高性能なスマートフォン、多機能なタブレット、最新のポータブルゲーム機、コンパクトなモバイルルータなど……。次々と魅力的なモバイル端末が登場する一方で、ユーザーの頭を悩ませる問題がある。ズバリ、増え続ける通信コストだ。
音声通話やメール用の端末をスマートフォンに変更するだけでも、月々の通信コストは簡単に上限に達してしまうが、これに加えて、仕事用のタブレットを購入したり、ゲームを楽しむために通信機能付きのポータブルゲーム機を加えていくと、そのコストは2倍、3倍と膨らむことにもなりかねない。
特に、2012年以降は、Androidの進化や次期Windows 8の動向を考えると、通信機能を備えたタブレットが本格的な普及期を迎え、1人複数通信端末保有時代が訪れることが予想される。複数契約によって、追加の通信コストが、現状の料金に数千円プラスされ、トータルで月額1万を超えるコストを払うことになれば、その負担は、個人にとって重くのしかかるうえ、企業にとっても利益を圧迫する原因になるだろう。
そこで重要になってくるのが、個々の端末の料金の見直しだ。音声通話は必要か? どんな用途にどれくらい使うか? いつ使うか? といったように、端末の種類や用途、そして何より利用スタイルやコストを考慮して、音声通話などの不要な契約を解除したり、個々の端末のコストを圧縮できるサービスに変更していけば、1人複数台端末を利用しても、そのコストを低く抑えることが可能になるというわけだ。
では、具体的にどのようなサービスを活用すればいいのだろうか? 現状、月々の通信コストが低めに押さえられたモバイル通信サービスはさまざまな事業者から提供されているが、中でも通信速度とコストのバランスに優れているのがBIGLOBEの「BIGLOBE 3G」だ。
BIGLOBE 3Gは、NTTドコモの3Gネットワーク(FOMA網)を利用したMVNO形態のデータ通信専用サービスだ。人口カバー率100%を誇る広い通信エリアと最大下り14Mbps/上り5.7Mbpsの通信速度を誇るサービスとなっているが、何と言っても注目したいのは、その料金プランだ。
BIGLOBE 3G 料金表
プラン名称
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スタンダードプラン
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デイタイムプラン
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利用時間帯
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24時間
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2時〜20時
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月額料金*1
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2,980円(税込)
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1,980円(税込)
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申込手数料
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3,150円(税込)
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定期契約期間*2
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2年間(自動更新)
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*1 別途ユニバーサルサービス料 5.25円(税込)がかかります
*2 定期利用契約の更新月以外にサービスの解約する場合、契約解除料9,975円がかかります
月額2,980円(税込)で24時間使い放題の「スタンダードプラン」も十分にリーズナブルだが、これに加えて、利用可能時間帯が2時〜20時までとなるものの、月額1,980円(税込)という非常にリーズナブルな料金設定がなされた「デイタイムプラン」が用意されている。
これまでのモバイル通信サービスは、通信速度を制限することで料金を抑えるという考え方が一般的であったが、利用可能な時間帯を区切って料金を抑えるというのは斬新な発想だ。
利用時間帯が制限されると聞くと、身構える人もいるかもしれないが、デイタイムプランでアクセス可能な2時〜20時は、まさに昼間の時間帯で、家から会社や学校へ向かう電車の中で使えるうえ、日中に外出先で仕事や勉強に使うといった用途には、まったく問題ない時間帯になっている。
むしろ、仕事や学校で使うのであれば、夜8時以降は帰宅後となることが多いと考えられ、家に戻ってからは無線LAN環境を使えば済むので、そのデメリットは事実上ほとんどない。
つまり、通勤通学時の情報端末としてスマートフォンを使う、外出先での仕事用にタブレットやモバイルルータを使う、移動中に時間が空いたときにゲーム機でゲームを楽しむ、などといった用途に最適というわけだ。昼間が主という使い方は、実際にはほとんどの人が該当する利用スタイルとなる。そんな普通の使い方でも、大幅に通信コストを削減できるメリットは大きいだろう。
このようなBIGLOBE 3Gは、UIMカード(SIM)のみが貸与されるプランに加え、モバイルルータの「RS-CV0C(販売価格16,800円)」も一緒に購入できるプランも用意される。RS-CV0Cは、ネットインデックス製のIEEE802.11b/g準拠のモバイルルータで、約85gと軽量で、連続約4時間の通信が可能な製品だ。
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UIMカード(SIM)のみの貸与も可能
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BIGLOBE 3GのUIMカード(SIM)は、光ポータブル(PWR-Q200/PWR-100F)など他のモバイルルータでも利用可能だが、RS-CV0CであればAPNの設定不要でUIMカード(SIM)を装着すると使えるので、使いやすさを重視するのであれば、これを購入するのがおすすめだ。
RS-CV0Cは、WAN(3G)の対応が受信最大7.2Mbps/送信最大5.76Mbpsとなっており、BIGLOBE 3Gの受信最大14Mbpsをフルに活かすことはできないが、後述するとおり、屋外でのBIGLOBE 3Gの通信速度は受信(下り)で1〜3Mbps前後だったため、実質的には問題ないだろう。
なお、UIMカード(SIM)のみ、UIMカード(SIM)+モバイルルータともに、どちらの場合でも、BIGLOBE 3Gのサイトから、手軽に申し込むことが可能だ。
それでは実際の使い方を見てみよう。まずは、契約時に購入することがでできるモバイルルータ「RS-CV0C」で試してみた。
このモバイルルータを利用する場合、使い方は非常に簡単だ。出荷時設定で、BIGLOBE 3Gに接続するためのAPN設定が登録済みとなっているため、背面のカバーを開けて、バッテリーを取り出し、スロットにUIMカード(SIM)を差し込む。同時に、内部のシールに記載されている番号が暗号キーとなるので、これをメモすれば準備は完了だ。
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背面のカバーを開け、バッテリーを取り出してからUIMカード(SIM)を装着。無線LAN接続のパスワードを確認するのを忘れずに
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BIGLOBE 3Gへの接続設定はプリセットされているため電源をオンにするだけで接続可能
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BIGLOBE 3Gは、さまざまな機器で利用可能。今回はRS-CV0Cに加え、PlayStation Vita、Optimus Pad L-06C、GALAXY NEXUS SC-04Dで試してみた
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本体側面の電源ボタンを長押しするとパワーやアンテナマークのランプが点灯して3Gネットワークに接続されるので、PCや無線LAN対応のタブレットから「RS-CV0C_xxx」というSSIDを参照し、前述した暗号キーを入力して接続する。これで、インターネットをすぐに利用可能となる。モバイルルータの利用ははじめてという場合などは、このモバイルルータを購入するのがもっとも手軽で、確実だ。
続いて、UIMカード(SIM)を別の端末で利用してみた。付属の取扱説明書では、動作確認端末として「MEDIAS」、「光ポータブル」、「Xperia」、「Galaxy Tab」が紹介されており、その接続方法も記載されているが、これ以外の製品でも取扱説明書に記載のAPNを設定することで利用することが可能になっている。
もちろん、動作確認機種(※)以外での利用はサポート外となるため、あくまでも自己責任となるが、同様にAPNを設定すれば利用可能と考えられる。そこで、手元にあったPlayStation Vita(PCH-1100)、Optimus Pad L-06C、GALAXY NEXUS SD-04Dで、実際にBIGLOBE 3G UIMカード(SIM)を試してみた。
※BIGLOBEで確認済みの動作確認機種 2012年2月10日現在
(モバイルルータ)RS-CV0C、光ポータブル 「PWR-Q200」、光ポータブル 「PWR-100F」 (スマートフォン・タブレット)MEDIAS N-04C/WP N-06C、Xperia SO-01B、Xperia arc SO-01C、Xperia acro SO-02C、Xperia ray SO-03C、Xperia play SO-01D、Galaxy Tab SC-01C (ゲーム機)PlayStation Vita PCH-1100
まずは、PlayStation Vitaだが、電源をオフにしてから、本体側面のカバーを開けて標準搭載のカードとBIGLOBE 3GのUIMカード(SIM)を入れ替える。電源を入れ、「設定」から「ネットワーク」を起動し、「モバイルネットワーク設定」の「APN設定」にAPNの情報を入力する。前述したようにBIGLOBE 3G同梱の取扱説明書には、動作確認機種の設定方法が記載されているので、これと同様にAPN、ユーザー名、パスワードの情報を登録すればいい。
最後に設定情報を保存し、インターネット接続テストを実行し、問題なければ完了だ。これでPlayStation VitaからBIGLOBE 3Gを利用して通信対応のゲームなどを楽しめる。プリペイド方式と違って、使い放題で利用できるので、思う存分、通信機能を堪能できるだろう。なお、PlayStation Vitaの設定方法については、BIGLOBEの3G対応端末ページに詳しく記載されているので、実際に設定するときはそちらもあわせて確認するものいいだろう。
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側面のカバーを開けてUIMカード(SIM)を入れ替える
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モバイルネットワークのAPN設定で手動設定を選択。接続情報を入力すればOK
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続いて、Android 3.1を搭載したOptimus Padで試してみた。アプリの一覧から「設定」をタップし、「無線とネットワーク」にある「モバイルネットワーク」を選択し、「アクセスポイント名」をタップすると、APN一覧画面が表示される。
Android 3.x系以降では、ここで若干、操作に迷うかもしれないが、右上のメニューボタンから「新しいAPN」を選択することで、新しいAPNを登録できる。名前にBIGLOBEなどの識別可能な文字列を指定し、同様に取扱説明書の設定例からAPN、ユーザー名、パスワードを入力。最後に、認証方式で「CHAP」を選択し、再び右上の「メニュー」から「保存」を選択して情報を登録する。最後に、APN一覧で「BIGLOBE」を選択すれば設定は完了だ。
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Android 4.0搭載のGALAXY NEXUSも基本的な設定方法は同じ
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Android 4.0搭載のGALAXY NEXUSも設定方法はほとんど同じだが、設定画面を表示するまでの操作が若干異なる。アプリ一覧で「設定」を起動後、「その他…」-「モバイルネットワーク」-「アクセスポイント名」をタップ。後は、同様にメニューから新しいAPNを作成し、必要な情報を入力して保存、APNを選択しておけばいい。
以上で設定が完了すれば、自動的にインターネットに接続される。実際に試したところ、PlayStation Vita、Optimus Pad、GALAXY NEXUSのいずれも問題なく3G経由でインターネットに接続することができた。
Optimus PadやGALAXY NEXUSは、すでに所有している人はもちろんだが、中古などで比較的低価格で入手することが可能となっている。場合によっては、メインの音声通話端末に加えて、これらをBIGLOBE 3GでメールやWeb、マップ用として活用するといいだろう。デイタイムプランなら、低コストでの運用が可能なので、負担が少なくて済むはずだ。
このように手軽に使えるBIGLOBE 3Gだが、やはり気になるのはパフォーマンスだろう。実際にテストしてみたところ、以下のように、非常に安定した速度で通信することができた。
まずは、筆者宅近辺の駅(世田谷区)でモバイルルータ「RS-CV0C」を利用し、ノートパソコン(ThinkPad X200)からインターネット上の速度測定サイトを利用して計測したところ、下り2.344Mbps、上り365.8kbps前後となった。
同様に、「SPEEDTEST.NET」というアプリを利用して、Optimus Pad L06-C、GALAXY NEXUSでもテストしてみたが、いずれも同等に下り2Mbps前後、上り350kbps前後の値となった。
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RS-CV0Cを経由でPCからインターネット接続した際の速度(小田急線の駅前にて計測)
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同じ場所でGALAXY NEXUSでの計測結果。Optimus Padも結果はほぼ同じ
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同じくPlayStation Vitaの結果。若干、値が低いが2Mbps近くは実現できているので快適
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NTTドコモのSPモード接続の回線を利用した場合でもほぼ同等の速度が実現できているうえ、実際にメールやWebを使っていても、速度が気になることはない。もちろん、利用場所や周囲の利用者の数などによって速度は変化するが、パフォーマンス面での心配はしなくてもよさそうだ。
次に電車内で移動中の速度を計測してみた。新宿へと向かう車内でGALAXY NEXUSを利用してみたところ、電車の移動中も通信が途切れることなく、安定して2Mbps以上の通信が可能だった。これなら通勤中の利用でも安心だろう。
ただし、これは地上を走る電車の場合だ。地下鉄に関しては、駅と駅の中間など、どうしても電波が届かない場所で通信が瞬断されることがある。多くの場合、通信できない時間は一瞬で、駅に到着すれば通信が復活するので、Webを見るといった使い方であれば、あまり気にならないだろう。
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新宿西口駅前にて測定
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続いて、人の多い場所ということで、新宿駅西口、および大手町のビル街でもテストしてみた。結果は新宿が下り1.69Mbps、上り1.62Mbps。大手町が下り1.22Mbps、上り0.25Mbpsとなった。これらの場所は、ビルの谷間にあることや他の利用者が多いことなどから、若干、速度が下がる傾向が見られた。
とは言え、下りで1Mbps以上の速度をコンスタントに実現できるうえ、新宿では下りでも1Mbps以上と高い速度を実現できている。ビジネス街では、メールで書類を送るといったシーンも考えられるので、上りで一定の速度が実現できているのはありがたい印象だ。
最後に建物、それも高層ビル(大手町)の中で計測してみた。下り2.74Mbps、上り0.37Mbpsと屋外よりも高い値が計測できていることから、おそらくビル側で屋内での通信対策がなされていると推測される。最近では、ビル内での対策も進んできているため、セミナーなどの会場で使いたいという場合でも安心して使えるだろう。
測定場所
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新宿へと
向かう電車内
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新宿駅西口
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大手町ビル街
(地上)
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大手町のビル
(21階)
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下り
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2.23Mbps
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1.69Mbps
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1.22Mbps
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2.74Mbps
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上り
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0.32Mbps
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1.62Mbps
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0.25Mbps
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0.37Mbps
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Ping
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273ms
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193ms
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859ms
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161ms
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* 測定は、GALAXY NEXUSで、SPEEDTEST.NETを使用
速度に関しては、時間や場所によって値が変化するため、今回の計測は一例に過ぎないことに注意してほしいが、おおむね2Mbps前後、若干、環境が悪くても1Mbpsで通信できたので、メール、Webの閲覧、Twitterなどの利用であれば、パフォーマンスについては心配する必要はなさそうだ。
同様にエリアについても心配の必要はない。さすがにNTTドコモの3Gネットワークを利用しているだけあって、地下などの一部の場所を除き、ほぼどこに行ってもデータ通信が可能となっている。
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Skypeも利用可能。古いスマートフォンや中古で手に入れたスマートフォンなどでBIGLOBE 3Gとともに使えば音声通話もOK
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出張や旅行などで、モバイルルータやタブレットを使いたいと考えている人も少なくないと思われるが、これなら主要都市だけでなく、観光地など中心部から若干離れた場所へと出かけても問題なく利用できるだろう。タブレットをナビ代わりとして使って行き先を調べるのにも重宝しそうだ。
また、通信制限についても、さほど条件が厳しくない。当日を含む直近3日間のパケット通信量が300万パケット(360MB相当)以上で速度制限がかかる通信量制限はNTTドコモと同じ条件となるうえ、利用できないアプリケーションについてはPeer to Peerのファイル交換ソフトが挙げられているが、Skypeやメッセンジャーなどについては制限されていないようだ。
実際、BIGLOBE 3GのUIMカード(SIM)を装着したGALAXY NEXUSにSkypeをインストールしてみたが、問題なくサインインすることができ、音声通話、ビデオチャットを行なうことができた。BIGLOBE 3Gはデータ通信専用のサービスなので、音声通話やSPモードの利用はできないが、Skypeを利用すれば音声通話は可能となるため、スマートフォンでの利用も現実的と言えるだろう。
このほか、PPTPの利用も問題なく、RS-CV0C経由で自宅に設置したPPTP対応無線ルータに接続することができた。中小やSOHOなどの企業で、社内にPPTPアクセスを許可している場合は、外出先からの足回りとして利用するといいだろう。
以上、BIGLOBEが提供する3Gモバイル通信サービス「BIGLOBE 3G」を紹介したが、「デイタイムプラン」という他のサービスにはないユニーク、かつ低価格な料金プランが利用できるうえ、パフォーマンスやエリアに問題がなく、しかも利用端末や通信プロトコルなどの制限も緩い。
これなら、オーソドックスにモバイルルータ(RS-CV0C)でPCや通信端末をインターネットに接続するのはもちろんのこと、音声用のフィーチャーフォンのサブ端末としてBIGLOBE 3Gを装着したタブレットを利用したり、古いスマートフォンをBIGLOBE 3G+VoIPアプリで復活させるという使い方などができそうだ。
もちろん、企業向けとしての一括導入にも適している。デイタイムプランはビジネスタイムでの利用に支障がないうえ、コストを大幅に圧縮できる。いろいろな端末に装着できるため、社員が利用する端末がばらばらでもUIMカード(SIM)のみの契約で対応できるうえ、PPTPなどビジネスで使うプロトコルの制限もない。
災害やインフルエンザなどで在宅勤務などが注目されていることを考えると、そのインフラとして活用することもできそうだ。低価格なのに使いやすいサービスとして、今後、大きな注目を集めるサービスと言えそうだ。
・スタンダードプラン:月額2,980円、デイタイム:月額1,980円
※別途、ユニバーサルサービス料5.25円/月と初期費用がかかります。
・人口カバー率100%
※場所によって利用できないエリアがあります。
・最大下り14Mbps/上り5.7Mbps
※最大通信速度は電波の状態などにより低下します。
清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 7」ほか多数の著書がある。自身のブログはコチラ
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