まずはiモーションのどこが強化されたか、技術的な面から説明しよう。
これまで、ケータイで動画配信を使ってみて、失望したことがある人は多いのではないだろうか。画面の隅で切手サイズの映像がぎこちなく動き、細部はブロックノイズでつぶれていてわからず、長さはせいぜい30秒くらい。それが、いままでのiモーションだ。しかし、903iXシリーズのiモーションはだいぶ違う。
まず、ファイルサイズが大幅に拡大され、最大で10MBにまで対応するようになった。従来のiモーションは500KBなので、実に20倍の長さだ。時間にすると、最高画質でも6分程度となる。これまでは映画の予告編などくらいしか見られなかったが、6分もあれば、それ自体がエンターテイメント作品になりうる。
さらに、解像度も違う。これまでのiモーションは、903iシリーズでも、最大176×144ドットだった。これが、903iXシリーズでは、320×240ドットにまで対応する。切手サイズが、文字通りケータイ画面サイズになるのだ。
画質も大幅に向上する。ビットレートは従来と同じ最大192kbpsだが、最新のビデオフォーマット「H.264」に対応し、最大フレームレートは15fpsから30fpsへと倍増する。ブロックノイズも動きのぎこちなさも、ほとんど感じられなくなった。ちなみにワンセグは320×180ドットでビットレート128kbps、フレームレート15fpsなので、903iXシリーズのiモーションの方が断然画質は良い※。
903iXシリーズのiモーションが、具体的にどのくらいの画質クオリティかというと、主観も入るので説明しにくいが、筆者がドーガ堂で試したところ、あたかも液晶テレビを見ているかのような画質だと感じた。細かい感想については、後ほど詳しく述べさせてもらおう。
※注 ドーガ堂が配信している10MB iモーションの仕様
240kbps(映像+音声)/ 15fps / H.264 映像コーデック採用 / フル画面配信可能
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320×240ドットのサンプル。実際に、ドーガ堂で配信されているiモーションを再生している液晶画面を、カメラで撮影した。工程上、モアレが多いため、実際よりも画質がかなり劣化していることはご了承ねがいたい |
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同じ画像を176×132ドットに縮小したサンプル。このほかにも、フレームレートやノイズの面でも903iXのiモーションの方がスペックが良いため、実際の動画ではもっと差が顕著に見えてしまう |
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ドーガ堂では、ケータイのために撮り下ろしたビデオを配信している。実はこれも非常に重要なポイントだ。
いままでのケータイ動画というと、映画の予告編など、テレビ画面に映すコンテンツをそのまま縮小したものが多かった。なかには、HD解像度・ワイド画面向けの映像を、強引にケータイ解像度に縮小していたりするものもあったりする。
そんなものでまともなケータイ向けコンテンツになるわけがない。筆者は映像の専門家ではないが、この点だけは力説したい。
たとえば40インチのワイドテレビに映し出すハイビジョン映像ならば、5人くらいの人物を全身像で撮影しても、それぞれの人物の表情まで見てとることができる。しかしそれをそのまま縮小し、解像度の小さなケータイ画面に映しても、表情どころか、どれが誰か判別すらしにくくなる。
ケータイの画面に適した映像とは、テレビの画面向けの映像とは違うのだ。
ケータイ画面に適した映像とは、簡単にいうと「どアップで撮られた映像」である。人物を撮るときも、全身像よりもバストアップ、顔だけ、顔の一部だけなど、とにかくアップで撮っている。これを大きなテレビ画面でやると、くどくてキツイ絵になってしまうが、画面が小さいケータイなら違和感はないし、画面解像度が低くても、アップならディテールを伝えることができる。
スペック上の進化も重要だが、実はこうした最適化されたコンテンツも、ケータイにとって重要なポイントだ。まだケータイに最適化された映像コンテンツは少ないので、ケータイ向けにわざわざビデオを撮り下ろす、ドーガ堂のようなコンテンツプロバイダーは、ケータイ動画にとって不可欠な存在と言えるだろう。
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小倉優子ちゃんのiモーションから、全身像のカット。さすがに320×240ドットでは、ディテールがつぶれてわかりにくい。ここまで引いたカットは、ドーガ堂のiモーションではあまりない |
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小倉優子ちゃんのiモーションから、かなり寄ったカット。かなりディテールが描かれている。ドーガ堂のiモーションでは、このくらい寄った絵が多い。ケータイの画面で見ると、これだけ寄っていても、あまり違和感がない |
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小倉優子ちゃんのiモーションから、腰上のカット。このくらいまで近づくと、だいぶディテールが見える。ドーガ堂のiモーションでも、このくらいの引き気味カットは実際に多用されている |
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さて、小難しい背景話も終わったところで、実際にドーガ堂を使ってみて、そのレポートをお届けしよう。
まず有名どころから、ということで、小倉優子ちゃん、いやここはあえて「ゆうこりん」と言わせてもらおう、ゆうこりんのiモーションをダウンロードさせてもらった。
ファイルは7.8MBで4分34秒の前編、9.3MBで5分55秒の後編の2つに分かれている。ファイルが分かれてしまっているのは残念だが、片方だけでもケータイ向けコンテンツとしては十分に長尺である。9MB程度のファイルでも、2分程度でダウンロードできた。さすがはHSDPAといったところだ。また、iモーションはダウンロード中でも再生できるので、時間がかかるという印象はない。
内容は、ゆうこりんが家に遊びに来た、という設定の自宅デートもののショートドラマだ。ゆうこりんがオムレツなんぞを作ってくれるのだが、なぜか合間に水着シーンが入っていたりする。まったくもって、ケシカラン。
画質はというと、端的に言って、非常に良い。
基本的にアップの絵が多いのだが、たまに全身像でも撮られていても、表情や体のラインまではっきりわかるくらいの解像感がある。アップになれば、肌の質感やほくろ、毛先までしっかりと感じられるレベルだ。
デジタル動画特有のブロックノイズがほとんどないことにも感心する。人物はよく動くし、カメラは手持ちのシーンが多く、映像全体もよく動くのだが、何本かダウンロードしたiモーションは、いずれもデジタルノイズは感じられなかった。
さらに、ケータイ向けに撮り下ろされた「どアップで撮られた映像」であるおかげで、よくディティールが描き出されている。肌や水着の質感、体のラインなどの臨場感は、まさにグラビア。もちろん、アップだけではなく、全身像でもちゃんと撮っていて、ゆうこりんのバディーを堪能できるようになっている。まったくケシカラン。
音質も良い。ビットレートはわからないが、これまでのケータイ向け動画にありがちだった「ノドを叩きながらしゃべってる?」みたいなデジタルノイズはほとんど感じられない。ゆうこりん独特の鼻声がシャープに聞こえる。これはケータイのスピーカーではなく、イヤホンで聴くべきレベルである。
正直言って、このクオリティには驚かされた。筆者はここのところ、ワンセグケータイのレビュー仕事が多かったため、ケータイの動画というと、ワンセグのイメージが強かった。そのワンセグよりも、画質クオリティが明らかに高い。なんの実用性かはわからないが、十分に使えるクオリティだと筆者は感じた。
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このくらい引いたカットは少ないが、それでも体のラインから表情までしっかりと見える。テクノロジーの進化に感謝したいばかりだ |
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意図的なのか、背景が白飛びするように撮影されているシーンが多い。動画圧縮の特性上、この撮り方なら、同じビットレートでも圧縮効率が上がるはず |
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ドーガ堂iモーションの真骨頂である、ドアップ映像。このくらい寄って、体の各所をパンニングしていく。まったくケシカランまでにロマンにあふれた撮り方だ。顔以外のアップは、実際に自分の目で確認して欲しい |
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ドーガ堂では、さまざまなコンテンツを配信している。ドーガ堂で扱っているコンテンツには、大きく分けて「グラビア」「イケメン」「ドラマ」「バラエティ」「アニメ」「映画予告」の6ジャンルがある。
先ほどダウンロードしたゆうこりんの動画は、「グラビア」の中の「She」というコンテンツの1つだ。「She」ではほかにも、浜田翔子ちゃんや金田美香ちゃんなど、たくさんのアイドルの撮り下ろしビデオが配信されている。いずれのビデオでも、水着姿を高画質で堪能することができる。
「グラビア」のジャンルには「She」のほかにも、U-15アイドルが登場する妹属性特化の「妹コレクション」、ツンデレ属性特化の「ポケデレ」がある。いずれも「She」同様、ケータイ向けに撮り下ろされた、10分くらいのドラマ仕立てのビデオだ。
「ドラマ」のジャンルでは、学園萌え特化の「恋色鉛筆」、岩佐真悠子主演のギャグコメディー「チキン☆デカ(国産)」が配信されている。
さらに「バラエティ」では、メイドやチャイナ、家庭教師など、さまざまな萌え要素を取り入れた「萌えるレシピ」、ケシカラン方向特化の「進め!巨乳探検隊」、方向性ががらりと変わって、お笑いライブの「松竹お笑い芸能ライブ」が配信されている。
変わったところでは「イケメン」というジャンルもある。これは完全に女性向けコンテンツのようで、イケメン俳優のビデオが配信されている。ニーズがあるのか、と正直思ったが、実はランキングでは上位にいたりする。もはやグラビアの世界は、男子だけの市場ではないというわけだ。
サービス自体は開始されたばかりだが、バラエティに富んだコンテンツがそろっている印象を受けた。とくに様々な萌え属性に特化したコンテンツを作っているので、どんな萌え属性の人でも楽しめることだろう。
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「妹コレクション」の朝倉みかんちゃん。健全な妹萌え特化なので、水着とかケシカランやつはない。正しい「お兄ちゃん」は水着とかそういうのは求めないのだ、わかるか? |
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「ポケデレ」から小田有紗ちゃん。ツンのシーンはOL風だが、デレのシーンは水着。ツンからデレに変わる過程などは、ちゃんとお約束を守っている |
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「恋色鉛筆」から「純情、掃除当番-愛衣」。このような恵まれた学生生活を送りたかったと筆者は常々思うのだが |
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「萌えるレシピ」から「ロックde作る温玉のせカルボナーラ-森下悠里」。ロックでクッキングという時点でぶっ飛んだ内容だが、ツンデレものだったりする。やるな、キサマ |
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iアプリ版の解像度は、ダウンロードもストリーミングも横240ドットとなり、フレームレートもだいぶ落ちてしまう。データはSDカードに保存も可能だ |
ドーガ堂では、配信形式は、iアプリとiモーションの2種類があり、それぞれでさらに、ストリーミングタイプとダウンロードタイプの2種類が選べる。iモーションは903iXシリーズ専用の大容量iモーションで、他機種からは利用できない。iアプリは903iXシリーズ以外でも利用できるが、解像度やフレームレートが低く、従来のiモーションと大差がない。ただし10分級の長尺には対応するので、iモーション版では2つに分割されているファイルも、1度に見ることができる。
ダウンロードとストリーミングの違いは、端末に保存できるかどうかの違いだ。ストリーミングタイプの場合、購入から48時間のみ、サイトから直接再生できる。価格はiアプリとiモーションで共通で、ダウンロードタイプがだいたい450円(税別)相当、ストリーミングタイプがだいたい150円(税別)相当となっている。また映画予告や「松竹お笑い芸能ライブ」に関しては、ストリーミング配信のみとなっている(映画予告は無料)。
iモーションでダウンロードすると、1つのコンテンツあたり2つのファイルになっていて、あわせると、だいたい18MBくらいとなる。ダウンロードの場合、microSDカードに保存することも可能だが、F903iXの場合、内蔵メモリが1GBと非常に大きいので、ほかに大きなコンテンツを大量に使わないならば、内蔵メモリだけでも十分だろう。
また、容量がケータイのコンテンツとしては桁違いに大きいので、定額制オプションのパケ・ホーダイ契約は必須だ。パケ・ホーダイを使わない場合、1コンテンツをダウンロードしただけでパケット料金が数千円になるので、契約忘れには十分に注意しよう。
余談だが、F903iXはセキュリティ・プライバシー機能が良くできていて、データBOXにだけロックをかける、といったこともできる。ケシカランブックやケシカランDVDのように、家族に見つからないように、ベッドの下や本棚の裏に隠す必要はないわけだ。しかも指紋認証により、ワンタッチでロック解除もできる。便利になったものである。
これまで、NTTドコモのHSDPAといっても、フルブラウザの通信速度がちょっと速くなったと感じられるくらいで、あとは陰の薄いミュージックチャネルくらいしか特徴がなかった。しかし今回、903iXシリーズ用の大容量iモーションを使ってみて、HSDPAのすごさを初めて感じた。話題になっているワンセグよりも、よっぽど画質がよいのだ。
大容量iモーション対応端末を持っている人は、是非ともドーガ堂でそのクオリティを確かめてみてほしい。または、ドーガ堂を楽しむために、機種変更するのもアリだ。
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