仕事柄、さまざまな業界のさまざまな打ち合わせに出かける。そこで渡される資料、スケジュールといったあらゆるドキュメントが、今ではほぼすべて、ページプリンターによる出力になっていて驚かされる。

 ここ数年で、あらゆるオフィスでカラーページプリンターが浸透してきたわけだが、それゆえに、ビジネスの現場ではより高度なニーズへの対応が要求される。それは、ビジネスを停滞させないための高速性はもちろんのこと、省スペース性、ランニングコスト、メンテナンス性、耐久性など、多岐に渡る。

 こうしたニーズに対するひとつの回答として、エプソンが市場に投入したのが、省スペースにこだわったオフィス向けA3高速カラーページプリンター「LP-S7100」だ。10万円を切る価格設定(エプソンダイレクト価格)でも話題を呼んだLP-S7100。今回は、その実機をお借りするチャンスに恵まれたので、レポートをお届けしたい。

おもなスペック
型番 LP-S7100
解像度 600dpi(600×600dpi)
(C-PGIのスクリーン処理により9,600×600dpi相当)
インターフェイス 100BASE-TX/10BASE-T ×1、USB ×1
消費電力 ■最大:1,120W以下、レディー時平均54W
■印刷時:カラー平均約419W、モノクロ平均約357W
■スリープモード:平均3W
サイズ/質量 499.5(w)×538(d)×422(h)mm/約44kg
LP-S7100
LP-S7100と、LP-S7000(従来機)との比較。約40%のサイズダウンとなり、設置場所の自由度が高まった

 実機を目にしてとにかく感じるのが、そのコンパクトな本体サイズ。横幅も高さも50cmを切り、奥行きも54cmほど。従来機のLP-S7000と比較すると、約40%のサイズダウンに成功している。一見すると、これでA3に対応しているとは、ちょっと信じにくいほどだ。

 サイズダウンに成功した秘密は、実機を開けてみるとすぐに分かる。ページプリンターでは、感光体で結像した画像をトナーに置き換え紙に載せる仕組みになっているが、カラー機では、シアン、マゼンダ、イエロー、黒の4色の感光体ユニットを、プリンター内に設置する必要がある。このため、モノクロ機と比べてサイズが大きくなりがちだが、LP-S7100では、通常は平面やら縦位置に設置されている各色別の感光体ユニットを斜めに配置することで、本体の小型化を実現しているのだ。もちろん、高速出力という、カラーページプリンターの特徴は損なわれていない。上位機種に比べれば若干劣るものの、30枚/分(A4横方向給紙/カラー・モノクロ時)という速度は、従来機の「LP-S7000」の25枚/分を上回る。

 本体のサイズダウンにともない、トナーカートリッジも大幅にサイズが縮小された。片手にちょこんと乗るサイズのカートリッジで、ストックする場所を取らないようにとの配慮だ。このサイズでありながら、標準容量カートリッジならば、従来機同様、約6500枚の印刷に対応する。また、本体のサイズダウンに合わせ、オプションの増設給紙カセットも一新されている。

 
斜めに配置された感光体ユニット。実機を見ると、その配置に美しさすら感じる。この取り組みが、従来機40%ダウンという、コンパクトサイズを実現した
 
LP-S7100のトナーカートリッジ(右)と、従来機のLP-S7000(左)用との比較。ストックスペースが大幅に節約できるのがポイント

 ランニングコストも、オフィスでのカラーページプリンター利用を考える上で、大きな要素となる。LP-S7100では、カラー時11.9円/枚、モノクロ時2.8円/枚という低コストを実現している。といっても、ピンとこない方も多いだろうが、ここに、衝撃的ともいえる数字がある。エプソンの発表によれば、5年前のプリンター「LP-9200C」と比較した場合、ランニングコストは18%のダウンになり、5年間使用した場合は、約41万円のコストカットにつながるというのだ。

 この数字は、月間3000枚プリントしたときの消耗品代や電気代を含むが、LP-S7100の価格が10万円以下のため、今すぐ買い替えても、5年間で節約できるコストは30万円を超えることになる。


スリープモード(節電)移行時間は、デフォルトでは15分で、フロントパネルから1〜60分に簡単に再設定が可能

 にわかには信じにくい話だが、カラーページプリンターの市場がここ数年で急激に広がり、技術が進歩し、そして競争が激化したことを考えれば十分納得できる話だ。消費電力で見ていくと、比較対象のLP-9200Cの1141W/114W(最大/待機時平均)に対し、1120W/54W(同)となっていて、待機時の消費電力が半分ほどになっていることがわかる。また、前モデルのLP-S7000と比較しても、待機時平均、スリープモード時の消費電力は、ほぼ半分ほどになっている。言うまでもなく、消費電力の削減は、ビジネスのコストカットだけではなく、環境負荷を減らす取り組みにもつながっている。そういう意味で、地球にやさしいページプリンターとも言える。

  直接的にコストカットとはつながらないが、今回エプソンでは、Sサイズのトナーカートリッジも用意した。これは、外形サイズこそ同じだが、標準(Mサイズ)トナーの6500枚対応(ブラックのみ5500枚)に対し、2000枚対応(ブラックのみ2200枚)としたトナー容量のカートリッジだ。Mサイズに比べると割高になるものの、期ごとの決算や、それほどプリント枚数の多くないオフィスでの、カラー印刷に対応したものだ。規模や予算に合わせた運用が可能なのは、オフィスにとってもうれしい配慮だ。

 さらには、エプソンでは、「環境推進トナー」を展開している。これは、トナーカートリッジの所有権をエプソンが持ち、利用後のカートリッジをエプソンが回収するというもの。ユーザーはトナー代だけを負担するかたちとなり、通常のトナーカートリッジより低い価格設定がされている。もちろん、再利用で環境にも配慮できる。

 さて、実機のレポートに戻ろう。LP-S7100では、すべての操作が正面から可能なフロントアクセスが徹底されている。フロントパネルでの設定はもちろんのこと、電源ボタンが左手前に用意されているなど、狭い設置場所でも手間をかけず運用できるよう工夫されている。

 トナーカートリッジの交換は、上面のフタを開けるだけで可能で、万が一の紙詰まりの際でも、本体を引き出すことなく内部にアクセスできる設計が貫かれているようだ。内部の開閉レバーの表示や、操作説明も分かりやすく、マニュアルと格闘することもなく、メンテナンスが可能。

  ダウンロードが可能な「ステータスモニタ」を使えば、オフィスでLP-S7100を使う誰もが、自分の席でプリンターの状態を把握できる。トナーの残り容量はもちろん、プリントジョブの表示により、誰が、どのぐらいプリントをしているのかもわかるので、プリンターが混み合っている場合は、出力先のプリンターを変更したり、あとでプリントするといった対応が可能だ。この機能は、単体で、またはプリンタードライバーのメニューから呼び出すことができる。

 また、仮にカラートナーが切れてしまっても、モノクロトナーで代替印刷も可能。すなわち、こうした機能は、業務をストップすることを極力避けたいというオフィスのニーズに応えたものになっている。ちなみに、LP-S7100の耐久性は、約60万ページまたは5年となっている。

 
前面のフロントパネル。トナーの残量や、各種設定が行える
   
トナーカートリッジにアクセス。専用のフタを開けて、片手で簡単に着脱できる
 
すべてのユニットを解放状態にしたところ。すべてフロントからの操作で各種メンテナンスが行える設計は、さながらSF的なギミックのようでもある
 
ステータスモニタを使えば、トナーの残量のほか、誰が、どの程度の印刷をしているか一目でわかり、プリンターの前へ行って無駄な時間を過ごすこともなくなる

 耐久性に関連して、オフィスでのプリンター選びのときに見逃せない保守サービスについても触れておこう。いうまでもなく、いざというときにプリンターが使えないといった事態になった場合、ビジネスがストップする時間を少しでも短くすることが大切だからだ。

 この点、エプソンのサポートは充実してる。スポットでの保守・修理はもちろん、最大で24時間365日対応の、ニーズに合わせた保守契約メニューが用意されている。価格の方も比較的お手頃で、平日のビジネスタイムに訪問修理を行ってくれる「エプソンサービスパック」をLP-S7100と同時購入した場合、1年間契約で税込1万8375円(定期交換部品 代金は含まず)となっている。また、オフィスに代替可能なプリンターがある場合は、新たに用意された「引取保守パック」もおすすめだ。これは、業者による引き取りサービスが付いたパックで、同時購入1年の場合、税込7329円という低価格で修理が可能で、引き取りから最短3〜4日で修理完了品が届くサービスだ。どちらのパックも、契約期間内なら、何度修理・保守を頼んでも、無料でサービスが受けられる。

 LP-S7100では、本体のほかにも、プリンタードライバーなどで、さらにビジネスを便利にできる機能がさまざま用意されている。プリンタードライバーに実装された「まとめて印刷」は、近年のビジネスのニーズに応えた、ちょっと面白い機能だ。というのも、ランニングコストや紙の節約に関係し、ビジネス文書をコンパクトに印刷したいという話は、よく聞くところだからだ。たとえば、外部向けの提案資料は、たとえばPowerPointで大きく、見やすく印刷したい。ところが、社内用の資料を外部向けと同じサイズで印刷していては、あまりに無駄だし、受け取るほうも迷惑というのだ。この傾向は部署が大きくなるほど顕著なようで、とくに大企業では、受け取る側が悲鳴を上げ、シャレにならないということもあるようだ。

 まとめて印刷を使えば、書類の作成ソフトに関わらず、印刷したファイル(キュー)をひとつにまとめて、1ページに複数ページを割り付け可能。さらには順番を入れ替えたり、印刷方向を変えるなどしてから、一括印刷できる。具体的には、各ソフトからの印刷時に、ドライバーの「まとめて印刷」にチェックを入れるだけ。これで、印刷したキューは、次々にまとめて印刷にストックされ、編集が可能となる。また、オプションの両面印刷ユニットを使えば、紙節約の効果はさらに高まる。

「まとめて印刷」では、PowerPoint、Word、Excel、PDFの文書を、まとめて印刷できる
 
印刷時に、ドライバーの詳細設定で、「まとめてプリント」にチェックを入れれば、専用のキューに印刷が保存される
 
実際の印刷時に、印刷したいキューを追加。さらに、レイアウトやページの並びを選択して「印刷実行」を押せば、まとめて印刷される

 近年高まる、プリントのセキュリティー対策も万全だ。ドライバーでパスワードを設定することで、プリンターでパスワードを入力しない限り実際の印刷は行われないようにもできる。これにより、取り間違えや窃盗による情報流出を防ぐことが可能。また、印刷時には、コピーで浮き上がる「禁複製」などの透かし印刷も、もちろん可能だ。

 印刷品質は、600×600dpi。搭載のスクリーン処理により、9600×600dpi相当を実現している。また、同時に、入力された画像をセルに分割し、セル内の階調重心に網点を生成するハードウェア処理により、文字やグラフィックのエッジがなめらかな描画性能を実現しているという。試しに一眼レフカメラで撮影した画像も印刷してみたが、その再現性はかなり高かった。

 変わったところでは、長尺紙への印刷や、iPad、iPhoneからの印刷にも対応している。前者は、210×900mmまたは297×1200mmへの長尺紙に対応したもの。先方を招いての会議室案内表示や、ミーティング会場などでの看板製作に重宝する。また、iPad、iPhoneでは、マイクロテック製の印刷アプリ「ePrint」を利用することで、社内LANに接続された無線アクセスポイントから、直接、LP-S7100に印刷ができる。情報端末としてiPadを採用したシステムを利用・検討している企業にとっても、その応用が広がりそうだ。

   
透かし印刷も、ドライバー画面から細かく設定できる
 
実際に写真をプリントアウトした。かなりきれいに再現されている
 
マイクロテック製の印刷アプリ「ePrint」では、有料版と無料版が用意されており、有料版では縁なしプリントや豊富な印刷フォーマットに対応する

 標準のMPトレイ(手差しトレイ)は、A3〜A5、ハガキ、不定形紙190枚に対応(長尺紙もこれを使用)。また、標準トレイはA3〜A5、不定形紙305枚に対応。小規模なオフィスなら、これだけでも十分だが、よりスマートに運用するなら、670枚対応の増設カセットがお勧め。また、紙の節約には、前述のとおりA3まで対応した両面印刷ユニットで対応可能だ。このほか、オプションとしては、増設メモリーのほか、IPv6、1000BASE-Tユニット、無線LAN対応ユニットなどがある。

 今回、実機を触ってみてとくに感じたのは、複数部署で共有していたカラーページプリンターが、一部署で一台の存在になったのだなぁということ。あるいは、さほど印刷枚数が多くなく持て余しがちだったカラーページプリンターを、効率的にリプレイスできるということだ。もちろん、その要因は、価格やサイズ、そして、高性能機と比較しても高速性を損なっていないことがあげられるが、実際には、消費電力の少なさも、大きく貢献しているだろう。オフィスの電源容量が足りずに部署での導入をあきらめたケースも少なくないはず。もちろん、その他のケースでも、コンパクトさや、低消費電力はいいことづくめだ。

 そんなLP-S7100だが、エプソンでは、11年3月31日まで、恒例の「お得祭り」と題して、プリンターや複合機、プロジェクターといったオフィリオの人気商品が格安で購入できるキャンペーンを実施している。LP-S7100の場合、エプソンダイレクトでの直販価格9万9980円(税込)が、8万9980円(税込)となる。前述のとおり、リプレイスは、ランニングコストの低下につながる。加えて、安価で導入できるのならば、費用対効果はさらに大きくなる。

新発表のLP-S8100

 最後になるが、新発表のLP-S8100が登場していることも付記しておきたい。これは、LP-S7100の後継機ではなく、より省電力を推し進めたモデルとなる。おもなスペックは1000BASEやIPv6への標準対応などのほかはLP-S7100と同じだが、2つ搭載しているCPUのひとつを完全に停止させる「ディープスリープモード」などにより、スリープ時平均0.8Wの省電力を実現している。半面、価格は若干高い税込15万9980円(エプソンダイレクト価格)となるが、より環境負荷の少ないプリンターを検討しているのならば、こちらもおすすめしたい。

(Reported by 小黒直昭)

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