タイトル画面
Xboxには、いくつかのレーシングゲームが既に存在するが、その多くが「クールにスーパーカーを操ることを楽しむ」ことを主眼としたものであり、それはそれでゲームとしては楽しかったのだが、「実車を現実のコースで走らせたい」というテーマの作品の登場も待ち望まれていた。
今回、マイクロソフトが発売する「FORZA MOTORSPORT」(以下FORZA)は、まさに、その要望に応えた作品に相当する。
実際のプレイ感やインプレッションにいく前に、この彗星のごとく登場した「FORZA MOTORSPORT」の"素性"から紹介していきたいと思う。
FORZAの開発スタッフは、「RalliSport Challenge」、「Project Gotham Racing」、「Midtown Madness」といったレーシングゲーム開発スタッフの精鋭チーム+外部メ ンバーという大規模なチームで構成され、その開発期間は2年以上という気合の入り ようだ。
もともと、プレイステーションの「グランツーリスモ」に「追いつけ追い越せ」という目標の下に制作が進められただけあり、その「こだわりよう」は凄い。
近代レーシングゲームに必要不可欠な車両物理シミュレーションにおいて重要かつ複雑困難なのが足回りの再現だ。足回り=タイヤ・サスペンション…の再現は、リアリティ度を直接的に左右するので、実はエンジンの再現よりもこちらの方が重要度は高いとも言われている。
まず、タイヤの再現においては、TOYOタイヤと技術提携を結び、同社の実際の製品タイヤの実証データを元にして、空気圧、摩耗、熱、荷重に対する感度などをパラメータ化して実装しているという。
どういったシミュレーションが行われているのか…については、リプレイ中のテレメトリ画面を参照することで窺い知ることが出来る。
サスペンションについては、フェラーリのF1チームの技術者の協力を得て、ダブルウィッシュボーン、マルチリンク、ストラットといった車種ごとに違う各種サスペンション方式個別の挙動の再現を実現させた。
最終的な自動車の挙動はサスペンションとタイヤの相関的な物理シミュレーションによって導き出されるわけだが、その演算パスにも妥協がない。
サスペンションが伸縮すると、タイヤのキャンバー角が変化し、それに伴ってタイヤと路面の摩擦量が変化してその摩擦熱がタイヤの材質温度を変化させる。タイヤの温度が変わればそのタイヤ内部の空気を膨張させるので、タイヤの空気圧が変化する。そしてこの空気圧の変化は、今度はタイヤの摩擦係数にフィードバックしてくる。FORZAでは、ここまでのシミュレーションを行っているのだ。
サーキットのコースの再現にもかなりの労力を割いている。FORZAにはテストコースとして名高いドイツのニュルブルクリンクや、日本のモータースポーツファンにとって身近な筑波サーキットなどの実在コースが収録されているが、その再現にあたっては実際に開発スタッフが赴いての測量が行われている。単なるジオメトリ的なコースレイアウトだけでなく、コンクリ、アスファルト、ゴム、樹脂といったコース上の路面を構成する材質、細かな摩擦係数の違いなどにもこだわりを見せているとのこと。
ここまでの高度な車両物理シミュレーションができるのは、現行ゲーム機では最高スペックのCPUを持つXboxだからこそだ。
FORZAの中で再現された筑波サーキットの第二ヘアピンからの光景を収めたショット。コースの再現精度もさることながら、パドック内の人混みの感じから遠景に至るまでがリアル。
東京サーキットと命名されたこのコースは新宿〜四谷あたりの一般道をサーキットに見立てた架空のコース。
架空のコースであっても新宿周辺の道路を正確に再現しているため、その景色はほとんど本物そのまま。記憶に残っている看板の数々はそのほぼすべてが登場する。
同様に実在する都市道路をバーチャルにサーキット化したコースとしてニューヨークがある。艶やかにきらめく電光広告の森を駆け抜けていく感覚が気持ちいいコースだ。
カリフォルニアの著名実在コース「ラグナセカ・レースウェイ」。ここの名物は高低差のある連続コーナーで、コークスクリューコーナーの異名を取る。FORZAでもうまく再現されていて、実際、ここをハイスピードで抜けるのはかなり難しい。
実車再現系のレーシングゲームとなれば、気になるのがその登場車種について。
FORZAの登場車種は全230車種。グランツーリスモ4は650車種だが、権利上の制約からあっちにはフェラーリやポルシェの市販車が収録されず非常に残念だった。
しかし、FORZAは、違う。この問題を回避しており、最新モデルはもちろん、過去の名車モデルのフェラーリやポルシェまでが収録されているのだ。これはモータースポーツファン、スポーツカー好きには絶大な訴求力となるだろう。
頑張れば買えるポルシェとして世界的にヒットした「ポルシェ・ボクスター」。FORZAでは乗れます。このほか911なんかも収録。ちなみにゲーム内通貨のCRは1ドル(約100円)換算すると目安になるはず。
ポルシェ印のスーパーカーと言ったら今はこれ。ポルシェカレラGT。5.7LV10、612馬力、最高時速330k/h以上。日本で買うと約7500万円。個人的にはFORZAで乗りたい車、ナンバー2!
気軽に乗れるフェラーリというコンセプトが受けて世界的にヒットしたフェラーリ360モデナ。FORZAでもその扱いやすさはうまく再現されている。
パワーウェイトレシオで勝負のロータス・エリーゼ。右ハンドルの英国スポーツとして日本でも人気の高い車種。現実でも頑張れば買えます。
WRCイメージの強いプジョー206。日本でも高い人気を誇る。
漫画「イニシャルD」人気は北米にも轟いている。AE86は当然登場する。
究極の軽量FFコーナリングマシンとして根強い人気を誇るホンダの旧車CR-X。
その後継のDelSolは、販売不振の不人気車種だったが、なぜか北米の西海岸で地域限定の人気を獲得し、そのためかFORZAにも収録されている。
写真や模型でしか接することの出来なかったエンツォ・フェラーリに乗れる。シミュレータとして再現されたエンツォの乗り味は?
FORZAはアメリカで開発された作品だが、もともと世界市場を想定しているのと、日本に多くの車ファンがいることを理解しているため、日本メーカーの車種の充実度も高い。
ここ10数年来の主要スポーツモデルはほぼ網羅しており、トヨタ、2000GT、スプリンター・トレノ(AE86)のような時代を超えて愛される人気名車も数多く収録されている。
アメリカで開発されていることが、逆にユニークな味わいに結びついている箇所もある。例えば、同じ日本車であっても、北米仕様モデルが意外に多く入っているのだ。アキュラ印のインテグラや2400ccモデルの日産シルビアなんかは、日本人にとっては新鮮味がある。三菱の最新Eclipseなんかは、日本ではオープンモデルが小数逆輸入されただけなので、多くのひとがその姿を見たことがないはずだ。
最高時速370km/h。実際に購入できる市販車としては最強のマクラーレンF1のGTカーバージョン。価格は約1億円。FORZA内でもかなり頑張らないと入手困難なレアカー。
ポルシェも市販車だけでなくGTカーも登場する。
手前からR34GT-R、奥左NSX、奥右インプレッサ。日本車も、実際にレースに出場したGTカーが登場する。
現在、なぜかオーストラリアで大人気の韓国ヒュンダイ車。その唯一のスポーツグレードがヒュンダイクーペの異名を取るティブロン。パワーよりもトルクに振ったチューンが特徴。日本では珍しいモデルなのでFORZAで乗るべし。
これでもかって言うくらいのロングノーズがいかにもアメリカンという感じのダッジ・バイパー。アメリカンスポーツらしくトルクと馬力重視の設計。
粗暴なイメージのあるアメリカン・スーパーカーの中で、数少ないストイックな異彩を放っているのがこのサリーンS7。2004年のE3で発表されたマイクロソフトの次世代開発プラットフォーム「XNA」のデモにも登場したあの車…といえば思い出した人も多いはず。筆者がFORZAで乗りたい車、ナンバー1!
新生ジェームス・ボンド007も乗ったイギリスのスーパーカー、アストンマーチン・V12ヴァンキッシュ。見かけによらず実は1.8トンを超すスーパーヘビーマシン。FORZAにおいても、乗りこなすにはかなりの腕が必要。
ベンツの最高級スポーツクーペ、CL65。トルク102.0kg-m、612馬力を誇るが、車重2トンオーバーの重量級。しかし、コーナリング無用のオーバルコースではFORZAでもかなり強力。
さて、FORZAはXbox用ということで、その車達がどんな美しいグラフィックスで再現されるのか、ここに注目しているモータースポーツファンも少なくないだろう。
Xboxにはプレイステーションにもゲームキューブにもない、先進のプログラマブルシェーダベースのグラフィックスチップ(GPU)が搭載されているが、FORZAのグラフィックスはこれをかなり積極的に活用したビジュアルになっている。
今やレーシングゲームに登場する車モデルのリアリティの指標は、ポリゴン数に因らない。現行ゲーム機ではすでに1台あたり一律数千ポリゴンの大台に達していてその"差"がないからだ。
その「差」は車のボディの陰影や色の表現に表れる。車のボディは光沢があり、その周囲の環境を映し込んだり、大空からの光を反射したりして、複雑な陰影を見せる。ここが重要なのだ。
FORZAではプログラマブルシェーダを積極的に活用することでリアリティ度の高いボディの陰影を再現している。通常の拡散反射と鏡面反射の陰影処理に加え、異方性反射シェーダによるフレネル反射(視線角度に応じて異なる陰影を見せる反射。水面の表現などにも見られる現象)が考慮されており、ボディ上のコーティングの質感が実にリアルなのだ。
異方性反射シェーダはボディカラーの再現にも活用されていて、高級車種に見られる複数レイヤー塗装により視線角度の違いで複数の色が見え隠れする「マルチコートパール塗装」(俗に言う玉虫塗装)も忠実に再現されている。これはさりげないことだが凄い。
ただ一様に映り込むのではなく、ボディ面の法線方向と視線方向の位置関係で、ボディ色と映り込みの度合いを動的に変える陰影処理をしている。この絶妙な「ボディコート感」はこのフレネル反射の実装によるものだ。
三菱GTOに紫と緑のメタリックカラーでパール塗装をしてみた。光と視線の方向関係でドラスティックに色の出方が変わるあの感じが超リアルに再現される。
日産R32GT-Rにガンメタ・パール塗装してみた。単なるソリッド塗装とは違う陰影が実にリアルだ。
同じコースでも時間が異なれば景色は違って見える。画面は夕闇迫る時間帯のシーン。路面に出る天空からの反射光に力がない感じがリアルだ。
また、ゲーム中の映像は最近の3Dゲームグラフィックスのトレンドである、擬似的なハイダイナミックレンジレンダリング技術も導入されている。激しい日差しを直接受けた箇所は白飛びするほどの激しいグレア光を出すし、トンネルから抜けて屋外に出たときには、一瞬、情景が眩しく周囲の明るさに適応できない描写が入り、カメラや瞳の絞り(露出)のシミュレーションまでが行われている。FORZAのレースシーンが、CGっぽくなく、「実写的な屋外のリアルさ」が醸し出されているのはこのためだ。
また、近代3Dゲームグラフィックスではその重要度が増している影の描写にも力が入っていることも触れなければならないだろう。複数光源からの複数の影がリアルタイムに伸び縮みして落ちるだけでなく、リアスポイラー(リアウィング)やドアミラー、ボディの凹凸までのセルフシャドウ(自身の影が自身に投射されること)までもが再現されている。
日差しを浴びて強いグレア光を発している様子。FORZAの屋外シーンが実にリアルに見えるのは、Xboxのグラフィックスパワーを活かしたこうしたハイダイナミックレンジレンダリング演出に因るところが大きい。
トンネルを抜けると一瞬明るさに目がくらむ演出。これはカメラや瞳の動的な露出補正を行っていることのシミュレーション
シルエットを投射するだけの簡易影でなくて、リアルタイムに動的な影生成を行っているFORZA。実はこのリアルな動的生成影描写がリアルな挙動描写にも貢献している。リアスポイラーやドアミラーの影がその車体自身に落ちているセルフシャドウ表現に注目。
もう1つ、グランツーリスモにない、グラフィックス要素についても触れておこう。
それはFORZAでは、車がクラッシュすると、その箇所がリアルタイムに破損し、破壊されたり、傷が付いていく演出だ。
車同士の接触や、コースへの衝突など、その時の衝撃に応じて、FORZAでは「車が実際に壊れる」のである。壁に擦るとその箇所のボディ塗装が剥げるし、正面や背面をぶつければ、そのぶつけた箇所のライト類が割れてしまう。衝撃が大きければボンネットが歪んだり、バンパー類が取れ掛かったりもする。
衝撃は車の構造にも影響を与え、ボディや車軸が歪んでしまえば真っ直ぐ走れなくなるし、補器類が破損すればエンジンの出力が上がらなくなったりする。衝突で取れ掛かってしまったバンパーは走行中は路面からの振動や走行風に当てられて激しく揺れ、走行時の空力的な抵抗にもなる。
もっとも、「ゲームなんだから、なにもここまで」という意見もあるだろう。これに応えるべく、ダメージの走行への影響具合は難易度設定で「オフ(ダメージ影響なし)/リミテッド(ダメージ影響は軽微)/シミュレーション(ダメージ影響は計算通り)」の3段階で設定できる。「軽微」以上ではレース入賞時に難易度ボーナス賞金が上乗せされるし、走行時に適度な緊張感があってかなり楽しい。「軽微」設定は、適度な緊張感とその報酬のバランスがいいので個人的には特にお勧めしたい。
グラフィックスの話だけでずいぶんと多岐にわたったが、とにかく、FORZAは、このグラフィックスだけでも一見の価値はあるということはお分かり頂けたであろうか。
擦った箇所にはリアルタイムに傷が付く! ダメージが大きければこんな感じにバンパーが外れかかる。オフィシャルにライセンスを取得した実車シミュレータ系でここまでダメージ描写に力を入れている作品はFORZAが唯一の存在。
続いて、ゲームの内容そのものについて見ていくことにしよう。
FORZAのゲームモードは大別して以下の5つ。
●アーケード・レース(ARCADE RACE)
好きな車を選んでの即興レースが楽しめるお手軽ゲームモード。対戦相手はコンピュータが務める。
車の仕様は基本的に固定されたものを選ぶしかないが、後述のキャリアモードを勧めていれば、そのマイカーの中から選んで走ることも出来る。アーケードモードでも、最初からすべての車種やコースが利用できるわけではなく、特定のレースで入賞(3位以内)することで選べる車種やコースが増えていく。
●キャリア・モード(CAREER MODE)
わずかな初期クレジット(お金)を元手に安い中古車を買い、これで様々なレースに挑んで、賞金クレジットを稼いでバーチャルなモータースポーツ界でトップを目指すモード。稼いだ賞金を使って車を買い替えたり、改造をしたりして、マシンの性能を上げることで、さらにレベルの高いレースに挑戦していけるようになる。取得した車には実在メーカーのエアロパーツを取り付けたり、完全オリジナルの塗装やデカールの貼り付けも可能。
●マルチプレイヤー(MULTI PLAYER)
画面分割対戦、Xbox Liveを介してのオンライン対戦、最大8台のXboxを相互接続してのLAN対戦が楽しめるモード。
キャリアモードのオンライン対戦と違い賞金などの仕組みはない。
●タイムトライアル(TIME TRIAL)
コースごとに完全に固定された車種、仕様で走り、最速を競うモード。ラップタイムはXbox Liveを介してランキング集計される。
●フリーラン(FREE RUN)
各ゲームモードに登場する、任意のコースを好きな車で、何周も走れるモード。練習用的な位置づけ。
レースに入賞すれば賞金クレジットを獲得できる。
累積クレジットがRPGでいうところの経験値に相当。これが一定値を超えることでレベルアップ。
レベルアップ時にはゲームシステム側からワンポイントアドバイスももらえる。
各レースイベントには参加条件が設定されており、お気に入りの1台だけを乗っているだけでは先に勧めない。
各イベントを構成する全レースで1位を獲得するとボーナスカーがプレゼントされる。これはアストンマーチンDB9クーペをゲットしたシーン。とても稼いだクレジットでは買えない超高級車がただでもらえるのは嬉しい。売るか乗るかはあなた次第。
グランツーリスモ4では、泣く泣く実装が延期されてしまったネットワーク対戦。これが最初からサポートされているのが、FORZAの強みだといえよう。
なかでも特筆すべきなのは、キャリアモードにおいても、オンライン対応がなされている点だ。
自慢の最速カーを持ち寄っての極限レーシングはもちろん、キャリアモードの進行度合いや走行記録を見て同レベルの対戦相手との対戦も楽しめるのだ。
車にはオリジナルの塗装やデカールの貼り付けも施せるので、MMORPGのように、コミュニティ内での自分のアイデンティティのアピールも出来るのが面白い。また、単に他プレイヤーと競い合うだけでなく、キャリアモードにて獲得した車を売買、交換したりすることもできる。
「オンライン」を媒介してレーシングゲームがコミュニティを育んでいけるシステムはグランツーリスモ4にない要素であり、この部分においては、FORZAはかなり先行している印象だ。
実際に筆者も通常仕様のインプレッサを購入して、WRCカーライクへのメイクアップに挑戦してみた。
実際にコースを走らせてみるとこんな感じ。適当に貼ってみた割には、かなり「それっぽく」見えるでしょ?
S14シルビアを黒塗装してXboxデカールを貼ってみた。こういう感じでワンポイントで貼るだけでも結構かっこよく決まる。
筆者はマツダの2001年式6型RX-7(FD3S)に乗っており、趣味で筑波サーキットへの走行会にもよく参加している(現在、エンジンブローのため、新品エンジンに載せ替えて慣らし運転中)。腕前は「下手っぴ」で、あまり走行タイムはよい方ではないのだが、何周もしているので、コース走行時に車から見える景色はよく覚えている。そんな自分が、FORZAに収録されているゲーム上の筑波サーキットを走ってみて驚かされたのはその再現忠実度。コースのレイアウトはもとより、コース脇の各種施設、コースを横断している送電線の見え方、はるか遠方にある木々の見え方に至るまでが、本当によく再現できているのだ。思わず「そうそう、こんなかんじなんだよ」と呟いてしまったほど。
実際に、同年式のRX-7をFORZA内で購入して、愛車とほぼ同仕様にチューンしてから、筑波サーキットで走ってみると、自分の運転のクセが現れて、驚くほどにライン取りが現実と同じになってしまう。サーキットの各コースには理想のライン取りがあるのだが、ドライバごとにクセ、腕前の善し悪しもあるし、車の特性も絡んできて必ずしもそうは走れない。まだまだ下手っぴな私などは言うに及ばずで、現実のコース走行でやりがちなミスを、FORZAのコースでも同じようにやってしまうわけだが、その結果が驚くほど同じになるのだ。
なお、筆者のFORZAでの筑波サーキットの走行タイムは現実よりも3-4秒速かった。誤差にすれば-5%ほど。計算上の理論値が出ている…と考えれば、これは驚くべき精度だと言える。FORZAは十分、シミュレータと呼ぶに相応しいと思う。
FORZAで筆者の愛車に近いドレスアップを行い、筑波サーキットを走らせてみた画面ショット。
前回、筑波サーキットの走行会に参加した際、友人にデジカメで撮影してもらった実写の写真。
FORZA内に出現させた筆者の愛車のそっくりカーをぶつけまくってみた。走行風にばたつくボンネットの姿が涙を誘う。ちなみに修理費は賞金クレジットからさっ引かれます。
そして、車の挙動も実にリアルに仕上がっている。
FR車(フロントエンジン・後輪駆動)はオーバースピード気味でステアリングを切るとお尻が外に出やすい。しかし、そうなった瞬間にステアリング操作(逆ハン、カウンターなどと呼ばれるテクニック)とアクセル操作をすることで理想の走行ラインに修正して行ける楽しさがある。このFR車の楽しさがFORZAでも、リアルに再現される。
ターボ車はタービン交換やブーストアップでお気軽チューンが可能。
一方、FF車(フロントエンジン・前輪駆動)はステアリングを切った状態で軽くブレーキングしたりアクセルオフをすることで、車速降下を最低限にしつつ車体をコーナーの内側に巻き込んでいく「タックイン」がやりやすくて、そこが面白さなわけだが、これもFORZAではリアルに再現されている。特にコーナーの立ち上がりからフル加速すると前輪が車体をひっぱっているな、という実感が画面からも伝わってくるのがいい。
重量や前後の重量バランス=重心の位置もよくシミュレートされている。重い車は上り坂は辛いし、下り坂は止まりにくく、しかし軽い車に衝突されても安定性が高いわけだが、これもゲーム中によく実感できる。逆に、軽い車はエンジンパワーがそれほどでなくても、コーナーの前後が速くなる。
現実でもそうだが、パワーを上げたらそれにバランスする足回りチューンは必要不可欠。
コーナリング時に踏ん張りが効くように-2.0度前後のネガキャン設定は走り屋の常識。
パワー面での性格を左右するのが最終減速比(FD)。この値を大きくすればトルク/加速度重視に、小さくすれば最高速重視になる。コーナー数の多いテクニカルコースではFD値を大きくするのがセオリー。逆にオーバルコースでは値を小さくした方がいい。コースや敵車の種類によってはこの設定の変更が必要不可欠だ。
実際にプレイすると、きっと「ビジュアルのリアリティと挙動のリアリティが非常にバランスよくまとまっている」と感じることだろう。これは、つまり、「シミュレータとしての説得力が高い」ことの証明に他ならない。
なお、FORZAでは初期設定時、車の挙動を強制的に安定させるSTM(スタビリティ・マネジメント・システム)がオンになっている。これがオンだとFFやFRといった駆動方式の差異や重量バランスが挙動に現れにくい。よって「その車種をとことん楽しみたい」という車ファンはオフにすることをお勧めする。ABS(アンチロック・ブレーキング・システム)とTCS(トラクション・コントロール・システム)はオンのままでいい。なお、オフにしておくと、レース入賞時の賞金にボーナスも付くので二度美味しい。さらに補足すると、4WD(四輪駆動)では、車種によってはSTMをオンにした方が実車に近い挙動が得られるものもある。
最後に、敵車AIについて触れておこう。
FORZAに登場する敵車の操縦は「Drivatar」と名付けられたFORZAオリジナルのAI(人工知能)によって行われる。
Drivatarは、英国マイクロソフトの人工知能専門の研究開発チームとFORZA開発チームとのタッグによって開発されたそうで、レーシングゲームとしては他に類を見ない、学習型AIとなっているのだという。
このAI、Drivatarについての詳細については、
こちらにスペシャルサイト
が設けられているので、興味のある人は参照して欲しい。まだ、工事中のコンテンツが多いが、2005年終わりまでには、このDrivatarの仕組みについての詳細な解説が掲載される予定だとのこと。
AIそのものは単一だが、このAIは、自分が操縦を任されたその車種の特性を理解し、そのコースを周回するごとに、最適な操縦を探り出していく、実に人間味溢れるものになっているのだという。
確かに、実際にプレイしてみると、気づいたことが2点。
1点目は、周回コースならば一周目よりも二周目、二周よりも三周目の方が速くなることだ。2点目は、このAI、どんな車を操縦していても、諦めずに勝つために全力を出してくること。プレイヤー側からすると、勝つために、感情むき出しでレースに参加しているという印象を持つ。
たとえるならば、グランツーリスモ4のAIは、「仲間内の走行会でみんな紳士的」という感じ。一方、FORZAのAIは「勝つためならば手段を選ばないぜ」といった、ジャイアン気質な「熱血レーサー野郎」というイメージなのである。
プレイヤー自身のドライビング時でも、FORZAのAIが考える理想のラインをコース上に透過表示してくれる機能もあり。これが超便利。
スタート直後から、第一コーナーの旋回に有利なポジションを取ってくるし、こちらが旋回中でも接触を恐れずインから抜こうとしたりする。こちらがアウトから抜こうとするとブロックしてくるし、プレイして「こんちきしょう!」と思うことが多いのだ。このAIの性格付けも、FORZAの特徴だと思う。ほんと、走行中、かなりひどいことをしてきたりするので、何をされても怒らないように。ゲームのAIのしていることですから。
さて、このDrivatarというAI。なんと敵…としてだけじゃなく、味方に付けることも可能なのだ。昨日の敵が今日の友…じゃないが、賞金の一部を提供することを条件に、自分の車の運転をも、このAIに任せることが出来るのだ。
敵車も自車も同じAIでは、「レースとしての面白み」がなくなってしまうのでは?…という意見はごもっとも。そこでFORZAには、プレイヤーの運転特性をDrivatarに教え込めるAIの教育モードが搭載されているのだ。
やり方は簡単で、「トレーニングモード」に入って、この中の規定のコースを規定の車種で走ってみせるだけ。車種やコースごとの運転の仕方の特徴を評価、そして学習し、他の敵車AIとは明らかに違った動きを見せるようになる。学習させたAIには名前を付けて保存することができ、キャリアモードの賞金獲得レースにも使用可能だ。プレイヤーの獲得賞金は減るが、優勝の副賞としてもらえるボーナスカーには影響しないので、状況に応じて有効に活用するといい。
指定のFF車であるフォード・フォーカスを使って筑波サーキットでAIを教育。各コーナーをクリアするごとにゲームシステム側から採点がなされる。50%が平均。それより上ならば良。
今度は指定の4WD車であるスバル・インプレッツァを使って、アップダウンと連続コーナーが激しい「ブルー・マウンテン・レースウェイ」コースでの走行を促される。へたくそだと50%以下の採点がなされる。気に入らなければ教育内容をキャンセルしてやり直すことも出来る。
AIの学習状態は随時確認可能。一通り学習させたあとも、あとで苦手箇所を教え直す事も可能。教え直すにしても、先生であるプレイヤー自身の腕前が向上していなければ意味がない。
コンセプトとしてはかなり「シミュレータ寄り」のFORZAだが、このように「遊べるゲームモード」が無数に用意されており、全体としてみれば、よくできた『ゲーム』となっている。
発売後半年が経過したグランツーリスモ4にそろそろ飽きてきたモーターフリークも多いはず。これを機会にFORZAと一緒にXboxを購入してみてはいかが?
トライゼット西川善司
■「Forza Motorsport」スペシャルサイト
http://www.xbox.com/assets/ja-jp/games/forza/index.html
■Xboxのホームページ
http://www.xbox.com/ja-jp/
■GAME Watch ニュース
【4月18日】マイクロソフト、Xbox「Forza Motorsport」オープニングムービーと実写との比較ムービーを公開
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050418/forza.htm
【2月24日】マイクロソフト、Xbox「Forza Motorsport」
230車種にも及ぶ全収録車種を公開
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050224/forza.htm
【1月19日】マイクロソフト、Xbox「Forza Motorsport」
230車種にも及ぶ全収録車種を公開
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050119/forza.htm
【2004年9月25日】TGS2004ブースレポート 〜Xbox編〜 その4
とことんまでリアルさを追求したレースシミュレーション「Forza Motorsport」
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040925/xbox4.htm
【2004年9月22日】マイクロソフト、Xbox「Forza Motorsport」
ゲームと実車を両方体験できるイベントを実施
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040922/forza.htm
【2004年5月13日】Electronic Entertainment Expo 2004現地レポート
Microsoftブース Xboxレポート
「DOOM 3」、「Forza Motorsport」など注目作品を追う!
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20040513/xbox2.htm
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