Xboxというハードが誕生して間もない頃、日本のゲームメーカーは「いかにも様子見」という感じの、移植作品ばかりをリリースしていた。そんな中、BUNKASHA GAMESは、和製Xbox初期タイトルの中では貴重ともいえる完全オリジナルタイトル「DOUBLE-S.T.E.A.L.」(以下、DS)を発表。古くからのXboxユーザーならば、今でも、このDSのことをよく覚えている人もいることだろう。
 あの、DSの続編が、満を持して8月に緊急発売されることが決定したのである。



 本作の正式タイトルは「DOUBLE S.T.E.A.L.:THE SECOND CLASH」(以下DS2)。DS2の販売はマイクロソフトになっているが、開発は前作と同じBUNKASHA GAMESのスタッフの手によるもので、前作「DOUBLE S.T.E.A.L.」の正統なる続編だ。
 このDS2、画面ショットをざっと見た限りでは、なんだか、普通のドライブゲーム、レーシングゲームのように思えるかもしれないが、実際のところ、ただゴールに1着でたどり着くことを目的としたゲームではない。DS2は車を操作するゲームだが、プレイヤーの分身が車であるだけで、ゲーム性はむしろスポーツゲームのそれに近いのだ。あえて最も近いモータースポーツを挙げるとすれば公道ラリーだろうか。
 ゲームモードは大別して2タイプ。
 1つは「ミッションモード」。
 これは「ミッション」という単位で区切られたゲームをクリアしていくことで、特捜警察と犯罪組織との仁義なき戦いを疑似体験できるモードだ。いわゆる世間一般で言われるキャンペーンモードとよばれるものであり、DS2のメインゲームともいうべきものになっている。
 本作の主人公は前作から引き続き、特捜警察の飛龍隊(フェイロン隊)のドライバーのマドカ・ファイツァイ(風祭まどか)とナビゲーターのヤン・メイリン (楊 美鈴)だ。そして敵役は同じく前作からの引き続いての登場になる武器密売シンジケートの首領、タイガー・タカギ。
 今作では舞台を香港からアメリカ、シカゴへと移し、一般市民の安全を全く無視したお騒がせ娘2人組vs悪者達のドタバタ、クリミナル・チェイスが展開するのだ。

最初の手持ちの車はミニパト! ミニパトで悪者のセダンをぶっ壊していく快感 一般車両を巻き込んでもお咎め無し! いいのかシカゴ警察!
 
全くひるみもせずに暴走する敵のスポーツカー。こうなったら…こっちも爆走するしかない!  
 
猛スピードで通行人を轢いていく主人公。正義のためには…犠牲は付きものだ!
 
逃げまどう市民。荒れ狂う一般道。  

 2つ目のモードは「フリードライブモード」。
 DS2では、規模にして前作の8倍となるシカゴ市内をゲーム内に忠実に再現しており、このモードではこのマップの中を自分の好きな車で無制限に走り回ることができる。ミッションモードでも、同じマップ内のシカゴを走ることになるのだが、そのミッション(ステージ)毎に特別なゲームルールが設定される関係で、ゲーム内のシカゴの隅から隅まで走れるわけではない。フリードライブモードではそうしたミッションモードのステージ・ローカル・ルールもないので本当に自由に走れるのだ。走り込むことで市内の地理知識を把握することができ、その知識はミッションモードの追跡任務等で好成績を出すことにも役立つ。

ハイウェイで爆弾をまき散らしながら爆走するタカギを、スーパースポーツカーで追うお騒がせ娘2人。シカゴ市民にとってどっちが迷惑なのか!?
爆弾に当たれば吹っ飛ぶ! 車が横転しないシミュレーター系ドライブゲームが多い中、DSではちゃんと(!?)横転します。
 
鉄道路線を走ることも…ありです! DS2の世界では電車に衝突しても車が勝ちますが、現実世界では試さないように。死にます。  



車はぶつけたらその箇所が壊れる。細かいダメージ表現もDS2の車両表現のこだわりだ。
 DS2に登場する車は50種以上。すべてDS2世界にだけ仮想車種だが、どことなく実車を連想させるデザインでゲーム内シカゴに走っている光景には違和感はない。むしろ、見慣れた日本車とはどことなく違ったデザインが、景色としての異国情緒演出に一役買っているという感じすらある。

 同じマイクロソフトから発売されたばかりの実車シミュレータ系ドライブゲームの「FORZA MOTORSPORT」では「実車のディテールを再現する」ことに力を割いていたが、DS2では多彩なミッションを面白おかしく楽しめるようにと、車の種類(タイプ)を大胆に再現することに注力している。
 フロントエンジン・前輪駆動(FF)車、フロントエンジン・後輪駆動(FR)車、四輪駆動(4WD)車…といった駆動方式は、その違いが分かるように大胆な味付けがなされており、それとは別に、登場する各車には「POWER(攻撃力)」「SPEED(最高速度)」「ACCELERATION(加速力)」「STEERING(操縦性)」という4つのパラメータも振り分けられている。

最初から所有しているミニパト。パワーはないが操縦性は抜群。 リアエンジン、リア駆動(RR)のオープンバギー。加速性能に優れ、悪路への適応能力も高い。
シカゴ警察標準パトカー。スピードは結構出る。 最初に手に入れられる4WD車。大型のボディは多少の段差をものともしない。
若者向けのFFスポーツ。コーナリング性能は高め。ラリー系ミッションには適しているか? 加速、最高速、操縦性がベストバランスされたミッドシップ後輪駆動(MR)の本格オープンスポーツ。追って追われての鬼ごっこ系ミッションに向いている?
最高速重視のFRスポーツ。パワーもあって操縦性も並以上。追跡任務にはこれで決まりか。 シカゴ警察の標準搬送車。重心が高く扱いにくいが、お笑いプレイには外せない一台。

 駆動方式の違いは「走りの味付け」の違いということができ、路面状況やコースレイアウトにあったものを選ぶことが基本方針になる。これに対して後者の4つのパラメータはその車の「個性」ともいうべきもので、DS2の「ミッションモード」をプレイする際には、非常に重要なポイントになってくる。このあたりは後述のミッションモードの紹介のところで詳しく触れることにしよう。
 さて、DS2に登場する全車種には「特殊能力」が設定されており、コントローラの[Y]ボタンを押すことでその能力を発動することができる。車種によってはとんでもない特殊能力が隠されているようだが、多くの車種は一定時間爆発的に加速することができる「DASH」(ニトロ?)能力が設定されている。DASH能力は単に敵車を追い抜くだけでなく、車体自らを武器とする捨て身の戦法にも役に立つので、実際のところ最も使用率の高くなる特殊能力だと言える。この具体的な活用方法についてもミッションモードのところで後述しよう。

 
特殊能力「DASH」を発動。加速中に不用意に衝突したり、ステアリングを斬ったりすると横転してしまうことも。使うならば直線で!

大型車は正面衝突時に相手に与えるダメージも大きいようだ。衝突時のことを考えて車を選ぶゲームというのも珍しいか?
 最初、登場車種は、お騒がせ娘のデフォルトカーであるミニパト1台のみだが、ゲームを進めていくことで車種が増えていく。
 一番単純な車種増加手段はミッションモードをどんどんクリアしていくこと。また、ミッションモードの各ステージや、フリードライブモードのシカゴ市内の要所要所には「車のパーツ」なるものが点在しており、これを回収していき、車種ごとのパーツが5つ揃った時点で車種が増える仕組みになっている。この要素は、ミッションモードのリプレイバリューと、フリードライブモードを練習モードというイメージ以上の価値に高めており、なかなかよくできたゲームシステムだ。






 DS2のメインゲームモードとも言えるのが、ミッションモードだ。用意されているミッション数は全部で20種類。1ミッション当たりのプレイ時間は(成功しても失敗しても)10分前後なので、カジュアルゲーマーでも気軽に楽しむことができる。
 ミッション1つ1つに、異なるルールが設定されており、そのルールの下で行動し、ミッション達成条件を満たすとクリアとなる。ミッション開始前のブリーフィング画面では、何をすればクリアなのか、何をしたらゲームオーバーなのかが記載されているので、ゲーム開始前にはよく確認する必要がある。
 それではどんなミッションがあるのか、そのいくつかを紹介しよう。
 ゲーム開始直後の第一ミッションは最も単純かつ、DS2の魅力を凝縮した破壊任務となっている。クリア条件は、暴走しながら逃走する宿敵タカギ軍団の車を、逃げ切られる前にすべて破壊すること。
 破壊…といっても主人公達は銃火器類は持ち合わせていない。では、どうやって破壊するのか。「お前にはまだ武器があるじゃないか」という某宇宙戦艦アニメの名台詞よろしく、自らが操る車を武器とするのだ。そう、体当たりで敵車をぶっつぶしていくのである。
 ただ、舞台はシカゴ。道路には一般市民の車が走っているし、歩道には通行人だって歩いている。敵は人の命をなんとも思わない悪の犯罪組織なので市民の車や通行人なんてお構いなく突き進んでいってしまう。市民の安全を守る警官としては、この追跡は不利すぎるのではないか。

 
ゲーム内に再現されたシカゴ市内にはちゃんと人々がいる。事故に驚き逃げまどう人の姿も描かれており、そこがまたリアル。

 ところがどっこい、プレイヤー操る主人公の2人娘は「最大の安全を得るためには、最小…どころか、それなりの犠牲をいとわない」という連中なので、通行人を轢きまくり、信号待ちのバスやタクシーを巻き込みながら敵車を追いかけてしまうのだ。もちろん、ゲームルール上も、通行人を轢くことにマイナスポイントはなし。猛烈なスピードで街の中をぶちこわしながら爆走し、街の人の悲鳴を背中に聞いて敵とのカーチェイスを繰り広げられるのがこのDS2の面白さなのだ。
 多くの車種に搭載されている特殊能力であるDASHは、この敵車に車体をぶつけるときに大きな役割を果たす。敵車の後ろに付いたときに、ダメージを与えるには、さらに加速して車体をぶつけること…これは想像にたやすい。しかし(ステージや選んだ車種にもよるが)、通常走行時、敵車も自車も相対速度には大差ないため、普通に走りながらぶつけていたのでは大したダメージが与えられない。そこでこのDASHを使うのである。
 敵車の真後ろに付いたらDASH発動でグイーンと一気に加速。そしてうまく敵に衝突できれば、これをズガーンと突き飛ばして、大ダメージを与えることができるのだ。敵車との間に民間車両があった場合も基本的にはお構いなし。DASHで加速して民間車両を突き飛ばしてこれを敵車に命中させてしまえばいいのだ。この感覚は、いうなれば「暴走ビリアード」という感じか。一度、味を覚えたらやめられない。

敵に狙いを定めてDASH発動!! ズガーンと突き飛ばせ!

 そして、過激な破壊任務だけでなく、ドライブゲームらしい、ドライビングスキルを要求してくるミッションも多数存在する。ミッション5の爆弾回収任務などがそれだ。プレイヤーはシカゴ市内の複数箇所に仕掛けられた爆弾を地図を見ながら回収する任務が与えられるのだが、実際には各地点に置かれた爆弾アイコンの上を走破すれば回収したことになる。市内の道のつながりとその各チェックポイント(爆弾設置箇所)をどう巡っていくかの組み立てが重要になってくるわけだが、これは、丁度、市内に点在するチェックポイントをいかに早くすべて巡ることができるかを競う公道ラリー競技とよく似ているのだ。
 この他、敵車を追跡するミッション(ミッション4、9、13)、襲い来る敵車の攻撃をかわしながらゴールを目指すミッション(ミッション10や11)などもあり、こうしたミッションのクリアにはドライビングテクニックと市内地理が要求されてくるのである。

ミッション10「月の石を奪還せよ!」 盗まれた宝石を奪還する任務。 敵車にタッチすれば回収したことになるが…。
逆に敵に触られると奪われたことになる。いうなれば「鬼ごっこ系カーチェイス」。 ミッション11「ワクチンを届けろ」 衝突しないようにゴールを目指す任務。
 
衝突するとワクチンが破損したことになる。  

 各ミッションで走行条件やルールが異なるため、各ミッション毎に向いている車種とそうでない車種が出てくる。車種選びの際、重視すべきなのが、各車に設定された、前述の「POWER(攻撃力)」「SPEED(最高速度)」「ACCELERATION(加速力)」「STEERING(操縦性)」の4つのパラメータだ。
 例えば、破壊任務であれば、POWERが高い車を選ぶべき。ラリー系のやたら曲がることの多いミッションであれば、STEERINGのよい車種が適していることになる。追跡任務ならばSPEEDに優れ、最高速が早くなければ、すぐにおいていかれてしまうことだろう。敵の攻撃をかわしたり、あるいは動いている敵を攻撃する任務では、発進停止が多くなるのでACCELERATIONの良い車の方が優位に立てることだろう。
 なお、一度クリアしたミッションであっても、DS2では何度も挑戦が可能だ。あえてそのミッションに適さない別車種を選んでプレイすれば、別のゲームのように難易度が変わってくる。

ミッション14「メジャーリーガーを救出せよ!」 誘拐された選手をすべて回収して球場へ向かうミッション。 誘拐された選手は敵車両で市内を移動している。地図を見ながら敵車両を探しだして破壊せよ! オリエンティーリング系ラリーゲーム



 フリードライブモードは前述したように、ゲーム内に再現されたシカゴを自由に走り、その地理を把握するということ以外に、「隠しミニゲーム」とも言うべき、エクストラゲームを楽しむためのインターフェース(?)の役割も持っている。

フリードライブモードを走っていると、道中、緑の光るリングを発見することがある。これがエクストラゲームだ! このリング内に停車すればエクストラゲームがプレイできるようになる。 フリードライブモード時、ゲームを一時停止してマップを見てみよう。取得可能なエクストラゲームの位置が確認できる。

 ミッションモードをクリアして進めていくと、車種が増えることは既に述べたとおりだが、このほか「エクストラゲームが追加されました」というメッセージが出ることがある。
 このメッセージを確認したら、フリードライブモードに入り、ポーズメニューを押して市内マップを確認してみるといい。市内地図に輝くマーカーが出現しているはずだ。この地図を頼りに、このフリードライブモードで、その地点まで行ってみよう。輝く緑色の枠が地面で踊っているはずだ。ここに自車を停止させればミニゲーム…もといエクストラゲームが始まるのだ。

 
フリードライブモードでも基本的にやりたい放題のスタンスは変わらず。  
 
フリードライブモードには至る所に車のパーツが隠されている。車のパーツは5つ集めれば新車種をゲットできる。

 エクストラゲームは全部で30種類。敵車と純粋に一着を争うスタンダードな市街地レースゲームモードから、ヘリコプターを追跡しながら、投下されるアイテムを幾つ拾えるか競う、変わり種ゲームードまで各種、色々用意されている。そのいくつかは、Xbox Liveのスコアランキングモードに対応しており、全世界のプレイヤーと、そのスコアを競うことができるようになっている。
 また、前述したように、フリードライブモードのシカゴ市内には、車種増加の鍵を握る車のパーツも各所に点在している。ミッションモードを、どうしても手持ちの車種だけではクリアできなくてハマってしまった…という人は、ぜひともこのフリードライブモードで新車ゲットに挑戦してみよう。

 
ミッションをクリアすると新車種、新ミッション、エクストラゲームが追加されることが!  
 
エクストラゲームの1つ、オーバルコースでのオフロードバギーレース。1位を目指す正統派レーシングゲーム。
 
ヘリコプターが落とす現金パッケージを回収するエクストラゲーム。ヘリから離されてしまうと披露のは実質難しい。ヘリを追跡できるポテンシャルを持つ車を選べ!
市内のチェックポイントを通過してゴールを目指す、まさに公道ラリーのエクストラゲーム。
 
ただただ人を引いて車を壊しまくれるエクストラゲーム。いちおうプレイヤーは警察官という設定なんですけどね。



 XboxのグラフィックスサブシステムXGPUには、プレイステーション3やXbox360といった次世代機にも採用が決まっている「プログラマブルシェーダ技術」が先取りして搭載されている。そう、現行ゲーム機で唯一プログラマブルシェーダ技術を搭載しているのが現行Xboxなのだ。プログラマブルシェーダ技術とは、様々な光学現象や物理現象をシミュレートするシェーダプログラムをGPU(グラフィックスプロセッサ)で実行させて3Dグラフィックスを描画することができる仕組み。他のこれまでのゲーム機の多くが、頂点単位で光源処理を行ってポリゴンにテクスチャを貼り付けるだけの処理だったのと比べると、Xboxのプログラマブルシェーダ技術によるグラフィックスは、一線を画したリアリティを発揮することができるのである。

リプレイ画面ではプログラマブルシェーダを活用した特殊映像エフェクトが演出で随時ランダムに適用される。これは鉛筆画風の特殊効果。 古いモノクロフィルムを再生しているような特殊効果。
解像度の粗いブラウン管で表示ているような特殊効果。 サインペンで縁取りしたような特殊効果。

 さて、DS2のグラフィックスは、特に、このプログラマブルシェーダ技術の活用に力が入っており、他に類を見ないほどのフォトリアリスティックなビジュアルを実現している。
 基本的な部分ながら注目すべきは、車のボディに映り込む背景のリアリティだ。車のボディにはフレネル反射に配慮した反射モデルが適用されており、塗膜の質感が非常にリアルに再現されているのだ。
 フレネル反射とはなにか。身近なもので考えると分かりやすい。例えば水たまりを見たとき、その水面に対する視線の角度が鋭角になる…つまり水面が遠い位置の時は外界の空や雲といった周囲の情景が水面に映り込んで見える。一方、水たまりが足元に近づいてきて水面と線の角度が鈍角に近づくにつれて周囲の映り込みよりも水たまりの底の方が見えるようになる。これが一番身近なフレネル反射の実感だろう。まとめると、フレネル反射とは、その3Dオブジェクトの各面と視線角度の関係によって反射して見えるものが変わってくる異方性効果ということができる。
 車のボディとは無関係なようでそうでもない。現実世界の車は多層塗装されていて、塗膜の最表層はポリマー加工などのコート剤が塗られている。車のボディの光沢感はここから来るものであり、ボディの起伏具合によって車の色が見えたり外界が見えたりするわけだ。DS2の車達に「よくある映り込み」以上のリアルな質感の手応えが感じられるのはこのためだ。

ボディカラーと映り込みの混ぜ具合を、視線とボディ面の向きとの関係に配慮して行っている。この車のボディの微妙な陰影のリアルさの秘密はここにあった。
夜のシーンでもボディへの映り込みと眩しいハイライトが共存できるのもHDRレンダリングの特徴だ。

 DS2のグラフィックスの見どころはこれだけではない。DS2では、E3などで次世代機の技術として紹介されたハイダイナミックレンジ(HDR)レンダリングを現行Xboxで実現してしまっているのだ。
 現実世界の、例えば太陽下の昼間の光(色と置き換えてもいい)の表現域は膨大で、そのダイナミックレンジは数百dBはあるといわれている。そして人間の目のダイナミックレンジは120〜140dBはあると言われている。ところが、現在のゲーム機で採用されている色域はRGB(赤緑青)それぞれ8ビットずつなのでdB換算にして約24dBほどしかない。
 さて、いくら人間の視覚細胞のダイナミックレンジが広くても、実際の人間の視覚システムは明るさのピークに引っ張られて、結局ある範囲の明るさのレンジしか一度に知覚できない。真っ暗な部屋で携帯電話の液晶画面は明るく見えるがこれを太陽下にもっていくと途端に見えにくくなる。これは人間の目が瞳を絞って視覚細胞への光量を調整しているからだ。携帯電話の液晶の明るさ自体は変わらなくても陽光下で見えなくなってしまうのは太陽光の明るさピークに合わせて瞳を絞って光量を制限してしまっているためだ。

DS2の「写実的な屋外感」がここまで表現できているのはHDRレンダリングによるところが大きい。
ボディに映り込んだ道脇の街灯も、このシーンにとっては高輝度ということでHDRレンダリング処理による光のあふれ出し表現が適用されている。こうした細かい陰影のディテール表現がDS2のグラフィックスのトータルなリアリティを醸し出している。

 そこで、3Dゲームグラフィックスの世界でも、
(1)現実世界に近いダイナミックレンジでシーンをレンダリングする
(2)人間の視覚システムを模倣した形で、そのシーンのピーク輝度から一定範囲の色のみをディスプレイで表示可能な1,677万色にまるめこむ
としたほうが、「見た目としてリアル」になるんじゃないだろうかという仮定の下、生まれ出でてきたアイディアがHDRレンジレンダリングなのだ。
 DS2では、このHDRレンダリングをプログラマブルシェーダ技術を駆使することによって、実装してしまったのだ。
 HDRレンダリングの効果は、DS2の画面を見ていれば至る所で見て取れる。
 ビルの向こうに掠め見える太陽がビルの輪郭からあふれ出して見えるシーン。太陽、爆発の閃光などさまざまな光源が、車のボディやビルの窓ガラスに反射して白飛びを起こし、さらにはギラギラした煌めきを生じている様などなど。

夕闇迫るシカゴ。日は傾いても太陽は明るい。空が白飛びし、ビルの輪郭を飲み込んでいる。

 暗いところから明るいところへやってくると、眩しくて目の前が真っ白になって、目が慣れるまでまともに見えないことがある。これは、前述のように人間は瞳の開口率を変えて網膜に当たる光を調整しているわけだが、DS2のグラフィックスでは、このシミュレーションの形である「トーンマッピング技術」も実装してしまっている。トンネルから外へ、あるいは外からトンネルにはいるとその効果が実感できるはずだ。

 
路面を見ていた状態から突然ビルを見上げる。すると最初はそれまでの視界の明るさの基準で情景を見るために空が白飛びして見える。
しばらく見ていると今度は、この明るい空に基準が合うように瞳が調整され… 空が青空として見えるようになる。その代わりビルは黒く沈んで見えるようになる。これがHDRレンダリングとペアの技術である、瞳の絞りをシミュレーションした「トーンマッピング技術」
 
トンネルの中から出るとその瞬間周りが白飛びしてよく見えなくなるが、徐々に目が慣れてくるという経験をしたことがあるはず。こうした表現もトーンマッピング技術によるもの。

 この他、焦点を当てているところ以外はボケを生じて見える「被写界深度のシミュレーション」などもDS2では実装している。DS2のグラフィックスの1フレーム、1フレームが、ゲームの映像というよりは、現実世界のテレビの実況中継のように見えるのはこの効果に因るところが大きい。

主人公のミニパトに焦点が合っているが、それ以外はピンボケとなっている効果。これが被写界深度のシミュレーション。 モーションブラー、パーティクルシステムなどなど、DS2のグラフィックスは先進技術の全部入りだ!

 ところで、次世代Xbox360のゲームはその映像がハイビジョン(HDTV)出力に対応することが明言されているが、実はDS2では、このHDTV出力も先取りして可能となっている。
 Xboxをワイドアスペクト16:9のD4解像度のテレビと接続してDS2を起動すると、なんと720p解像度(1280x720ドット)でプレイできてしまうのだ。まさにXbox360のゲームを一足先に体験している感覚だ。
 こうして見てきても分かるように、DS2のグラフィックスは現行Xboxでなしえる最大限のグラフィックスを実現しているといってもいいと思う。
 2005年末には次世代XboxであるXbox360が発売されるが、その前に、現行Xboxグラフィックスの最終形として本作をチェックしてみてはどうだろうか。

 
720p出力したときのDS2の画面。ハイビジョン対応テレビとXboxさえあれば、このハイビジョンクオリティでゲームが楽しめるのだ。


(トライゼット西川善司)

© 2005 BUNKASHA PUBLISHING CO.,LTD.
© 2005 Microsoft Corporation. All rights reserved.


■関連情報
・「DOUBLE S.T.E.A.L. THE SECOND CLASH」スペシャルサイト
 http://www.xbox.com/ja-JP/games/doublesteal2/default.htm

・Xboxのホームページ
 http://www.xbox.com/ja-jp/

■GAME Watch ニュース
・お騒がせな2人組が帰ってきた! Xbox「ダブルスティール ザ・セカンド・クラッシュ」8月4日発売
 http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050609/ds.htm

・3Dゲームファンのための「Half-Life 2: Lost Coast」エンジン講座
 「Lost Coast」が実現するリアルHDRレンダリングの衝撃
 http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050525/3dhl2lc.htm