AQUOS ケータイ SoftBank 932SH
1月29日、ソフトバンクは春商戦へ向けた新ラインアップを発表した。新入学や新社  会人など、フレッシュマンの多いシーズンということもあり、各社の力の入ったモデ  ルがラインアップされているが、シャープからはSHシリーズの看板であり、日本のケー  タイ市場をリードするAQUOSケータイに新モデル「932SH」が登場した。世界初のダブル・ワンセグ対応、バーチャル5.1ch対応3スピーカー、高感度&ブレに強いCCD800万画素カメラというハイスペックに加え、今までのサイクロイドスタイルのケータイか  ら一新したデザインを採用した魅力的な端末だ。932SHの実機を見ながら、その出来  をチェックしてみよう。
法林岳之執筆  Newサイクロイドとダブル・ワンセグで  まったく新しく生まれ変わった  AQUOSケータイ 932SH

Newサイクロイドで生まれ変わったAQUOSケータイ

表面の段差をなくしたスタイリッシュなデザイン

Newサイクロイドスタイルを背面からみた状態

923SH(右)との比較。段差がなく背面もスマートだ

923SH(右)との比較。段差がなく美しい曲線が特長だ

 ユーザーの活用スタイルの変化とともに、デザインや形を変えてきたケータイ。メールやコンテンツ閲覧サービスの登場では折りたたみデザインが普及し、カメラ付きケータイでは二軸回転式デザインやスライド式などが支持された。

 ここ1〜2年ほどの間、ケータイの新しい活用スタイルとして、すっかり定着した感があるのがワンセグだ。今さら説明するまでもないが、ワンセグは地上デジタル放送で使われている13のセグメントの内、1つのセグメントを使ったデジタルテレビ放送サービスであり、地上デジタル放送の電波が届く範囲であれば、基本的には無料で番組を視聴することができる。ケータイをはじめ、カーナビゲーションシステム、モバイルノートなど、外出時や移動中に視聴することを前提にしており、従来のアナログテレビ放送のときと比べ、ノイズや乱れのないクリアな画質で放送を楽しむことが可能だ。

 このワンセグをより快適に視聴できるようにするため、各社とも端末のデザインについて、さまざまな工夫を凝らしてきている。メールやコンテンツ閲覧など、今までのケータイの用途はどちらかと言えば、縦画面に表示され、活用されてきたが、ワンセグをはじめ、映像コンテンツの多くは通常のテレビ放送や映画などを見てもわかるように、一般的に横画面に表示される。つまり、ケータイでワンセグを快適に視聴するには、縦画面と横画面をバランス良く利用できるようなデザインが求められるわけだ。

 そのひとつの解として、発売以来、ユーザーの高い支持を集め、ワンセグケータイの定番の地位を着実なものにしてきたのがシャープ製端末のAQUOSケータイに採用されている「サイクロイドスタイル」だ。メールやコンテンツ閲覧など、通常のケータイらしい使い方をするときは折りたたみデザインと同じ縦画面で利用できるのに対し、ワンセグや映像コンテンツを視聴するときはディスプレイを90度回転させ、横画面で利用できるようにしている。しかも画面を横にするというアクションに、ワンセグの起動を割り当てられるため、ワンセグを見たくなったら、ディスプレイを回転させ、すぐに視聴を開始できる。横画面のまま、端末を机の上などに置くことができるため、ディスプレイを自然な傾きで番組を視聴したり、ダイヤルボタンですぐにチャンネルを変えるといった操作もしやすい。2006年5月に発売された初代モデル「AQUOSケータイ 905SH」以来、ソフトバンク向けでは2006年11月の2代目モデル「911SH」、2007年6月の3代目モデル「912SH」、2007年11月の4代目モデル「920SH」と着実に進化を遂げ、昨年6月には5.2MピクセルカメラにGPSなど、ほぼすべての機能を網羅した究極モデル「923SH」をリリースし、他のワンセグ対応ケータイを圧倒するほどの進化を遂げてきた。

 液晶ディスプレイの大型化やボディの薄型化など、さまざまな改良とともに進化を遂げてきたSHシリーズのサイクロイドだが、ディスプレイ部が回転するという独特の構造を採用しているため、端末を閉じた状態ではトップパネル側にアーム部とディスプレイ部が重なるように見えてしまう。そこで、今回の「932SH」ではディスプレイ部側をちょうど箱のような構造にして、ヒンジ部から延びるアームを包み込むような形で接続している。これにより、端末を閉じた状態でもトップパネル側は、通常の折りたたみデザインの端末のように、なめらかな美しい面で仕上げられている。しかもディスプレイ部は金属パーツで成形され、アーム部分と接続される部分にはすき間を隠すようにシャッターが装備されているなど、質感も仕上げも一段と凝っている。もちろん、ディスプレイを回転させれば、従来のサイクロイドと同じように横画面で利用することが可能であり、美しさと機能性を兼ね備えたボディに仕上げられている。

【動画】Newサイクロイドの動き

【動画】すき間を隠すシャッターの動き

世界初のダブル・ワンセグ対応

3.3インチのフルワイドVGA液晶を搭載

世界初のダブル・ワンセグが実現した横画面での2画面表示

テレビでは当たり前の「PinP」にも対応している

もちろん縦画面表示でも2画面表示ができる

「PinP」に加えて、番組表も表示できる

光TOUCH CRUISERはスライダーバーのように使える

 Newサイクロイドにより、今まで以上に美しいボディを実現した今回の932SHだが、外見だけでなく、機能面でも大幅な向上が図られている。

 まず、ハードウェア面で大きく向上したのが世界初となるダブル・ワンセグだ。932SHには新開発のダブルチューナーが搭載されており、別々のワンセグ放送の番組を同時に見たり、録画するといった使い方ができる。つまり、見たい番組を逃すことなく、楽しめるわけだ。たとえば、家庭で利用するテレビでは、プロ野球などのスポーツ中継を見ながら、タイミングを見て、裏番組のドラマをチェックしたり、ニュース番組でも自分が見たいニュースが始まるまで、裏番組を見ながら待つといった使い方をすることがあるが、932SHなら外出先や移動中でもこれとほぼ同じようなことができるわけだ。

 しかも2番組の表示方法は、932SHの3.3インチフルワイドVGA液晶を左右、または上下に分割して表示する方法に加え、家庭用テレビなどでは一般的な裏番組を小さな画面で表示するPinP(子画面表示)も選ぶことができる。PinPについては、横画面表示時だけでなく、縦画面でデータ放送画面といっしょに表示しているときに番組画面にPinPで表示することもできる。迫力ある3.3インチのフルワイドVGA液晶との組み合わせだからこそ、活きてくるワザと言えるだろう。

 画質に関しても従来のAQUOSケータイ同様、シャープの液晶テレビ「AQUOS」で培われた技術が活かされており、15fpsのワンセグ放送でも中間フレームを補完して、従来機種では、補間できなかった動きの早いスポーツ番組なども美しく快適に視聴できる「なめらかフレーム補間」、320×240ドット及び320×180ドットのワンセグ放送の映像を854×480ドット表示と、ディスプレイいっぱいに、なめらかで美しい画像を実現した「リニアエッジ」に対応する。液晶パネルは前述の通り、3.3インチのフルワイドVGA表示が可能なNewモバイルASV液晶を採用しているが、従来よりも輝度を約120%向上させた「高演色バックライト」、太陽光などの乱反射を抑える「リフレクトバリアコート」、色再現性に優れた「6色カラーフィルタ」、周囲の明るさに合わせてバックライトを調整する「明るさセンサー」などにより、自然で明るく、人の肌色も美しい画質を再現している。

 また、実用面でもワンセグは強化されている。たとえば、電車で移動中などにワンセグを視聴するとき、音声はBluetoothや有線のステレオヘッドホンで聞くことができるが、ニュース番組などでは音声を消し、字幕を読むといった視聴スタイルも便利だ。そこで、932SHでは、新たに「字幕読むモード」を搭載する。字幕読むモードでは最新の字幕が別の色で表示でき、縦画面表示では最大11行に渡って表示されるため、字幕によるワンセグの視聴が非常に使いやすくなっている。

 番組の録画については、番組表からの予約録画や視聴中の録画などに対応し、録画した番組の「ダビング10」にも対応する。再生についても早見・早聴き、タイムシフト再生、音声のみ再生、リピート再生、スキップ再生などが利用できるほか、番組の録画中、[TV]キーを長押しすれば、録画中の番組を最初から楽しめる「追っかけ再生」も利用可能だ。ちなみに、端末のダイヤルボタン上には、従来モデルから継承した光TOUCH CRUISERが装備されているが、録画した番組を再生しているとき、この光TOUCH CRUISERを左右になぞることで、光TOUCH CRUISERをスライダーバーのように操作して、コマーシャル部分を飛ばしたり、見たい場面をすばやく探すなどして使うこともできる。

 この他にもワンセグを視聴中に、メールを作成したり、Yahoo!ケータイのサイトを閲覧することもできる。番組中に気になる情報があれば、すぐにYahoo!ケータイで検索するといった使い方もお手の物だ。

バーチャル5.1chが楽しめる3スピーカー搭載

ヤマハの開発したバーチャル5.1ch技術「Spacious Sound Virtual5.1ch」

ヒンジと本体の左右下に配された3スピーカーでバーチャル5.1chを実現

 ケータイでワンセグや映像、音楽を楽しむとき、有線やBluetooth接続のステレオヘッドホンを利用することが多い。しかし、932SHのように、大画面で映像を楽しめるとなると、周囲の状況が許せば、本体内蔵のスピーカーからサウンドを流したいところだ。そこで、932SHでは、バーチャル5.1chに対応した3つのスピーカーを本体に内蔵し、音の力強さと拡がりをバランスさせたサウンド環境を実現している。

 5.1chとは簡単に言ってしまえば、フロント左右とセンター、さらにリア左右に置いたスピーカーを組み合わせることで、立体感と迫力のあるサウンドを楽しめるようにするものだが、932SHには5.1chのサウンド環境を擬似的に作り出す3スピーカーが搭載されている。これは音響機器メーカーとしても知られているヤマハが開発した3スピーカー用音場技術を採用したもので、端末本体の底面側の左右と中央ヒンジ部分にスピーカーを内蔵し、ステレオのオーディオ信号を前後左右に定位させ、最適に配分することで、大きな音でも小さなボーカルの音も明確に定位し、迫力と臨場感のあるサウンド環境を実現している。

 実際に、ワンセグを視聴し、他のステレオスピーカーを搭載したケータイなどと比較してみたが、音の聞こえ方も違い、ニュース番組などでも端末を机の上に置いた状態で、それほど音量を上げることなく、キャスターが話す内容をきちんと聞くことができた。ちなみに、SHシリーズのワンセグでは、従来モデルから番組のジャンルに合わせた音と映像を設定できる「AVポジション」の「ジャンル連動」という機能が搭載されているが、バーチャル5.1chによるサウンド効果もジャンル連動に対応しており、番組情報データに連動して、最適な画質とサウンドで番組を楽しむことが可能だ。

CCD 800万画素カメラを搭載

驚きの高画質を実現した革新技術の証し

更に進化した、高感度8メガCCDを搭載した

 ダブル・ワンセグとバーチャル5.1ch対応3スピーカーを搭載した932SHだが、ハードウェア面でもうひとつ大きな進化を遂げている。それは昨年末に発売され、各方面で高い評価を得たCCD 800万画素カメラの搭載だ。

 2000年にシャープが当時のJ-フォン(現在のソフトバンク)向けに開発した「J-SH04」によって、カメラ付きケータイの道が切り開かれたことは有名だが、その後、SHシリーズは2003年に世界初のメガピクセルカメラを搭載した「J-SH53」、2004年には国内初の光学ズームを搭載した「V602SH」、2006年には500万画素カメラに光学3倍ズームという圧倒的なハイスペックを実現した「SoftBank 910SH」を開発するなど、国内外のケータイの市場を大きくリードしてきた。

 しかし、ここ数年、SHシリーズに限らず、カメラ付きケータイは画素数こそ、200万画素、320万画素、500万画素と向上するものの、ユーザーからは「画素数が向上した割に、今ひとつうまく撮れない」といった声も聞かれるようになってしまった。その背景にはカメラ付きケータイに採用されるセンサーがCCDからCMOSに変わってきたことが関係している。CMOSはCCDに比べ、低コストで生産することができ、カメラモジュールも小型化しやすいという特徴を持つ。そのため、現在では一部を除き、ほとんどのカメラ付きケータイにはCMOSが採用されているのだが、暗いところでの撮影が苦手だったり、感度を上げにくいなどの制約もある。CMOSも徐々に進化を遂げ、最近ではデジタル一眼レフカメラにも搭載されるほど、広く普及しているが、一眼レフカメラと違って、絶対的に搭載スペースが小さいカメラ付きケータイで高品質なカメラを実現するにはCCDの方が有利だとされている。

 そこで、シャープではもう一度、カメラ付きケータイの楽しみを広くユーザーに知ってもらうため、自社開発の800万画素のCCDと独自の画像処理エンジン「ProPix」を組み合わせた「CCD 800万画素カメラ」を新たに開発し、昨年末から各事業者向け端末に搭載している。ソフトバンク向けには冬モデルの「930SH」に搭載され、各方面で非常に高い評価を得たが、今回のAQUOSケータイ 932SHにはこれをさらに進化させたカメラ機能が搭載されている。

 カメラとしての基本スペックは、930SHに搭載されたものが継承されており、CCDの特徴を活かした暗いシーンや動きのあるシーンでも撮影が可能で、CCDの低画像ひずみ効果とProPixの画像処理効果により、手ブレや被写体ブレを抑制し、動きのある被写体でもクリアに撮影することができる。また、CCDを採用したカメラでは強い光源がさし込んだとき、スミアと呼ばれる光の筋が映り込んでしまうことがあるが、メカシャッターとNDフィルターが装備されており、これを軽減することができる。

 撮影機能も顔検出機能や長時間露光、広角29mmのワイドな撮影などが継承されているが、932SHには新たに被写体が笑顔のときにピントを合わせてシャッターが切れる「笑顔フォーカスシャッター」、被写体が振り向いたときにシャッターが切れる「振り向きシャッター」を搭載している。パーティなど、人が集まる場所での撮影にも活躍する機能だが、なかでも振り向きシャッターは子どもなどを撮影するときに非常に効果を発揮するおすすめ機能のひとつだ。筆者もスタッフや友だちに声を掛け、何度か振り向きシャッターの撮影を試みたが、非常に自然で楽しい顔写真を撮影することができた。

【動画】新たに搭載された「笑顔フォーカスシャッター」

【動画】新たに搭載された「振り向きシャッター」

予想を超えるモデルチェンジを達成したAQUOSケータイ 932SHは「買い!」

 ソフトバンクから発売されたシャープ製端末「932SH」には、この他にも931SHで搭載された「モバイルウィジェット」、快適なキー操作を実現する「アークリッジスリムキー」、いつでも辞書ボタンからすぐに呼び出せる「スマートリンク辞書」など、実用的かつ楽しい機能が数多く搭載されている。Newサイクロイドによる美しいボディデザイン、ダブル・ワンセグ対応という新しいワンセグの楽しみ、CCD 800万画素カメラによる高品質な撮影機能とも相まって、機能と美しさ、実用性をバランスさせた非常に完成度の高いケータイとして、仕上げられている。ケータイの新しい楽しみを次々と生み出してきたSHシリーズがまたひとつ新しい時代へ半歩踏み出したとも言える魅力的な端末だ。ケータイをもっと楽しく、もっと便利、もっと新鮮に活用したいアクティブなユーザーに、ぜひおすすめしたい端末だ。

左からシャンパンゴールド、ホワイトシルバー、クリアブラック、ベリーピンク

■関連情報
□「932SH」製品情報(ソフトバンク) http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/932sh/
□「932SH」製品情報(シャープ) http://www.sharp.co.jp/products/sb932sh/

■関連記事
□ダブルチューナー搭載の新型サイクロイド「932SH」
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/43741.html
□ソフトバンク、AQUOSケータイ「932SH」を6日発売
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/news/2009/02/04/43907.html

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。

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