会議の配布物やプレゼンの資料を開始ギリギリまで編集してから印刷する。これから向かう相手先の地図や打ち合せで使うメモを出かける直前に印刷する。などなど、誰にでも経験があると思われるのだが、印刷というのはどうしても「間際」になりがちだ。 こういった場合、急いでいるからという気分的な影響もあるのだろうが、プリンタの印刷速度が気になることが多い。PCで印刷を開始したにもかかわらず、ウォームアップまでの時間を待たされたり、ヘッドの動きがやたらと遅く感じられたり、用紙が出てくるのが待ち遠しいことさえもある。 オフィスの共有プリンタで、他の人が大量の印刷でプリンタを占有しているなどという場合などは絶望的だ。 もちろん、事前に余裕をもって印刷しておけば良いのだが、実際のビジネスシーンではなかなかそうはいかない。1分、1秒が惜しまれるようなビジネスの世界では、”今スグ、高速に”印刷できるというニーズがプリンタに求められるのだ。 そんな中、エプソンから注目のプリンタ「カラリオ PX-V780」が発売された。カラリオと言えば、TVCMなどでもおなじみの通り、家庭向けというイメージが強い製品だが、今回登場した製品はビジネスにも活用できる高い性能、それも高速な印刷スピードがその特徴となっている。 ビジネスでも「カラリオ」。そんなPX-V780の実力を探ってみよう。
単に数値だけ言われても、わかりにくいかもしれないが、低価格のレーザープリンタの一般的な速度が20ppm前後であることを考えると、オフィスに設置されているミドルレンジのレーザープリンタと同等か、それ以上の実力を備えていると言える。 ・A4モノクロ印刷の速度比較(エプソン) このような高い印刷速度の実現にはさまざまな技術が必要とされるが、PX-V780では高速な移動と正確な制御を可能にする高速MACHヘッドの採用に加え、黒インクを2本搭載するというユニークな技術を採用している。
インクジェットプリンタというと、デジタルカメラの写真をいかに美しく印刷できるか、品質を長持ちさせることができるかなど、どうしてもその品質に目を奪われてしまいがちだが、実は印刷速度も着実に進化しており、オフィスのカラー文書のプリントはもちろん、モノクロの高速印刷にも対応したPX-V780の登場により、今やビジネスシーンでも十二分な実力を発揮できるようになってきていると言えそうだ。 もちろん、品質が速さの犠牲になっているなどということは一切ない。PX-V780で注目すべきなのは、速さと品質が高いレベルで両立している点だ。採用されているインクは、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色すべてが顔料インクとなっており、特に普通紙への印刷時に高い品質を実現できるようになっている。 顔料インクの場合、インクの粒子が一粒ずつ樹脂でコートされているため、一般的な染料インクを採用したインクジェットプリンタで普通紙に印刷したときのようなニジミを防止することができる。これにより、文書内の文字がシャープで読みやすく、複雑な色や形状のグラフや図版なども、エッジの効いためりはりのある印象に仕上げることができる。 顔料インクの採用でうれしいのは、何と言っても耐久性も高い点だ。一般的な染料インクの場合、鞄に入れておいた文書が雨などでにじんで読めなくなってしまったというようなことがある。また、印刷した資料の重要な部分にマーカーで線を引いたら、にじんでかえって読みにくくなってしまうことがよくある。 これに対して、カラーまで顔料インクを採用したPX-V780での印刷物は、長期保存でも劣化を防げるうえ、水に濡れてもにじみにくい。場合によっては、店舗などで外に掲示するPOPを印刷するといった用途にも十分に対応できるだろう。
特筆すべきなのは、その使いやすさだ。同梱されている「準備ガイド」という大判のガイドを見ながら設定をすすめれば、インクの取り付け方から、PCとの接続、ドライバやユーティリティソフトのインストールまで、はじめてでも簡単にできてしまう。 ビジネス向けのプリンタの場合、企業のシステム管理者などがセットアップすることが多いことから、このようなガイドが省略されている場合もある。しかし、PX-V780は、小規模オフィスや部署単位での導入、SOHOなど、必ずしも詳しい人がセットアップするとは限らない。このようにはじめて使う人向けの配慮がきちんとなされているのはありがたいところだ。 ドライバや付属のユーティリティの使い勝手も良く、用紙や品質の設定に加えて、いくつかの資料を1枚の用紙に割り付けて印刷したり、「外秘」などのスタンプマークを印刷することも簡単にできるようになっている。プレゼン用の資料などを印刷する場合、これらの機能を多用する機会が多いのだが、プリンタによっては設定がどこにあったかがわからなくなってしまうことが多い。その点、本製品はわかりやすいのが非常にありがたい。このほか、付属ソフトも豊富に用意されており、写真やはがきの印刷などを行なうためのアプリケーションなども利用することも可能だ。 ビジネス文書の作成だけでなく、時候の挨拶のはがきの印刷、チラシやPOPの作成など、あらゆる印刷物を自前で準備しなければならない商店や個人事業主などには力強い味方となりそうだ。 このほか、本体のコンパクトさも大きな魅力と言えるだろう。小規模なオフィスやSOHOなどの現場では、プリンタを設置したくてもなかなか設置場所を確保できないケースが多い。 しかしながら、PX-V780は本体サイズが幅435mm×奥行き240mm×高さ161mmとカラーインクジェットプリンタとしては小型でスリムな設計となっている。このため、小さなラックに収納するなど、設置スペースをあまり選ばない。
場合によってはデスクサイドに設置することも十分に可能なので、企業の共有プリンタとは別に、自分専用のプリンタとしてデスクサイドに”+1”するというのも良さそうだ。こうすれば、共有のレーザープリンタが混雑している場合などでも、急ぎの文書を印刷することができる。ほかの社員に見られては困るような機密文書や人事評価書類などを印刷するのにも向いているだろう。
このような無線プリントアダプタの利用には、電波の届く範囲であればどこにでもプリンタを設置できるようになるというメリットに加えて、複数のパソコンでプリンタを共有できるというメリットもある。無線プリントアダプタを接続したPX-V780は、ネットワーク上の共有プリンタとして利用できるため、たとえばオフィスの全社員のパソコンからPX-V780を使って印刷できるようになる。 プリンタをネットワークで共有したい、無線LANでワイヤレス化したいというニーズを小規模オフィスやSOHOなどの現場でよく耳にするが、実際にはどうやれば良いのかがわからずにあきらめているケースが多い。これが簡単にできるだけでも、PX-V780を選ぶ価値があると言えるだろう。 自分専用のパーソナルプリンタとして使っても良し、無線プリントアダプタで共有プリンタとしても使っても良しと、用途や環境によって使い分けることができるのは大きな魅力だ。 このように、エプソンから新しく発売されたカラリオ PX-V780は、コンシューマー機としての使いやすさはそのままにビジネスにも活用できる性能を手に入れた製品と言える。 気になるコストも低く、実売で1万円強と手軽に導入できる。この価格で初期導入コストが数倍にも及ぶレーザープリンタにひけを取らない性能が手に入るのだからお得感は高いだろう。
まさに至れり尽くせりと言った印象のPX-V780だが、これまでにあった「インクジェット=コンシューマー」という固定概念にとらわれずにビジネスにも十分活用できる、いや、むしろインクジェットプリンタだからこそ実現できるビジネス印刷の世界を提案している製品だと言えるだろう。 小規模オフィスやSOHOの現場での利用に最適だが、企業の部門単位で導入するセカンドプリンタとしても十分におすすめできる製品と言えるだろう。 ※「A4モノクロ約37ppm」は、エプソンオリジナルチャートA4モノクロ文書使用、印刷品質レベル1、速度優先モード時。印刷スピード算出の詳しい情報はビジネス向けカラリオのホームページhttp://colorio.jp/biz/をご覧ください。 ■関連情報 ・カラリオ・プリンタ PX-V780 http://www.epson.jp/products/colorio/biz/pxv780/ ・エプソン http://www.epson.jp/ ■関連記事 ・エプソン、自動画像補正機能を強化したA4インクジェット http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0920/epson2.htm
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