背景色を決める。カラーはホワイト、ブラック、アイボリー、ピンク、シアン、グリーンの6色。表紙の色との組み合せも考慮したい。
表紙および中ページの背景色の変更が反映された暫定アルバムのページ一覧。背景色が変わっただけでかなり印象が変わった。
つづいて表紙のタイトルやサブタイトルを入力する。タイトル文字のフォントは用意されたもののなかで変更可能。文字色やサイズも変えられる。またタイトルはそのまま背表紙にも反映される。ここで注意したいのは半角文字は背表紙では横向きに記載されてしまうということだ。
表紙のレイアウトはアルバム内の画像をサムネイル上に並べたタイル、同じくサムネイルを積み木のように積み上げたランダム、サムネイルなしの無地の三種類から選べる。
中表紙のレイアウトもタイルとランダムの二種類から選択可能。
アルバム内の写真もレイアウトから外したり、事前に読み込んだ他の写真から追加または差し替えをすることができる。
写真は基本的には時系列で並べられる。微調整する際に撮影日を確認するには日付表示をさせると良い。ただし日付表示をさせていても印刷されたアルバムには日付は印字されない。
写真のレイアウトは見開きページ内に配置される枚数、縦横の有無等によってに自動的に決められる。定型パターンではあるが、いくつかのレイアウトのなかから選ぶ事も可能だ。
写真の色味と明るさは自動補正のON/OFFで調整することができる。ただし大きく調整することはできないので、調整が必要な画像はできるだけ事前に済ましておいたうえで読み込ませるようにするとよいだろう。
「Year Album」には図形や文字などのスタンプといわれるイラストを配置することもできる。スタンプは用意されたものから好みのものを選べる(全162種類)。
全ての画像、レイアウト等を確認できたら「この内容で注文する」ボタンを押して発注の画面に遷る。支払い方法、受け取り方法を確認して完了。あとは仕上がりが届くのをまつばかりだ。
注文から7〜10日後にアルバムが到着。A5サイズでハードカバー。かなりしっかりとした作りだ。
アルバム内の写真面はすべて印画紙にプリントしたもの。表面には反光沢のコーティングがされている。ページも硬いもので、学校の卒業アルバムのようにしっかりとした作りだ。見開きの「ノド」と言われる折りの部分は開くと平になる作り。写真がノドにかかっていても見やすいだろう。
スタンプとコメント機能を活かしてページの小見出しを作成。組み合せは自由で工夫次第でかわいらしいアクセントとすることもできる。
中表紙のタイルとランダムのレイアウト。これだけでも印象が結構変わってくる。
アルバムの最終ページには見開きページごとのサムネイルと掲載されている写真の撮影期間が記載される。
背表紙もしっかりと厚くて硬い。並べて立てても、手にしても非常に高級感がある仕上がりだ。
半透明のケースも付属。簡易的なものだがアルバムの保護には非常に効果的。

 今回はじめて「Year Album」を作成してみたが、硬い表紙と背表紙が非常に高級感のあるしっかりとした仕上がりを印象付けてくれる。A5サイズという手にするにはちょうど良い大きさに収まっているのも良い。アルバムの作成手順も非常にわかりやすくて、普段プリント作業やアルバム作成といったものに慣れていない方でも迷うことなく簡単に作成することができるだろう。細かい調整や画像の差し替えも自由度が高いので、こだわり派の要求にも十分に答えてくれるシステムだ。今回は1年間で1冊としたが、もう少し短期間で一冊を作成しても面白いと思う。とりあえず来年も1冊アルバムを追加することは間違いないだろう。

撮影協力
(有)三船商会コージーハウス http://cozyhouse.jp

礒村浩一(いそむらこういち)

1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物から商品、建築、舞台など幅広く撮影。近年は自然と人の営みをテーマに作品展/セミナー/ワークショップを各地にて開催。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy