標準タイヤを低燃費タイヤであるブリヂストンのECOPIA EX10に履き替え、さらにEX10からECOPIA PZ-Xへと履き替えた。不肖・高橋、プリウスに乗り換えてからというもの、何かと低燃費タイヤに縁がある。もちろんプリウス自体、ハイブリッドで低燃費というのが大きな特長だ。そんなプリウスが低燃費タイヤを履けば、さらに燃費はよくなる。燃費を気にして選んだプリウスなのだから、低燃費タイヤに興味が湧かないはずもない。

不肖・高橋、プリウスに乗ってからというもの、低燃費タイヤを2本付け替え、結構低燃費タイヤにはうるさいのだ
不肖・高橋、プリウスに乗ってからというもの、低燃費タイヤを2本付け替え、結構低燃費タイヤにはうるさいのだ

 さてその低燃費タイヤと言えば「ラベリング制度」の存在を忘れてはならないだろう。これは日本自動車タイヤ協会の定めたもので、簡単に言ってしまうとタイヤの重要な機能である「転がり抵抗性能」と「ウェットグリップ性能」、この2つを等級で表示し、さらには一定以上の等級を満たしたものを「低燃費タイヤ」と定義している。性能の等級はラベルに分かりやすく表示されるため、消費者にとってはタイヤ選びのよい基準となる。

 ラベリング制度で、より高い性能を表示した低燃費タイヤは、消費者に選ばれる可能性が高くなる。もちろんメーカーとしては自社の商品を選んで欲しいのだから、ラベリング制度においても、より高いグレードを目指してタイヤを開発する。結果として低燃費タイヤの市場では、「ラベリング競争」がヒートアップしたのである。

 そんな中、ブリヂストンから新しいタイヤが発売された。ラベリング競争に終止符を打つというそのタイヤ、名前を「ECOPIA EP001S(エコピア イーピーゼロゼロワンエス)」という。転がり抵抗係数、最高グレードの「AAA」。そしてウェットグリップ性能、最高グレードの「a」。要するにECOPIA EP001Sは、低燃費タイヤの頂点を極めた、オールAのタイヤなのだ。

  • 8月1日より全国での発売が開始されたECOPIA EP001S
    8月1日より全国での発売が開始されたECOPIA EP001S
  • ラベリング制度の最高評価AAA-aを獲得
    ラベリング制度の最高評価AAA-aを獲得

 ラベリング制度で頂点を極めたECOPIA EP001S。その正体を探るべく、私はブリヂストンへと向かったのであった。なお、ブリヂストンに行けば、もしかしたらボーイング787のタイヤが見られるかもしれないと思ったのは、ここだけの秘密である。

 

ECOPIA EP001Sとは、どんなタイヤなのか?

 新しいタイヤのことを詳しく知りたいなら、作った人に話を聞けばよい。そんな訳で以前、ECOPIA PZ-Xの取材でもお世話になった東京小平市にある、ブリヂストン技術センターへと向かう。

 今回お話を聞いたのは、開発全体を統括した伊藤さん、先行開発を担当した横田さん、そして材料開発を担当した木村さんである。とにかくまずは、ECOPIA EP001Sの概要を聞かなければ話が先に進まない。

PSタイヤ開発第1部 構造設計第3ユニットリーダー 伊藤貴弘氏。いわゆるお店で売られるタイヤを商品化する人だ
PSタイヤ開発第1部 構造設計第3ユニットリーダー 伊藤貴弘氏。いわゆるお店で売られるタイヤを商品化する人だ

伊藤:ECOPIA EP001Sは低燃費性能と安全性能、この大きな2つの柱を、ラベリング制度における最高グレードで両立させた商品です。具体的に言うと、例えば弊社が2010年夏に発売した「ECOPIA EP100S」という商品と比較して転がり抵抗性能は同じトリプルAグレードでもさらに3%低減、ウェットグリップ性能では、停止距離で表すと17%短縮させ、aグレードを達成しました。

高橋:転がり抵抗性能が最高グレードの「AAA」、すなわちトリプルA。そしてウェットグリップ性能も最高グレードの「a」。大文字小文字の違いはありますが、Aが4つも並びますね。では、どうやってその最高グレードを実現したのですか?

伊藤:大きく2つあります。まず1つは「新配合」ですね。この2月にECOPIA PZ-Xという商品を発売しましたが、そちらで使っている微粒径シリカという新しい材料を使った配合に、今回さらにアクアパウダーと呼んでいる、ウェット性能を向上させる材料を加えました。これはECOPIA EP001Sのために用意した新配合なんですね。
さらに、この新配合のゴムの性能を活かすパターンを新たに開発しました。新配合と新パターン、この組み合わせ、相乗効果によってECOPIA EP001Sの性能が実現した訳です。ちなみにラベリング制度以外の性能なんですが、こちらも従来製品に負けてはいません。

 例えばドライの総合性能、静粛性や乗り心地に関してもバランスが取れた商品に仕上がったと思っています。

高橋:ちなみにECOPIA EP001S、今回発売されたのは1サイズ(195/65R15)だけなんですが、これには何か意図があるんですか?

伊藤:今回は主にプリウスなどのエコカーに付きやすいサイズをターゲットにしています。また、ECOPIA EP001Sの開発もプリウスで行っています。

 最高グレードの低燃費タイヤとプリウスを組み合わせれば、最強のエコカーが出来上がる。もちろんプリウスをエコな面から選ぶ人なら、低燃費タイヤへの意識も高いだろう。もちろん販売面でも、プリウスの台数は魅力的だ。そんな背景があってECOPIA EP001Sは、195/65R15というサイズで先行した訳だ。

 ではECOPIA EP001Sに関して、もっと突っ込んだ話を聞いてみよう。もちろん最初に質問したのは、先ほどポンと登場したキーワード「アクアパウダー」に関してである。実は今回の取材で一番盛り上がったのが、このアクアパウダーに関してなのだ。

 

謎の白い粉、アクアパウダー!

 タイヤの材料と聞いて、私のような素人が真っ先に思いつくのは「ゴム」である(「ポリマー」と呼ぶそうだ)。ECOPIA EP001Sの場合、そこに性能を高めるための重要な材料として「アクアパウダー」が加えられたという。ではそのアクアパウダー、いったいどんな材料なのか? ここは材料の開発に携わっている木村さんに聞いてみよう。

高橋:アクアパウダーというのは、どんなものなのでしょう?

小型タイヤ材料設計部 小型タイヤ材料設計第2ユニット 木村巧氏。タイヤがタイヤの形になる前の材料の部分を開発する人だ
小型タイヤ材料設計部 小型タイヤ材料設計第2ユニット 木村巧氏。タイヤがタイヤの形になる前の材料の部分を開発する人だ

木村:ウェット性能向上効果が大きい充填剤です。見た目は白い粉ですね。中身についてはちょっとお答えできないというか……。

 企業秘密である。秘密の話となると、少しでも突っ込んで聞きたくなるのが人情。しかも相手は「秘密の白い粉」という、なんとも気になる存在なのだ。

高橋:このアクアパウダーを投入することによって、タイヤがさらに進化したということですが、具体的には?

木村:アクアパウダーの主な目的はウェット性能の向上なんですが、一方で摩耗性能、ライフ性能が低下するという背反関係がありました。このため従来は、主にレース用のタイヤなどで使われ、市販のタイヤでの使用は限られていました。

 ですが今回、その摩耗を改良する手法である微粒径シリカと併用することによって、ウェット性能を上げつつ、摩耗に対しても性能をキープできるコンパウンドを開発することができました。

微粒径シリカの採用により耐久性が向上したことで、アクアパウダーを配合することができるようになった
微粒径シリカの採用により耐久性が向上したことで、アクアパウダーを配合することができるようになった

 このアクアパウダー、木村さんの言う通り、レース用のタイヤなどでは以前から使われていたものらしい。例えば自動車レースの最高峰、F1にブリヂストンがタイヤ供給していたときにもアクアパウダーは大活躍。主にウェット用タイヤに使用していたのだとか。しかもレース用の素材ということで、お値段も結構お高いらしい。するとあれですな、ECOPIA EP001Sを履いた人は「このタイヤには、F1のタイヤと同じ材料が含まれているんだよ」とか友人、知人、親戚一同に自慢できるということだ。

 自慢する、しないは個人の自由として、さらにアクアパウダーに関する追求は続く。まあ、ここでは「舐めない方がよい」とか、そういう話はどうでもよいだろう。いずにしてもブリヂストンではこのアクアパウダーを、ウェット性能を向上させる技術として、市販のタイヤにも利用しているというこだ。

木村:アクアパウダーはドライな環境よりもウェットな環境、水が存在する時に特に効果が発揮されます。

 そして一番驚かされたのが同席したブリヂストンの人、もちろん木村さん以外、誰もアクアパウダーの実物を見たことがないという事実。門外不出なのか、はたまた材料として使われるパウダーということで、外に出る機会がないということなのか。

 いずれにしてもアクアパウダーの投入で、ECOPIA EP001Sは高いウェットグリップ性能を発揮できるようになった。そして背反するライフ性能(タイヤの摩耗)に関しては、微粒径シリカがサポートする。素人としては「なるほど」としか言いようがない訳だが、そんな素人でも気づくことがある。そう、いくら優れたタイヤであっても、接地していなければグリップ性能を発揮することはできないはず。そのあたりの秘密は、やはりECOPIA EP001Sのトレッドパターンにあるようだ。

 

「パタン」とウェット性能の濃い関係

 ふと気づきました、高橋。ブリヂストンでは「パターン」ではなく「パタン」という用語で統一されていることに。理由を聞いてみたのだけど、どうも「伝統」ということらしい。それはそれとしてアクアパウダーと並び、ECOPIA EP001Sの高性能を支えるもう1つの柱、パターンならぬパタンの話である。

 ECOPIA EP001Sのトレッドパターンで特徴的なのが、比較的シンプルなブロック状のデザインだ。以前、ECOPIA PZ-Xの取材をした際に「技術者に任せておくと、計算しやすいブロックを並べたようなパターンになってしまう」という話があった。このためパターンに関しては、そのデザインを専門に行う人がいるのだそうだ。ではどうして、ECOPIA EP001Sのパターンは、シンプルなものになったのか?

 ECOPIA EP001Sでは「ブレーキ力分布」という点で、大きな特長を持っている。ブレーキをかけた際に従来の商品では、接地面の両端に制動力が集中する傾向があるのに対し、ECOPIA EP001Sでは接地面全体に広がっている。これにより制動力、すなわちブレーキ力が大幅に向上しているのだ。カタログなどによるとこのブレーキ力の向上は、ブロック剛性と排水効率の最適化によるものだという。このあたり関しては、先行開発の横田さんが答えてくれた。

高橋:ECOPIA EP001Sではブレーキ力分布が大幅に向上したとありますが、どういったところに配慮して設計されたんでしょうか?

先行タイヤ設計部 先行タイヤ設計 第2ユニットリーダー 横田英俊氏。数年後に市販化されるかも知れないタイヤを開発する人。きっと今はさらにすごいタイヤを作っているに違いない……
先行タイヤ設計部 先行タイヤ設計 第2ユニットリーダー 横田英俊氏。数年後に市販化されるかも知れないタイヤを開発する人。きっと今はさらにすごいタイヤを作っているに違いない……

横田:そうですね、ECOPIA EP001Sではウェットグリップ性能を最大化することが課題でした。ウェットグリップの支配要因は大きく分けると2つあって、まず走っている時に接地面に入ってくる水膜をどう除去するか。水膜があるとどうしてもグリップしないので、それをできるだけ早く除去して、直接タイヤを接地させる訳です。

 もう1つは水膜を除去したあと、これはドライな環境下でも同様ですが、制動時にいかに最大の力を発揮させられるかとうことです。ECOPIA EP001Sでは、この接地したあとの力を最大限発揮するパターンをイチからプロジェクトの中で検討しました。結果としてワリと見た目はシンプルなパターンができ上がり、その上で設置前面の排水をいかに効率的に行うかを加味していったんです。

 溝の太さ、例えばセンターに入っている横方向の細溝の幅や角度、こういったところを最適化したんですね。さらに木村のところで開発したゴムの特性を前提に、パターンとゴムの組合せ、我々はマッチングと言っているんですけれども、それを最適化していったという訳です。

  • 以前装着したECOPIA PZ-Xなどと比べると、かなりシンプルなEP001Sのトレッドパターン
    以前装着したECOPIA PZ-Xなどと比べると、かなりシンプルなEP001Sのトレッドパターン
  • 2本のセンターブロックは細いサイプ(スクレイプサイプ)で分割される。こうすることでブレーキ時には隣り合うブロックが支えあい、剛性を保つことができる
    2本のセンターブロックは細いサイプ(スクレイプサイプ)で分割される。こうすることでブレーキ時には隣り合うブロックが支えあい、剛性を保つことができる
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従来のEP100Sでは、ブレーキ時に主にショルダー部で制動力が発生しているのに対し、EP001Sではトレッド全体で制動力が発生している

 ECOPIA EP001Sのパターンで注目は、センターに走る「テクスチャードグルーブ」だ。真っ直ぐ走るこの溝の中には、模様のような溝が刻まれており、ブロックの剛性を強化するのと同時に、排水性を確保しているのだという。正直、説明を受けながらよく見ないと分からないところではある。もし店頭でECOPIA EP001Sを目にする機会があったなら、センターの溝の「その中の溝」にも注目して欲しい。

  • タイヤ中央を走る溝の内側には、さらにS字のような溝が刻まれる。この溝が排水性に貢献すると言う
  • タイヤ中央を走る溝の内側には、さらにS字のような溝が刻まれる。この溝が排水性に貢献すると言う
タイヤ中央を走る溝の内側には、さらにS字のような溝が刻まれる。この溝が排水性に貢献すると言う
EP001Sのトレッドパターン。シンプルなデザインに見えるが、細部にまで工夫が凝らされ、インサイドアウトサイド指定パターンとなっている
EP001Sのトレッドパターン。シンプルなデザインに見えるが、細部にまで工夫が凝らされ、インサイドアウトサイド指定パターンとなっている

 いずれにしてもタイヤ自体、材料として含まれるアクアパウダーでウェットグリップ性能が向上している。さらに新しく開発されたパターンが排水性やブロック剛性を確保し、グリップ性能をフルに発揮できる広いブレーキ力分布を実現した。結果、ウェットグリップ性能は最高グレードであるaを獲得したのだ。

 

グレードの違いは、どこまで影響する?

 かなりECOPIA EP001Sの正体が見えてきたところで、気になることを確認しておきたい。それはラベリング制度におけるグレードの違いは、実際の性能にどう反映されるかだ。

 例えば転がり抵抗性能におれるグレード(等級)は、最高のAAAからCまで存在する。すでに最高グレードであるAAAは、ブリヂストンからも発売されており、そこから具体的な性能は類推できる。では、ウェットグリップ性能のグレードではどうか? ウェットグリップ性能に関しては、最高のaからdまでにグレード分けされており、もちろんECOPIA EP001Sは最高グレードのaだ。

伊藤:例えばECOPIA EX10という我々の従来商品がありまして、これはウェットグリップ性能がbなんですね。また、これも従来商品ですが、ECOPIA EP100Sはcです。ワンランク違う商品を比較した場合、ウェットのブレーキ性能で6〜7%違ってくるんです。今回のECOPIA EP001SとECOPIA EP100Sを比較した場合、aとcの比較になりますが、まあ17%ぐらいの違いになります。



転がり抵抗係数は同じAAAだが、ウェットグリップ性能がcのEP100Sと比較すると停止距離で17%短縮すると言う

高橋:なるほど。これを具体的な距離にすると、結構な違いですよね。

伊藤:そうですね。ECOPIA EP100Sが30mちょっとの停止距離の環境で、ECOPIA EP001Sだと5m短縮して、25mくらいで止まります。大型乗用車1台分くらい短いところで止まっちゃう訳ですから、これは大きな差だと思ってます。

高橋:あと燃費の方なんですが、転がり抵抗性能のグレード、AAAが関係しています。ECOPIA EP100Sは今回のECOPIA EP001Sと同様、AAAですが、さらに燃費が向上してますよね。AAAの中でも、どんどん性能が向上しているということですか?

伊藤:その通りです。

高橋:1つ単純な疑問なんですが、今回のECOPIA EP001Sは、ラベリング制度で最高のグレードということになりました。さて、最高を極めちゃったら、これから先どうします?

伊藤:どうもこうもすでに次に向かって進んでますよ。我々は5年先を見てますから。

高橋:まあ、最高グレードの商品が出てくれば、それに合わせて評価基準が厳しくなるという流れもあると思います。また、新しい性能評価が加味されるとか。環境の変化だとか、クルマの進化だとかによって、どんどん変化するんですかね?

伊藤:お客様やカーメーカーは、当然よりよいモノをたくさん求めてくるでしょうね。

高橋:そうすると例えば、5年後のAAAグレードというのは、5年前のものより進化した形になるっていう。

伊藤:そうですね。例えば2年前にECOPIA EP100Sという商品を出した時に、転がり抵抗のAAAの商品は、たった2サイズだけだったんですね。それが今年の新商品では、33サイズまで広がり、さらにそれを増やしていこうという流れにあります。そういう意味でこのECOPIA EP001Sで達成したAAA−aというグレードも今は1サイズを先行で出していますが、数年後にはどんどん拡大していき、更に先には多くの商品がこのグレードになるような、そういう流れになるかもしれません。

 

相反するニーズを両立させ、未知の領域へ

 最後に1つ、気になっていたことを聞いてみた。それは「転がり抵抗性能とウェットグリップ性能」の両立に関してだ。転がり抵抗の少ないタイヤとなれば、普通に考えるとグリップ性能が犠牲になるのではないか? 一方を高めると一方が低くなる、すなわち背反の関係が転がり抵抗とウェットグリップの間にあるのではないかと考えたのである。よい機会なので、これに関しても聞いておこう。

高橋:低燃費タイヤっていうと、やはり省燃費の方に注目が集まってくると思うんです。極端な言い方をすると、基本的に燃費さえよくなれば、そのほかの部分は標準的な性能でよいじゃないかと。ですが今回のECOPIA EP001Sでは、ウェットグリップ性能が重視されていますよね。そこで伺いたいのは、要するに省燃費とウェット性能の向上というのは、背反関係にあるんでしょうか?

伊藤:たしかに従来はそのとおりでした。普通に我々がチューニングの範囲で、例えば材料の配合なり、パターンなりを設計している分には、転がり性能を追求すると、ウェット性能がその分比例して落ちるというような関係だったんです。ですが例えば材料ですとNanoPro-Techという技術が登場したり、パターンに関してもリブ連結ブロックといった技術が登場したりしました。こうした補完する技術が進化してきて、結果として単純な背反関係から抜け出せるようになりました。

  • 一見黒くて丸いだけのタイヤだが、様々な技術が盛り込まれることで低燃費性能とブレーキ性能を両立しているのだ
  • 一見黒くて丸いだけのタイヤだが、様々な技術が盛り込まれることで低燃費性能とブレーキ性能を両立しているのだ
一見黒くて丸いだけのタイヤだが、様々な技術が盛り込まれることで低燃費性能とブレーキ性能を両立しているのだ

高橋:そういった意味ではタイヤの開発というのは、背反関係を崩していくことが重要なんでしょうか? 先ほどの木村さんのお話でもアクアパウダーを入れると、ライフ性能というのが落ちてくる。しかし、その背反関係を崩して、両方の性能が高いレベルで成り立つようになったと。新しい技術、新しい試みによって背反するニーズを両立させことが、開発の重要な部分なんでしょうか。

伊藤:お客様の潜在的なニーズとしては、あらゆる性能がよいタイヤをお得な値段で欲しいというところにあると思います。だけどタイヤには背反性能の壁があってまだできていない部分が多く残ってます。そこがもし技術的に打開できれば、非常に大きな強みになると思うので、そうした背反を解き明かすことに集中しているところです。

 今回登場したECOPIA EP001Sは、ラベリング制度において、最高グレードを獲得した商品だ。燃費性能がよく、ウェットな路面で高いブレーキ性能を発揮する。ちなみに社内ではECOPIA EP001Sの開発を「Tプロジェクト」と呼んでいたそうだ。

 実はこのTプロジェクトの「T」、「Terminate(ターミネート:終わらせる、打ち切る)」の「T」から取ったのだと言う。ECOPIA EP001Sでラベリング制度における最高グレード「AAA-a」を獲得し、グレード競争を終わらせるという意味だったらしい。

 しかし、考えようによっては、このTプロジェクトが「新たなラベリング制度、グレード」への出発点にも思えてくる。転がり抵抗性能「AAA」、ウェットグリップ性能「a」の次は、どこまでの性能が要求されるのだろうか? ECOPIA EP001Sの先、5年後のタイヤはどうなっているのか? 興味の尽きないところではある。

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理屈は分かった! ならば実走してみよう!

 1つ残念なお知らせがあります。不肖・高橋、ボーイング787のタイヤ、見られませんでした。そうだよね、ジェット旅客機のタイヤなんて特殊で大きなもの、そうそう置いてないよね……。

 いやいや、ボーイング787のタイヤこそ見られなかったものの、ラッキーな話も舞い込んできた。そう、今回取材したECOPIA EP001S、そのラベリング制度最高グレードの性能を、実際に試すことができるというのだ。それもブリヂストンのテストコースで、思う存分!

 高い燃費性能に加え、ECOPIA EP001Sの特長は「a」グレードを獲得した高いウェットグリップ性能である。このウェットグリップ性能に関してきちんと、そして徹底的に試すことなど公道では不可能だ。そこであなたテストコースですよ、しかもタイヤメーカーの!

 次回後編「高橋敏也、ウェットグリップ性能を試すことができるテストコースで、大変な目に遭う」をお楽しみに。

後編では不肖・高橋が体を張ってEP001Sの実力検証実験に挑みます
後編では不肖・高橋が体を張ってEP001Sの実力検証実験に挑みます

※文中に登場する性能評価等の詳細はブリヂストンWebサイトをご参照ください。

高橋敏也■高橋敏也
PCやパーツ、アキバの自作事情に詳しいテクニカルライター。Impress Japanの月刊誌DOS/V POWER REPORTで「高橋敏也の改造バカ一台」を連載中。Car Watchで「高橋敏也の新型『プリウス』買ってみた長期レビュー」を連載、Impress Watch Videoで「高橋敏也のパーツパラダイス」を連載中。