昨今のテレビにまつわるトレンドワードはといえば「4K」そして「スマートテレビ」だろう。

 「4K」に対しては、シャープは「ICC PURIOS」というAQUOSとは別ラインのモデルを新設定して4Kテレビ製品を「スーパープレミアムな高画質テレビ」の形で新提案した。

 「スマートテレビ」に対しては、従来からネット連動機能を高次元にまとめてAQUOSに搭載してきていたシャープなのだが、今回、「その手があったか」という感じの、驚くような新発想でスマートテレビの再定義に挑んできた。

 それは「スマートフォン主導型」のスマートテレビである。

スマートフォンとケンカしないスマートテレビ登場

 これまでテレビとスマートフォンはケンカをしていた…といってもいいかもしれない。「どちらがご主人様(ユーザー)のお気に入りになれるか」という議題でのケンカだ。

 テレビは、これまで卓越したネット連動機能を数多く装備して「スマートフォンなんていらないよ。ボクだけを見て!」と訴えてきた。一方、スマートフォンは、4インチ後半から5インチ前後の大きい画面サイズのものが台頭し、高解像表示ができるものが多くなり、ハイビジョンクラスの映像コンテンツを楽しむことにも負い目がなくなってきた。だから「テレビなんか見なくていいよ。ワタシだけを見てればいいのよ!」と叫び出したのだ。

 お互い、相手を否定する形での高機能化だ。

 そこで「目の付け所がシャープ」なシャープは思いつく。「スマートフォンとケンカしない、むしろスマートフォンに歩み寄った形のテレビを提案してみてはどうか」と。

 それが今回発表された「スマホライフAQUOS」、AQUOS MX1ラインなのだ。

 となれば、気になってくるのは、どんなスマートフォンへの「歩み寄り」がAQUOS MX1ラインに搭載されているのかという部分だ。これは大別すると3つの機能に分類できる。1つずつ紹介していこう。

画面サイズは24V型のワンモデル展開となっているが、スピーカーカバーのカラーバリエーションがグリーン、オレンジ、シルバーの3タイプ用意される。

AQUOS MXのスマートフォン便利機能(1)スマートフォンの映像をワイヤレス伝送させてAQUOS MX1の大画面で見る!

スマホの画面をワイヤレスで伝送し、様々なコンテンツをテレビで楽しめるのが、MX1の特長のひとつ

 スマートフォンで高画質映像が見られるといっても、やはり画面サイズはテレビと比べれば小さい。確かに最新スマートフォンは解像度も高いし、画質も美しいのだが、画面の物理的な大きさは携帯機器ゆえに最大サイズの製品でも5インチクラス。そもそも、映像は視界を再現するものなので、大きい画面で見る方が自然なのだ。

 ドラマや映画の映像鑑賞ではなく、一般的なWebコンテンツやゲームやSNSなどのアプリの活用だとしても、自宅にいるときくらいはそれらを大きい画面で見たいというのもあるはずだ。

 確かに昨今のスマートフォンにはミニHDMI端子を搭載した機種も多いので、HDMIケーブルを引っ張り出してくれば、テレビと接続して見られなくもない。

 しかし、一方で「わざわざHDMIケーブルを取り出してテレビに配線してまで見たくはない」というのもある。

 シャープは、この課題に対し、ワイヤレスでHD解像度の映像を伝送する「Miracast」をAQUOS MX1で対応するという方策を選択した。

 そう、スマートフォンをAQUOS MX1に一度接続すれば、以降、面倒な操作はなし。スマートフォンとAQUOS MX1をワイヤレス接続してくれるので、AQUOS MX1の入力を切り換え、スマートフォンのMiracast機能をオンにするだけで、スマートフォンの画面をワイヤレスでAQUOS MX1の24インチ画面に映し出すことができる。もちろん、サウンドもAQUOS MX1の高音質スピーカー(後述)から鳴るので、大画面映像に見合うサウンドを楽しめる。

Miracastによるワイヤレス接続に対応。起動時に自動的にMiracast待ち受けを開始することができるので、テレビの電源を入れてスマホ側のMiracastをオンにするだけですぐにつながる

基本的にスマホの画面がミラーリングされる。縦/横の画面回転にも自動で追従 低遅延接続に相当する「クイック」モードも搭載 iPhone等のiOS端末や、Miracast非対応のスマートフォンは、MHLやHDMI接続で活用できる

 そして特筆したいのは、映像の再生制御は、AQUOS MX1のリモコンではなく、そのまま、手元のスマートフォンで操作できるという点。スマートフォンの機種によっては若干の相違があるが、基本的にはスマートフォンの画面をほぼそのままAQUOS MX1に映し出されるので、動画の再生操作などは、そのまま手元のスマートフォン上で行えてしまうのだ。

 動画再生時などにスマートフォンを横にすれば、スマートフォン側の映像が全画面表示に自動的に切り替わるという点も心憎い。

 なお、スマートフォンの画面がそのままAQUOS MX1に映し出されているイメージなので、AQUOS MX1で楽しめるのはなにも映像コンテンツに限られない。ゲームアプリやSNSアプリ、Web画面をAQUOS MX1で表示させることもできる。

 「スマートフォンのゲームをプレイしたいけど遅延は大丈夫?」と心配する人もいることだろう。確かにゲームのようなリアルタイムアプリケーションは表示遅延が大きくては操作がしづらい。

 そうした要望を想定して、AQUOS MX1では、表示遅延を低減した「クイック」モードが用意されている。

 ちなみに、デフォルトで選択されている「標準」モードは、動画再生などに特化したモードで、電波状況の不安定さにも対処しつつ安定した接続が維持できるよう、大きめなデータ読み込みバッファを確保したモードとなっている。

 逆に「クイック」モードは、「標準」と比較して、遅延時間が約5倍も短縮化されるが、データ読み込みバッファが小さい分、AQUOS MX1とスマートフォンとの距離が離れたときなどはコマ落ちの危険性が増す。しかし、ゲームアプリなどはテレビ画面から何メートルも離れてプレイするものではないので、実質的には大きな問題とはならないはずだ。通常使用は「標準」、ゲームプレイ時には「クイック」という使い分けが奨励されるが、「スマートフォンの動画が多少コマ落ちしても気にならない」「AQUOS MX1からそれほど離れることがない」というのであれば「クイック」モードの常用もアリだろう。

 なお、このMiracast機能を使うには当然、スマートフォン側がMiracastに対応している必要がある。Miracast非対応のモデルの場合はMHL方式の有線接続での対応となる。MHL接続の場合は、映像出力をしながら充電もできるので、HDMIケーブルによる接続よりも利便性は高い。

AQUOS MXのスマートフォン便利機能(2)テレビとスマートフォンを欲張りに両方楽しもう

テレビ番組視聴とスマートフォンによるネットサービスの融合を狙うのが「スマホスクリーン機能」だ 「スマートフォンで電子書籍を読みながらテレビを見る」といったときも、MX1で「ながら見」が可能に!

 前述した「AQUOS MX1をスマートフォンのディスプレイとして活用する機能」は確かに便利だが、テレビとしてのAQUOSの良さが出ていないのでは?…と思った人もいることだろう。確かにその通り。便利は便利だが、その活用スタイルはディスプレイモニター的だ。

 実は、ここで紹介する「AQUOS MX1がスマートフォンに歩み寄った2番目の機能」こそが、テレビとスマートフォンの両方の良いところを同時に楽しむための機能の目玉要素なのだ。

 その名も「スマホスクリーン」機能。

 スマホスクリーン機能とは、MiracastなりMHLなりでAQUOS MX1に映し出したスマートフォンの映像と、テレビ放送の映像やHDMIで入力されたゲーム機等の映像、ふたつを並べて2画面表示する機能のことだ。

 この機能を活用すると、スマートフォンの画面をAQUOS MX1の大画面に映し出しつつ、同時にテレビ放送などが楽しめてしまうのだ。

 同じ部屋にテレビとスマートフォンがあっても、今までは、そのどちらか一方の画面しか見られず、テレビを見ているときはスマートフォンをいじれないし、スマートフォンをいじっているときはテレビは音声しか楽しめなかった。スマホスクリーン機能を使うと、「スマートフォンを使いながら」の「ながら見」がより快適になる、というわけだ。

 スマートフォン画面のサイズは、スマートフォンの持ち方によって自動的に変更できる。たとえばスマートフォンを横画面にすれば、AQUOS MX1の画面にはスマートフォン側の映像が大きく親画面表示される。


スマートフォンが縦画面だと(画面右)、テレビの縦幅にフィットするように表示される   スマートフォンを動画全画面再生等で横画面にすると(画面右)、スマートフォンの画面の方が大きく表示される

 スマートフォンの画面は、縦画面時でも10インチクラスのタブレット端末をはるかに上回る大きさでテレビに表示されるので、テレビを視聴しながら一方で各種ブラウジングやTwitter閲覧などを行なうにも申し分ない

 テレビ放送とスマートフォンを同時に楽しむだけでなく「テレビ放送を見ていて気になる情報をすぐさまスマートフォンで調べる」というアクションを行う際にも、このスマホスクリーン機能は活用できる。

 さらに、スマートフォン用アプリ「AQUOSコネクト」を愛用のスマートフォンにインストールして起動しておけば、MX1とスマートフォンがさらに効果的に連携できる。

テレビで気になった情報の検索も、ほとんどの場合で文字入力なしで実行可能

 たとえば、見ているテレビ番組の関連キーワードを選ぶだけのお手軽検索。音声入力や文字入力による検索もできなくはないが、AQUOSコネクトは、電子番組表情報から切り出したキーワードを自動的にリスト表示してくれるので、出演者、制作者といった番組関連基本情報に関しては、ほぼ、ここから選ぶだけで事足りる。

 一度検索した検索ワードは、AQUOSコネクト側に履歴が残るので、例えば、昨日テレビ番組を見ながら調べたお店の情報を翌日、外出先でもう一度見て、そのお店に行く…といった活用も可能。こういったことは、テレビだけがネットワークに対応しただけのスマートテレビでは実現できない機能だ。AUOQS MX1の魅力は、こうしたスマートテレビのスマートさに連携力と機動力が加わったような使いこなしができるところにもあるのだ。

 また、AQUOSコネクトでは、MX1側で視聴しているテレビ番組の実況ツイートなどをリアルタイム表示したり、Twitterでの「盛り上がり」をグラフで表示したりする「おしえてリモコン」アプリが楽しめる。

AQUOSコネクトのアプリを使えば、Twitterでの実況ツイートなど、視聴中の番組に関連するツイートが閲覧できる。ツイートの表示は自動更新されていくため、見ているだけでも楽しい   チャンネルごとのTwitterでの盛り上がり度をリアルタイムに調べられるので、現在進行形で話題になっている番組をザッピングするときに便利

 AQUOSコネクトは、前述したようなスマホスクリーンの使い方を拡張するだけでなく、もっとシンプルに、スマートフォンをAQUOS MX1のリモコンとして活用するための機能も提供される。さらに言えば、前述したMiracast接続もこのアプリ上のボタンからワンタッチで行える。まぁ、基本的に、このAQUOSコネクトが、AQUOS MX1のスマートフォン連携機能の中核ソフトになっている…と考えていい。

「AQUOSコネクト」アプリはスマートフォンをリモコンとして使うことも。もうリモコンをどこに置いたか忘れて右往左往することもない!?

 便利なのが、音声出力の切り替え機能。

 スマホスクリーン機能でテレビとスマートフォンの映像を同時に見られるとしても、音声はどちらか片方のみを聴くことになる。その「どちらを聴くか」の切り替えをこのAQUOSコネクトから行えるのだが、なんとスマートフォンを二回振るアクションで切り換えられるのだ。これは直感的だし、とっさに行える操作なので便利。

 なお、この「AQUOSコネクト」アプリは、Android系スマートフォンで提供される他、後日iOS系スマートフォンに対しても提供されるとのことだ。

AQUOS MXのスマートフォン便利機能(3)スマートフォン側の音楽コンテンツをいいサウンドで聴く!

 音楽コンテンツをスマートフォンに集約させて、スマートフォンをポータブルオーディオ機器的に活用している人は多いはずだ。特にiPhoneユーザーなんかはその傾向が強い。

 外出先や移動中で音楽を楽しむ際にはヘッドフォンやイヤフォンを使っていることだろう。

 帰宅してからはヘッドフォン/イヤフォンからは解放されたいし、生活空間をお気に入りの音楽で充満させたいという欲求も湧く。ただ、スマートフォンのスピーカーは出力が弱く口径も小さいため、音量を上げていくとシャカシャカ傾向が強い音になったり、あるいはビビリ音が際立ち始めて聴くに値しない音になってしまったりする。

 高機能なHiFiオーディオシステムを購入するのも1つの手ではあるが、その世界にいくには別途、投資が必要になってしまう。

 AQUOS MX1には、「Bluetoothオーディオ」機能が搭載されており、これがスマートフォン側の音楽コンテンツをカジュアルに楽しむのにちょうどいいのである。

非常に特徴的な画面下部分には高性能スピーカーを内蔵。スマホやタブレットの音楽を手軽に楽しめる「Bluetoothスピーカー」機能も搭載している
Bluetoothオーディオ機能使用時は音楽再生に最適な音響プログラム「Music」モードが利用できる

 筆者的には「なぜ、どのメーカーも、この機能をテレビに付けてこなかったのか」と思ったほどとても便利なのだが、機能自体はとてもシンプルなものだったりする。

 ユーザーがやることは、ただ手持ちのスマートフォンをAQUOS MX1にBluetoothペアリングするだけ。

 以降、スマートフォン側でBluetooth機能をオンにするだけで、AQUOS MX1がBluetooth受信圏内にあれば自動的にスマートフォンからのサウンドをAQUOS MX1から出力することができるのだ。

 しかも、AQUOS MX1は画面の消えた待機状態のままでも機能は使える。電源を入れてテレビ放送画面を出す必要もなく、何食わぬ顔で画面非表示状態のAQUOS MX1がスマートフォンのワイヤレス・スピーカーとして機能してしまうのだ。

 起床後や帰宅後、ささっとこの操作をして、部屋を音楽に満たしながら身支度なんかができるわけで、これは便利かつ嬉しい。


AQOUOS MX1をスピーカー的に活用する際、画面をデジタル時計専用として使うモードも搭載。USBメモリ内の写真をスライドショーさせるフォトフレーム機能もある

 もちろんAQUOS MX1の電源を入れて、テレビ放送画面を表示させつつ、このスピーカー機能を併用することもできる。「朝は時報、交通情報、天気予報の映像が見られれば十分」という人は多いはずで、朝の情報番組やニュース番組の映像を出しつつも、サウンドはお気に入りの音楽…という使い方ができるわけだ。

 で、そのAQUOS MX1は音がいいのか…という話になるのだが、さすがに外部スピーカーとして使えることをウリにしているだけあって、このクラスのテレビとしては珍しい「総出力20W」という贅沢な音響スペックが与えられている。

 左右ステレオ再生用のメインスピーカーとしては、テレビ画面サイズに対して大きめともいえるφ5.2cmユニットを2基搭載。あえて社外のパイオニア製のものを採用しているところからも音質への配慮を感じる。そして低音再生用として、φ6.5cmの、これまた大きめなサブウーハーユニットも1基搭載する。

このサイズのテレビとしては破格のスペックのスピーカーを搭載

 昨今では50インチオーバーの大画面サイズのテレビでもスピーカーは下向きレイアウトにしてしまっている機種がほとんどなのだが、AQUOS MX1はこのクラスの製品なのにスピーカーを前面に向けてレイアウトしている点で希少。ここも高音質実現のためにこだわった部分に違いない。コンパクトさが訴求されがちな昨今のテレビ製品の中にあって、AQUOS MX1は台座部分が大きくなっているのだが、これこそが高音質性能を重視した証だと思っていい。

映画などはバーチャルサラウンドで楽しめる音響プログラムも搭載

終わりに〜テレビの基本機能も充実

 AQUOS MX1は、スマートフォンとの連携に注力した製品だが、昨今のテレビに求められる機能もちゃんと実装されている。

 例えば、ちゃんとUSBハードディスク録画に対応している。普通の予約録画はもちろん、登録したキーワードに関連した番組を自動的に見つけてオススメしてくれる「番組自動検索」機能も搭載している。シングルチューナー仕様ではあるが、録画中の番組を初めから見る「おっかけ再生」で視聴することはできるし、録画動作中であっても既に録画済みの番組の視聴は可能。BSデジタル放送は4倍モード、地デジ放送は3倍モードの長時間録画にも対応しているので、録画専用機に近い使い勝手の録画機能がある。

ボタン類やインターフェースは左背面に集中しており、管理が楽。HDMI2系統に加えD端子も   USBハードディスクへの番組録画にも対応。バッファロー製のトランスコーダ内蔵長時間録画ハードディスクであれば2TBで約696時間の録画が可能

 もちろん、ブルーレイレコーダーのような録画専用機を接続することもでき、その際、AQUOSブランド機器を選択すれば、1つのリモコンで全てのAQUOSブランド機器を連動起動/操作できる「AQUOSファミリンク」機能の恩恵に授かることも可能。接続は各機器をHDMIケーブルで繋ぐだけだ。

パーソナルルームで楽しむテレビとして、新しい可能性を感じられるMX1

 ひとり暮らしの人に嬉しい環境性能も充実。照度センサーを搭載しているので、部屋の明るさに応じて画面輝度を最適に調整してくれたり、あるいは部屋の明かりを消すと連動してテレビ電源を落としてくれたりする機能も搭載している。一定時間リモコン操作が行われないと自動的に電源オフしてくれる機能もあり。これは、テレビをつけたまま就寝するクセのある「寝落ち」族にはありがたい機能だ。AQUOS MX1は環境性能に関してもなかなかスマートなヤツなのだ。

 シャープ的には、AQUOS MX1は、パーソナルユースに特化したテレビ…ということなのだろうが、筆者としては、こうした新概念のスマートテレビ機能は、大型AQUOSにも是非展開して欲しいと感じる。

 AQUOSのスマートテレビの新展開に、今後も目が離せそうにない。

(トライゼット西川善司)

プロフィール

 

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。AV WATCH誌ではInternational CES他をレポート。GAME WatchではPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。ブログはこちら。近著には映像機器の原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)、3Dゲームグラフィックス技術の仕組みをまとめた「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術 増補改訂版」(インプレスジャパン:ISBN:978-4-8443-3354-8)がある。

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