ごくありふれた2D-RPG世界のドットニア王国。しかし時代が3D化へ向かう中、深刻な過疎が進み…
ドットニア王国の国王、テズロは一計を案ずる
一夜にして3Dの街へ 大・改・革!

 かつて「二次元コンプレックス」なんていう言葉があった。略して二次コン。これは、簡単に言えば、漫画、アニメ、ゲームのキャラクターの異性にしか興味が持てなくなり、結果、現実世界の異性との関わりを拒絶し始めてしまうような現象のこと。

 この二次コン、1994年のプレイステーションの登場以来、ゲームについては3D化の波が一気に押し寄せてきた関係か、この言葉では正確に言い表せなくなってきている模様。ゲームに登場する美形ないしは愛らしいキャラクターの数々は、もはや、多くの場合がポリゴンで表現された"3D"モデルであり、いわばオタクの崇拝対象にも3D化の波は押し寄せてきたようなのだ。

 しかし、この3D化の波の直接の被害を被ったのは二次コン・オタクの方ではなく、むしろ、2Dゲーム世界。

 プレイヤー達の2D信仰心を失った2Dゲーム世界は衰退の一途を辿ることとなり、ここ2D-RPGの世界「ドットニア王国」も例外ではなく過疎化が進んでいたのだ。ドットニアで生まれ育った若者達も「2Dなんてやってられねぇ」といわんばかりに王国から出て3Dの街に行ってしまい、ドットニア王国は過疎化が進んでしまったらしい。

 こんな状況に痺れを切らしたドットニア王国の国王テズロは、ある大きな決断をする。

「これからは、3Dの時代じゃ!」

 自らの生きてきた世界を完全否定。一夜にして王国全土に対して突貫の3D化を敢行したのだった。

 この突貫3D化工事。準備不足が原因だったのか分からないが、なんかどこかおかしい3D世界になっていた。なんと、2D世界のときの16×16ドット基準の世界をそのままに3D化してしまったため、すっきりした美しいポリゴンペースの3Dモデルにはならず、ドット画を3D化したようなへんてこな世界になってしまったのだ。いうならば、16×16ドットから16×16×16ドットの世界になっただけ。

 ただ、ジオメトリ予算を徹底的にケチった国王だったが、シェーダー予算は大幅に確保したようで、最新の3Dグラフィックスのエフェクトを導入することができたようだ。描画は最新のHDRレンダリングベースで行われ、やったらテカテカした鏡面反射の映り込み表現が行われているし、強調気味の被写界深度エフェクトも導入されている。水面にはキラキラとグレア効果も出ていて、リアルタイム動的影生成もきっちりと行われているという凝りよう。

突貫工事の3D化だったけど、市民は満足
鏡面反射が美しいダンジョンの床。最高のシェーダ表現と2Dの面影色濃いキャラクター達
分かりにくいけどセルフシャドウだってあるんです!
被写界深度表現、ブルーム効果などの高品位ポストプロセスも目白押し!

 国王の突貫3D化改革によりアンバランスな3D世界となったドットニア。「3D化で掃除する場所が増えたわ」という主婦の声はあったが、概ね国民には好評。街はだんだんと活気を取り戻すようになったのであった。

 しかし、ここで一大事件が勃発。

 かつて、ドットニア王国は、闇の魔王によって征服されそうになったことがあり、これを勇者が闇のオーブに封印して事なきを得た…という、ご近所の王国にもありそうな事件があった。なんと、ドットニア王国の3D化しばらくして、テズロ国王に仕える神官の1人、フューエルがその闇のオーブを持ち出して行方をくらましてしまったのだ。

 しかも、国の安全を守る6人の賢者も各地の神殿からその姿が見えなくなっており、3D化に浮かれていたドットニア王国に突如として不安の暗雲が立ち込めるのであった。

 そんな慣れない3D生活と闇の魔王の復活な怯えるドットニア王国にふらりとやってきたのが、本ゲームの主人公のプレイヤーキャラクターとあいなるわけなのだ。

かつてドットニア王国は闇の魔法から征服されかけたことがあった
悪神官フューエル。…どっかで聞いた台詞です。
ふらりとやってきた主人公(プレイヤーキャラクター)
平和なドットニア王国に魔物が出没しはじめた! もちろん3Dドットだ!
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本作のオープニングムービー。ドットニア王国はかくかくしかじかでこんな事態になってしまったんデス!

 プレイヤーキャラクターは3職業(クラス)×男女性別で6種類から選択できる。職業ごとにRPG特有の若干の能力差があるほか、男性の方が女性よりも攻撃力が高く、女性の方が男性よりも魔法を使った際の消費ゲージが少ない…といった特徴がある。職業・性別によって台詞の一部は変わるが、基本的にストーリーは変わらない。初期の能力差はキャラクターの成長につれて埋まっていくので、ここでの選択は「見た目」と、キャラ性能の初期状態を選択するもの…という感じで軽く考えておいて構わない。

選択可能な職業は3種類。それぞれに男性/女性がいる。左から、勇者の子孫、隣国の王子(王女)、学者

 もし、ここで、「自分の好きなキャラクターがない」と思った人。安心されたし。オリジナルのキャラも作れます。

 最近の3DタイプのRPGだと、顔の形、身体の大きさなどを調整していくキャラクターメイキングが主流になっているが、本作のキャラクターメイキングは斬新かつ直接的だ。

 X,Y,Zの3次元座標系にドットを置いていくことでマイキャラをデザインしていけるのだ。いうなれば「三次元でのドット画」を描いていくのである。サイズ…というか解像度は16ドット×16ドット×16ドット。

 16ドット×16ドットはファミコン時代や同時代のアーケードゲームのキャラクターデザインの基本サイズであり、多くのレトロゲームファンは、「あのゲームのキャラクターを描いてみたい」という衝動に駆られるはずだ。

 しかし、ドットニア王国に登場させる以上は、そのドット画を立体化しなくてはならない。多くのレトロゲームではキャラクターの正面と横向きを別のドット画で表現していたが、ドットニア王国にそれっぽく登場させるには、正面と側面のドット画のつじつまを合わせて3Dドットを打たなければならない。

オリジナルのプレイヤーキャラクターを16ドット×16ドット×16ドットで作ろう
こんな感じでオリジナルの3Dドット画でプレイすることができる!
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いちど始めると納得いくまでドット打ちしたくなるキャラクターエディト。その中毒性はゲーム本編以上!?

 この作業、意外にも、なかなか楽しいパズルとして楽しめちゃう。きっと、このキャラメイキングが楽しすぎて「いつになってもゲーム本編が始められない」という人もでてきそうな予感。

 ちなみに、制作できるのは「立ち」「歩き1」「歩き2」「万歳」「攻撃1」「攻撃2」の6ポーズ。「立ち」は静止している状態。「歩き1」「歩き2」は歩いているときの2パターンアニメーションに相当する。例えば左右の手足を交互に入れ違いに出している2パターンを作ったり、足が開閉している2パターンを作ったりするのがセオリーとなる。「万歳」はアイテムを取ったりしたときの腕両上げ静止ポーズ。「攻撃1」「攻撃2」は「歩き」のときと同様に攻撃アクション時の2パターンアニメを描画することになる。

 3Dキャラクターメイキングになると思ってボーンの設定とかしなければならないのかと思ったらそんなことはなく、本作で行うべきは、ただ、三次元空間上でドットを置いていくだけのシンプル作業なのだ。

 ちなみに、装備アイテムの剣や盾は、ユーザーが描いたキャラクターの適当な位置に描かれることになるので、非人間キャラクターでウケを狙おうとする人は、このあたりのつじつまも合わせもチャレンジングなテーマとなるはず。

 描いたキャラクターはPS3本体に保存することができ、USBメモリ等に持ち出すことも可能。持ち出した際には一個のファイルとして書き出されるので、ネット等で公開したり、友達と交換することが可能。マ●オやマッ●ーなどなど、ゲーム界で有名な2Dキャラに似せたモノをこしらえて個人的に楽しむことには当局(フロムソフトウェア)は一切関知しないからそのつもりで。

 なお、ゲームの途中であっても、ユーザー作成のキャラクターグラフィックスに変更することは可能。もちろんシナリオ/ストーリーの進行には一切影響を与えないから安心。なので、カジュアルに「16ドット×16ドット×16ドットの悪ふざけの世界」を楽しめるのだ。

 本作は、一夜にして3D化しちゃったゲーム世界、ドットニア王国での物語なので、ゲーム性も一夜にして3D化しちゃった感じが的確に現れていて面白い。3Dゲームのくせに、なんとなく2Dの不便さが残っていて、そこがまたレトロな雰囲気作りに貢献している。

 例えば、マイキャラは左スティックで8方向に移動できるのだが、[○]ボタンで繰り出せる剣攻撃は4方向のみ。この感じはかなりレトロ!

移動は8方向。攻撃は4方向。
基本は剣攻撃!
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街を一歩出ればそこはモンスター闊歩するフィールド。微妙に2Dっぽい操作を駆使して蹴散らせ!

 なお、剣を繰り出しているときに左スティックをぐるりと回すと、繰り出している剣が弧を描き、「回転斬り」攻撃が繰り出せる(ただし剣の種類や強化具合に依存)。この回転斬りを使いこなすことができれば、攻撃方向が4方向に限定されてしまうハンデをカバーできる。ここは本作ならではのゲーム性…といったところ。

応用ワザ、回転斬り! 広範囲の敵を粉砕
敵を倒して出てくるリンゴで体力回復!

 本作のマイキャラはジャンプはできないので、上下移動は設置されている備え付けの階段やハシゴを登ってしか行えない。マップ中の一部の特定箇所で飛び降り動作だけはできるが、これは特例で、基本的には2D的な移動しかできないのだ。ドットニア王国は、3D化の際、住人の動きに関して3Dを取り入れるのを忘れてしまったらしい。

 敵の攻撃は[R1]ボタンを押すことで構える盾で防御したり、あるいは跳ね返すことができる。

 剣を出したままダッシュ攻撃する突撃攻撃の発動は[□]ボタンで。こちらを発動すると移動速度も上がるので、敵を攻撃しつつ高速に移動したい際にはとても便利。雑魚敵を蹴散らしながら進むその勇姿は、もはや除雪車のよう。ただし、手強い相手との戦闘では、ただ剣を出して突っ込んで行く神風戦法だけではダメで、敵からの攻撃をガードしつつ反撃に転ずるような頭脳プレイも求められることも。本作は意外に戦闘システムはしっかりと"アクションRPGしている"のだ。

突進しながら攻撃の「ダッシュ攻撃」
盾を構えれば防御
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ただ闇雲に突っ込めばいいわけではない。時には守り、時には斬る。蝶のように舞い、蜂のように刺せ!

 突撃攻撃と聞いて「もしかして、半キャラずらしでノーダメージ攻撃ができる?」と思った「●ース」好きなレトロゲーム通の方々。目の付け所はさすがといったところだが、残念、本作ではそのワザ、通じません。ちなみに、ドットニア王国のどこかには「半キャラずらしが通用しなかった…」とダイイングメッセージを残して倒れている勇者(?)がいるので、プレイ時には探してみよう(こういうパロディ要素はドットニア王国にはそこかしこに散らばってます)。

 剣や盾は、冒険を進めつつ、様々なクエストをこなしていくことで、その報酬としてより強力なものを入手できる。あるいは、クエスト後の報酬や敵を倒して手に入れられるお金を貯め、武器屋でよりグレードの高いモノを購入することも可能。このあたりはRPGの世界観のお約束をちゃんと踏襲している。

 そして、もう1つ、本作ならではのユニークなポイントとして紹介しなければならないのが「剣の強化」。街の鍛冶屋でゴールドを支払って剣を強化できるのだが、この「強化」、他のRPGのような、ただ剣の攻撃力パラメータを上げるだけではない。見た目として、かなり"激しい強化"が行えるのだ。

 強化できるのは「攻撃力」「長さ」「太さ」「回転」「遠距離攻撃」「貫通能力」「特殊能力」など。「攻撃力」は剣が相手にヒットしたときの打撃力に相当し、「遠距離攻撃」は一振りしたときに飛び道具を発車できるように強化、「特殊能力」は剣固有の能力をパワーアップする強化で、RPGではよくあるタイプの強化だといえる。

 特筆したいのは「長さ」「太さ」「回転」「貫通能力」の4つの強化。

 「回転」を強化すると強力な「回転斬り」ができるようになる。「貫通能力」は剣攻撃を障害物の向こうにまで到達させる強化になる。

もちろん飛び道具だってあるんです! 詳細は後述
鍛冶屋で剣をカスタマイズ。太くそして長くしよう!
長く!そして太く! 人生もそうありたいよね

 そして「長さ」と「太さ」は、読んで字のごとく、そのまんま、繰り出した剣が、強化した具合に応じて、見た目として長く、そして太くできる強化だ。この強化をある程度進めると、どうやって鞘に収まっていたのかが全く分からないくらい剣が広がって伸びるようになる。その様子たるや、なんというか、もはや"ビーム"。

強化を極限まで行うと、剣はゲームフィールドを突き抜けるくらい遠方にまで伸び、さらに画面を覆うように広がるため、攻撃のたびにベッドのシーツを広げているみたいな異様な光景になる。長さ/太さMAX状態でさらに「貫通能力」まで強化してあると、ほぼ全画面一斉攻撃ができてしまう。これにやられた敵はきっと「それって剣??」と突っ込みながら昇天しているはず。

 なお、この強化状態が発揮されるのはマイキャラ体力がMAXの時に限られている。MAX状態でないときは、普通の剣攻撃になってしまうので注意されたし。

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さまざまな特徴を持つ剣を入手し、さらに自分好みに強化するのが醍醐味だ

 RPGといったらサブウェポン、そして魔法でしょう?…というRPGジャンキーなお方達。本作にもちゃんと取り揃えてございます。

 プレイヤーキャラは剣攻撃以外に、もう一つ攻撃手段が与えられている。それがその「サブウェポン」と「魔法」だ。

 本作では、サブウェポンと魔法は同列の扱いになっていて、[×]ボタンを押すことで発射、あるいは発動が実行される。また、[L2]ボタンまたは[R2]ボタンを押すことで、リアルタイムに、使いたいサブウェポン、あるいは魔法を順送り式に切り換えられるので、いちいちメニューを開いて選択する必要はなし。

使ってもなくならない飛び道具「ブーメラン」
攻撃力重視の飛び道具「弓」
攻撃にも謎解きにも使える「爆弾」

 このサブウェポンや魔法は、敵への攻撃手段としてだけでなく、ゲームフィールドに仕掛けられている謎、あるいはパズルを解き明かすのにも欠かせない「鍵」的な側面も持っているので軽んじることができない。ここも本作特有のゲーム性だといえる。

 用意されているサブウェポンのうち代表的なモノとしては「ブーメラン」「弓」「爆弾」「ワイヤーロッド」などがある。

 ブーメランや弓は[×]ボタンで発射できる飛び道具系サブウェポン。弓は撃つたびに矢を消費するが攻撃力大。一方、ブーメランは敵にあてても敵は気絶するのみ。ただし、必ずプレイヤーキャラに戻ってくるので消費しないという特性がある。また、ブーメランは自分が到達できない場所に仕掛けられたスイッチを押すための遠隔操作飛び道具としても活躍できる。何か気になるモノがあったらブーメランを投げてみるといいだろう。「これって●ルダじゃん!」と閃いちゃった人、気のせいです。その突っ込み、「風●黙示録」にもする勇気ありますか?

 「ワイヤーロッド」は銛つきのワイヤーガンのようなもので、[×]ボタンで射出して杭などに命中させた後、巻き取ると、そこへ飛んでいけるワイヤーアクションが発動できる。「それも●ルダじゃん!」と閃いちゃった人、気のせい気のせい。その突っ込み、「バイ●ニックコ●ンドー」にする勇気あります?

 「爆弾」は、[×]ボタンで、マイキャラの立ち位置に仕掛けることができ、数秒後に爆発。その爆風は周囲にダメージをもたらす。敵への攻撃目的以外に、壊れそうな壁や岩を破壊することにも使える。 「ますます●ルダじゃん!」と叫んだ人、これはオマージュです、トリビュートなんですってば。あ、本作の主人公は親戚にボンバー●ンがいるんです、たぶん。

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サブウェポンを使いこなしてフィールドを突き進め!

 さてさて、「魔法」の方は、オマージュでもトリビュートでもないし、ましてやインスパイアでもない、本作の世界独自のものとなっている。

 その名も「シェーダー魔法」!!

様々な効果を持つシェーダー魔法の数々。これは周囲を凍らせるフローズンシェーダー魔法だ。C●YSISも真っ青?

 2D世界を突貫工事により3D化したドットニア王国では、美しい3Dグラフィックス表現を司る「シェーダー」が魔法として崇められているのだ。だから「シェーダー魔法」なのである。

 プレイヤーキャラがまず獲得できるのは「パララックスマップ」のシェーダー魔法。パララックスマップとは微細凹凸表現を行うための3Dグラフィックス技術用語で、視差(パララックス)に依存して法線マップをサンプルして陰影処理を行うテクニックなのだが、ドットニア王国では、魔法扱いなのだ。確かに実体は平面なのに立体に見せるシェーダーなので、元2D世界のドットニアの世界からすれば確かに魔法と言えなくもない…。ちなみに、本作ではパララックスマップのシェーダー魔法は主に、謎解きに使われる。具体的には、一見しただけでは平面にしか見えない石版などに掛けることで凹凸を浮き上がらせ、ヒントを得る…といった用途で活用することになる。

 一方、「ノーマルマップ」のシェーダー魔法は攻撃系。ノーマルマップとは3Dグラフィックス用語的には、法線(ノーマル)ベクトルをテクスチャ化したものを指し「法線マップ」と呼ばれることも多い。最近では法線マップを利用した微細凹凸表現(バンプマッピング)テクニックを「法線マッピング」または「ノーマルマッピング」ということがあり、ドットニア王国ではこれも魔法として認定を受けたようだ。本作ではノーマルマップのシェーダー魔法を発動するとプレイヤーキャラ周辺の地面が同心円状に波打ち始め、その衝撃波が敵にダメージを与える。

 この他にも、ドットニア王国には、3Dグラフィックス用語を元ネタにしたシェーダー魔法が隠されている。探してみよう。

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「シェーダー魔法」は敵を倒したり、はたまたダンジョンの謎解きに使ったり、とにかくゲームを進める上では使いこなし必須!

 筆者的には「アンチエイリアス」のシェーダー魔法があれば良かったな、と思ったり。発動するとカクカクしたドット画ライクのモンスター達が妙になめらかになり、なめらかを通り越してとろけてしまうような効果のシェーダー魔法。

 次回作には是非、採用お願いしまっす。

 本作には色んな要素が詰め込んであるが、基本的にはカジュアルに楽しめるアクションRPGになっている。シナリオ進行は良い意味でありがちでわかりやすし。魔王を打ち倒して行方不明だった姫を救えばいい。昔懐かしい、一度は遊んだことのある定番のストーリーラインで安心感がある(そこを逆手にとったギャグが盛り込まれているのも本作の味わいなのだが)。

 ゲームフィールドは非常に広大だが、ゲーム世界としては1つでシンプルだ。到達していない場所はブラックアウトされているがワールドマップ全体は最初から見渡すことができる。だからといってゲーム規模が小さいかと言えばそんなことはない。

 2D世界を突貫工事して3D化したというドットニア王国の手抜き3D化工事が、チャレンジングなパズル要素としてプレイヤーに立ち塞がってくるのだ。

 本作には、プレイヤーから見えているのに簡単にはたどり着けない場所が結構あって、そこに行くためにはアイテムが必要だったり、迷路をクリアする必要があったり、と一筋縄ではいかない。

 トライ●ォース…じゃなかった…6つのオーブを回収するために6つの神殿を探して訪れるのがゲームの当面の目的となるのだが、神殿の中は、そりゃあもうお約束、ダンジョン構造になっている。このダンジョンにはスイッチの押し下げパズルはもちろん、「押せるけど引けない」ブロック押しパズル(通称、倉庫番系パズル)も用意されている。

 本作、アクションRPGのわりにはパズルゲーム要素が色濃いのだ。

クエストをこなすことでストーリーは進む!
ブロックを押すお馴染みのパズルもあり!
パズル要素が色濃いボス戦。弱点を探せ!
街の人との会話が重要。思わぬヒントをくれる。

 ちなみに、ダンジョンは複数の小部屋が繋がった構造をしている。そう、ダンジョンの建築様式としては、古くは「ザナドゥ」様式、今で言われるところの「●ルダ」様式だ。ただし、ノートと鉛筆によるマッピングは不要。システム側でちゃんと自動マッピングしてくれていて、どの部屋にいるのかを的確に教えてくれる。

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手強い敵、難解なトラップ、そして奥底に待つボスキャラ…ダンジョンにはRPGのあらゆるロマンがつまっている!!
ヒントをくれるお節介妖精のリーくん。人語を話すトンボかも知れません

 乗ったら最後、行き着くまで降りられない「流砂スライダー」のパズルなんかは、初見ではとても難しいが、大丈夫。ヒントは点在する村に住む村人(NPC)達との会話に隠されている。NPCとの会話、飛ばさずに良く読むべし。

 パズルと言えば、ダンジョン奥底に控えているボスとの戦闘もパズル性が色濃い。そう、ボスには普通に攻撃しただけでは全くダメージを与えられないのだ。しかし、各ボスごとに弱点があり、そこを突くように、あるいは弱点を露呈させる前行動を伴ってから攻撃すれば大丈夫。ボス戦でのヒントは、プレイヤーキャラが、道中でお友達になる"お節介焼きの妖精さん"が与えてくれるぞ。

 「お節介妖精って…これも●ルダじゃん!」と突っ込んできた人、あっちは女妖精でしょ?、本作では男妖精なんで全然別物です。  あ、妖精じゃなくて話せるトンボだったかも。

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ボスキャラは正面から挑むだけでは倒せない。弱点をつくんだ!

 本作、開発は、あの実力派ミドルウェア開発スタジオとして知られるシリコンスタジオが担当している。本作の、目に美味しい3Dグラフィックス効果の数々は、同社の先進のレンダリングエンジン「YEBIS」「DAIKOKU」によるものなのだ。同社の先進3Dグラフィックス技術が、なぜ、突貫工事の3D世界のドットニア王国に採用されたのかは謎だが、だからこそ、この世界のシェーダー魔法が強力だという見方もある。リアルと非リアルの狭間ともいうべき、本作特有のビジュアルタッチは、シリコンスタジオとのコラボであったからこそなしえたのだ。

シリコンスタジオの最新レンダリングエンジンを採用しているので3Dエフェクトはリッチきわまりなし
敵を倒すと3Dドットが飛び散る! その挙動は剛体物理シミュレーションで制御してます

 本作、実はコラボ要素がもう一つある。

 それは、アイレムソフトウェアエンジニアリングのアクションゲーム「スペランカー」とのコラボレーション。

スペランカーとのコラボが実現

 「スペランカー」といえばファミコン時代の冒険アクションゲームの有名作品で、その内容の濃さはもちろんのこと、ゲームファンの間では主人公キャラクターの極まった虚弱体質の印象が強いかも。なにしろ、その虚弱ぶりたるや、ちょっとした階段程度の段差から降りても転落死してしまうほど。

 この名物虚弱体質キャラのスペランカーくん、たまたまドットニア王国に遊びに来ていたみたい。しかも本人の意志に関係なく3D化されてしまったようで、なにやらお困りの様子。

 冒険中にスペランカーくんに会ったら、ぜひ彼のサブクエストを受けて上げてください。

スペランカーモードの壮絶さは推して知るべし!

 このスペランカー・クエストに成功すると、それ以降、主人公をスペランカーくんに置き換えた「スペランカー・モード」でのプレイができるようになる。ええ、そうですとも。もちろん、あの虚弱体質を受け継いでのプレイができるのだ。

 体力1、一撃で即死の彼を操ってドットニア王国を救うのはかなり難しいはず。クリアは無理でも是非一度、話のタネに彼でプレイしてみて欲しい。

 最近のド派手なリアル系のゲームについていけないレトロゲームファンの皆さん。あるいは最近のグロテスクな表現のゲームに嫌悪感を抱いているお父様、お母様。レトロ風味でほのぼの…しかも頭も使う頭脳派アクションRPG「3Dドットゲーム・ヒーローズ」はオススメです。

 スペランカーモードでは、お子様に根気も身につきます!

人間になりたいスライム。パロディ満載
鶏をいじめたら当然…! 様々なオマージュやパロディが数多く盛り込まれているので、それを探してひとりニヤけるのも、正しい楽しみ方の一つだ

[Reported by トライゼット西川善司]