ビジネスプリンターに新たな選択肢「キレイで速い」エプソンのビジネスインクジェットPX-B750F 登場!

レーザーに匹敵する速度と美しさをオフィスでも実現
ここがポイント

 エプソンがインクジェット方式のファクス複合機をビジネスプリンター市場に本格投入。そんなニュースに、あれっと思った方も多いはずだ。「ビジネス=レーザー」という図式は、ここ10年ほどですっかり定着。オフィス向けのカラーレーザープリンターが10万円を切るなど低価格化も進み、ビジネスシーンでのレーザープリンターの優位さは揺ぎないものだと思われていたからだ。

 では、なぜエプソンがその市場にインクジェット方式で参入するのか。その理由はズバリ、「きれい」、「速い」、「コストダウン」、「環境にやさしい」につきる。といっても、にわかには信じられないこの「新常識」は、2回にわたって詳細に見ていくことにするが、加えて、オフィスを取り巻くプリンター環境の変化も、参入の背景にある。

 レーザープリンター普及の10年の歴史は、言い換えるなら、プリンター集約化の流れでもあった。集約化とはすなわち、それまで部署ごとにあったプリンターを、1台に集約することで、省電力化や、メンテナンスの手間を省きコストダウンを実現するものだ。場合によってはカラーコピー機までを兼用する大型のマルチ複合機を導入。大企業においては、大人数で共有する出力センターを設けることで、大幅なコストダウンが可能となったのだ。一方、集約化を押し進めたことで、ビジネスでの弊害も目立つようになってきた。出力順番待ち時間が発生したり、たった1枚の出力のために席から離れたプリンターまで足を運ぶ必要があるなどは、その代表例だ。この結果、「部署ごとプリンター」の導入により、出力の一部分散をはかる動きが、オフィスで目立ち始めている。

 前置きが長くなったが、今回紹介するA4ファクス複合機「PX-B750F」も、そうした「部署ごとプリンター」を指向している。部署単位でプリンターを導入するためには、部署で決済が可能という意味でも、価格、ランニングコストが重要になる。また、せっかく押し進めた省電力化の流れに逆行しないことも大切だ。PX-B750Fは、そうした条件をクリアしつつ、インクジェットならではの高画質を実現したA4複合機であり、また、オフィス向けに設計することで、家庭向けと比較すると大幅な耐久性を向上した複合機となっている。

■主なスペック

型番 PX-B750F
印刷方式/解像度 MACH方式/4800×1200dpi
給紙容量/最大用紙 A4 250枚/角形2型封筒(リアASF)
最大給紙容量 580枚(フロントカセット 250枚、リアASF 80枚、
オプション増設カセット 250枚)
主な機能 両面印刷/両面スキャン/カラーコピー/ファクス
インターフェイス USB/1000BASE-TX /100BASE-T
消費電力 約17W(約2.4W/スリープ時)
サイズ/質量 460(W)×383(H)×654(D)mm/約 13.8kg

 PX-B750Fの筐体を見ると、まず、オフィスにしっくり合うデザインに目が行く。オフィス向けインクジェットということもあり、家庭用では見られない最大250枚の用紙カセットが標準装備。また、両面印刷機構を標準で内蔵している。スキャナー部に設置されたオートドキュメントフィーダーも、両面に対応。また、カラーに対応したファクス機能も内蔵しており、部署ごと、あるいはSOHOに必要な機能をすべて網羅した複合機であることがわかる。

PX-B750F。オフィスにフィットする白系のデザインで、両面印刷機能もコンパクトに本体にまとめられている。標準装備のADFも標準で両面対応。ともに、近年のオフィスでは必須といえる機能だ

全色顔料インクと新開発ヘッドで
レーザーに匹敵する印刷品質を実現
ここがポイント

PX-B750Fでは、新たに開発した大容量インクカートリッジを採用。後述するMサイズのカートリッジも使える

 それでは、PX-B750Fの詳細を見ていこう。

 インクジェット方式をビジネスシーンで展開するためには、乗り越えなければいけないいくつかの課題があった。そのひとつが、インクジェットで普通紙に印刷した文書は水に弱くにじみやすいという問題だった。PX-B750Fは、4色のインクを利用して印刷を行うが、このにじみ対策として全色顔料インクを採用。印刷した文書にマーカーで線を引いてもにじみを最小限に抑えることに成功している。

 同時にPX-B750Fでは、新開発のヘッドで解像度を従来機の倍近い600dpiへと向上させている。これにより、レーザープリンターに比べ比較的弱いとされてきた、小さな文字の判読性も高まった。インクジェットでは限界といわれてきた4ポイントの小さな文字(1ポイントは0.35mm)の文字でも、レーザープリンター並の判読性を実現している。この、全色顔料インクと新開発の高解像度ヘッドにより、普通紙に印刷してもレーザープリンターに匹敵する文字の読みやすさを実現したわけだが、解像度が高まり、1ノズルあたりが担当する噴射面積が減ったことで、使用するインクの量も減った。両面利用時にも、裏写りの少ない、読みやすいドキュメントが印刷可能となったわけだ。

  • 新開発の高解像度ヘッドの採用により、インクジェットでも小さな文字の判読性を高めている

 普通紙での写真の美しさもエプソンならではの技術が光る。特筆すべきは、こうした写真技術が、コピー機能でも活かされていることだ。PX-B750Fでは、コピーの実行時に、原稿を文字エリア、写真エリアに分解。文字部分はエッジ強調などの処理が、写真部分にはスムージング処理などが行われる。この結果、コピーによる画質劣化を最低限に抑え、美しい鮮やかな再現が可能なのはうれしい。

 元来、写真の再現性では、インクジェットはレーザープリンターに大きく勝るのはご存じのとおりだ。PX-B750Fならビジネス文書も、レーザープリンター並みの読みやすい文字と、美しい写真の再現性で演出してくれる。

  • ノズル列を4段にし、交互に配置。dpiを向上。同時に、1ドットあたりのインク量を低減し、裏写りの少ない印刷を実現している。ノズルを増やしても印刷速度を低下させることがないのが、エプソンのテクノロジーだという
  • 顔料インクの採用により、水濡れに強く、マーカーもにじみにくい
  • 原稿を文字エリアと写真エリアに分割し、それぞれに最適な処理を行う

「インクジェットは遅い」を覆し
ビジネスを加速するエプソンのインクジェット
ここがポイント

 レーザープリンターがオフィスで使われる理由のひとつに、印刷速度が速いという点があげられる。実際、エプソンが行った調査でも、ユーザーがレーザープリンターの購入を決めた最大の要素に「印刷の速さ」があがっている。オフィス向けのレーザープリンターでは、高速なもので20枚/分といったスペックをうたうものも多いが、今回のPX-B750Fでも11枚/分(ipm)と、インクジェットプリンターは分が悪い。

 ところが、オフィスで行われる1回のプリント枚数は、実は、「1枚」というケースが多い。エプソンの社内調査でも、1回の印刷で出力する枚数は1枚が圧倒的。1枚~5枚までを合算すると、実に、印刷の90%を占めるという実態が浮かび上がってきた。そうなると、実際にビジネスの現場で役立つプリンターの速さとは、1分間に何枚印刷できるかではなく、1枚目が何秒で出力できるかということになってくる。

 ご存じのように、多くのレーザープリンターでは、用紙に転写したトナーを熱で融着させる熱ロール式を採用している。このために、レジューム状態からの復帰には予熱という準備時間が必ず必要となる。また、レーザープリンターでは、レディー状態から印刷を開始し、1枚目の印刷が完了するまでの「ファーストプリント」と呼ばれる数値が、速さの指標として重要視されている。これに反して、インクジェット方式にはウォームアップの時間が必要ない。「オフィスでの利用実態を考えたとき、最適なのはインクジェット方式なのではないか」、という発想が浮かぶ。

 例えば、前述した通りオフィス向けのレーザープリンターの印刷速度は、高速なもので20枚/分なのだが、実際ファーストプリントにはカラー印刷時で20秒程度かかった。それに対して、PX-B750Fでは、カラーで約11秒という高速印刷を実現している。さすがに数十枚を超える印刷シーンではトータルの印刷時間ではレーザープリンターに速度を逆転されるものの、90%以上が5枚以下というオフィスでの出力の実態を考えると、その優位性は圧倒的だといえる。

 このように、PX-B750Fは、日常の業務で頻発する少部数印刷を、高速にこなしてくれる。手近に置けば、まさにビジネスを加速してくれる1台といえそうだ。

ランニングコストでレーザープリンターを凌駕
ここがポイント

 ここまででPX-B750Fが、「きれい」と「速さ」で従来のレーザープリンターをリプレイスする可能性を秘めたプリンターであることがお分かりいただけたと思う。しかし、オフィスでは、コストという問題も付随する。特に写真を印刷するユーザーにとっては、インクのコストは決して安いようには感じられない。ところが、平均的なビジネス文書を印刷した場合、PX-B750Fでは、A4で1枚あたりのカラー印刷コストが約6.4円となるという(Lサイズインク使用時)。これは、同社のオフィリオブランドのA4カラーページ複合機「LP-A500F」のカタログ値の15.2円と比較すると、1/2以下と、圧倒的に安い。

 8.8円というコスト差は、5万枚の印刷を仮定すると印刷コストだけで実に44万円という累積差となる。エプソンでは、PX-B750Fの利用シーンを月間1000枚~程度の事業規模と想定しているが、仮に月間1000枚で、平均的なプリンターの耐用年数である3年間を最低限として仮定しても、コスト差は約32万円となる。

 長期的なコストだけではない。今回、エプソンではPX-B750F用に、Mサイズのインクカートリッジを用意している。これは、「部署ごとプリンター」という特性を考え、部署単位で決済できる金額に配慮した結果だという。Lサイズインクの5480円(1色/エプソンダイレクト価格/以下同)と比べMサイズインクは2480円となり、4色を同時に購入しても1万円を切る価格設定となっている。ちなみに、カートリッジの印刷可能枚数は、Mサイズで1200枚、Lサイズで3400枚となっている。

インクジェットならではの
低消費電力にも注目
ここがポイント

 プリンターのコストで考えなければいけないもうひとつの要素が、消費電力だ。言うまでもなく、昨今のエコロジーの潮流にあって、消費電力そのものも、プリンター選びの大きな指針となっている。PX-B750Fの消費電力は、動作時で約17W、スリープモード時で約2.4W。これは、最新の省電力レーザープリンターの7~1000W(動作時最大)、数W(スリープ時)に比較すると、圧倒的に少ない。最近の傾向として待機時の消費電力は、そう大きな違いがない。ただし、一度動き始めると、その電力差は80~90%にも達する。加熱が必要ないインクジェットプリンターだからこそのこの消費電力である。このあたりも、オフィスのプリンターとして、インクジェットが注目される大きなアドバンテージだといえるだろう。

 PX-B750Fは、環境面でもレーザープリンターより優位に立つ。それは、部品点数の少なさにあるという。割と勘案されていないものの、レーザープリンターは複雑で、数多くの素材からなるパーツで構成されている。当然、部品交換や廃棄時には、リサイクルに回せないものは環境に負荷をかける廃棄物として処理させることになるわけだが、部品点数の少ないインクジェットでは、廃棄物も少量ですむ。こうした隠れた環境性能も、プリンター選びのひとつのポイントとして考える必要がある。

メンテナンス性を向上 アフターサポートも充実
ここがポイント

 PX-B750Fは、オフィス向けということで、家庭向けインクジェット以上に耐久性を向上した設計がなされているという。さらに、ビジネスをストップさせないための設計配慮も行われた。インクカートリッジの交換は、フロントアクセス方式を採用。フロントパネルを開くだけで、インク部にアクセスできる。これは、インクカートリッジとヘッド部が分離しており、ヘッド部にインクを送り充填する方式を採用しているためだ。また、廃インクは、廃インクタンク(メンテナンスボックス)へ溜まる方式だ。ただ、一般的なインクジェットプリンターと異なり、メンテナンスボックスをユーザー自身が交換できるようにした。これにより、廃インクでメンテナンスボックスがフルになったとしても、本体をメンテナンスに出すことなく、プリンターを使用することができる。

 紙詰まりの際は、リアユニットを外せば、詰まった用紙を取り除ける設計となっている。このあたりは、複雑な機構のレーザープリンターに比べると非常に楽なのも助かる。

  • PX-B750Fでは、フロントアクセスでインクカートリッジ交換も簡単
  • 紙詰まりも、リアユニットの分離だけで取り除き可能。また、メンテナンスボックスは取り外して交換可能。廃インクがいっぱいになっても、メンテナンスに出すことなく、ユーザー自身で交換できる

 アフターサービス面では、オフィス向けということもあり、万が一の故障の場合にそなえ、出張保守である「エプソンサービスパック」や、「エプソン引取保守パック」も用意されている。これとは別に、今回はビジネスインクジェット機向けに、「代替機つき引取サービス」も新設された。これは、従来のメーカー持ち込み修理の際の修理品引き取りサービスに加え、有料ながら代替機の貸し出しを行うもの。サービスの申し込みをすれば、保証期間内外を問わず、修理品の引き取りと同時に代替機を持ってきてくれる。繰り返しになるが、これもビジネスをストップさせないというオフィス向けのプロダクツとして安心感を高めるために新設されたサービスである。

部署ごとプリンターはPX-B750Fで決まり!
ここがポイント

 PX-B750Fのそのほかの機能についても触れておこう。重複するが、用紙の節約となる両面印刷機能は標準で搭載。オフィス機としては絶対に欲しい機能だけに、標準搭載は納得である。また、オフィス向けということで、1000BASE-TXにも標準対応。スキャナー部はCIS方式で、主走査1200dpi、副操作2400dpi。標準搭載のADFは両面読み取りに対応している。本体には外部メモリー接続用にUSB端子も設けられ、PCレスでのスキャニングが可能。

 本体のリア部に設けられたリアASFには、最大でA4用紙を80枚セッティング可能。このASFを利用した場合には、ほぼ直線的に給紙が行われるため、厚紙や、ハガキ、写真用紙、および、ラベルシートなどに印刷が可能。また、特筆すべき点としては、リアASFはA4を超える角形2号/角形20号までの封筒にも対応している。オプションとして250枚のA4増設カセットも用意されており、標準装備の本体カセット(250枚)と合わせ、最大500枚のカセット給紙が可能となる。

USB接続したメモリーカードなどに直接スキャンデータを保存する機能も搭載。PCレスでスキャンを実行。PCに転送する機能も備えた

リアASFには、A4を超える角形2号/角形20号の封筒もセット可能。A4書類を郵送する頻度が高い部署では、この機能は重宝する

印刷機能だけに絞った「PX-B700」

 最後になるが、改めて、PX-B750Fがどんな用途に向いているかまとめたい。大前提となるのが、ひと月のプリントが数千枚以下という、小規模のビジネスシーンである。速度とコストの面で、PX-B750Fはレーザープリンターと比較して大きなアドバンテージを持つからだ。そのうえで、部署ごとプリンターが欲しいとか、あるいはレーザープリンターのリプレイスが近づいたユーザーにはお勧めできる1台だ。また、カラーコピーやファクスを含めた複合機が欲しいといったSOHOや、私事ながら筆者のように文章の出力頻度が高い個人のニーズも満たしてくれる。

 なお、今回のインクジェット方式の投入にあたり、姉妹モデルとして、印刷機能だけに絞った「PX-B700」も登場している。基本スペックはPX-B750Fと同等(消費電力は22W)で、スキャナー部を割愛。その分、3万9980円(エプソンダイレクトショップ参考価格)という、ますます購入しやすい価格を実現している。すでにファクスやコピーがある利用シーンでは、PX-B700が選択肢を広げてくれるはずだ。

 さて、次回は、こちらもビジネス向けとしては大注目のインクジェット複合機、A3ノビ対応の「PX-1700F」レビューをお届けする。

(小黒直昭)

ビジネスプリンターに新たな選択肢[A3インクジェット複合機編]

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