ビジネスプリンターに新たな選択肢 低コストなA3ノビ対応ビジネスインクジェット複合エプソンが満を持して投入!PX-1700F 登場

「本当はA3が欲しかった!」ユーザー待望の
エプソン製A3ビジネスインクジェット
ここがポイント

 家庭用やビジネス用プリンターで攻勢を仕掛けるエプソンが、インクジェット方式のプリンターでも、ビジネス市場に本格参入している。「ビジネス=レーザー」というプリンター市場の動向を大きく揺るがす今回の参入の背景には、急速に進められてきたプリンターの集約化がある。

 プリンターの導入や管理コストを低減し、加えて節電という目標を達成するために、オフィスでは近年、プリンターを1カ所に集めた出力センターや、コピー機をベースとしたマルチ複合機を導入するケースが多かった。ただ、わずか1枚の印刷のために、多くの人間がわざわざプリンターの場所まで足を運ぶといったことや、出力の順番待ちが発生するという弊害が目立ち始め、最近では、少部数印刷のためのプリンターを部署に置く「部署ごとプリンター」へのニーズが高まっている。これを可能にしたのが、レーザープリンターの低価格化だ。10万円を切るカラーレーザー機も登場し、価格的にも、コスト的にも、部署ごとにプリンターを置くことが可能となった。

 これをさらに推し進め、さらなる選択肢を増やしてくれるのが、エプソンの新型ビジネスインクジェットプリンターである。前回、レーザープリンターに匹敵する印刷品質、安価なコスト、高い環境性を実現したA4対応インクジェット複合機「PX-B750F」を紹介したが、さらに、エプソンとして初めてA3のインクジェット複合機市場にも製品を投入。A4対応複合機と合わせ、小規模オフィス、現場事務所、SOHOといったビジネスの現場に新しい選択肢を提供した。

 そんなわけで前回の、A4カラーインクジェット複合機「PX-B750F」に続き、今回はA3カラーインクジェット複合機「PX-1700F」をレビューする。2段カセットを標準で搭載した本格的ビジネス向けファクス複合機でありながら、5万9980円(エプソンダイレクトショップ参考価格/以下同)を実現したA3ノビプリンターであり、今までA3対応機の複合機が欲しかったけれど手が出なかったというユーザーに向けて、インクジェットプリンターの新しい市場開拓を目指している。

■主なスペック

型番 PX-1700F
印刷方式/解像度 MACH方式/5760×1440dpi
給紙容量/最大用紙 250枚×2/A3ノビ
主な機能 両面印刷(A4)/スキャン(A3)/両面スキャン(A4)/カラーコピー/ファクス
インターフェイス USB/1000BASE-TX /100BASE-T/無線LAN
消費電力 約20W(約4.4W/スリープ時)
サイズ 559(W)×459(H)×690(D)mm/約 18.9kg

 まずは、本体の概要を見てみよう。用紙カセットは本体前面に標準で2段搭載されており、合計500枚の用紙がセットできる。2段カセットを使い分けることで、A4とA3など2種類の用紙を同時にセットできるので、用紙交換の手間も無くなる。また、A4用紙利用時には、内蔵されたユニットで両面印刷が可能。スキャナー部はA3に対応した原稿台に加え、ファクス、スキャンに対応したオートドキュメントフィーダーが装着されている。

A4、A3用紙を常時セットできる2つのカセットを標準搭載。A4の両面プリントにも対応した。安価だが、本格的なビジネス仕様となっている 操作部はチルト方式を採用。タッチ方式ではなく、メカニカルのボタンを搭載し、操作性も良い
スキャン部も、A3対応の原稿台および、A3まで対応のADFを標準搭載する。また、A4の読み取り時には、ADFは両面読み取りにも対応

欲しかったA3が手に入る本体価格
運用にかかるコストも大幅削減
ここがポイント

 PX-1700Fの最大の武器は、なんといってもその価格設定にある。オフィスでのビジネスシーンにA3が必要というケースは意外に多いようで、Excelで大きな表を出力したいといったニーズは、学校や官公庁をはじめとして、一般の企業でも高いという。また、設計や建設、デザインといった現場では、図面の出力にどうしてもA3やA3ノビといったサイズが必要になってくる。そうした必要に迫られたとき、これまではオフィスのセンター機で出力するか、あるいは出力サービスを手掛けるショップまで足を延ばすという手間が、現場の生産性を阻害することになっていた。しかし、いざA3のコピーにまで対応したカラーファクス複合機を購入しようとすると、それなりの出費が必要。たとえば、A3対応のファクス機能付きカラーレーザー複合機としては、エプソンにはLP-M5000FZがあるが、本体価格は40万円を超える。そういった、A3対応の複合機が「のどから手が出るほど欲しい」現場にとって、5万9980円というPX-1700Fの価格は衝撃的であることは言うまでもない。PX-1700Fであれば、A3プリント、コピー、スキャンを集約した複合機であるため、それぞれを別に購入する必要もない。これにより、オフィスでの設置スペースや、初期にかかるコストを削減できる。こうしたことが人気の背景にあるようだ。

 PX-1700Fのランニングコストは、A4カラー文書1枚あたり7.3円の低価格となっているが、ファクス用途をはじめとする、モノクロ文書を中心としたコスト対策も考えられている。実のところ、オフィスで出力する文書の6~7割が、モノクロ文書だといわれている 。このため、PX-1700Fでは、ブラックインクに、大容量のカートリッジを採用した。これにより、たとえば大量のモノクロ印刷を実行する場合でも、PX-1700Fは高い生産性を発揮してくれる。また、ブラックインクに関連していえば、「黒だけでモード」も搭載されている。これは、カラーインクの残量が限界値を下回った場合でも、ブラックインクが残っていれば、最長5日間はモノクロで印刷できる機能だ。万が一インクのストックがなくなっても、ビジネスを止めることがないよう搭載された機能である。

インクカートリッジは全4色で、普通紙はもちろん、写真を印刷しても画質は十分。ブラックインクは大容量タイプで、オフィスのモノクロドキュメントのコストダウンにも配慮されている

全色顔料インクを採用し、
普通紙高画質を実現
ここがポイント

 今回、エプソンでは、インクジェット機でビジネス市場展開するにあたり、4色すべてに顔料インクを採用している。現在、インクジェット機の多くは染料インクを採用しているが、これは、水に弱く、雨でハガキがにじむという問題を聞いたことがある方も多いだろう。しかし、オフィス文書となるとそうはいかない。つまり、普通紙でもにじみの少ない文書を可能とするために、全色水濡れに強い顔料インクを採用したわけだ。

 もともとインクジェットは写真の再現性でレーザープリンターに大きく勝るが、PX-1700Fでは、写真をコピーするときでも高いクオリティを発揮する。PX-1700Fでは、写真と文字が組み合わされた文書をコピーした場合、写真部と文字部を分離して内部処理。写真にはスムージングなどの処理が行われ、文字はエッジを強調するなどして、原稿を忠実に再現してくれる。安価なランニングコストで美しいコピーが可能なこと、しかも、それがA3に対応していることで、PX-1700Fならば、クライアントに提出する写真入りの資料や、カラーのまま見せたい社内資料のコピーなど、さまざまなビジネスの現場で活躍できるだろう。

全色水濡れに強い顔料インクを採用し、マーカーもにじみにくい 文字エリアと写真エリアに分割して最適な処理を行い、原稿を忠実に再現する

オフィスでの利用実態にベストマッチ
インクジェットがビジネスを加速する
ここがポイント

 一般的に、インクジェット方式のプリンターは印刷速度が遅いと考えられている。カタログだけを見ていると、高価なレーザープリンターでは20枚/分といった印刷速度が一般的になりつつあり、そんなイメージを抱かされる。それがビジネスシーンでのインクジェットプリンターの普及を阻む一因であったのだが、それが誤解であることは前回も述べた。改めてオフィスでのプリンターの利用実態を見てみると、あらゆる業務の部署でも、圧倒的に多いのが、1枚の印刷なのである。

 エプソンが行った社内調査においても、情報化部門から管理部門に至るまで、すべての部署で1回にプリントする文書の枚数は、1枚以下が、実に60%を占める。5枚までを含めると90%と、圧倒的に少部数の印刷が多いという結果が出ている。にも関わらず、現状では、集約型の出力機までわざわざ取りに行ったり、順番待ちが発生して弊害が起きているのは、前述のとおりだ。

 こうしたことを考えれば、オフィスでの利用実態に合った「正しい」プリンターの導入することは、すなわち業務の効率化を上げることに直結している。レーザープリンターに比べ、イニシャルコストが安いPX-1700Fを部署ごとに配置することで、少部数印刷時のわずらわしい順番待ちを回避し、ビジネスの生産性を高めてくれることだろう。

省電力、省廃棄物で環境にも優しい
エプソンのインクジェットプリンター
ここがポイント

 ところで、プリンターを分散する動きのなかで、PX-1700Fが有利なのは、もうひとつ理由がある。それは、せっかくの集約で進んだオフィスの省電力化を無駄にしないという点だ。

 たとえば、「部署ごとプリンター」として、レーザープリンターを導入したとする。ところが、レーザープリンターは省電力化が進んでいるとはいうものの、熱でトナーを定着させる機構上、比較的大きな電力を消費する。この点でも、PX-1700Fは部署ごとに置くプリンターとしてレーザープリンターより有利だ。

 頻度の高い少部数の印刷のために集約されたレーザープリンターをその都度起動するのは、経済的にも不合理だということを示している。したがって、少部数の出力には、センター機を動かすのではなく、部署ごとに導入したPX-1700Fで印刷をするといった使い方をすることで、オフィスの省電力化をさらに推し進めることもできる。

  • 一般的なレーザープリンターの場合、印刷時で数百W、最大消費電力で1000W以上のものが多く、インクジェット方式のPX-1700Fの方が圧倒的に省電力だ

 また、プリンターの買い替えや、部品の交換時にも、インクジェットプリンターは、レーザープリンターに比べて廃棄物が少なく、環境にやさしいといった特徴もある。これは、カラーレーザープリンターの構造が複雑で、部品点数が多いことがその原因だ。たとえば、消耗品であるトナーカートリッジと、インクカートリッジを比較してみても、後者のほうが圧倒的に体積も、本数も少なくてすむ。環境面で考えても、小規模印刷に適したプリンターは、インクジェット方式だといえるのだ。

 もちろん、レーザープリンターには大部数印刷で高速といったメリットがある。臨機応変にプリンターを使い分けられる環境をつくることで、省電力と利便性が両立できるのだ。

クラウドサービスにも対応
iPhoneやAndroid端末からも複合機をコントロール
ここがポイント

 こうしたPX-1700Fの性能面での長所に加え、エプソンでは、プリントそのものの利便性を高めビジネスを加速するアイデアを、オフィス向けインクジェットに搭載している。それが、クラウドサービスなどを使った新しいプリンターの利用方法だ。

 「iPrint」は、普及が著しいスマートフォンやタブレット端末に対応した無料のアプリ。iOS版とAndroid版が用意されており、Wi-Fiネットワーク内にあるプリンターを自動認識し、スマートフォンやタブレット端末から文書や写真を印刷できるほか、iPrint上でPX-1700Fを操作し、スキャンした画像を、PCレスで取り込むといった使い方も可能だ。さらにはEvernoteやDropboxといったオンラインサービスにも対応しており、ドキュメントの共有もできるようになっている。このように、PX-1700Fを部署や事業所に置くことで、印刷やファクスといった機能だけでなく、モバイルにも対応した情報を共有するためのデバイスとして活用可能だ。

iPrintなら、スマートフォンやタブレットでネットワーク内のプリンターを自動検出。印刷のほか、端末側の操作でスキャンもできる。

 「メールプリント」は、たとえば、外出先や自宅からオフィスのPX-1700Fに印刷が可能なサービス。手持ちのノートパソコンやモバイル端末といった環境から、プリンターのメールアドレスにメールを送ることにより、添付ファイルを印刷できる。このためにエプソンでは独自のクラウドサービスを構築しており、セキュリティの面でも安心して外出先からプリントが可能だ。また、先方の許可を取れば、取引先で先方のプリンターから出力といったことも可能となっている。

事業所やSOHOの情報コアとして
PX-1700Fがビジネスを変える!
ここがポイント

前面左に設置されたメモリーカードスロット。装着したメモリーから直接印刷や、スキャンした画像の取り込み、およびNASとして利用が可能 用紙カセットを1段のみとして価格を抑えた「PX-1600F」

 最後になるが、PX-1700Fの細かい機能を見ていこう。まず、スキャナー部はCIS方式で、A3までの原稿に対応。ADFもA3に対応しており、ADFでの読み取り時には、A4では両面読み取りにも対応している。解像度は主走査1200dpi、副操作2400dpiで、最大9600dpiでの高解像度取り込みが可能。

 本体前面にはUSB、CF、SDカード、メモリースティックなどに対応したメモリーカードスロットが設けられており、スキャンしたデータを直接保存したり、デジタルカメラで撮影した写真をPCレスで印刷することも可能だ。また、USBに関してはPictBridgeにも対応。対応するカメラ、携帯電話から写真を印刷できる。さらには、接続したメモリーは、社内ネットワークからアクセスしてNASとしても利用できる。大容量のSDカードが安価になった現在、手軽にファイルサーバーを構築できるのはうれしい。

 PCとの接続は、USBも用意されているが、オフィスでの利用では、やはり1000BASE-TXだろう。また、IEEE 802.11nにも対応した無線LANが最初から内蔵されているため、設置にかかる手間も最小限ですむ。

 改めてまとめると、A3対応のカラープリンターが欲しかったが、高価で手が出なかったという事業所、SOHOなどのオフィスに、PX-1700Fは自信を持ってお勧めできる。また、すでに部署ごとにプリンターは入っているが、ランニングコストを安くしたい、A3まで出力したいといった買い替えにも、PX-1700Fはお勧め。高速、高画質、低環境負荷といった高い付加価値が、間違いなくビジネスを加速してくれるはずだ。さらには、PX-1700Fの下位モデルとして、用紙カセットが1段のみの「PX-1600F」も4万9980円というさらなる低価格で用意されている。少しでも導入コストを削減したいユーザーは、こちらを検討するのもいいだろう。

(小黒直昭)

ビジネスプリンターに新たな選択肢[A4インクジェット複合機編]

関連リンク

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http://www.epson.jp/

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