シャープが目指す「スマートTV」とは?【AQUOS L5編】 ネット&スマートフォン連携 AQUOS L5でシャープが狙う「融合」
現在、テレビ業界では「スマートTV」というキーワードが脚光を浴びている。元々国内メーカーはこの種の取り組みに積極的ではあったのだが、キーワードを使い始めたのが海外メーカーであったこともあり、「日本は遅れている」と思っている人も多いようだ。だがもちろんそんなことはない。テレビメーカーの中でもシャープは、特にこのジャンルを長く追求してきたメーカーの一つでもある。そして、AQUOSの2つの最新シリーズ「AQUOS L5」と「AQUOS F5」のそれぞれには、シャープが見る「スマートTVの夢」がこもっている。今回の記事では、最新AQUOS流の「スマート」について「AQUOS L5」(以下L5)から見ていきたい。

歴史はすでに5年、これからのために「City」へ進化

AQUOSの最上位モデル「AQUOS L5」はクアトロン、倍速機能搭載など、最新スペックを実現した現行AQUOSのフラッグシップ機。同時にシャープが目指すスマートTVの最新形でもある

「テレビにネット機能を入れる時代が、くるぞ、くるぞといわれていますが、我々は、もう5年前からやっていました」

 L5シリーズをはじめとして、シャープ・AQUOSシリーズのネット機能で使われるサービス設計に深く関わっている、シャープ・次世代商品開発センターの吉川耕平氏はそう話す。

 シャープがAQUOSシリーズでネット対応を本格化したのは2006年のこと。吉川氏は、当時からテレビ向けではどのようなネットサービスが必要なのかを考え、開発を続けてきた。

「そもそもテレビのネット接続とはなにか?ということです。基本的な流れとして、テレビの大画面に伴い映像コンテンツがフルHD化していくのは間違いありませんでした。しかし、全世界的な観点でいうと、フルHDの性能を生かし切るコンテンツはそうたくさんあるわけではありません。多くの人々がエンターテイメントの入り口となるテレビ画面を『乗っ取り』にくるだろう、ということは容易に想像しえました。

 しかし、我々はテレビメーカーです。ここになにが映るべきか、ということについて、一番責任があると自負しています。多くの人が安心して、気楽に使えるネットサービスを提供する必要があると考えました」

 そこで2006年からすすめてきたのが「AQUOS.jp」(海外ではAQUOS.net)というサービスだ。これは、インターネットをテレビの上で、リモコンを使ってシンプルに使うことを狙ったものだ。テンキーの数字ボタンでサービスを選ぶこともできれば、放っておくだけでお勧めの情報を出してもらう、といったこともできる。リビングで突然不道徳なサイトに飛び込んでも困ってしまうので、浅いリンク先を読んでいる段階ではフィッシングサイトやアダルトサイトなどに行き着くことのないよう、コントロールも行われている。いかにもテレビ的な「受け身でのネット体験」が狙いだ。

 これに加え、日本ではアクトビラ、海外ではNeiflixといった映像配信を利用するものを付け加えたのが「今春まで」の流れだった。

「家電の世界でちょこちょこと『スマート』という言葉を聞くようになってきたのです。単語としては、ふんわりしていますが、将来に示すものがなんとなく伝わるからでしょうね」

 そう吉川氏はいうが、シャープはいまだ「スマートTV」という単語でテレビを解説してはいない。「ユーザーベネフィットとしてどうも定義がはっきりしない。もう少しAQUOSが目指す方向を見極めていきたい」(吉川氏)という判断からである。

AQUOS L5から刷新されたポータル「AQUOS City」

 だが、スマートTVが騒がれるようになって、テレビの流れは変わりはじめた。そこで吉川氏たちのチームは、AQUOS L5より、AQUOS向けネットサービスを刷新することにした。その名が「AQUOS City」だ。

 意外なことに、搭載されているネット動画や生活情報などのコンテンツに大きな変化はなく、テレビでネットを楽しむ事にブレはないと言う。まず吉川氏たちが目指したのは「見た目」の変化だ。単にスッキリした見栄えではなく、テレビ放送とネットサービスを同等に扱い、使う人が「何をしたいか」で選ぶフラットに整理された印象だ。

「昔は、部屋の中でくつろぐ空間、というイメージから『ラウンジ』と呼んでいました。しかし、そろそろ部屋から外へ飛び出していこう、と考えたわけです。村・街・世界……色々考えた結果、Cityがいいのでは、ということになりました」

 このAQUOS City画面は、これからのテレビのスタンダードな入り口となる存在である。だが、これにちょっと拍子抜けする人もいるかも知れない。「見た目のデザイン変更だけで次世代なのか?」と。

 もちろんそうではない。むしろ吉川氏達チームの狙いは、「ちょっとだけ変わったようにしか見えない」ことにも潜んでいるのである。

「情報表示」や「見守りサービス」、ちょっとした緩いつながりがテレビを変える

 AQUOS Cityを二画面で表示中には、テレビ放送の下に、ちょっとした情報が出ていることにお気づきだろうか。

 時計と天気。「ああ、そうだね。でもそのくらい、よく見ることじゃない?」 …そう、実にシンプルなものだ。一見、地デジのデータ放送でも同じ事ができそうに見える。だけれど、これを支えているのはネットであり、データ放送ではできないユニークさが隠れている。

テレビ視聴中にも、必要に応じて天気情報など、画面に便利な情報が表示される

AQUOS PHONEへの着信やメール受信をAQUOS側でお知らせすることも可能

 見れば画面には文字テロップが流れている。「AQUOSインフォメーション」と呼ばれる情報が表示される。ここには視聴履歴に応じてテレビの番組表から抽出した「おすすめ番組」、さらには外付けハードディスクを使って録画した番組の「未視聴お知らせ」などが次々と表示されてくる。その画面には、ネットからやってくるものとテレビ内にある情報が混ざり合ってさりげなくお知らせしているのだ。

「天気情報は、郵便番号を登録するとネット経由でウェザーニュースから自分の住む街の天気が取得できます。実は、天気には一言コメントが添えられているのですが、これはオリジナルのもの。わざわざつけていただいているのですが、人気があります」

 この機能の面白いところは、ユーザーが日常の中の「ちょっと見たい」情報を、ユーザーが「わざわざ探す」「操作する」ことなく見せる、という点にある。複雑な設定もない。テレビをネットにつなぎさえすれば、日々のちょっとした情報がやってきて、テレビが便利になってくれる。この「隠れてなにかしている感」が、シャープの考える「これからのテレビ」を考える上で、一つのカギだ。

 それをよく表している機能がもう一つある。L5には「見守りサービス」と呼ばれるものがある。こちらも特別な操作はなにもない。それどころか「テレビを見ている人」にはなんのレスポンスもない。

見守りサービスの設定画面

 実はこの機能、テレビの電源が入った時や、24時間テレビになんの操作も「なかった」時などに、指定の相手にメールを送る、というもの。同様の機能をもった電気ポットもあったので、ご存じの方もいるかも知れない。離れて暮らしている年配の両親の変化をそれとなく知りたい、というニーズは大きいもの。でも、それをしょっちゅう直接確認するのはナンセンスな話だし、確認「される側」にとっても気持ちのよいものではない。

 この機能は、単に「テレビが使われたか」だけをメールで送るもので、見ている番組や機能とは関係ない。「自発的に活動している」ことだけを確認するものだ。お互いに負担をかけず、ゆるくつながる。これも、テレビがスマートになってできることである。

「操作してみたら、なにか変わった、と感じられること。大きな革新ではなく、すこし一皮むけたところ。それがスマートTVの用件ではないかと感じます」

 吉川氏はそう話す。

スマートフォン/タブレットでテレビが進化! 文字入力などを補いあって新しい世界へ

 もちろん、目に見える大きな変化も存在する。

 それは「スマートフォン/タブレット連携」だ。

AQUOS PHONEからAQUOSにデータを簡単に「投げる」ことができるスマートジャンプ。AQUOSブルーレイと連携することで、レコーダーに録画した番組をスマートフォン上で視聴、さらにその番組の続きをAQUOSに「投げて」そのままテレビで視聴、などの芸当もできる

 スマートフォン連携は目立つ機能の一つだ。特に話題になる機会も多いのは「スマートジャンプ」だろう。例えば、スマートフォン内にある写真などのコンテンツを、画面上で「テレビへ投げる」ように操作して「テレビに表示」するわけだ。機能としては、これまでも存在したDLNAを使ったものだが、それをよりわかりやすい操作性にまとめたのが特徴といえる。これも、スマートフォンと家庭内ネットワーク、L5が連携することで初めて実現できる。

 だが、それ以上に大きな、革命的ともいえる変化がもたらされる。

 テレビのネット対応でいつも問題になるのは「文字の入力」だ。テレビのリモコンで文字を入力するのは難しいし、かといってパソコンと同じキーボードを用意するのもナンセンス。結局、操作性と気楽さを両立させる方法がなく、「面倒だからテレビでネットなんて使わない」という結論にいきついていた。

「入力がバシっとできれば、それで多くの問題が解決します。そこにちょうどこういうものが出てきました」

 そういって吉川氏が示したのは、同社製のスマートフォン「AQUOS PHONE」だ。

「これらのものできちんと入力ができるなら、任せてしまおう、と考えました。私の周囲を見渡しても、皆テレビの前でスマートフォンやタブレットを使っています。でも、テレビを無視しているのではなく、テレビから生まれた好奇心を満たすために『検索』しているわけです。ならば、テレビで見たいものを『検索』してしまえ、と考えました」

AQUOS PHONE用の「AQUOS Remote」アプリを使ってL5をコントロールすることができる。文字入力もスマートフォンのインターフェースを用いて可能になった

文字入力の問題が解決されたことで、「検索」がより活きることになった

Web、VOD(ビデオオンデマンド)のタイトル、番組表、録画番組などを串刺しで検索できる「スマートサーチ」

 L5は、AQUOS PHONEと連動する機能を持っている。リモコンのように十字ボタンやテンキーで操作ができる、というのはもちろんだが、それ以上に大きいのが「文字入力に使える」ということ。慣れ親しんだスマートフォンの文字入力機能を使って入力すると、その内容は自動的にL5に反映される。

 もっと手軽に使いたければ「音声入力」でもいい。Androidが持っている音声入力機能は、グーグルのサーバー能力を活用することで、従来の音声入力とは一線を画するほどの認識精度を持っており、検索キーワード程度ならば、ほぼ失敗することなく入力できる。こうなれば、もうタイプすらいらない。

 この性質をうまく生かした機能が「スマートサーチ」だ。スマートサーチは、ウェブの情報や電子番組表(EPG)の情報はもちろん、AQUOS内で使えるネット経由の映像配信サービスで見られる番組の情報までが、一元的に管理できるのが特徴だ。

 ネット配信があるのはいいが、最大の問題は「どの映画と番組が、どこのサービス事業者で見られるのかがとてもわかりにくい」ことにある。画面の上は狭く探しにくい上に、サービスが複数にわたると人力で見つけるのはかなり困難ことになる。L5とAQUOS Cityの組み合わせでは、各映像配信から番組情報の提供を受けることで、それらを簡単に「串刺し検索」し、観たい番組を見つけられる。これもまさに「スマート」でなければできないことである。

「テレビのネット機能を進化させて、なにがいいことがあるの? テレビはテレビでしょ」そんな冷ややかな意見を耳にすることも多い。

 だが、それはもったいない考え方だ。テレビがスマートになっていき、手元の機器や世界の情報とつながることで、我々の生活は「ちょっとだけ楽に」「ちょっとだけ楽しく」なる。そのちょっとしたことの積み重ねが、テレビを新しいものに変えていく。映像を見ていることに違いはなくとも、気がついてみたら、10年後のテレビの見方は変わってしまっているかも知れない。

 AQUOS L5は、その入り口にある存在といえるかも知れない。

 また、シャープの考える「ネットによるテレビの進化」は、これまでは考えもしなかったようなアプローチによる「テレビの変化」を生み出しつつあるのだが…… この点については、次回、ご紹介することとしよう。

(西田宗千佳)

 

■関連情報
□AQUOS L5 製品情報
 http://www.sharp.co.jp/aquos/lineup/l5/index.html

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□シャープ、スマホ/レコーダ連携の最上位機「AQUOS L5」 -AV Watch
 http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20110615_453237.html
□シャープ、AQUOS PHONEと連携できるテレビ「AQUOS Lシリーズ」 - ケータイ Watch
 http://k-tai.impress.co.jp/docs/news/20110615_453350.html

 

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