写真撮影を趣味として楽しんでいると、自分の撮影したお気に入り作品を他の人にも見せたくなるのが趣味人の本能だろう。最近ではネット上で写真を公開できるSNSサイトなども増え、デジタルカメラで撮影した写真をリアルタイムで公開することも容易にできるようになった。しかし写真作品はプリントのように実際に手に取って鑑賞すると、ひと味もふた味も良さを感じられるものでもある。そのなかでも自分の作品だけを集めてまとめた写真集なんてものを作れたらいいなと思っている人も少なくはないはずだ。しかし実際に写真集を出版するとなるとほとんどの場合では自主出版となる。しかも最低発行部数もある程度まとまった数が必要となり、出版に必要となる金額も相当なものとなる。そうなるとおいそれと手を出せるものではないと諦めざるを得ないのが現実だ。

 ところが最近、この写真集作成を手軽に行うことができるサービスが注目されてきている。デジタルカメラの普及によって写真がデジタルデータ化されたことにより、原稿としての写真の入稿が銀塩写真のものにくらべると写真のデータ化などの手順やコストが大幅に削減できるのだ。また印刷部数もこれまでの印刷物のようにある程度の部数をまとめて印刷するのではなく、極少数の部数から印刷を行えるシステムをメーカーが開発したこともコスト削減に繋がったという。

 現在このような個人向け写真集作成サービスはいくつかのメーカーから提供されており、いずれも人気のあるサービスとなっている。しかしなかには決まったレイアウトしか選択することができなかったり、肝心の印刷品質があまり良くないものなどもあると聞く。たとえ安い金額で写真集を作れたとしても、自分の作品集として考えるのならばあまり妥協はしたくないものだ。

 そこで今回はいくつかある写真集作成サービスのなかから、アスカネットの「マイブック」サービスを使って、実際の写真集作成を行うことにした。このサービスを選んだ理由としては、実はアスカネットはこの個人向け写真集作成サービスをいち早く展開してきており、またオンデマンド印刷としては高品質な製品を提供してきた経緯があると聞いたからだ。また写真集作成のための専用アプリケーションも無料で用意されているので、自宅のPCを利用して自らレイアウト作成を行う事ができるのだ。


写真集作成はレイアウトで決まる!

 さてここからは実際に「マイブック」サービスを使って写真集を作成する過程を追っていこう。まずはなによりも大事なのは写真集にまとめる作品を選別することにある。当たり前だといえばそれまでだが、いざ写真集を作成するとなると、あの作品もこの作品も、といっぱい詰め込みたくなるのが心情だ。もちろんページ数を増やす事でより多くの作品を載せることは可能だが、写真集を見せられる側のことを考えると、あまり詰め込みすぎては作品集としてのゆとりを感じられなくなる恐れがある。そこで今回は20ページ程度に抑え作成することとした。ただ構成を考えると単純に1ページ1作品とは限定したくない。1ページに数点配置もよし、また見開き2ページを通して大きく1点の作品を配置するのもいいだろう。これによって掲載する作品数は少なくても10点、多くても40点程度となることが自ずと決まる。

 掲載する作品候補としてまとめた写真は、いずれも北海道にて撮影したものだ。しかし長く撮影を続けていることからも季節もいろいろだし、写真から伝わるイメージも様々だ。これを最終的には20ページの写真集に収まるようにセレクトしていかなければならない。通常、写真集を作成する行程においては実際に作品をプリントアウトして、それを並べて作品の順番や組み合わせを考えていくことが多い。もちろんこの手法はとても有効だが、実際にプリントアウトして作品を揃えるのも大変だし、ましてや拡大縮小といった際にはなかなか即座には対応しにくいのが現実だ。

 実は今回使用する「マイブック」サービス専用の写真集制作アプリケーション「MyBookEditor」では画像データを読み込ませることで、画面上で写真を配置させながらレイアウトを試行錯誤することができる。また必要に応じて画像の拡大縮小も自在に行う事が出来るのだ。なお、これまで「MyBookEditor」はWindows PCでのみ使用可能なアプリケーションであったが、今回あらたにMac OSにも対応したバージョンが公開された。これは私事ではあるのだが、基本的にうちのシステムはMacによって構成されており、必要に応じてBootcampを利用したWindowsを起動させてWindows用のアプリケーションを動かしている。ただしこれだとMacにインストールされているPhotoshopなどレタッチソフトなどとの連携にはとても不便であった。今回Mac OS版がリリースされたことで統一環境での作業が可能となりとてもスムーズに作成を進めることができた。

今回作成する写真集は、私のライフワークでもある北海道で撮影を続けている「光彩陸離」というシリーズからセレクトした作品で構成することにした。とりあえずザクっとセレクトした画像約50点をひとつのフォルダーにまとめる。 マイブックサービスでは写真集の制作を専用アプリケーション「MyBookEditor」を使用して進める。アプリはアスカネットのHP(http://www.mybook.co.jp)から無料ダウンロードできる。

MyBookEditorでの写真集作成の流れ

 ここからは実際に「MyBookEditor」を使用して写真集を作成するまでを追ってみよう。アスカネットのHPからダウンロードしたアプリをパソコンにインストールしたのち、「MyBookEditor」を起動させる。

「MyBookEditor」を起動させるとマイブックを新規で作成するのか、以前に作成したものを使用するのかの選択画面が表示されるので今回は「新規作成」を選択。また事前にメーカーから用意されたテンプレートを使用して作成することも可能だ。その際には「テンプレートで作成」を選択する。 作成する写真集の判型、大きさ、ページ数をセレクトする画面が表示される。今回は「ARTハードカバー」、「260S」サイズ、「20ページ」を選択して「このブックを作成」ボタンを押す。
表示された画面右上にある「画像フォルダを選択」ボタンを押して写真集に掲載する写真をまとめたフォルダを選択して「開く」ボタンを押す。 画面上部のパネル内に選択したフォルダ内の画像のサムネイルが表示される。このサムネイルを下に表示されているレイアウトウインドウにポインターでドラッグ&ドロップすることでページに画像を配置していく。
こちらは表紙と裏表紙のレイアウト画面。今回制作する写真集では全ページを黒背景に統一する。そこで画面下部の塗りつぶしボタンを押して黒を選択後、レイアウト画面をクリックして反映させる。
表表紙と裏表紙にそれぞれ画像を配置。画像をクリックすると拡大縮小のためのハンドルが表示されるのでそれを掴んで最適な大きさに調整。位置も自在に変更できる。文字入力ツールを使用して直接文字を入力することも可能。なお、今回の表紙用画像には以前開催した写真展で使用したアートワークを使用。題字もあわせ画像として作成してあるものをそのまま使用した。 中表紙には題字のみを配置。こちらもアートワークからの画像貼付け。もちろん写真画像を貼付けることもできる。表表紙と中表紙のあいだには白い紙と半透明の紙が挟まれる。こういう細かいところも出版されている写真集に倣っていてよい感じ。
見開きに写真1枚を大きく配置。画像の比率にもよるがノートリミングによる配置だと横に余黒ができるが、これもレイアウトデザインとしてはよい。 1ページに画像1枚を配置。横位置、縦位置いずれも4:3比率の画像。余黒の取り方にも気をかける。
写真は重ねてレイアウトすることも可能。また重なり順を後から変更することもできる。 配置した画像はハンドルフレームのなかにて拡大縮小や移動させることもできるので、フレームの大きさはそのままでよりクローズアップさせるといったことも簡単にできる。
ボックス機能を使用することであらかじめレイアウトされたフレーム内に画像挿入し配置することもできる。 新規作成時にテンプレートを選択することで写真集一冊まるごとをひな形を利用して作成することも可能だ。レイアウト作業に慣れるまではテンプレートを利用するのもひとつの方法だろう。

 写真集のレイアウトが一通り定まったら[ツール]-[仕上がり確認]を選択して写真集の仕上がりをシミュレーションしてみよう。「プレビュー」「一覧で表示」「実寸表示」それぞれに切り替えて確認ができる。編集画面だけではわかりにくかった綴じ込み部分の見え方なども確認することができる。

プレビューモード 一覧表示モード 実寸表示モード

 すべてのレイアウトにミスがないことを確認出来たら[ツール]-[注文]でいよいよ注文を行う。マイブックの作成データはすべてインターネット経由で送付して注文まで行う。まずは事前に登録しておいたユーザー名とパスワードでログイン。印刷された写真集の送付先の住所や氏名、支払い方法等を確認しておく。すべて問題なければデータを送付して注文完了。納品は約10日程度で手元に届くそうだ。

注文者の氏名や発送先、支払い方法など必要事項を登録する。

待ちに待った写真集が到着!ハイクオリティな仕上がりに大満足!

 マイブックをインターネット経由で発注してほどなく、待望の写真集が宅急便にて届けられた。今回発注したのは1部のみ。まさしく最小ロットでの印刷だ。さっそくしっかりと梱包材に保護された写真集を取り出す。プラスチックカバーに収まった写真集はまぎれもない自分の作品集だ。

ついに完成した写真集。表紙は光沢のあるコーティング仕上げ。今回はハードカバータイプを選択したことでしっかりとした印象のものとなっている。 表紙裏表紙ともに厚く硬い。見た目にも高級感を感じられる装丁だ。
付属のプラスチックカバーは半透明。シンプルなものだが写真集の保護にもなるのでとても嬉しい。 感動の第1ページ目。贅沢に見開きを使用してほぼノートリミングにて作品を配置。余黒とのバランスもよい。紙質はほどよくコシがありめくるときの手触りもよい。紙面はマット紙よりは半光沢に近い印象。
強烈に赤く染まった北海道の夕焼け空。コントラストの高い描写もくっきりとした印刷で表現。黒の締まりもいい感じ。 左ページの作品、山陰のシャドー部に残るうっすらとした町並みもちゃんと再現。また右ページの荒れる海を撮った作品のようにローコントラストな画像でも諧調も潰れることなく表現してくれている。
見開きページの「ノド」と呼ばれる接合部に写真がまたがるとこのようになる。大きな写真であればそれほど気にはならないが、小さめの写真となると予想以上に気になることが判明。次回以降の作成では注意したい点だ。

手軽さと自由度の高さが魅力のマイブックで作る写真集

 今回、実際にマイブックというサービスを活用することでオリジナル写真集を作成したわけだが、当初想像していた以上に手軽に写真集として完成させることができた。とりわけレイアウト用のアプリケーション「MyBookEditor」の操作感も高く、また比較的多くの画像を扱うにもかかわらずアプリの動きもさほど重くならなかったことは嬉しい。また実際に印刷されたものを見ても正直欠点を見いだすことができないほどにクオリティは高い。もっとも美術印刷された写真集などとは比べるまでもないが、一般的に自身の作品をまとめるといった目的であるならば、すでに十分すぎるほどの高い品質と言えるだろう。なによりこれだけのものを、低価格でかつ最小ロット数で作成できてしまうのだから非常に魅力的なサービスといえる。この点からしても写真愛好家だけでなく、家庭内でのこどもの成長記録アルバムなど様々な目的にも最適なサービスだといえるだろう。







礒村浩一
(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物から商品、建築、舞台など幅広く撮影。近年は自然と人の営みをテーマに作品展/セミナー/ワークショップを各地にて開催。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy

2012/10/09 00:00