フリーランスライターという職業の私にとって、プリンタは必須のビジネスアイテムだ。取材先の地図や資料を事前にメールでもらうことは多いが、取材日当日にはそれらをまとめて印刷することになる。スケジュールに余裕がある仕事なら何の問題もないが、かなりの確率で入ってくる“急ぎの仕事”ではそうはいかない。しかも、そんなときに限って、数十ページにおよぶプレゼン資料の印刷が必要だったりする。 もちろんこれは私の事情でしかないが、ビジネスでプリンタを利用している人であれば、誰でも“今すぐ印刷したい”と思ったことは少なからずあるのではないだろうか。「今すぐに打ち合わせにきて欲しい」と言われ、あわてて資料を印刷する、会議の直前まで資料を手直しするなど、ありがちな状況を挙げればキリがない。 テレビのCM でもおなじみの「カラリオ」は、家庭向けの製品と思われがちである。そのため、「ビジネスにカラリオはどうなんだろう……」と思っている人も多いのではないだろうか。実は私もそんなビジネスユーザーのひとりだった。しかし、ビジネスの要求にも応えられる高速印刷を実現したモデルがあると聞きつけ、早速試してみることにした。それが「カラリオ PX-V780」である。
箱から出してみると、その軽さにも驚かされた。これなら場所を選ばず、女性でも設置することができる。そこからは10 分もかからずに、設置、インクや用紙のセット、ドライバのインストールまでがあっさりと完了した。 このカラリオ PX-V780 がビジネス向けと言われるのは、単に印刷スピードの速さだけではない。実は別売りの無線プリントアダプタ(PA-W11G2)を接続すると、なんと無線LAN に対応したネットワークプリンタとして利用することができるのだ。これなら、複数のPC からプリンタを共有したり、離れた場所にプリンタを設置することも簡単にできる。
・A4モノクロ印刷の速度比較(エプソン) この印刷速度を可能にしているのが、高速な移動と正確な制御を可能にする「高速MACH ヘッド」技術と、黒インクのカートリッジを2 本搭載する方式の採用だ。一度に吐出するインク量と吐出回数を増やすことで、高速化を実現しているという。もちろん、カラー印刷でも、従来のインクジェットプリンタより速い。 家庭ではデジカメ画像など写真画質での印刷の美しさや手軽さが、プリンタ選択の基準になっていることから、インクジェットプリンタの選択基準も画質を優先して、その印刷速度にまで目が向いていないことが多い。しかし、ビジネスでの利用となれば、印刷速度を無視することはできない。カラリオ PX-V780 は、印刷品質のこだわりなど、エプソンがこれまでインクジェットプリンタで実現してきた特性はそのままに、ビジネスの要求に応える印刷速度を可能にした製品と言えるだろう。 カラリオ PX-V780 は、その印刷の速度だけではなく、印刷品質にもこだわりを持っている。品質向上に大きく寄与しているのが、4 色(シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)の顔料インクの採用だ。顔料インクは、通常のインクジェットプリンタで採用されている染料インクよりもにじみにくく、文字のアウトラインがはっきりして読みやすい。また、グラフやイラストといった図版に関しても、くっきりとした印象に仕上がる。特に普通紙に印刷した場合に、高い品質を実感できると言える。 “にじみにくい”という顔料インクの特性は、長期保存に耐えるなど、ビジネス文書の印刷では大きなメリットとなる。特に、書類が水に濡れてしまった場合に、この特性を強く実感することができるかもしれない。会議中にお茶をこぼしたり、書類を置いたテーブルが濡れていたり、出先で雨に濡れたりと、書類が水に濡れてしまうアクシデントは意外に多い。水に弱いという染料インクの特性は、ビジネスでインクジェットプリンタを採用しない理由のひとつにも挙げられるほど、ビジネスでは大きな障害である。たとえば見積書をもった営業マンが、客先に向かう途中で雨に降られてしまったために、数字がにじんで読めなくなってしまうかもしれない。また、個人や小規模な企業では、封筒やはがきをプリンタで印刷することも多いが、配達の途中などで雨に濡れてしまうと宛名が読めなくなってしまうかもしれない。しかし、にじみにくい顔料インクで印刷されていれば、この問題を解決できる。実はこの記事を書いている最中にも、うっかり飲みものをこぼしてしまったのだが、確かに印刷されたグラフはにじんでいなかった。
※印刷した用紙を水に濡らした環境は、エプソンが保証するものではありません。 私自身が顔料インクで非常に嬉しいと思ったのは、文字の上からマーカーを使ってもにじまない点だ。ライターという仕事柄、原稿を印刷して校正することがよくあるが、染料インクで印刷された文字はマーカーを引くとにじんでしまう。このとき、マーカーの先もインクで汚れてしまうので、少しイヤな気持ちになる。ところが、顔料インクならマーカーでラインを引いてもにじまないのだ。もちろん、ペン先も綺麗なままだった。
また、今回レビューのためにカラリオ PX-V780 では、さまざまなものを印刷した。ちょうど請求書の発行時期だったので、封筒への宛名印刷も行った。やや厚めの封筒だったにも関わらず、紙詰まりすることもなく実にスムーズに印刷が完了した。その後、調子にのって名刺も印刷してみたが、顔料インクの特性のおかげなのか、メリハリの利いたいい感じのできあがりとなった。
ビジネス向けのインクジェットプリンタとして、カラリオ PX-V780 は非常に魅力的な性能をもった製品であるが、やはり気になるのはコスト面である。カラリオ PX-V780 はオープン価格となっているが、実売では1 万円強と非常に手軽な価格となっている。また、専用のインクカートリッジも、単体は1,000 円前後、4 本セットでも4,000 円を切る程度で、顔料インクとしてはおどろくほど安い。 ・エプソンOAサプライ NETSHOP
■関連情報 ・ビジネスでも「カラリオ」! モノクロ37ppm を実現した高速カラーインクジェットプリンタ EPSON カラリオ PX-V780 http://ad.impress.co.jp/special/epson0710/ ・カラリオ PX-V780 http://www.epson.jp/products/colorio/biz/pxv780/ ・カラリオ PX-FA700 http://www.epson.jp/products/colorio/printer_multi/pxfa700/index.htm ・エプソン http://www.epson.jp/ ■関連記事 ・エプソン、自動画像補正機能を強化したA4 インクジェット http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0920/epson2.htm ・エプソン、FAX を搭載したインクジェット複合機 〜 1 万円台前半のエントリーモデルも http://dc.watch.impress.co.jp/cda/accessories/2008/02/13/7950.html
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