デジタルステージの「BiND for WebLiFE* 6.5」(以下BiND)は、同社のホームページ制作ソフト「BiND」シリーズの最新バージョン。HTMLやCSSなどWebサイト制作に関する知識がないユーザーでも、本格的なWebサイトが構築できるソフトとして、すでに10万人以上のユーザーが利用しているという。

 特長はPCソフトという制作環境だけでなく、Webサイトを運用するためのサーバーサービス「WebLiFE* サーバー」も合わせて提供するWeb制作のトータルソリューションということ。BiNDで制作したサイトデータを簡単にアップロードできる機能や、BiNDと連携した各種機能を備えるなど、単なるWebサーバーとしてではなく、BiNDの機能をさらに活用するためのサポートツールとして提供されている。

公式の「BiND&LiVE ナイスサイト」では、実際にユーザーがBiNDで作成したWebサイトがまとめられている。BiNDの実力をかいま見るには最適だ

 5月30日にリリースされる最新バージョン「6.5」の注目すべき点は、Webフォントへの対応。Webフォントとは文字通りフォントデータをWebサーバーから参照する機能で、サイトを閲覧しているPC内に存在しないフォントであっても表示できるため、文字を使ったサイトの表現力を高められる。6.5では、WebLiFE* サーバーと組み合わせることで、欧文はもちろん日本語のWebフォントもサイトで利用できるようになる。さらに、Webフォントの特長を活かしたタイポグラフィックな テンプレート4種類(PCサイト2種、スマートフォン2種)も新規でバンドルされた。

 以前のバージョンで搭載された機能も引き続き利用可能。テキストや画像をフォームに入力するだけでWebサイトを編集できる「スマートモード」、ブログツール「WordPress」への対応、スマートフォン専用サイトへの対応といった「6」から搭載された機能に加え、Facebookページ作成など非常に多彩な機能を搭載している。

 パッケージの価格は6から据え置かれ、スタンダード版が19,800円、プロフェッショナル版が29,800円。また、6を購入したユーザーは6.5への無償アップデータが用意される。2つのパッケージは、Webサイトの制作のための基本的な機能はほぼ同一だが、テンプレート収録数はスタンダード版の154サイトに対し、プロフェッショナル版はWordPress用テンプレートサイトやFacebookページ用テンプレート16サイトを含む 180サイトが利用可能。さらに専用サーバー「WebLiFE* サーバー」利用権や写真素材パス、独自ドメインパスといった特典も用意されている。

 専用サーバー「WebLiFE* サーバー」は、こちらも月額980円のベーシックコースと月額2,980円のプレミアムコースの2種類を用意。プレミアムコースは WordPress連携のサポート機能やショッピングカート機能などが利用可能なほか、Webフォントもベーシックの7書体に比べ、プレミアムは150書体まで利用できる。

 BiNDの特長は、テンプレートをもとにデザインに優れたサイトを簡単に立ち上げられ、しかもあとから非常に細かいカスタマイズが可能な点だ。

 「サイトシアター」と呼ばれるBiNDの起動画面には「BiNDサイト(PCサイト)」「モバイル専用サイト(スマホサイト)」「Facebookページ」「オンラインショップ」「WordPress」という5つのカテゴリが用意されており、カテゴリの中から好きなテンプレートをクリックするだけで好きなサイトのデザインを設定できる。実際にデザインをWebブラウザで確認することも可能だ。

 

「サイトシアター」で作成するWebサイトのタイプを選択

150種類以上ものテンプレートから好きなデザインを選択

 

それぞれのテンプレートはサンプルをWebブラウザで確認できる。ソフトを所有していなくてもこちらから見ることができる

 テンプレートが決まったら、次はサイトのタイトルや写真などを細かくカスタマイズ。BiNDの編集機能である「スマートモード」は、Webサイト内が「ブロック」と呼ばれる構造になっており、タイトルやメニューエリアの「ヘッダ」、記事やサイドバーなどのエリア「コンテンツ」、コンテンツ内で主たるエリアとなる「メイン」などいくつものブロックで構成されている。それぞれのブロックを選択すると編集が可能になり、フォームに入力する感覚でテキストや写真を入れ替えていくだけでサイトが編集可能。HTMLをまったく意識することなく簡単にサイトを設定することができる。

 

編集画面。ブロックが色ごとに区別される

編集したいブロックをダブルクリックすると編集が可能になる

 

「メイン」ブロックの編集画面

「サイドA」ブロックの編集画面

 作成したデータをWebサーバーにアップロードするのも、通常であればFTP設定といったネットワーク知識が必要だが、WebLiFE* サーバーのユーザーであれば契約しているサーバー種別を選び、IDとパスワードを入力してログインするだけでアップロード設定が完了し、サイトを手軽にアップロードできる。Webサービスのブログを契約して開設する程度の操作で、本格的なサイトがすぐに作成できる。

 

アップロードは手動のほかアシスタントも利用可能

 

契約したIDとパスワードを入力するとアップロード用の設定が自動で反映される

 操作は簡単かつ、デザインなどを「いじりやすい」のがBiNDの魅力。スマートモードを構成しているブロックは自由に新しいブロックを追加したり、ブロックのレイアウトを変更することができるようになっている。ブロックは「見出し」「画像」「グローバルメニュー」といったデザインごと分類されているため、好きなデザインを細かく追加してカスタマイズすることが可能。写真が3列に並んでいるブロックを4列に変更する、といった細かなこだわりもスマートモードなら簡単にカスタマイズ可能だ。ただし、ブロックのサイズを変更したことでサイト全体の幅を超えてしまう、というケースもありうるので、実際に追加したブロックは画面を確認しながら調整するといい。

 

スマートモードで追加できる多彩なブロック

 HTMLやCSSといったWeb制作の知識があるユーザーなら、さらに高度なカスタマイズが可能。スマートモードでもピクセルの細かな指定やCSSの調整も可能なほか、「エディタモード」に切り替えることでブロック単位ではなく画像やリンク、テーブルなどより細かな要素を用いてWebサイトを制作できる。気に入ったテンプレートをスマートモードである程度調整しておき、本格的なカスタマイズはエディタモードで、という切り替えも可能だ。ただし、一度エディタモードでカスタマイズしたテンプレートは二度とスマートモードに戻れないため、エディタモードでの編集は慎重に検討した上で行なおう。

 

CSSもブロックごとカスタマイズできる

ブロックを使わずより小さな単位のパーツでWebサイトを制作できるエディタモード

 ブロックによるデザイン変更だけでなく、サイトに使用するグラフィックをオリジナルで作成するための機能も搭載。「SiGN for WebLiFE* Pro(以下SiGN)」は、レイヤー機能を備えたグラフィック編集ソフトで、Webサイトのバナーやボタンといった画像素材をテンプレートから選択して簡単にカスタマイズ可能。BiNDのテンプレートに含まれている画像もSiGNに連携しており、テンプレートから直接SiGNを起動して編集することができる。

 

バナー素材などを作成できる「SiGN」

 トップページに表示するアニメーションをHTML5とJavaScript(jQuery)で作成できるスライドショー制作ソフト「SHiFT for WebLiFE*(以下SHiFT)」は、HTML5とJavaScriptという言葉すら知らなくても、PowerPointのアニメーションを選ぶような感覚でWebサイトのトップに表示するアニメーションを作成できる。企業サイトに多い、製品画像などがスライド式に切り替わっていくようなアニメーションも、SHiFTならテンプレートを選ぶだけで簡単に制作可能だ。

 

トップページのアニメーションを作成できる「SHiFT for WebLiFE*」。動き方のエフェクトの種類も多数用意されている。

 シンプルな操作ながら充実したカスタマイズ機能を備えたBiNDだが、最新バージョンの「6.5」ではWebフォント対応により、Webサイトの表現の幅がさらに広がった。

 通常、Webサイトで利用するフォントはそのサイトを表示するPCにフォントのデータがインストールされている必要があるため、必然的にWebサイトで使われるフォントは一般的なフォントになりがちで、凝ったフォントを使用する場合は、テキストをいったん画像化するしかなかった。しかし、画像化されたテキストはファイルサイズもかさむし、なにより、テキストを修正する場合に手間がかかるという問題もあった。

Webフォントを利用すれば、Web上に保存されたフォントデータを参照することで、PCの環境に依存することなくさまざまな種類のフォントを用い、Webサイトを彩ることができる。WebフォントはPCサイトのほか、スマホサイト、Facebookページに適用できる。(WordPressには現状非対応)。

 なお、Webフォントは単なるデータでは無く、サーバーにあるWebフォントを利用するサービスであるため、BiNDでWebフォントを利用する場合は専用サーバー「WebLiFE* サーバー」の利用が必須となっている。BiNDが対応するWebフォントは現在、WebLiFE* サーバーのベーシックコースでは7書体、プレミアムコースでは150書体が利用可能。また、プレミアムコースで利用できるWebフォントは今後増えていくという。利用料金はWebLiFE* サーバー使用料に含まれており、文字数の制限等もないので使い勝手が良い。有名フォントをひとつずつ購入することなくまとめて使えるというメリットもある。

 

株式会社フォントワークスジャパンのフォントを中心に、様々な有名フォントが利用できる。収録フォントの詳細は公式サイトへ

 6.5ではWebサイトの編集画面で下部にWebフォントの「F」ボタンが追加され、フォントを変更したい箇所を選択して「F」ボタンをクリック、任意のフォントを選ぶだけで簡単にフォントを変更できる。フォントは最大で3つまで登録でき、サイトで使うフォントを決めておけば毎回同じフォントを使って変更することも可能だ。

 

Webフォント設定画面。WebLiFE サーバー会員であればWebサイトと同様ユーザーIDとパスワードで簡単に設定できる

「大見出し」「中見出し」といったスタイルごとにWebフォントを適用可能なほか、1文字ずつ任意の箇所に設定することもできる

 

左がWebフォント適用前、右がWebフォント適用後のサイト。
左はWindows標準の「メイリオ」フォントが適用されている。
右のWebフォントなら、ユーザーのインストールフォントや見る人の閲覧環境にかかわらず、サイトに美しいフォントを表示できる

 Mac版は編集画面でのWebフォントプレビューに対応しており、便利だ。Windows版ではWebフォントのローカルプレビューに対応しておらず、 編集画面ではフォントの変更を確認できないが、Webブラウザを使ったブレビューで実際の見え方を確認できる。その際、Internet Explorerではローカル環境でWebフォントが反映されないため、別途Google ChromeやFirefoxといったWebブラウザが必要だ。Webブラウザはプレビュー用の「PCブラウザ」ボタンから追加できるため、マルチサイトでの確認用途の意味も含めて複数のWebブラウザを登録しておくといいだろう。

 

Mac OSX版では、編集画面でのWebフォントプレビューにも対応

Windows版を使用するなら、プレビュー用のWebブラウザとしてFirefoxやChromeを追加登録しておくとよい

 Webサイトは一度完成すれば何もしなくていいというわけではない。むしろ完成してからこまめな更新やメンテナンスを行なっていく運用こそがWebサイトにとっては重要だ。企業サイトであれ個人サイトであれ、何ヶ月も前のコンテンツが最新情報として掲載されているのでは、せっかくのWebサイトも魅力が半減してしまう。

 そうした日々の運用面においてもBiNDは便利。スマートモードなら新しい情報の追加や更新も簡単に行えるため、更新が面倒でせっかく作ったWebサイトをそのまま放置してしまうという心配もない。サイトのリニューアルといったデザインの大幅変更に対しても、色やテキスト、写真変更といった細かな変更はもちろん、サイドバー1列のサイトを2列にするといったレイアウト変更も手軽に行なうことができる。

 BiNDの利用ライセンスが柔軟なのも嬉しい。BiNDは1パッケージごと複数PCでの利用が可能になっており、Win版/Mac版はそれぞ れ2台までのPCにインストールできる。(ただし同時起動はできない。)また、デジタルステージのオンラインストア限定の「クロスプラットフォーム版」なら、Winに2台、Macに2台、最大4台へのインストールが可能。Web制作ソフトのような特殊なソフトウェアは対応OSが限定されていることも多いが、WindowsとMac OSの両対応に加えて複数台での利用が可能という点は、実際にサイト更新を行なう担当者にとっても非常に使いやすい環境と言える。

 とはいえ、複数のPCで利用が可能であっても、更新したサイトのデータが1つのPCにしかないのであれば実際の運用は難しい。そこで非常に面白い機能が、Dropboxを使ったデータのバックアップ機能だ。Webサイトの制作データは基本的にPCのローカルに保存するが、Dropboxのアカウントを持っているユーザーであれば、バックアップデータをまるごとDropboxに保存することができる。バックアップという本来の意味ではもちろんのこと、複数のユーザーでサイトを管理する場合にも非常に心強い機能だ。

 

Dropboxを用いて複数PCのサイトデータを同期。どのPCからでもサイトの編集が可能になる。ただし複数のPCで同時に編集するとサイトデータが壊れるので気をつけよう

 プロフェッショナル版パッケージはWordPressにも対応しており、データベースなどの知識がなくとも簡単にWordPressベースのWebサイトを開設することができる。

 WordPressでサイトを制作することの魅力は、BiNDを使わずWebブラウザやスマートフォンからでもサイトを更新できるということ。デザインカスタマイズなどを行なう場合であればBiNDが必要だが、新着情報やブログの更新などであれば、BiNDのインストールされていないPCからでも行える。サイト制作には携わらないが更新は行なう担当者が多くいる場合は、WordPressベースでサイトを制作すると非常に運用が楽になる。

 

WordPress設定画面。WebLiFE サーバー会員であればWebサイトと同様ユーザーIDとパスワードで簡単に設定できる

 BiNDで制作されたWordPressの管理画面は独自にカスタマイズされているが、基本的な使い方はWordPressの標準とほぼ変わらない。むしろテキスト中心のWordPress標準に対し、グラフィカルなボタンで構成されたBiNDのWordPress管理画面は、ブログに慣れていないユーザーでも非常にわかりやすいデザインと言える。

 

BiNDで制作したWordPressの管理画面。
基本的な機能は共通だが、
グラフィカルなボタンなどでより操作しやすくなっている

 BiNDで制作したテーマと、WordPressのブログ更新データは分割して管理されているため、BiNDで作成したテーマは何度でも自由 に編集が可能。一度作成したテーマも、WordPressを使わない場合と同様柔軟な管理が可能だ。なお、WordPress対応のサーバーであれば WebLiFE* サーバー以外でも利用できるので活用したい。

 これまでPCでの閲覧が中心だったWebサイトも、インターネットの普及により大きな変化が生まれている。モバイル環境ではPC並みのスペックながらも画面サイズは小さいスマートフォンの普及により、スマートフォンで閲覧した際も最適なサイズで表示するニーズが生まれた。また、TwitterやFacebookといったソーシャルメディアへの対応も、最近のWebサイトでは非常に重要なポイントの1つだ。

 こうした点でもBiNDは非常に強力。収録されているテンプレートはいずれもスマートフォンに最適化したデザインで表示できるだけでなく、専用のビューアを利用してスマートフォンで見ている感覚でプレビューしながらデザインカスタマイズが可能。PCを想定しないスマートフォン専用のテンプレートも用意されているなど、スマートフォン対応は非常に充実している。

 

スマートフォン用デザインをプレビュー確認できるモバイルシミュレーター

 TwitterやFacebookといったソーシャルメディアも、「SYNC for WebLiFE* 5(以下SYNC)」を利用すれば簡単に対応が可能。TwitterバッジやFacebookの「いいね!」ボタン、YouTubeの動画やUstreamのライブ配信 パーツなどさまざまなボタンが用意されており、専用コードなどを取得することなく簡単にWebサイトへ設置できる。またSYNCではないが、複数のソーシャルメディアへ更新情報をまとめて投稿できる「ソーシャルコネクト」という機能もある。

 

ソーシャルメディア機能を追加できる各種ボタン

 Googleのアクセス解析サービス「Google Analytics」にも対応しており、Google Analyticsのアカウントとパスワード、設定プロファイルを入力すると自動的にGoogle Analtycsの測定コードがWebサイトに埋め込まれる。Google Analyticsは無料ながら非常に多機能なアクセス解析として人気のサービスであり、こうしたサービスもアカウントの入力だけで設定できるのが実に手軽だ。

 

Google Analyticsにも対応

 Movable TypeやWordPressといったCMSツールの登場により、Webサイトの制作環境は非常に裾野が広がり、ユーザーが自らサイトを立ち上げることも難しくない時代になった。とはいえ商用に耐えうるだけのデザインや使いやすさを持ったWebサイトを素人が運営するのはまだまだ知識や経験が無ければ難しいのが実情だ。

 BiNDは、豊富なテンプレートとカスタマイズしやすいスマートモード機能によって、こうしたWeb制作の知識がなくとも美しいWebサイトを簡単に制作できる。スマートフォン対応やソーシャル対応など周辺機能も充実しており、各種編集ツールによってオリジナルのバナー素材なども簡単に作成可能。さらにWebサイトをアップロードするためのサーバーやサーバー設定ツールも用意されている。

Webサイトの必要性にかられたとき、制作会社に外注する以外の選択肢として、自らのサイト制作から運用までをトータルで支援してくれるソリューションだ。

(Reported by 甲斐祐樹)