CrysisはドイツのゲームスタジオCrytek社が開発したゲームシリーズで、これまでPCゲーム作品を提供して来た関係で、もしかすると日本の一般的なゲームユーザーには馴染みがないメーカーかも知れない。
しかし、彼らの初作品「FARCRY」は、同時期の競合作品よりも圧倒的なビジュアル表現を実現していたことから、当時は新興スタジオであったにもかかわらず、瞬く間にその実力が認められ、一流スタジオの仲間入りを果たした。その後の第二回作「Crysis 1」の成功でさらに成長を続け、現在では、西ヨーロッパ、東ヨーロッパ、そして日本を含むアジア圏などから優秀なクリエイターや技術者が集まる、国際色豊かなビッグ・スタジオとなっている。
そんなトップスタジオの地位に登りつめたCrytekだが、彼らがいつも注目されるのは、率先して最先端のテクノロジーを活用し、そこで生み出した新しい技術を実際のゲームタイトルで応用して見せてくれるためだ。
その証拠に、これまでも彼らが生み出した技術の数々はコンピュータグラフィックスの学会であるSIGGRAPHなどでも発表され、他のゲームスタジオにも強く影響を生み出している。例えば、彼らが生み出した疑似的な大局照明技術「Screen Space Ambient Occlusion」(SSAO)は近年の日本のゲームでも頻繁に活用されているほど。ちなみにSSAOについての解説は筆者の連載記事「西川善司の3Dゲームファンのための「CryENGINE 3」講座」などを参照して欲しい。
そんなハイテク集団が開発した「Crysis」(第一作目、以下Crysis 1と表記)は、2007年、Windows PC向けに発売されたゲームタイトルで、その圧倒的なリアルさを有したグラフィックスとスピード感あるゲームプレイが高く評価され、欧米の数々のゲーム賞を受賞するに至っている。なお、「Crysis 1」は、日本でもEAから日本語版が同年に発売されている。
ゲームというものは、もちろん「ゲームが楽しいこと」が最優先されるべきであるが、「いつも何か凄いものを見せてくれるCrytekが、今度は何を見せてくれるのか」…という意味においてもCrysis 2は注目のタイトルなのである。
今作「Crysis 2」は、言うまでもなく「Crysis 1」の続編だ。PS3やXbox360のユーザーの中にはPCゲームをプレイしない人も少なからずいるはずで、そうした人たちは、今作Crysis 2が初めてのCrysisシリーズ…と言うことになるかも知れない。
ゲーム体験としてはCrysis 2は、単体でプレイしても面白いゲームだし、映像体験を楽しむだけであればCrysis 2単体だけで十分満足がいくはずだが、ストーリーを理解するためには前作の知識があった方が数倍は楽しめる。ということで、Crysisシリーズの世界観と前作「Crysis 1」のストーリーを軽く紹介するとしよう。
Crysisの舞台は地球上。時代設定は現代から少し進んだ近未来の2020年。この時代、北朝鮮は現代と同じ独裁体制下にありながらも経済復興を果たして国力を増しており、なんと、その勢力を海外に伸ばそうとするほどで発展を遂げていた。北朝鮮ネタは、なかなか日本のゲームスタジオでは取り扱いにくいテーマだが、この辺りをあっさりやってしまうのがドイツ流。
さて、そんな情勢下、フィリピン海沖のリンシャン島(Crysis 2でも幾度となく出てくるキーワードの1つ)で、アメリカの考古学研究グループが発掘中に謎の軍事集団から襲撃を受けて拉致誘拐されてしまう事件が勃発する。通常の誘拐事件ならば、アメリカが国外に軍隊を派遣するはずもないのだが、事前にこうした動きがあることを予測していたかのようにアメリカ政府は最新鋭の装備を身にまとったラプター精鋭部隊を救出に向かわせるのだった。島に潜入したラプター隊は、島内の全域に展開した北朝鮮軍の侵略行為を目の当たりにし、考古学研究グループは北朝鮮軍によって誘拐されたと断定する。
これだと普通の"架空軍事もの"ストーリーという感じだが、しかし、ここから徐々に話がSFめいてくるのがCrytek流だ。ラプター隊は、北朝鮮軍施設からの考古学研究グループの救出作戦を立案するが、その作戦行動中、得体の知れない第三勢力の介入をも察知する。その第三勢力は、ラプター隊だけでなく、北朝鮮軍に対しても見境なく襲撃しており、ラプター隊は、事の起こりの発端はこの島に秘められた謎にあると推測する。度重なる北朝鮮軍との戦闘と、姿の見えない第三勢力からの襲撃を回避して、ついにラプター隊は考古学研究グループの生き残りを救出。そこで衝撃の事実を明かされる。
なんと、この島の地中深くから、遙か太古に不時着して埋もれていたと思われる異星人の巨大な宇宙船を発掘してしまったというのだ。この異星文明の遺物の存在をどういうワケかキャッチした北朝鮮軍は、これを独占しようとリンシャン島への侵攻を開始していた…というわけなのだ。
この救出を皮切りに、島は、異星文明の覇権を北朝鮮軍とアメリカ軍で奪い合う戦火に包まれることになるが、事態は思わぬ方向に向かう。実は宇宙船内の異星人は死んではおらず、この発掘をきっかけにして目を覚ました一部の異星人達が、次々に仲間を目覚めさせ、人類を襲い始めていたのだ。どうやら、太古に不時着した異星人の宇宙船は一隻ではなく、大船団で地球にやってきたと思われ、それらが次々に再起動し、その覚醒が連鎖的に起こってしまったのである。
そう、「Crysis 1」は、物語後半は北朝鮮軍対エイリアン対アメリカ軍(ラプター隊)という三つ巴の戦いの構図になるのである。
プレイヤーが操る主人公はラプター隊の新兵ノーマッド。そして、ラプター隊の隊長を務めるプロフェットは今作Crysis 2にも出演し、重要な役割を演じる。Crysis 2に繋がる、「Crysis 1」での異星人との激戦の結末はぜひともプレイして自分の目で確かめて欲しい。そして、「Crysis 1」とCrysis 2を繋ぐパラレルストーリーとして、ラプター隊のお調子者、サイコを主人公とした「Crysis WARHEAD」も日本語版がちゃんとリリースされているので、「Crysis 1」をクリアしてその感動の余韻が消えないうちにそちらも続けてプレイすることをお勧めする。
Crysis 2は、「Crysis 1」で描かれたリンシャン島での激闘の後のストーリーとなっている。今作の舞台は、前作から打って変わって、アメリカ合衆国、ニューヨーク市。大都市ニューヨークでは得体の知れない奇病、ウイルス感染が大流行し、死者の数は一途をたどり、市民の間では根拠のない陰謀説がはびこりパニック状態に陥っていた。この未曾有の異常事態にアメリカ軍は、ニューヨークに海兵隊を派遣し、事態の鎮圧と市民の救援活動に従事させる命令を下す。
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物語のカギを握る「ナノスーツ」
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今作の主人公アルカトラズは、この派遣された海兵隊員の1人。アルカトラズを含む海兵隊の一団を乗せた潜水艦がニューヨーク湾に差し掛かるころ、謎の飛行物体からの攻撃を受けて潜水艦は沈没してしまう。
即死を免れたものの瀕死の重傷を負ったアルカトラズは、その意識が遠のく最中、遠方に地球上のものとは明らかに異質な、翼を持たない飛行物体が、謎の光線兵器で地上に攻撃を仕掛けている光景を目にする。そして次の瞬間、オレンジ色の眼球の仮面を付け黒光りのスーツに身を包んだ人型の"何者か"に、ものすごい力で手を引っ張られる。頭部を覆う仮面が高周波の音と共に開くと、そこには人間の、黒人の顔があった。その"何者か"はプロフェットと名乗り、「お前が最後の希望だ」とアルカトラズに語りかけるのであった。
この意味不明な挨拶に対して返答をする間もなく意識を失ったアルカトラズ。幾ばくかの時間が過ぎ、次に意識を取り戻した時、彼はプロフェットの着ていたものと同じスーツをまとっていることに気がつく。
今作Crysis 2は、往年の名作SF小説「レンズマン」を彷彿とさせるミステリータッチで始まるのだ。「Crysis 1」をプレイしていなければ、恐らく、アルカトラズと同じ「一体何が起きているの?」という半パニック状態の心境でゲームが始められることだろう。その意味では、Crysis 2からプレイするというのもいいかもしれない。
「Crysis 1」を体験していたプレイヤーは、今作の主人公がノーマッドでないことに驚くことだろう。"1"体験プレイヤーは彼が一体どうなってしまったのか気になるはずだが、それ以上に、"2"の主人公を救い出したのが"1"のラプター隊隊長のプロフェットであることに衝撃と懐かしさの両方を覚えるはず。あまりにも始まり方の異なる"1"と"2"だが、"1"を体験していると、この顔合わせによって、同一の世界観であること、すなわちCrysis"2"であることを感じ取ることができ、ゲーム世界により一層引き込まれることだろう。
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敵はエイリアンだけではない。非常事態の中でも、人間同士の戦いが繰り広げられる
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今作Crysis 2では、前作で謎の多かったエイリアンに関する生態の謎が明らかになってくる。そして、筆者個人として、とても興味深かったのは、前作からゲームのメインフィーチャーともなっていた主人公達が身にまとうことになるパワードスーツ(Crysisワールドでは"ナノスーツ"と呼ぶが)の誕生の謎が明かされてくるストーリーテリングだ。さらに、この地球の未曾有の危機にもかかわらず、アメリカ軍部とアメリカ諜報機関が、このスーツを巡って謀略合戦を展開するという"人間の愚かしさ"も描かれる。
単に"エイリアンをぶっ殺せ"的なゲームゲームしたストーリーではなく、歯がゆい人間ドラマまでもが同時進行するのが映画的だ。 喩えるならば、「Crysis 1」は、ジェットコースターアクション映画的な物語だったが、Crysis 2はミステリーとサスペンスの要素が盛り込まれたより奥深い物語になっているのだ。
今作Crysis 2は、PCゲームとしてではなく、最初からPS3、Xbox 360といった今世代の家庭用ゲーム機向けに開発されていることもあって、操作系はだいぶ洗練されている。今回評価したのはPS3版だったのでPS3の操作系を前提に紹介するが、左スティックで移動、右スティックで視点操作、R1ボタンで射撃というFPSゲームの定番である操作系を踏襲している。
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最強の矛であり、最強の盾でもあるナノスーツの機能をうまく使い、さまざまな局面を乗り切っていく
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ガジェットの機能切換をデジタル十字パッドで行い、武器チェンジは[△]ボタンの順送り式でおこなうようになっている。PCゲームだった前作ではキーボードのショートカットで行えたような操作系も、家庭用機のジョイパッドに見合った操作系にアレンジされている。
一般的なFPSと異なる独自のゲームシステムは、前作から引き継がれ、今作でストーリーの根幹部分に関わってきている「ナノスーツ」の機能発動に現れている。ナノスーツは一定時間ごとにチャージされるエネルギーゲージがあり、これを消費してナノスーツの特殊機能を発動できる。強力な敵と相対するとき、敵に先制攻撃を仕掛けたりするとき、ピンチの時に退却するとき…などなど、各種機能はプレイヤーの戦略を支援するのに役立つ。ただ「狙って撃つ」だけの行動では突破できない局面は、ほぼ間違いなくナノスーツの機能が鍵を握っていると見てよい。
前作では、「ナノスーツの機能モードを選択してから行動する」という独特な操作系だったが、今作では、機能発動に割り当てられたジョイパッドのボタンを押した瞬間にその機能が発動する。例えば常人の数倍の速さで移動することができ、ジャンプの飛距離を伸ばす効果もある「高速移動」は、前作ではナノスーツモードを「Speed」に切り換えてから移動する…という操作系だったが、今作では移動用の左スティックを押しながら傾ければその方向に高速移動をする。もちろんナノスーツのエネルギーを消費するのでエネルギーがある間だけしか高速移動はできない。なお、この高速移動中に"屈む"動作の[○]ボタンを押すとスライディング操作になり、敵の足をひっかけて転倒させたり、あるいは狭いところに高速移動のまま潜り込む回避動作に応用できたりする。この他、ジャンプ動作の[×]ボタンを長押しすれば、エネルギーを消費してハイジャンプができたり、格闘動作の右スティックの押し込みを長押しで操作することでエネルギーを消費して敵やモノに対して強力なパンチやキックを打ち込んで大ダメージを与えたり、遠くに吹っ飛ばすことができる。
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敵の目から不可視になることができる「クロークモード」
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数あるナノスーツの機能のうち、戦略上、最もお世話になるのは左トリガーで発動できる「アーマーモード」と右トリガーで発動できる「クロークモード」だろう。
アーマーモードはエネルギーを消費してスーツの装甲を厚くして敵からのダメージを低減し、のけぞりも吸収することができる機能だ。敵の銃火が激しいときに、ごり押しで戦線を突破する際などには重宝するモードだ。
クロークモードはいわゆる光学迷彩機能で、発動中は、一部の敵を除けば、敵から見えない"透明人間"としての行動を可能としてくれる。ただし、攻撃活動行動は著しくエネルギーを消費してしまうので、透明人間のまま攻撃を続けることはほぼ無理だ。なので、基本的には、戦場での優位な場所取り行動に活用したり、単独の敵を一撃必殺で仕留めたりするための奇襲行動に利用することになる。
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いくらナノスーツが超人的能力を誇るといっても、モノを言うのはやはり銃だ
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携行できる銃火器は2種類まで。戦場で倒した敵や武器庫などから各種銃火器に遭遇するが、すでに2個持っているときは、その時点で構えていた銃火器との交換になる。一般的なFPSで「拳銃が標準装備で、この他に好きな武器が持てる」…というシステムを採用した作品があるが、Crysis 2はシビアに2種類しか持てない。とはいえ、銃火器とは別に投擲武器としてグレネードも二種類まで携行できるし、ロケットランチャーまたはグレネードランチャー(一部の銃火器にアタッチされるセカンダリウェポン)については、銃火器と投擲武器とはさらに別に一丁携行することもできる。
それなりに潤沢な武器を携行できるが、要所要所の激戦区では、全ての銃火器の弾薬を使い果たすようなこともあり、その場合には、格闘で挑むか、アーマーモードで強行突破するか、苦渋の決断を迫られることもある。一般的なFPSゲームよりもCrysis 2では残弾数には気を配りつつ、進んでいく必要がある。
前作は広大な南国の島を舞台に、ある程度順不同にミッションをこなしていくような自由度の高いゲーム進行が特徴だったが、今作は前作よりもストーリーテリングを重視しているために、与えられた目的行動を1つ1つ順番にこなしていくような、シナリオ進行重視の"分かりやすい"ゲーム進行となっている。「何をしていいやらわからない」ということがない、このスタイルは、どちらかと言えば日本のゲームファン向けの作りだ。ただ、ゲームの舞台となるニューヨークはかなり広く作り込まれていて、目的地に辿り着くまでの経路は自分の好きに決めて構わないため、前作の「自由」な雰囲気は継承されている。
行くべき場所やゴールが明確になった今作だが、その分、その途中に途中に想定される戦闘に手応えがある。
今作でプレイヤーが相手にするのは、ナノスーツの開発元の私兵C.E.L.L.(CryNet Enforcement and Local Logistics)軍と、エイリアン軍になる。CELL軍は黒っぽい制服で、一方のエイリアン軍はシルバーグレイのスーツに身を包んでいるために、今作の戦闘の舞台であるニューヨークのビル群に色合い的に溶け込んでおり、静止されて待ち構えられると遠目には敵の姿が判別しづらい。
でも、大丈夫。プレイヤーが着用しているナノスーツには生命体などを浮かび上がらすことができるナノビジョン機能が備わっており、これを用いることで敵の姿を識別することができる。さらに、ナノスーツにはバイザーモードと呼ばれる機能も備わっており、任意のオブジェクトに対しマークを付けることで、視界に捕らえていようがいまいが、マップ上に表示し続けさせることができるようになる。
なので、妙に静かな場所にやってきたらナノビジョンを起動して敵の配置を確認し、その後は強力な武装を持った敵やエリートクラス(≒中ボス)などの耐久力の高い敵などをバイザーモードでマークする…という流れが今作の戦略上のセオリーとなっている。
敵側から戦闘を仕掛けてくる場合は、臨機応変に対処していくしかないが、今作で特に楽しいのが、こちら側が初動で攻撃を仕掛けることができるシチュエーションだ。基本的には少数のこちらと大勢の敵との「多勢に無勢」シチュエーションがほとんどなので、一度戦闘になれば、こちらが不利になることは必至。だからこそ初動が大切なのである。
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戦術の基本は、有利な場所取り。高所から相手の頭上を取れば、狙い撃ちにできる(画像はマルチプレイモードのもの)
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筆者がよくやった戦略はこうだ。ナノビジョンとバイザーで敵の配置確認とマークを終えたら、クロークモードを活用して透明人間となって優位な場所取りを行う。優位な場所とは高台で隠れやすい場所だったり、弾薬が補給できるアイテムボックスの近くなどだ。
理想は透明人間状態からの先制攻撃で、なるべく多くの敵を排除してしまうことだが、この初動攻撃を行った時点で透明人間状態が解除されてしまうので、残った敵全員に自分の姿は目視されてしまう。敵に確認されたあとは、敵もこちらを包囲する動きで攻撃を仕掛けてくるので、退路を阻まれないように移動しつつ攻撃を受け流し、その間にエネルギーチャージを行って、再び透明人間になるためのチャンスを伺う。
ただ、毎回そううまくいくとは限らず、運悪く退路を阻まれてしまう事もあり、そんな場合は、アーマーモードを発動して敵の攻撃を耐え凌ぎながら反撃したり、退却したりする。
この「クロークか。それともアーマーか」を常に意識しながら戦闘行動するのがCrysis 2の独特なゲーム性になっており、これがかなりのドキドキ感に結びついている。
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ナノスーツは強力だが、敵に囲まれれば即たこ殴り。だからこそ、ナノスーツの機能をフルに活かして、自分なりの戦略・戦術を組み立てて進みたい
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筆者は、今回、あえて高難易度でプレイしたため、こうした戦略で戦ったが、低難易度でやれば、ごり押しのプレイスタイルでもなんとかなることも多いようだ。ただ、圧倒的な数と武装の敵を相手にした「大勢に無勢」シチュエーションを、ナノスーツの機能をガツンガツン切り換えて活用してギリギリくぐり抜けられたときの爽快感は相当なもの。前作体験者はノーマル難易度以上でのプレイを奨励したい。
さて、ナノスーツは、倒したエイリアンが放出する細胞片「ナノカタリスト」と引き替えにアップグレードが可能となっている。ナノカタリスト…なんとも仰々しい名前が付いているが、これはまあ簡単にRPGで言うところの経験値のようなものだ。集めたナノカタリストに応じた機能強化メニューを選択できるようになっているが、一般的なRPGよりも、なかなかの物価高システムになっていてゲームクリアまでに全ての強化メニューは実行できない。つまり、アーマーを強化するか、クロークを強化するか、あるいはナノスーツのエネルギーチャージを強化するか…などなど、自分の戦闘スタイルに合わせて的確にアップグレードは行う必要があり、これも楽しくも悩ましい要素となっている。
ゲームを通してプレイして、常に驚かされっぱなしだったのは、ビジュアルのリアリティと壮大さだ。
もはやニューヨークの街がリアルに再現されている…というありきたりな表現ではすまされないレベルで、リアルなニューヨークがエイリアン軍にリアルタイムに破壊されていく様に本当に恐怖を覚えるほどなのだ。こちらが戦闘中にも遠くの方のビル群が崩れていったり、翼のない不気味な飛行物体からエイリアンの詰まった揚陸ポッドがバシュバシュ射出されている様が見えるので、ホラーゲームとは違った種類の「畏怖」とも言うべき"怖さ"が伝わってくるのである。
本作は一人称ゲームなので、この"怖さ"を体験しているのが主人公アルカトラズではなく、プレイヤーの自分…という感触すらある。ゲーム序盤、筆者は視点を上に向け、エイリアンのガンシップが飛び回る摩天楼の隙間から見える空を見ながら「本当に大都市にエイリアンが攻めてきたらこんな感じなんだろうなぁ」と、しみじみ思ってしまった。
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最大12人が入り乱れるマルチプレイモードも。ほかにも、PS3版、Xbox 360版ともに3D立体視に対応するなど、ここで紹介した以外にもトピックが多い
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このゲームほど大画面とサラウンドサウンドが似合うゲームはないだろう。
ゲーム世界に入り込んだ感覚を「没入感が凄い」という言い回しで表現するが、Crysis 2の場合は、プレイヤー自身の五感に、エイリアンの侵略を受けているニューヨークの街の臨場感が訴えかけてくる感じ…が味わえるのだ。伝わるだろうか。
Crysis 2は、できるだけの大画面とマルチスピーカーの環境でプレイして頂きたいと思う。
(トライゼット西川善司)
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