現在、デルのデスクトップPCラインナップの中で最高峰に位置するのは、ゲーミングPCシリーズであるAlienwareシリーズだ。その中で、以前よりデルの最上位モデルとして君臨しているXPSシリーズも健在であり、Alienwareシリーズに次ぐハイエンドモデルとして位置付けられている。そのXPSシリーズの中で、高スペックとコンパクトさを兼ね備えたモデルが、XPS 8300である。
◆スタイリッシュなケースが魅力!
XPS 8300を一目見て感じることは、ケースが非常にスタイリッシュだという点だ。斜めに切り落とされ、光沢感の強いブラック塗装に、シルバーがアクセントとなった前面パネル部は、なかなかお洒落だ。しかも、曲線が多く取り入れられているので、ビジネスPCのような無骨さもない。内蔵光学式ドライブなども蓋で見えないように工夫されているので、リビングルームに置いても十分映えるはずだ。
また、本体上部にUSB 2.0コネクタやマイク、ヘッドホン端子が用意されるともに、トレー状の凹みが用意されている。この部分には、ポータブルHDDや小物類を置いて利用できるので、上部USBコネクタを利用する場合の使い勝手が非常によい。もちろん、ヘッドホンやマイクをマシン前方から接続して利用できる点も便利だ。
本体正面は、光沢感の強い前面パネルが取り付けられている。拡張ベイ部分は全て蓋が用意され、通常は搭載したドライブが見えないようになっているため、一般的なデスクトップPCのような、統一感の無さもなく、すっきりとした印象も受ける
本体周囲は曲線が多用されているため、ビジネス向けのPCのような無骨さがなく、柔らかいイメージだ。しかも、シルバーのラインがいいアクセントになっていて、なかなかお洒落だ
左側面からみると、前面パネル部が斜めに切り落とされていることがよくわかる。また、本体も微妙に傾いている。前方が盛り上がっている上部の形状も特徴的だ
光学式ドライブを開くと、このように前面の蓋が開き、トレーが飛び出してくる
上部には、USB 2.0ポートが2個と、マイク、ヘッドホン端子を用意。また、その部分はトレーのような形状になっていて、ポータブルドライブなどのUSB機器や小物類を置くスペースとして活用できる点は便利だ
電源ボタンが、本体上部に用意されている点もおもしろい
本体前面下部には大きな吸気口が用意されていて、効率良く外気を取り入れ、内部の換気が可能となっている。ハイエンドパーツを搭載すると、内部パーツの熱処理が問題となる場合があるが、これなら、安定した冷却が行えそうだ
正面上部には、19種類のメモリカードに対応したメモリカードリーダーが搭載されている。こちらは、正面パネルに直接スロットが用意されているが、デザインを崩さないよう、なるべく目立たないように工夫されている
3.5インチベイ部分は、下にスライドさせる蓋を採用。また、3.5インチベイ横にもUSB 2.0×2ポートが用意されている
◆コンパクトなボディに、最強に近いスペックが詰め込まれている
XPSシリーズの魅力は、なんと言ってもハイエンドシリーズらしいハイスペックパーツがふんだんに採用されているという点だ。それは、コンパクトなケースを採用するXPS 8300も同様で、CPUとしてCore i5-2400またはCore i7-2600が選択できる。これらは、Core i5およびi7の中で、倍率制限のない”K”のつく最上位モデルと基本動作クロックが同じで、事実上同等のパフォーマンスが発揮される。また、メインメモリは4GBから最大16GBまで搭載できる。ビジネスソフトから、多くのメモリを必要とする映像処理用途まで、柔軟に対応できると言っていい。
ビデオカードは、Radeon HD 5000シリーズが標準搭載される。ローエンドに位置付けられるRadeon HD 5450から、ハイエンドクラスのRadeon HD 5870まで4種類が用意されており、必要とする描画能力や予算に応じて自由に選択可能だ。最新のRadeon HD 6000シリーズではないものの、Radeon HD 5000シリーズでも十分に強力な3D描画能力を誇っているので、最新3Dゲームや映像処理ソフトも快適に利用可能だ。今回は、Radeon HD 5770を搭載する試用機を実際に利用して、いくつかのベンチマークソフトを実行してみたが、どれも優れた結果が得られた。
HDDは最大2TBドライブを2台まで搭載可能。もちろん、1台の搭載でもいいし、2台搭載する場合にはRAID構成にすることも可能だ。また、光学式ドライブは、DVDスーパーマルチドライブまたはBlu-rayドライブから選択でき、Blu-rayドライブとDVDスーパーマルチドライブの2台構成も可能。こういった、構成に対しての自由度の高さは、デルの製品らしい特徴だ。
CPUは、Core i5-2400またはCore i7-2600から選択して搭載可能。また、メインメモリも最大16GBまで搭載できる
ビデオカードは、Radeon HD 5000シリーズを採用。試用機では、ミドルレンジクラスのRadeon HD 5770が搭載されていたが、より高い3D描画能力が必要ならRadeon HD 5870を選択したり、優れた3D描画能力が不要ならRadeon HD 5450で予算を抑えることも可能だ
Radeon HD 5770では、DVI×2、HDMI、Display Portと4系統の映像出力が用意され、1枚で同時に3画面の映像出力が可能だ
試用機では、回転数7200rpmの1TB HDDが1台搭載されていたが、最大2TBのHDDを2台まで選択して搭載可能だ。また2台搭載時には、RAID構成にすることも可能
試用機のスペックとベンチマーク結果
|
XPS 8300 |
CPU |
Core i7-2600(3.40/3.80GHz) |
チップセット |
Intel H67 Express |
ビデオチップ |
Radeon HD 5770(ビデオメモリ1GB) |
メモリ |
PC3-10600 DDR3 SDRAM 2GB×4 |
ストレージ |
1TB HDD(WD1001FAES) |
光学式ドライブ |
Blu-rayドライブ |
OS |
Windows 7 Home Premium 64bit |
PCMark Vantage x64 Build 1.0.1 0906a |
PCMark Suite |
9174 |
Memories Suite |
7685 |
TV and Movies Suite |
6546 |
Gaming Suite |
10402 |
Music Suite |
8973 |
Communications Suite |
13289 |
Productivity Suite |
7677 |
HDD Test Suite |
3612 |
3DMark Vantage Bulld 1.0.1 0906a 1280×1024ドット |
3DMark Score |
10889 |
GPU Score |
9242 |
CPU Score |
23396 |
Windows エクスペリエンスインデックス |
プロセッサ |
7.6 |
メモリ |
7.6 |
グラフィックス |
7.4 |
ゲーム用グラフィックス |
7.4 |
プライマリハードディスク |
5.9 |
モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】 |
1,280×720ドット |
11145 |
1,920×1,080ドット |
6333 |
バイオハザード5ベンチマーク DX10
(アンチエイリアス:8X、モーションブラー:オン、影品質:高、テクスチャ品質:高、画面クオリティ:高) |
1,280×720ドット |
ベンチマークテストA |
84.6 |
ベンチマークテストB |
91.9 |
1,920×1,080ドット |
ベンチマークテストA |
50.2 |
ベンチマークテストB |
61.1 |
◆ミニタワーケースでも拡張性は十分
ケース内部へは、左側面カバーを開けてアクセスする。ミニタワーケースのため、ミドルタワーなどの大型ケースを採用する製品に比べると内部の拡張性は低いが、5インチベイが2個(空きは1個)、3.5インチベイが1個、HDD取り付け用の3.5インチシャドウベイが2個(空きは1個)と、このサイズのケースとしては十分に豊富。取り付けられるドライブ類は購入時に自由にカスタマイズが可能だが、購入後にHDDや光学式ドライブを増設する場合でも、これだけのドライブベイがあればまず困ることはないだろう。
マザーボードは、MicroATX仕様のオリジナルマザーボードを採用している。チップセットはIntel H67 Express(不具合解消版)で、メモリスロットは4本、拡張スロットはPCI Express x16が1本、PCI Express x1が3本の4本で、PCIスロットは用意されない。ちなみに、標準で2スロットを占拠するグラフィックカードが取り付けられるため、利用できる拡張スロットはPCI Express x1が2本のみとなる。それでも、LANやサウンドなどの必要とされる機能は、マザーボードにオンボードで搭載されているため、機能拡張の必要性は低く、拡張性に問題を感じることはまずないはずだ。
本体側面のパネルを開けた状態。ケースはコンパクトだが、マザーボード部分には大きな空間が確保され、内部のメンテナンス性は悪くない
ケース内の拡張ベイは、5インチベイが2個、前面からアクセスできる3.5インチベイが1個、HDD搭載用の3.5インチシャドウベイが2個用意されている。コンパクトなミニタワーケースとしては十分に豊富で、HDDの増設なども手軽に行える
背面には、大型の排気ファンが取り付けられ、内部の熱を効率良く排出できる。また、拡張スロットは4本用意されているが、ビデオカードが2スロットを占拠するため、2本のみが利用可能だ
ギガビットイーサネットや7.1チャンネルサウンド機能がオンボードで搭載されている。また背面には、USB 2.0が4ポートとeSATAポート、光デジタル音声出力端子も用意されている
マザーボードには、PCI Express x16スロットが1本、PCI Express x1スロットが3本用意されている。ただし、ビデオカードが2スロット占有するので、拡張用に利用できるのはPCI Express x1スロット2本のみとなる
◆性能だけでなく、本体デザインやコストにもこだわりたい人にオススメ!
XPS 8300は、スタイリッシュでコンパクトなミニタワーケースに、ハイエンドPCに匹敵する高性能パーツを詰め込むことで、見た目からは考えられないような高い処理能力を発揮する製品だ。しかも、最小構成で76,172円、今回試用したスペックでも125,172円と、ハイエンドモデルに位置付けられる製品ながら、非常に安価に購入できる点も嬉しい。これこそ、コストパフォーマンスに優れるXPSシリーズならではといったところだろう。
もちろん、最新の3Dゲームを圧倒的な快適度でプレイしたいなら、より優れたパフォーマンスが発揮されるAlienwareシリーズがオススメだ。ただ、コアゲーマーでもない限り、XPS 8300のパフォーマンスがあれば、ビジネスからホビーまで、十分に満足できるパワーが発揮される。性能と価格、本体デザインと、どれにも妥協したくないという人に、自信を持っておすすめしたい製品だ。
[Text by 平澤 寿康]