「情報の共有」は、ビジネスシーンにおける最重要事項だ。オフィスで社員同士が顔を合わせ、作業現場や会議室で意見を交えたり、電子メールを送りあうことや、企画書をコピーすることもすべて、複数の人間が情報を共有するためにほかならない。従業員数千人の大企業であろうが、個人事業主であろうが、情報を共有することにより、同じ目標に向かっていくためのモチベーションアップにつなげていくことは大切である。

 その「情報共有」を円滑にこなし「情報共有力」を高める上で、いまや欠かせない機器となったのがプロジェクターだ。投写されたひとつの映像を、会議の参加者全員が同時に見られる。ただそれだけの製品ではあるが、視覚に訴えることで、情報共有とともに発表者と聞き手の意識共有にも役立てることができる。プロジェクターの重要性は、いまやビジネスパーソンの誰もが認めるところだろう。

 プロジェクター分野で、14年連続シェアナンバー1(注1) という圧倒的実績を誇るのがエプソンだ。9月には「オフィリオ プロジェクター」に新ラインアップを追加した。今回は、プロジェクター初心者に最適なUSB ディスプレー機能を搭載し、8万円台後半のお手頃価格を実現した注目モデル「EB-W8」の魅力に迫ってみよう。
(注1):'95〜'08年度 プロジェクター国内販売台数 富士キメラ総研調べ
「USBディスプレイ」をはじめ、手軽に使うための機能が豊富!

エプソンの新モデル「EB-W8」

エプソンの新モデル「EB-W8」。
実売価格8万円台と便利機能を両立させた

 プロジェクターと一口に言っても、用途に応じて求めるべき性能は大幅に異なる。数百人収容可能な大規模ホール向けの据付型製品もあれば、比較的小さな会議室で7〜8人程度の利用を想定したモバイル対応モデルなどもある。今回ご紹介するEB-W8 は、エプソンのプロジェクターラインアップの中でも「スタンダードモデル」に位置づけられる製品だ。

一般的なオフィスユースに適した機能を厳選搭載しており、「迷ったときはEB-W8」と自信を持って薦められる1台に仕上がっている。

 まず特筆すべきは価格だ。EB-W8 自体はオープンプライスの製品だが、市場予想価格は8万円台後半となっている。税法上、あるいは社内の決裁権限などの兼ね合いから、ビジネス用品は10万円以下になることで一気に導入しやすくなる。価格を理由にプロジェクター導入を尻込みする必要は、ほぼないと言っていい。

投写映像の明るさ(有効光束)は2500 ルーメン。

投写映像の明るさ(有効光束)は2500 ルーメン。一般的なオフィスなら、照明を落とすことなく利用できるだろう

 またEB-W8は、投写映像の明るさも2500 ルーメンを実現している。前身モデル「EB-W6」の2000 ルーメンからさらに改善された部分だ。明るさの向上によって、投写映像はより見やすくなり、ビビッドな印象を聴講者に与えられるはずだ。

 一昔前のプロジェクターはこの明るさが低かったため、利用時に室内照明を消さないと映像をはっきり視認できないケースがあった。ただし、会議参加者の手元も当然暗くなってしまうので、メモ書きがしづらかったり、ノートPC のキーボード配列がわからなくなるというデメリットも発生しがちだった。

 EB-W8 を実際に使用してみると分かるが、2500 ルーメンという明るさは通常のオフィス利用でも十分なスペックだ。プレゼンの進行に応じて、会議室出入り口にある照明スイッチまで足を運び、わざわざオン/オフを切り替える……。そういった手間は大幅に緩和されるはずだ。

 プロジェクターの性能を左右するもうひとつの要素は、解像度だ。PC 用モニターの解像度と同様、高いほどより精細に映像を表示することができる。EB-W8 の解像度はWXGA(1280×800 ドット)。ワイド画面対応になっているのが大きな特徴だ。近年増加傾向にある、ワイド画面のノートPC との相性も良い。プレゼンテーション資料自体はA4 印刷を意識した4:3 サイズでの作成がまだまだ中心だろうが、例えば実際のWeb サイトを投写しながらユーザビリティの検証をしたり、開発中のソフトウェアの動作自体をデモンストレーションする場合などに大きな効果があるだろう。


イチ押し! 「USB ディスプレー」機能で簡単接続

USB ディスプレー機能

身近なUSB ケーブルを使って映像投写できる「USB ディスプレー」。アナログRGB 端子非搭載の超小型モバイルPC との接続も可能になる

 ここまでで、EB-W8 は「価格・明るさ・解像度」というプロジェクター選びの重要部分をきっちりと抑えた製品であることがおわかりいただけただろうか。しかし、オフィリオプロジェクターの魅力はこれだけではない。真骨頂でもある「使いやすさ」の部分にもぜひ着目してほしい。

 エプソン製品ならではの特徴−−−その筆頭格に挙げられるのが「USB ディスプレー」機能だ。プロジェクターは通常、アナログRGB ケーブルを使ってノートPC のモニター出力用ポートと接続する。この標準的な接続法に加え、EB-W8 ではUSB ケーブル接続でも映像が投写できる機能を搭載している。

 具体的な利用法も簡単。EB-W8 のインターフェイス部にあるUSB コネクタ(タイプB)と、ほぼすべてのノートPC に内蔵されているUSB コネクタ(タイプA)をケーブルで接続する。ケーブル自体EB-W8 に同梱されているが、市販品ももちろん利用できる。PC とプリンターの接続などに使われている極めて一般的なケーブルなので、すでにお持ちの人も多いだろう。

 初回接続時はWindows 上でドライバーのインストールを行う。ただしCD-ROM などは必要なく、プロジェクターとPC をUSB ケーブルで接続後、OK ボタンなどをマウスクリックしていくだけで完了する。USB メモリーを接続し、ソフトウェアを実行する感覚に近い。

 この作業をすませれば、以後はUSB ケーブルを接続するだけでノートPC 上の画面がほぼそのままプロジェクターに出力(ミラーリング)される。PowerPoint でプレゼンテーションを行うなら、Windows 上で全画面モードに切り替えればOK だ。PC を使い慣れたユーザーであれば、アナログRGB ケーブルによる接続はさして難題ではないかも知れない。しかしオフィス内にいる人々のPC スキルは多種多様。PC 自作をこなすベテランもいれば、PowerPoint に精通していながらハードウェア知識ほぼ無しの人までいる。よりわかりやすい接続法が用意されていることは、せっかく導入したプロジェクターの活躍場面を増やす効果もあるだろう。

 また「USB ディスプレー」機能には隠れたメリットもある。それはアナログRGB 入力とあわせて2 系統同時接続ができること。説明者ふたりがそれぞれノートPC を用意していた場合でも、EB-W8 本体もしくはリモコンのボタンひとつで即座に接続先PC を切り替えられる。ケーブルの抜き差しは会議の円滑な進行にも関わってくる部分なので、ぜひ活用してほしいテクニックだ。


前面排気・クールダウン不要でプロジェクターがもっと快適に

 EB-W8 はこのほかにも、プロジェクターを日常的に、そして気軽に運用できるよう、さまざまな便利機能を搭載している。

スペースの有効活用にもつながる

排気口が前面にあり排熱が周りの人間にあたりづらいので、スペースの有効活用にもつながる

 まず注目してほしいのは「前面排気」機構だ。プロジェクターは通常、本体内部を冷却するために吸気・排気を常時行っている。この排気は熱をともなうため、排気口の前に着席するのは現実的に厳しい。手狭なスペースではプロジェクターと人の位置が接近するため、その傾向は顕著になる。

 その点EB-W8 は本体前面(レンズ横)に排気口を設けているため、映像投写方向、つまり通常なら人が立ちえないスペースに対して熱風を放出する。4人掛けテーブルの中央にプロジェクターを置いて使用する場合など、前面排気の効果はバツグンだ。またプロジェクターといえば、クールダウン作業についてご承知おきの方も多いだろう。

 プロジェクター利用終了の際、本体を冷却するために電源オフ以後もそのまま待機していなければならない時間のことで、一般的には1〜数分程度とされる。クールダウンを適切に行わなければ、機器寿命が縮まるほか、最悪故障にもつながってしまう。プロジェクターを取り扱う上で、もっとも注意しなければならない部分だろう。

 プロジェクターに関する知識がまったくない人に、片付けを気軽に頼めないのもこれが原因だ。
これに対してオフィリオ プロジェクターのほとんどは、クールダウン不要の「ダイレクトシャットダウン」を実現している。EB-W8 では電源スイッチを操作せずすぐさまコンセントを抜き、片付け作業に移れる。

 クールダウン不要を実現した一方で、電源投入時のウォームアップもまた不要だ。この「クイックスタートアップ」により、コンセント接続後すぐに電源ボタンをオンにすると、設定にもよるが筆者の体感では8秒前後で画像投写がはじまる。

 会議室予約終了時間ギリギリまで討議を続けてしまい、大慌てで片付けたものの次の予約者を待たせてしまった……。そんな経験をお持ちの人も多いだろう。ミーティング時間を徹底的に有効活用したい、あるいはプロジェクターを常時収納しているオフィスにとって、プロジェクター使用前後の時間がわずかとはいえ短縮できるメリットは大きいだろう。


標準同梱の専用キャリングケース

標準同梱の専用キャリングケース。主要な付属品といっしょに収納・運搬できる

 なおEB-W8 は収納性についてもあらかじめ配慮されている。本体標準同梱のソフトキャリングケースを使えば、各種付属品およびプロジェクター本体をまとめて収納しておける。肩掛けベルト付きなので持ち運びも容易。また平置き・縦置きともに可能なので、ロッカーへの収納性も高い。

 このほか、本体デザイン面では細やかな気配りもされている。たとえばボタン名称の日本語表記。他社製プロジェクターの場合、海外モデルと日本モデルで筐体を共通化させるため、ボタンや入力端子の説明書きが英語のみになっている場合がある。EB-W8 はリモコン、本体共に日本語表記なので、プロジェクター初心者にとっても嬉しい部分と言えるだろう。




本体の操作ボタンは日本語表記


同様にリモコンの表記も日本語だ


USB メモリー対応&HDMI 端子搭載! PC が無くても使える?

 ビジネス用途で使用するプロジェクターといえば、PC を接続することが前提。しかしEB-W8 なら、PC 不要で利用することもできる。USB メモリーを利用した「スライドショー」機能が使えるからだ。

 具体的な手順としては、まず一般的なUSB メモリーを用意してJPEG 画像を保存する。あとはEB-W8 のUSB ポートに接続し、リモコンから操作すれば、まさにデジカメ画像のスライドショー感覚で映像を表示できる。ファイル変換作業などを事前に行う必要はなく、フォルダ別に仕分けした画像も表示可能だ。

 出張先や工事現場で撮影した写真を手早く表示するにはピッタリの用途だ。



JPEG 画像入りのUSB メモリーを接続するだけで投写可能


表示する画像は、画面を見ながらリモコンで選択できる


 そしてもうひとつは、HDMI 接続による方法だ。これにより、ビデオカメラやブルーレイディスクの映像をデジタル接続して再生できる。EB-W8 にはスピーカーが内蔵されているので、もちろん音声も聞くことが可能だ。

 アナログRGB ケーブルおよびUSB ディスプレー接続で音声を聞くには、別途音声ケーブルを接続する必要がある。しかしHDMI 接続であれば、ケーブル1本で映像・音声を出力できる。プロジェクターを設置するスペース周辺は、ノートPC や資料、電源ケーブル類で散らかりがち。これをわずかとはいえ軽減するHDMI 接続のスマートさは、ぜひ一度試してもらいたい。

 近年はHDMI 端子内蔵ノートPC も増えている。アナログRGB、USB に次ぐ第3 のPC接続法としてHDMI を利用するのもいいだろう。このほかVHS ビデオデッキなどを接続するためのコンポジット映像・音声入力端子も備えており、1台でさまざまな入力ソースに対応できる。



EB-W8 の背面端子。アナログRGB 端子、USB 端子をはじめ、HDMI 端子も搭載されている


ビデオカメラやAV 機器などとの接続に便利なHDMI 端子。今後増加するであろうブルーレイディスクの再生にも役立ちそうだ


価格と機能のベストバランス。毎日使いたくなるプロジェクターへ

設置面積はA4サイズに限りなく近づいた

本体サイズも小型化。設置面積はA4サイズに限りなく近づいた

 EB-W8 は着実な性能向上を果たしつつも、従来モデル(EB-W6)と比較して小型軽量化 が進んだ。本体サイズは327×245×92mm(幅×奥行き×高さ)から295×228×77mm(幅×奥行き×高さ)へ容積で約30%減。A4 用紙サイズ(297×210mm)に限りなく近づいた。また重量も約2.8kg から約2.3kgに約18%減少した。社内の運搬、外出先での利用など、持ち運ぶ機会がなにかと多い人にとって、この差は大きいだろう。

 また、ここまで紹介した以外にも、投写映像の台形歪みを補正する「自動台形補正機能」、本体の水平設置角度を手軽に調整できる「単脚」仕様、投写映像の中断・再開に便利な「スライド式レンズカバー」などを搭載。使いやすさに徹底的にこだわったのがEB-W8 だ。

 一方、スタンダードモデルたるEB-W8 では、一部高性能モデルで採用されているネットワーク機能は大胆にカットした。多くのオフィスで優先されるであろう映像の明るさ、価格、使いやすさに重点を置き、ハイエンドな要素の優先度は低くした。徹底したコストパフォーマンス志向であることも、EB-W8 の特徴といえる。

 よりコストを重視するユーザーは、EB-W8 と同時発表されたモデルと比較検討するのもいいだろう。性能面の差異はおもに明るさ、画面解像度、本体サイズ、HDMI 対応の4点。もっともお手頃なEB-S62 は、市場予想価格4万円台後半を実現。現在のオフィス環境に最適な1台がきっと見つかるはずだ。

 プロジェクターといえばこれまで、重要な会議やプレゼンテーション、セミナーで使用するビジネス機器という印象が強かった。しかし低価格化と高性能化の進展によって、ビジネスに携わる人であれば誰もが気軽に使える段階へと移った。コピー機やレーザープリンターと同様、オフィスにあって当たり前の存在になったのだ。

 一方で「プロジェクターの用途が見つからない」という人も少なからずいるだろう。しかし紙資料の配布を伴う会議なら、プロジェクターを準備することでよりスムーズに議事進行するはずだ。「3ページ目の上の方にあるグラフが……」といった口での説明よりも、投写した映像を直接指し示せる意味は大きい。発言者が説明に集中できるメリットもある。

 プロジェクターを気軽に使える状況さえあれば、その応用法はユーザーの数だけあると言っても過言ではない。そして、より多くの人間がプロジェクターに触れる時代を迎え、改めて問われるのは「使いやすさ」だ。「操作が難しい」「下手に触って壊れたらどうしよう」といった心理的障壁を限りなく下げるべく、EB-W8 ではUSB ディスプレー機能の搭載やクールダウン不要とするなど、数多くの仕組みを盛り込んだ。プロジェクター初心者はもちろん、経験者にとっても、EB-W8は最適な1台と言えるだろう。

 
型番 EB-W8 EB-X8 EB-S8 EB-S62
明るさ 2500ルーメン 2000ルーメン
リアル解像度 WXGA XGA SVGA
HDMI端子 ×
本体サイズ
W×D×H(mm)
295×228×77 327×245×92
重さ 約2.3kg 約2.7kg
市場予想価格 8万円台後半 7万円台後半 5万円台後半 4万円台後半
ユーザーの用途により選べる、スタンダードモデル4製品をラインナップ

(Reported by 森田秀一)


[関連リンク]

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エプソンが方向転換を打ち出す「ビジネス・ユーザビリティ」戦略とは
http://enterprise.watch.impress.co.jp/docs/series/ohkawara/20090828_310551.html

エプソン、基本機能と使いやすさを追求したプロジェクタ6モデル
http://enterprise.watch.impress.co.jp/docs/news/20090820_309584.html

エプソン、ビジネス用3LCD プロジェクタ4モデルー直販49,980円から。文教用2モデルも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20090821_309959.html