AJAJ会長も務めるベテランモータージャーナリストの日下部保雄氏 |
AJAJ会員の若手女流モータージャーナリスト 藤トモの愛称で親しまれる藤島知子さん |
ハイブリッドカーやEV、ガソリン車であっても燃費性能の優れるクルマが次々と登場する昨今、やはり愛車の燃費性能は気になるところ。そして、クルマを買い換えることなく燃費性能を向上できるアイテムとして気になるのが「低燃費タイヤ」という存在だ。
今年1月よりタイヤの燃費性能が一目で分かるラベリング制度もスタート。テレビCMなどでも低燃費タイヤの宣伝は目立っており、気になっている人も少なくないだろう。
そこでダンロップの低燃費タイヤ「エナセーブ EC202」を使ってその実力をインプレッションしてみることにした。レビューをお願いしたのは、元ラリードライバーのモータージャーナリストで、現AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会長を務める日下部保雄氏と、女性を代表して、やはりAJAJ会員で最近ではTVでも活躍する藤島知子さんの両名にお願いした。
テストに使用したのはフォルクスワーゲンの「ゴルフ TSI コンフォートライン」。都心を出発し、東北自動車道を使って那須高原までドライブするというルートだ。EC202はいわゆるサーキットを走るようなハイグリップタイヤではないため、あくまで一般道での一般的な流れに沿った中でのインプレッションをお願いした。
今年の1月1日から(社)日本自動車タイヤ協会が決めたタイヤのラベリング制度をいち早く取り入れ、適合した商品をラインアップしたのはダンロップだった。
今回インプレッションを行ったエナセーブ EC202は、ダンロップの低燃費タイヤのメイン商品で多数のサイズを揃えている。余談だがこの他にダンロップではタイヤ素材に97%石油外資源を使ったエナセーブ97と、ミニバンなどとのマッチングがよいエナセーブ RV503が製品ラインアップされる。
さて今回エナセーブ EC202を履いたのはゴルフTSIコンフォートライン。最近のVWのパワートレイン戦略に則って小さいエンジンをターボ過給することでトルクを稼ぎ、さらにツインクラッチの7速DSGを組み合わせて燃費とパワーを両立したモデルで、かつフォルクスワーゲンらしくしっかりしたボディ+サスペンションが低燃費タイヤのエナセーブとの組み合わせにどんなマッチングを見せるか興味深い。しかもこの組み合わせでドライからウェットまで走れ、ドライでは真夏以上から秋口程度まで路面温度の差が大きかったので、タイヤの変化に違いがあるかも経験することができた。
タイヤサイズは標準サイズの205/55R16。まずドライでの走行では街中から郊外路まで一口で言えば軽快。ダンロップらしくフットワークのよさが第一印象だ。街中ではハンドルを回す力、操舵力が軽く低速でハンドルを大きく切る場面でも、タイヤを意識しない。操舵力は標準装着のタイヤよりも軽くなっている。よい意味での日本車のような感触で、ゴルフらしさを感じさせないぐらいだ。
それにもっとも驚いたのは、信号手前でアクセルを離した時にスーと惰性で走ってしまい、いかにも転がり抵抗の少なさを感じさせた点。いつもならもっと手前で減速していくところでも速度は落ちないのだ。これは新鮮な発見だ。
乗り心地に関しても路面突起でのショックがソフトで、ゴツンとした衝撃がない。低速では意外なほど路面からの入力をいなしてくれるので、軽快さと転がり抵抗の少なさを合わせてなかなか心地よい。
郊外路で速度が上がって大きな段差に入ると少しばかりバウンシングが残る傾向があるがそれも不快感はなく、タイヤが腰砕けになることも意外なほど少なかった。
ワインディングロードではさすがにスポーツタイヤではないので高速でハンドルを大きく切るような場面ではタイヤロールは大きくなる。しかしそれも急激にグラリとタイヤがよれる印象はなく、徐々にタイヤロールが始まるのでドライバーにはとてもわかりやすいタイヤとなっている。それにドライで普通にブレーキを使っても、制動にまったく不安はない。
ロードノイズも基本的によく抑えられている。80km/hを越えるあたりから低周波の音が入ってくるがそれも際立って大きくはないので、他の音にまぎれてタイヤの音圧が上下する感じだ。
ドライ走行時の印象からウェットでの安心感を予感させたのだが、幸か不幸か高速道路の走行中に豪雨に出会ってしまった。しかしかなりの水深であったにも関わらず、周りの流れに合わせて少しペースを落としただけで直進性が乱されることはなく、何の不安も抱えなかった。4本入ったタイヤのストレートグルーブで排水が効いているようだ。タイヤの下に入り込もうとする水を効果的に吐き出している。高速道路で重要なのはこの安心感で、ハンドルに伝わってくるハンドルの保舵力も変らず、リラックスしたドライブができる。
エコタイヤはウェットが弱いというのはもう昔の話だ。EC202は、ドライ/ウェットともパワフルだった。
この頃“低燃費タイヤ”という言葉を頻繁に耳にするようになってきましたが、みなさんが低燃費タイヤを購入されるとしたら、どのような点に注目されますか? 「低燃費」というフレーズは確かに魅力的な響きがありますが、私は単に燃費がよいというだけでは、購入する決め手には結びつかないのではないかと思っています。
タイヤの「エコ」というと、そのメリットは低燃費走行によってCO2の排出量が少なくてすむことや、摩耗が少なくランニングコストが抑えられてお財布に優しいこと、石油外資源の使用比率が高められた商品であることなど、捉え方によってさまざまな解釈があるかもしれません。でも、タイヤはクルマの動力を路面に伝える重要な機能部品のひとつ。経済性の高さにも惹かれますが、安全面を大きく左右するものだけに、走行中の快適性や安心感が得られるかどうかも気になります。
今回試乗したエナセーブ EC202は、先代モデルのEC201と比べて燃費性能が3.6%向上しているとのこと。具体的な例でいえば、1年で1万km走るユーザーの場合、年間で2000〜3000円程度の節約。数字だけ見るとインパクトは控えめですが、長距離を走るクルマほど、燃費面でメリットが大きくなることになります。
ただ、タイヤの交換サイクルは、単に溝がなくなったら終わりというワケではなく、距離が伸びていなくても、ひび割れや摩耗の具合などによって交換時期が変わるものです。せっかくドライブを楽しむなら、使いかたやクルマに合わせたタイヤ選びをしたいものですよね。そこで今回、私たちが試乗する機会をいただいたのが、エナセーブ EC202。安全性能を意識した低燃費タイヤです。燃費性能を向上しながらも、しなやかな乗り心地と操縦安定性を確保しているのが特徴とのこと。走りの楽しさと快適性を譲れない私としては、とても気になるタイヤです。
さっそく試乗してみたところ、すぐに効果が実感できたのが、その転がり抵抗の少なさでした。高速道路で料金所から加速していくさいは、アクセルペダルを床までガバッと踏み込まなくても、軽い踏み込み量で、クルマがスーっと前に押し出されていくイメージなんです。もちろん、頻繁にストップ&ゴーを繰り返す街なかでも、青信号の発進からフットワークが軽快で、スムーズに走り出すことができます。
クルマは運転しているときよりも、同乗しているときのほうが乗り心地の善し悪しが気になるもの。そこで、助手席に乗せていただいたところ、高速巡航中は転がり抵抗が少なく、スムーズに車速が伸びていくことで、エンジンの回転数が低めに抑えられていることが感じられました。エンジン回転の高まりと同時にやってくる振動を感じにくいうえに、タイヤが転がるさいに聞こえるロードノイズも控えめ。つまり、『不快な音』が抑えられる効果によって、知らず知らずのうちに受けるストレスから解放してくれるのです。これなら、ロングドライブも快適に過ごすことができそうですよね。
エナセーブ EC202は、軽自動車からコンパクトカー、ハイブリッドカーなどを中心に展開されていますが、この手のクラスのクルマたちは、最近は燃費を優先させるための軽量化やコストの関係で遮音材を控えめにしている車種もあり、下回りからのノイズが気になることがあります。そうしたクルマに装着した場合、ノイズの低減を含め、快適性の面でも効果が期待できそうです。
今回試乗したクルマは、乗り心地のよさとスポーティな走りに定評があるフォルクスワーゲン ゴルフ。アウトバーンを駆け抜けるドイツ車ということもあり、車線変更やコーナーでキビキビとした動きをみせるかと思いきや、このタイヤを装着した場合、ドライバーのハンドル操作に対して、おだやかな姿勢変化をみせてくれるので、乗員の身体が揺すられにくい印象を受けました。スポーティな走りで絶対的なグリップ力を要求する場合は別の選択肢が用意されていますが、「普段はお買い物でクルマを使い、ときにはお友達や家族とロングドライブを楽しみたい」なんていう場合は、『キビキビ』よりも『ゆったり』のほうが、リラックスドライブが楽しめそうですよね。試乗では、那須高原のなだらかなカーブが続くシチュエーションであいにくの雨に見舞われましたが、そうした状況下でも唐突な動きでクルマが揺すられにくかったぶん、会話を楽しみながら、安定した走りが楽しむことができました。
今回は、一般の人が普段使いで走ったときにどのように感じるかを想定して、那須までのドライブコースを設定したわけだが、読者にとってやはり気になるのはウェットでの性能だろう。今回は幸か不幸か、ドライブの途中でスコールのような雨に見舞われ、ウェットでのインプレッションも行うことができたのだが、やはり急ブレーキや急ハンドルなどエマージェンシーな領域での性能も気になるところ。そこで那須にあるクローズドコースの「ドライビングパレット那須」を使ってドライとウェットの性能比較も行った。
テストをしたのはタイヤの縦方向の性能を見るブレーキングテストと、横方向の性能を見るための定常円旋回だ。最初にドライ路面で走った後、散水車で水を撒き、ウェット路面でのテストを行った。テスターを務めるのは日下部氏だ。また、藤島さんにはテストとは別に自由に走ってもらい、そのフィーリングの違いをインプレッションしてもらった。
初速度60km/hからのフル制動をドライとウェットで行う制動テスト。
まず、制動テストはデジタルの速度計を用いて初速度を一定させ、フルに制動テストを行い何回かの平均を取った。データは別途記載するがフィーリング的にはドライではスポーツタイヤのような急激に大きな制動力を感じることはないが、しっかりとしたグリップ感があって、安定した制動性能が得られた、ABSの作動も違和感はない。何回かテスト中、初速度を上げてもトライしてみたがフィーリング上の違いはほぼ皆無で、安心感のある制動を得られている。
これを散水車で水幕を一定にして、水深のごく浅い雨の降った状態にして同じ初速度で行った。路面は通常のアスファルト舗装だ。ABSの作動は早めになり、制動距離は僅かに伸びたがバラツキもなく、こちらも期待に応える制動感を持った。結果としては、複数回のテストの平均値での比較で、ドライとウェットの完全停止までの距離の差は、割合にすると2.7%にとどまった。ドライと同じと言うわけには行かないがウェットでも制動能力に問題はない。
次に行ったのは定常円旋回だ。直径20mの円旋回のタイムを計るが、特殊なドライブテクニックを用いることなく、素直にハンドルを切り、その角度と速度を一定にして、同じ旋回半径でラップする。
もともとスポーツタイヤではないのでタイヤのロールは大きめで、ハンドル転舵時の応答性もシャープではないが、エナセーブ EC202はタイヤのワークホース的な役割を担っているので、ドライバーの期待に応じた手ごたえを感じさせる。速度を上げていくとタイヤが踏ん張りきれずにブレークするところがあるが、その時点でもまだドライバーには余裕がある。急激な変化にならないので、感知しやすい。
先ほどと同じ要領でウェットにして旋回してみたが、ハンドルを切る応答性の部分で反応が鈍くなるが、旋回姿勢に入ってしまうと安定したグリップでコーナリングする。ただ、ドライに比べればグリップは落ち、特にリアの滑り出しはドライよりも大きくなる。それでも旋回速度を測ってみると、ドライが平均で7.7秒なのに対し、ウェットでは7.9秒とその差はコンマ2秒ほどしかなく、安定感のあるグリップを示した。
これを全体で見るとエナセーブ EC202はブレーキ性能は満足すべきレベルにあり、旋回性能は実用タイヤとしては十分すぎる性能を持っていると思う。
そして何よりもエコタイヤを意識させない安定した性能がエナセーブ EC202の持ち味だ。
「発熱を抑えたタイヤ」や「転がり抵抗が少ないタイヤ」をイメージすると、雨の日に路面を掴むグリップ力が低減するのでは? という疑問が頭をよぎります。果たして、ウェット路面における実際のフィーリングはどうなのでしょうか?
エナセーブ EC202は、軽量でコンパクトなクルマをドライブするうえで、適度なグリップ力が得られています。私が注目したポイントは、コントロール性のよさがもたらす安心感。雨の日のドライブは、視界の悪さや滑りやすそうという不安から、晴れた日の運転と比べて緊張しがちなもの。誰しもができることなら、肩の力を抜いて運転したいと願うものです。そうした意味では、エナセーブ EC202は、ウェット路面においても、ドライ路面を走るときとさほど変わらない感覚でハンドルを切り込んでいくことができるんです。
また、コーナーを曲がるさいは、ハンドルの手応えを通じて、フロントタイヤのグリップ感がつかみやすく、いざタイヤが滑り出してしまったさいは、グリップの限界付近の感覚がドライバーに伝わりやすく、姿勢変化も穏やか。一定のリズムで流れ出してくれるので、ブレーキの利き具合や、タイヤのグリップ力が回復していく感覚がつかみやすいんです。
つまり、ドライバーはクルマ側にどんな操作が要求されているのかが汲み取りやすいといえそうです。また、それと同時に操縦安定性が得られているので、ドライバーにクルマの姿勢をコントロールしているという感覚を与えてくれていることが、安心感に結びつきます。
□ダンロップ、「ENASAVEシリーズ」が低燃費タイヤ基準に適合
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20100113_341994.html
□ダンロップ、低燃費タイヤの「エナセーブ EC202」を発売
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20090907_313560.html