カメラ付きケータイの元祖、J-SH04。当時、搭載されたカメラは11万画素でしかなかった

 カメラ付きケータイの元祖と言えば、読者のみなさんもご存知の通り、2000年にシャープが当時のJ-フォン(現在のソフトバンク)向けに開発した「J-SH04」だ。まだケータイにカラー液晶ディスプレイが搭載されて間もない頃、カラー液晶を活かすためにカメラが搭載されたのが始まりだ。カメラ付きケータイの登場とともに、その場の感動や驚きを写真に撮ってメールで送信するという「写メール」文化が生まれ、ケータイの新しい使い方を生み出した。「写メール」文化は世界中へと拡がり、今や世界中の人が日常的に写真付きメールのやり取りしている。

 当時のJ-SH04に搭載されたカメラは11万画素でしかなかったが、当時はいつでもどこでもケータイで「撮る」、カラー液晶ディスプレイですぐに「見る」、メールで友だちや家族にすぐに「送る」という行為がとても新鮮で、非常に楽しかった。筆者自身も当時、喜んで、J-SH04を持ち歩き、あちこちで写真を撮っていたことを記憶している。

 その後、ケータイに搭載されるディスプレイがTFTカラー液晶になり、より鮮やかな画像が閲覧できるようになったことで、ケータイに搭載されるカメラの画素数も少しずつ向上していった。2003年には世界初のメガピクセルカメラを搭載した「J-SH53」、続いて、2004年には国内初の光学ズームを搭載した「V602SH」が登場し、ケータイのカメラは着実に進化を遂げていた。そして、2006年には500万画素カメラに光学3倍ズームという、当時の最高スペックであり、現在でもトップクラスに匹敵するスペックを実現した「SoftBank 910SH」を開発し、当時のコンパクトデジタルカメラに迫る性能でユーザーからも高い評価を得た。

 これらのモデルからもわかるように、SHシリーズはカメラ付きケータイの元祖であるだけでなく、常に最先端をリードしてきたわけだ。その一方で、ここ1〜2年、各社から発売されるケータイではワンセグや音楽再生をはじめとするAV機能、おサイフケータイ®や防水などの生活機能など、カメラ以外の部分に注目が集まっていた。また、ケータイに搭載されるカメラも普及モデルに200万画素クラスや320万画素クラス、高機能モデルに500万画素クラスが搭載されるものの、ユーザーからは「画素数が向上した割に、今ひとつうまく撮れない」といった声が聞かれることもあった。

 こうした声が聞かれた背景には、ここ数年、カメラ付きケータイの心臓部が変わってきたことも少なからず関係している。カメラ付きケータイが登場したばかりの頃は、CCDが広く採用されていたが、100万画素クラスのカメラ付きケータイが普及し始めた頃からCMOSを搭載する端末が増え、最近ではカメラ付きケータイのほとんどがCMOSを採用する状況となっている。CMOSはCCDに比べ、低コストで生産でき、カメラモジュールを小型化しやすいため、ケータイには広く採用されるようになってきたわけだ。

SoftBank 930SH

 今回発売されたSoftBank 930SHは、カメラにCMOSを採用するケータイが全盛と言われるなか、CCD 800万画素カメラを搭載し、画像処理エンジン「ProPix」を組み合わせることにより、今までよりも格段に美しい写真を撮影できるカメラ機能を実現している。カメラ付きケータイのトレンドを常にリードしてきたSHシリーズが作り出す新しいカメラ付きケータイの新基準をもたらす端末として仕上げられているわけだ。

ボディ背面にCCD 800万画素カメラを搭載する
独自の画像処理エンジン「ProPix」を搭載。CCDとの組み合わせで、美しく高精細な描写を実現している
撮影メニューから、ISO感度の設定が可能

 では、具体的に930SHに搭載されているCCD 800万画素カメラは、従来のCMOSによるカメラに比べ、どんなメリットがあるのだろうか。

 一般的な特性として、CCDはCMOSに比べ、面積あたりの感度が高く、ノイズも少ないなどのメリットを持つ。その半面、前述のようにコスト面でやや不利だったり、カメラモジュールを小型化しにくいといった制約もある。CCDがCMOSよりも必ず高画質というわけではなく、デジタル一眼レフにもCMOSが採用されているケースも多いが、カメラ付きケータイで高品質なカメラを実現するには、CCDに一日の長があると言われている。

 今回、930SHに搭載されたCCD 800万画素カメラは、シャープの自社製CCDを採用しており、これに独自の画像処理エンジン「ProPix」を組み合わせた構成となっている。実は、デジタルカメラを語る上で、イメージセンサーと並んで、欠かすことができないのが画像処理エンジンだ。CCDにせよ、CMOSにせよ、イメージセンサーから得られた電気信号だけで画像が生成されるわけではなく、そこで得られた電気信号をもとに、さまざまな画像処理をしたうえで、最終的な画像を生成している。930SHに搭載された「ProPix」はダイナミックレンジが広く、優れた色再現性を実現する画像処理エンジンで、デジタルカメラなどと同じように、ハードウェアレベルでのノイズ除去などを行ない、クリアで美しい画像を実現する機能を持つ。ちなみに、CCDを採用したカメラでは撮影時にスミアと呼ばれる光の筋が記録されてしまうことがあるが、930SHではこれを抑制するためにメカシャッターを採用し、さらにはレンズに入る強い光源を抑制できるNDフィルターを組み合わせ、スミア軽減を図っている。

 930SHのCCDとProPixの組み合わせには、この他にもいくつものメリットがある。たとえば、今までのカメラ付きケータイには少なかった高感度ISOに対応しており、さまざまなシーンでブレを抑え、ロウソク程度の明かりしかないような場所でもノイズを抑えた撮影を可能にする。カメラ付きケータイは家庭やオフィスといった明るい場所ばかりではなく、レストランやカラオケBOXのように、やや照明が抑えられた場所で撮影することも多いが、そういった場所でも鮮やかな写真を撮影できる。室内で照明の少し陰になってしまうようなところを撮影したときもきちんと被写体の様子がわかるほど、ハッキリと撮影できる。ISO感度については、100/200/400/800/1600/2500に加え、「自動」と「自動(高感度)」から設定できるのだが、少し暗めの室内では自動(高感度)で撮影するのがおすすめだ。ISO感度の切り替えは設定画面のほか、カメラ起動時に[*]キーを押して、ワンタッチで切り替えることもできる。

 また、カメラ付きケータイはいつでもすぐに撮影できる手軽さが魅力だが、子どもやペットなど、動きのある被写体を撮影するとき、被写体ブレが起きてしまうことがある。930SHはCCDならではの低画像ひずみ効果に加え、ProPixの画像処理効果によるシャッター速度の高速化で、被写体ブレを抑えることに成功している。また、高感度なCCDとISO感度、そしてProPixの効果により、動きのある被写体もブレを抑えて捉えることができる。

 こうしたカメラ機能の向上は言うまでもなく、より高画質の写真を撮ることを目指したものだが、特筆すべきは誰にでもその効果がハッキリと体験できる点だ。プロカメラマンが三脚でカメラを固定し、照明やレフ板を使って、キレイに撮影できるというのは当たり前だが、930SHはごく普通のユーザーが普通に被写体へカメラを向けて、シャッターボタンを押せば、自然にキレイな写真を撮ることができるのだ。

 そして、撮影した画像のクオリティは、プリントをしたときにもハッキリと表われてくる。従来のカメラ付きケータイでもL判や2L判程度であれば、プリントに耐えられる画質を確保していたが、930SHの800万画素カメラとProPixの組み合わせは、A4サイズやB4サイズはもちろん、A3サイズでプリントしても十分なクオリティを確保している。

◆撮影サンプル(930SHと、5.2MB CMOSカメラ搭載ケータイとの比較)
○5.2メガCMOSカメラ搭載ケータイで撮影
930SHと比べると細部の精細さに欠ける
○930SHで撮影
葉っぱの部分など細かいところまで精細に描写されている
○5.2メガCMOSカメラ搭載ケータイで撮影
暗い場面では、全体的に暗くなってしまう
○930SHで撮影
暗い場面でも、何が写っているかしっかりと判別できる

ダイヤルボタン右下に、専用の[カメラ]キーが装備されている
カメラの起動前にも、カメラに関する設定ができるようになっている

 930SHに搭載されているCCD 800万画素カメラと画像処理エンジンのProPixという組み合わせは、今までのカメラ付きケータイと一線を画した高画質な写真を撮影することができる。しかし、930SHのカメラ機能が優れているのは、撮影した写真のクオリティだけではない。実は、使い勝手の面も大きく進化を遂げている。

 まず、カメラの起動は、ダイヤルボタン右下に装備された[カメラ]キーを押す。最近はカメラキーを装備する機種が少なくなってきており、メニュー画面などからカメラ機能を起動するものが多いが、撮りたいときにすぐに起動できることを考えれば、専用キーの装備はうれしい。通常のメインメニューから「カメラ」を選択したときは、カメラメニューが表示され、カメラに関連する「静止画撮影」「動画撮影」「バーコード/名刺読取」「画像レビュー」「静止画設定」「動画設定」を選べるようにしている。カメラを起動したときだけでなく、起動前にもカメラに関連する設定ができるのも便利だ。ちなみに、待受画面やその他の機能を利用中でも[カメラ]キーを長押しすると、最新の撮影画像(静止画と動画)をプレビューすることができる。

 撮影については、夏モデルのAQUOSケータイ 923SHに続き、より広いエリアを撮影できる29mm広角撮影をサポートし、パノラマ撮影や連写、スキャナ撮影などにも対応する。新しいところでは、夜景や花火などを撮影するときに適した「長時間露光」がなかなか面白い。どこか固定できる場所に930SHを置いて撮影するのがおすすめだが、約4秒間、シャッターを開放することで、鮮やかな光跡などが残る夜景を美しく撮影できる。

 また、930SHにはモーションコントロールセンサーが搭載されているため、端末を縦と横のどちらで撮影したのかを認識して、撮影した画像が保存される。撮影した画像をビューアで閲覧するときも端末を持ち替えることなく、撮影したときの向きを反映した状態で画像が表示される。端末の向きを変えれば、画像も自動的に回転する仕様となっている。

 カメラはもちろんオートフォーカスに対応しており、通常の画面中央にピントを合わせるセンターAFに加え、人物の顔を最大5人まで検出し、優先的にピントを合わせる「顔優先オートフォーカス」にも対応する。撮影後に、人物の顔が逆光になってしまったときは、プレビュー画面で「顔検出連動」を利用し、逆光補正をすることも可能だ。ちなみに、撮影後のプレビュー画面については、ダイヤルボタンの[1]から[9]を長押しすることで、9分割した画面の一部を拡大表示できる。3.0インチのフルワイドVGA NewモバイルASV液晶を活かした機能のひとつだ。

 さらに、使い勝手の面で、意外にうれしいのが撮影時の「バックグラウンド保存」だ。この機能により、次の撮影までの時間は短縮される。自動保存設定を「ON」にしておけば、撮影した画像の保存中でも保存完了を待つことなく次の撮影が始められる。

 こうして撮影した画像については、930SHの画面で楽しむだけでなく、メールへの添付やパソコンへの取り込み、プリント、壁紙設定など、いろいろな活用できるが、今どきの使い方のひとつとして、やはり、ブログは欠かせないところだ。930SHにはカメラで撮影した画像を手軽にブログに投稿することができる「ブログツール」が用意されている。

 通常、ケータイで投稿できるブログは、投稿用メールアドレスにメールを送信すると、ブログに投稿されるというしくみだが、この投稿用メールアドレスやブログのURLを登録しておくことで、撮影した画像の閲覧画面やピクチャーフォルダの画面からカンタンに投稿できる。登録できる投稿先も最大5カ所まで設定できるため、手軽にブログを更新したいユーザーから複数のブログを活用するヘビーユーザーまで、幅広いユーザーに便利な機能となっている。

画像の閲覧画面や、ピクチャーフォルダから、[送信/ブログ]を選択
投稿したいブログを選択する
件名、本文を入力する。件名が投稿タイトルとなる
ブログ更新、完了

ハイスペックながらも、幅約48mm、最薄部15.2mmというスリムなボディを実現している
824SHで搭載された「アークリッジスリムキー」を継承しており、きちんと押しやすく仕上げられている
3.0インチフルワイドVGA(854×480ドット) New モバイルASV液晶を搭載

 CCD 800万画素カメラを搭載した930SHだが、カメラだけが優れているわけではない。従来のSHシリーズ同様、使いやすさにもこだわって作られている。

 CCD 800万画素カメラやワンセグ、おサイフケータイ®、3.0インチの大画面液晶ディスプレイというハイスペックを実現しているにも関わらず、コンパクトで持ちやすいスタンダードな折りたたみボディにまとめている。サイズは幅約48mm、最薄部約15.2mmというスリムさで、女性の手にも持ちやすい。デザインもシンプルでスッキリとしており、さまざまなファッションやスタイルに合わせることができる美しい仕上がりだ。

 ボディ周りでもうひとつ見逃せないのは、快適なキー操作を可能にする「アークリッジスリムキー」だ。SHシリーズでは2007年に発売された「PANTONE® 812SH」で、指のふくらみやキーに対する傾きなどを考慮し、キーをUラインの形状に仕上げた「アークリッジキー」を搭載し、ユーザーから高い評価を得た。今年の夏モデルとして発売された「THE PREMIUM WATERPROOF 824SH」では、アークリッジキーをさらに進化させ、キーの間隔や押しやすさに工夫を加えた「アークリッジスリムキー」を搭載したが、今回の930SHにもしっかりと継承されている。最近はボディのスリム化のため、キーの押しやすさが影響を受けている機種もあるが、930SHはコンパクトなボディながらもきちんと押しやすいキーに仕上げているわけだ。メールなどで文字入力をたくさんするユーザーにこそ、使って欲しいキーだ。

 モーションコントロールセンサーを利用した機能も搭載されている。端末を振って、シークレット解除をしたり、着信時に端末を裏返すだけで着信音を停止できる「クイックサイレント」、メール閲覧時などに端末を前後に動かすことで、文字サイズを拡大・縮小できる「ズーム機能」などに加え、ワンセグ視聴時は端末の向きに応じて、画面表示を回転させることができる。使う楽しみと実用を考えた機能が搭載されているわけだ。ちなみに、930SHのワンセグについては、従来のSHシリーズ同様の機能が搭載されており、録画や追っかけ再生、なめらかフレーム補間、SVエンジン+などにより、存分に番組を楽しむことが可能だ。

 ここ数年、ケータイにはワンセグやおサイフケータイ®、音楽再生など、新しいエンターテインメントや実用機能が数多く搭載されてきた。これらの機能も重要なのだが、やはり、ケータイの楽しみのひとつとして、忘れてはならないのはカメラだ。

 携帯電話にはじめてカメラを搭載し、写メールというキーワードとともに、カメラ付きケータイの道を切り開き、市場をリードしてきたSHシリーズ。今回発売された930SHは、CCD 800万画素カメラをいち早く搭載し、画像処理エンジン「ProPix」を組み合わせることで、今までのカメラ付きケータイとは明らかに一線を画すレベルに仕上げられた端末だ。高品質な写真を撮影できることは言うまでもないが、カメラ付きケータイとしての使いやすさや撮る楽しさを考え、誰もが自然に、ごく普通に美しい写真を撮れるように仕上げられている。ワンセグやおサイフケータイ®、3Gハイスピード、世界対応ケータイなど、ソフトバンクが提供する最新サービスにもしっかりと対応しており、安心して利用できるのも見逃せないポイントだ。ハイスペックをスマートに、美しく、楽しく、便利に使いたいユーザーに、おすすめしたい端末と言えるだろう。

カラーバリエーションは全5色。左からブルーグリーン、ブラック、ホワイト×シルバー、ピンク、シルバー×バイオレット
法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるPRO BlackBerry サーバー構築」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。