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昨年、華々しく導入したコンセプト「SUPER PHOTO BOX」からイメージできるような高画質で今までにないスタイル! しかも「美しさ長持ちプリント」で「あっと」いわせたPIXUSシリーズがさらに進化したラインナップを発表した。インクジェット複合機MPシリーズ4機種と、インクジェットプリンターiPシリーズ3機種だ。そして2005年PIXUSのテーマ「進化」というとおり、また一段と高画質になったのだ。
デジタルカメラの高画質化がどんどん進み、ハイアマチュアやプロ用一眼デジタルカメラは1,000万画素を超えはじめ、コンパクト機でさえ800万画素の時代に突入した。そのデジタルカメラの高画質を紙上に再現してくれるプリンターとデジタルカメラ両者の進化はフィルムの画質領域に入り、抜き出ようとしている。
私はカメラマンという職業柄、初期のころからデジタルカメラにかかわってきたため、常にその時期のハイスペックプリンターとスキャナーをスタジオに置いて使ってきた(見栄も多分にあるけど)。それに対し自宅では古い複合機ですませてきた。だがスタジオもいよいよ複合機に変えて省スペースにしたくなってきたのだ。そこでプロカメラマンとしてスタジオでも自宅でも使ってみたくなる複合機がキヤノンから発表されたので、さっそくフラッグシップモデルの「MP950」を使ってみた。 |
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液晶画面を見ながら操作できる |
複合機というといろいろ付加機能が付いていて難しそうに感じる人がいるかもしれない。それは昔の、パソコンで制御しなきゃ使えないヤツの話で、MPシリーズはパソコンなしでも何でもできてしまう優れものなのだ。MP900に付いていた液晶がひとまわり大きい3.6型TFTになってだれにでも見やすくなり、液晶画面を見ながらたいていの操作ができてしまうのである。さらにMP950の機能にはトリミング機能もあって、パソコンを通さずにMP950側でトリミングしてプリントできるのだ。そんなにたくさんの機能は使わないかも、という人もいるだろう。だが、ちょっと考えてみよう! 少しの金額の差で、できることが倍増するのだから。
複合機でも、やはり最大の役割はプリント機能であり、プリント支援のための周辺機器がひとつのボディに収まっているといえる。まずはスキャナーで、写真や書類をスキャンしてデジタルデータにするものだが、スキャンしてそのままプリントすればコピー機として機能し、写真プリントをプリントすればダイレクトプリントとなる。また、デジタルカメラと繋いで「カメラダイレクトプリント」、各種メモリーカードをカードスロットに差せば「カードダイレクト」、DVDやCDのレーベルプリント、携帯からの「プリントビーム」などなど。もちろんすべてMP950だけで操作できるし、パソコンに繋げば専用ソフトで達人技も披露できるから、パパはパソコンから、家族みんなはMP950で直接操作するのもいい。
さて新機能を含めて各機能を紹介しよう。
今回使ったのは複合機のフラッグシップモデルMP950なのだから、プリント性能に大きな期待が集まることだろう。今回大幅に改良されたことに、最高解像度9600dpiでインク滴サイズ最小1plを実現している。1plとは1兆分の1リットルというとてつもなく小さいインク滴でプリントするのである。小さなインク滴が作り出すプリントアウトは階調が豊かになり、もう肉眼ではドットがわからないぐらい解像度が高まっているに違いない。そのインクはBCI-7eで、イエロー・マゼンタ・シアン・ブラック・フォトマゼンタ・フォトシアンの染料6色にと顔料ブラックインクを加えたもので、写真用紙から普通紙まで高画質なプリントを実現している。なぜ染料インク6色に加えて顔料ブラックインクも採用したかというと、文字の場合、染料ブラックよりもシャープに印字できるからだ。
また給紙方法は2way方式で、下部カセットには普通紙を入れておいて、上部給紙部は写真用紙をその都度入れるなどと使い分けが可能なのである。またDVDやCDのレーベル印刷もパソコンなしでできるときたもんだ!
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オートシートフィーダ |
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前面給紙カセット |
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DVD/CDトレイ |
スキャナーは3200dpiと800dpiのCCDを2種類搭載し、写真など高解像度のものと文書など低解像度だが高速にスキャンしたい場合の使い分けができるようになった。これは凄い発想かも。今までの複合機でのコピーは時間がかかり、複数枚コピーするのが面倒になりコンビニに行った記憶がある。しかしこれならばそんなバカなことをしなくてすみそうだ。
そしてダイレクトプリントが新たに搭載され、写真プリントが忠実色再現をうたった新エンジンでプリントしてくれる。コピーに至っては文書なら800dpiCCDで高速にしかもクッキリとした文字をプリントし、写真なら3200dpiの高画質でプリントしてくれるのだ。
手書きナビシートも強化され、これまた手軽なプリントライフを楽しめる。これだけできて高解像度だと聞けば「スタジオ」も「自宅」も買い換えか・・・というわけで実際試してみることにする。 |
さっそく梱包を解いてスキャナーのロックを外したら、インクタンクをセットする。いつものように手慣れている私は気楽にセットしてすると、な、なんと! インクタンクが光ったではないか!
マニュアルを見るとインクが入っている状態で光り、残り少なくなると点滅するようだ。そして空になると消える。これは便利!いつもインクがなくなるとインクタンクの色を間違えないように何回も確認していたが、これなら一目瞭然である。
まずはプリントスピードを体感する。EOS 20D で撮影したCFメモリーカードを差し込み、スナップ写真を1枚印刷してみることに。所要時間は2分30秒! A4プロフォトペーパーで「きれい」設定、「フチあり」でこのスピードなら文句ないだろう。そしてその仕上がりは作例を見てもらいたい。モデルの服で日に当たった淡いピンクが露出オーバー気味に写っているため、とてもじゃないけどプリントされないと思いきや、しっかり淡いピンクでプリントされ、しかも布地のディテールもしっかり出ているのには驚いた。
つぎのチェックポイントは写真の暗部表現である。黒の階調がしっかりしているほど写真に味が出てくるのだ。RGB・CMYで作ったテストパターンと、白(255,255,255)から黒(0,0,0,)まで5ステップで作られているグレースケールをプリントしてみると、しっかりした階調が白側にも黒側にも見てとれる。
風景写真も色の階調グラデーションを忠実に再現してくれている。もし曇りで色が映えない感じであったらVIVIDフォトをONにするとよい。彩度が上がり鮮やかさが戻り記憶色に近くなる。 |
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インクカートリッジ |
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(赤枠内CLICKで拡大) |
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Grayscale (赤枠内CLICKで拡大) |
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黒い汽車の半逆光という悪条件でも黒い鉄の質感を出してくれる。(赤枠内CLICKで拡大) |
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(VIVID
OFF) |
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(VIVID
ON) |
グラデーションがきちんと表現され、
空気感を感じさせてくれる仕上がりになる。 |
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曇りのためにフラットで色のノリが悪いが、VIVIDを使えば
メリハリのしっかりして色がノリ、華やかな感じになる。 |
デジタルカメラによるノイズが出ているときは「ノイズ除去」設定にすればノイズが目立たなくなり写真に透明感が表れ、古めで画素数の少ないコンバクトデジカメでも美しく仕上げてくれるのだ。夕日の中の逆光の船はフレアーとともに船や空に顕著なノイズが出ている。「ノイズ除去」でプリントするとノイズ感の少ない写真になった。さらにノイズを除去したい場合はパソコンでフォトレタッチソフトを使えばよい。
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元画像 |
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(ノイズ除去off) |
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(ノイズ除去on) |
背景にある光のグラデーションにノイズが顕著だが綺麗なグラデーションになる。また動物の毛並みには影響がなかった。 |
EOS 20Dでカメラダイレクトプリントを試してみる。メニューはカメラ側になるものの、L判フチナシで40秒でプリントされ、解像度が大幅に上がっているにもかかわらず、MP900と同じスピードである。スピードを落とさないために、カラーインクノズル2倍の伸張とBKノズルは1.6倍としてスピードを確保したのだろう。これだけ階調がよく、色も記憶色に表現してくれるのなら、パソコンで試行錯誤せずとも問題なくダイレクトでプリントできてしまう。まさに今年のテーマ「進化」の中の「写真力」なのだろう。
ひとつ気になる設定を見つけた。「顔明るく補正」である。さっそくCFメモリーカードからのダイレクトプリントで試してみることにする。下記の作例をみてほしい。逆光で顔の暗い写真だが、顔に合わせた明るさに補正してプリントしてくれている。おー、これぞ救いの神だ <私はプロなのに・・・
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[上] ショッププリント
[下] プリントからの写真/フィルムプリント |
欲張りな私はこれではまだ満足できない。次の難関「スキャナー」性能も試してみよう! 写真プリントをスキャナーにセットしてコピーしてみる。濃度を自動にして、L判でプロフォトペーパーを使用、「きれい」、枚数を1枚に設定。そのプリントしたものが、コピーではフチナシにならないものの同じ色合いで出た。同じ作例を写真/フィルムプリントで試してみる。スキャナー台に4枚までセットでき、上記設定に加えて「顔明るく」まである。もちろんプリント枚数も設定できて、一度にプリントしたり一枚の用紙に複数枚を割り付け配置したり、絵はがき風プリントも可能だ。これまたイケている! 下記の作例を見てほしい! 多少周辺がカットされてしまったものの、建物の木の壁色も、銅像や座っているブロックまでほぼ同じ写真になったのだ!
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古いプリントからダイレクトCDプリント |
スキャンしたものをこれだけ同じ品質でプリントできるプリンターに初めて遭遇した。いいものができて面白くなってきたぞ! ついでにCD/DVDレーベルも作ってみよう! それも押し入れをひっくり返し、昔組んでいたバンド時代のもので!・・・まとめて段ボールに入っていた写真を引っ張り出し、写真をスキャニング台に載せてCD/DVDを選べばプリントしてくれる。文字は手書きで入れてみたが、なかなかGOODではないか! 作ったこのDVDにはその時の写真や動画そして音も入れちゃえ!
もちろんこれらはメモリーやカメラからのデータでも可能だが、古い資産を活かすにはスキャナー機能がもっとも有効なのだ! そう資産といえば写真プリントばかりではない。大量に保管されているネガとポジだ。いままでフラットベッドスキャナーで私のめがねにかなったのは“CanoScan 9950F”だけなのである。つまり私がこのMP950を買うかはスキャナー部にかかっているといっても過言ではない(笑)。ではこの3200dpiでのフィルムスキャンを試してみよう。
まずネガからダイレクトプリントしたものである。
ショッププリントとの比較のためL判でプリントしてみた。ショッププリントでは赤く潰れて階調が損なわれている花びらにも、MP950でのダイレクトプリントではちゃんと階調が現れ、葉の質感もいい感じである。ポジはスリーブでもマウントでもOKだ。淡いレースのカーテンの階調もよく出て申し分ない仕上がりである。
フィルムスキャンも、前述の写真プリントのスキャニングも素晴らしかった。超高精細読み取り用CCD。そしてプリントするときのカラーマッチングが、新規コピー画像処理「ディアルガマット色変換処理技術」の導入による成果だ。これは原稿の色差、階調性を重視して、プリント用紙や視覚特性を考慮し品質のバランスをとる設計になっているため、まさにクローンを作るがごとくのコピー(スキャニング)を実現したのには驚きだ。まさに業務用機の性能が家庭用複合機に採用されたといえるだろう。
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[上] ショッププリント
[下] ダイレクトネガプリント
(赤枠内CLICKで拡大) |
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ダイレクトポジプリント |
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さて難関を突破したので、最後のチェックポイントだ。やはりプリンターといえば、年賀状作成は欠かせないということで、だいぶ早いが今年の年賀状を作ってみることにした。まずは「手書きナビ」に挑戦。メモリーカードの写真、そしてメニューからフレームとイラストを選ぶ。するとA4のナビシートができるので、それに手書き文字やイラストを加えて、スキャニング台にセット。あとは年賀状の枚数を決めて紙をセットするだけなのである。フレームなしですべて手書きでも可能なので、まさにオリジナル年賀状がパソコンなしで簡単にできてしまうのだ。仕上がりがきれいなので作っていて楽しくなった。まだ10月だが今年の年賀状はもうできたぞ!
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パソコンに繋げば両面印刷で
住所もプリントできる |
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もっと楽して、年賀状を作りたい人はパソコンの「自動両面対応」はがきソフトを使えば宛名も一緒に印刷してくれるのだ。そうひっくり返さなくてもOK!年賀状は宛名面を「はがき」、通信面を「インクジェット官製はがき」という設定でプリントしなくてはいけないが、それらをちゃんと分けてプリントしてくれるという。「自動両面プリント」は一歩進んだ両面印刷だ。私のはがきソフトも最新版にしなきゃ!
そうそうまだあった。よく使う文書コピーを試さないと。ここでは800dpiのCCDと顔料ブラックノズルがスピードとクオリティを実現するはずだ。本機マニュアルをコピーしてみる。設定画面で「A4」「普通紙」「はやい」、濃度は「オート」にしてモノクロコピーボタンを押してみる。なんと6秒で出てきた。そしてこの仕上がりである。設定Aには自動濃度調整ONとOFFがあり、文書はもちろん画や写真のコピーでも自動濃度調整をONしておけばほどよい濃度で印刷してくれる。元画像が良ければほとんど変わらないプリントになる賢いし、より濃くしたければ手動での変更も可能だ。
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左がマニュアル、右がコピー |
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(マニュアル拡大) |
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(コピー拡大) 自動濃度調整コピーON |
左はメモリーからのダイレクトプリント。右はプリントを濃度自動
調整コピーした物。ほぼ同じ仕上がりだが多少色がのった感がある。 |
たまにインクをヘッドタンクに充てんするのに20〜30秒かかるが、その直後のコピーは6秒前後とまた爆速である。イラストの細い線もしっかりと出ているのがわかっていただけるだろうか。顔料インク採用によりコントラストがしっかりしたコピーができたのだ! これで家に複合機があるのにコンビニまでコピーしにいくというマヌケな行為はなくなるわけだ。 |
多岐にわたって機能を試してみたが、やりたいことは望んだ品質で、しかもMP950だけでパソコンなしに実現できてしまった。いままでの複合機といえば、それぞれの機能での妥協に納得しながら、ワンボディですむ利便性と省スペースが最大のメリットだった。だがMP950ではすべての機能において妥協点は感じなかったし、さらに複合機であることのメリットを高画質で享受できることに感心した。
これだけ高品質でありながら、パソコンも介さずにMP950単体で、しかも家族でも簡単に使えるのがいい。私は当然、家にある古い複合機をMP950に置き換える決意をしたし、これなら家族から反対されることは絶対ない。カミさんもよろこぶことだろう。ひとつだけ心配なのは、いままでプロクオリティのプリンターが家にないからと家で仕事をしない言い訳ができていたのが、MP950があるんでしょ、といわれてしまうことだ。
注:ご覧になっているディスプレイの解像度や設定によっては作例の見え方が異なります。 |
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■URL
Canon PIXUS ホームページ
canon.jp/pixus/
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若林 直樹(STUDIO海童)
アフリカゾウから半導体まで手がけるカメラマン。インプレスのDOS/V POWER REPORTなどで活躍中。デジタルカメラマガジンではカラープリンタ、スキャナー等のレビューも担当。 |
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