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編集長の気になる話

 前回の「VAIO type Z」がハイエンドノートPCなのに対し、今回紹介する「Aspire one」はネットブックというローエンドのジャンルに属する。しかし、両者には所有する喜びを与える、という共通点があるのだ。つまりAspire oneは、ネットブックというチープな枠を越えた製品なのだ。どうして、こういう製品が生まれたのだろう。それには、ネットブックの成り立ちについて、簡単におさらいをする必要がある。




日本エイサー「Aspire one」。価格はオープンプライスで、実勢価格は54,800円ほど

 もともとネットブックは、発展途上国へのPC普及を目指し、機能が限定されていても低価格なPCを作ろうというのが主目的だった。この背景には、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のニコラス・ネグロポンテ氏が提唱した、発展途上国向け低価格ノート「OLPC」(One Laptop per Child)構想の影響があったことは間違いない。

 これが、実際に形となって表われたのは、2007年6月のCOMPUTEX TAIPEIで発表されたASUSTekの「Eee PC」だった。Eee PCは、クロックを下げて差別化したIntel CPU、カーナビ用を転用したと推測される800×480ドットの液晶、4GBのSSD、Linuxなどから構成されていた。この時点では、ネットブックは、「 低価格だが機能が限定されたPCではない端末」という本来の意味に忠実だった。国内発表時点でも、「モバイルインターネットデバイス」であってノートPCとは似て異なるモノであると、しつこいほどに強調されていたのも、その現われだ。

 ところが、これが恐ろしいほどに売れてしまったのだ。どれぐらい売れたかというと、Microsoftが“ULCPC(低価格製品)向け”という限定付きながら、お蔵に入れようとしていたWindows XPを再びライセンスしはじめるほど売れてしまったのだ。つまり、Eee PCの売れ行きは、これを放置してLinuxに明け渡してしまうとWindowsの支配体制がゆらぐ可能性があるという危機感を、Microsoftに抱かせたのだと思う。

液晶背面の塗装は美しい。指紋は目立つのだが、磨く感触も楽しい

 ライセンスするのをHome Editonに限定し、Windows XP Professionalを解禁しなかったのは、ネットブックを家庭内に閉じこめて置かないと、企業向け端末までも浸食される危機感があったからだ。それに、企業向けのProfessionalはWindows Vista Businessからのダウングレードという限定されたルートに閉じこめ、Windows Vistaの売り上げとして計上するという戦略がすでに進んでいた。これが昨年末のこと。

 おかげで、ネットブックは、x86 CPU+Windows XPという、通常のノートPCと変わらない骨格を持つ製品になってしまった。さすがに、Windows XPを動作させるためには、小容量のSSDではつらいため、HDD搭載機種も一気に登場した。ますます、普通のノートPCとの違いがわかりにくい製品に成長してしまったのだ。

 もちろん、Microsoftも、そしてたぶんIntelも、ネットブックがPCと混同されないように、いくつかの規制を設けている。それは、メモリ容量であり(1GB上限)、SSDやHDDなどの容量制限であり、液晶の大きさだ。しかし、日を追うにつれ、これらの制限は緩くなってきている。

 たとえば、HDD容量については、当初のMicrosoftの規定では80GBが上限とされていたが、現在では120GBや160GBを搭載した製品も登場している。つまり「Windows XP Home Edioton for ULCPC」のライセンス規定は公開されていないため、内容が更新されている可能性が高いのだ。

 メーカー側は売れる製品を作るために制限を緩めようとするだろうし、MicrosoftやIntelは、ある程度に止めようとするだろう。そして、現状では、市場の要求もあって、メーカー側の方へ秤は傾いているようなのだ。




A4縦サイズの小柄なショルダーバッグでもらくらく入る大きさだ

 Aspire oneは、一見して普通のモバイルノートPCにしか見えない。液晶はLEDバックライトを採用した1,024×600ドット(WSVGA)表示対応8.9型ワイド液晶で、横幅が1,024ドットあるため、通常の使用で問題になることはほとんどない。光沢タイプなので、屋外での表示は見えにくいときもあるが、反射防止シートなどの追加でなんとかなるレベルだ。

 CPUはAtom N270(1.60GHz)、チップセットにIntel 945GSE Express(ビデオ機能内蔵)という、ネットブックでは標準的な構成で、特に重い用途を除けば、そんなに困ることはない。動画の再生は十分できるが、動画の取り込みやエンコードはやりたくないというレベルだ。

 メモリはネットブック規定のためか1GBに限定されている。メモリの増設は、普通のPCのように窓が用意されておらず、本体をかなり分解しないとできない。これもネットブックの規定によるものだろう。HDDは前述のように80GBの枠をこえ、120GBが搭載されている。

 インターフェイスは、普通のノートPCにあるものは、ほぼあると思って良い。USB 2.0×3、IEEE 802.11b/g無線LAN、Ethernet、SDカードスロット、SDカード/MMC/メモリースティック(PRO)/xD-Picture Card対応スロット、ミニD-Sub15ピン、30万画素Webカメラ、音声入出力などを備える。

キーボードは打ちやすい大きさを維持している

 これで、本体サイズが249×170×29mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約1.1kgと、小さく軽い。まあ、光ドライブを装備していないのだから当たり前ではあるだが、この大きさと重さは持ち歩ける水準だ。ただし、バッテリが3セルなので、バッテリ駆動時間は約3時間に限られる。安心して使えるのは2時間ほどだろうか。キーボードのピッチは、中心部分で17mmあり、タッチタイピングができる水準にある。軽量化のためか、キーボード自体は、がっしりと固定されているわけではないのだが、全体に柔らかい感じで、打ちにくさは感じない。 まとめると、ずっと1日外にいるという使い方には向いていないが、ちょっと外出して1つ会議をこなすというぐらいだったら十分に使えてしまう。

液晶ヒンジ部の赤い輪がデザイン上の特徴となっている

 また、Aspire oneは、外観にも気をつかっている。液晶背面のパネルには、日本写真印刷のNissha IMDが使われており、その光沢感は美しい。濃い色を選べば、付いた指紋を磨くという愉しみさえ味わえる。液晶のヒンジ部分には赤く丸い飾りネジがついており、デザイン上のポイントになっている。本体をたたんだ状態でも、この2つのポイントで、Aspire oneであることがすぐにわかる。質実剛健でビジネスライクな製品が多いネットブックの中では、出色のデザインだと思う。

 たぶん、Acerはよく知っているのだ。機能が十分であっても、人は付加価値のある製品を選ぶものだということを。逆に言えば、低価格の製品でも安っぽいものは売れない、低価格だからこそ、それを選ぶ喜びが必要なのだということを。

 前半で述べたネットブックの歴史で言えば、最初のEee PC(国内では4G-X)は第一世代の完成型だった。それに対し、Aspire oneは第二世代の製品なのだ。第一世代ネットブックが、PCをまだ持たない国々へ届ける製品だったのに対し、第二世代は、PCが普及している国々にあって、PCに手の届かなかった層や、一家で2台目以降の層を対象にしている。1人が1台所有できる機器として考えられているのだと思う。




 しかし、Aspire oneがネットブックの枠を越えた存在であるにしても、ネットブックは万能ではない。やはり、ネットブックだけではできないこともある。例えば、デジタル接続された大きな液晶画面、強力なCPUによる動画のエンコード、高速な3Dネットワークゲームなどだ。

 こういうネットブックでは体験できないPC体験を享受した上で、手軽な端末としてネットブックを組み合わせることが愉しむコツだと思う。つまり、持ち歩ける端末という意味で、ネットブックは最強のPC周辺機器なのだ。

 旅先で、社内の会議で、気分を変えたいカフェで、機能の限定されたアプライアンス(機器)ではなく、PCとしての環境が使えるということがネットブックの利点なのだ。そして、軽く、美しく、手頃な価格のAspire oneは、現時点では最強のネットブックだと思う。

■ Aspire one製品情報 http://www.acer.co.jp/one/

伊達浩二
1994年インプレス入社。月刊誌編集部を経て、1996年の「PC Watch」創刊に参加。
以後、取材・記事執筆に従事。2000年8月から同誌三代目編集長。
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