法林岳之執筆  FLAT FACE×FULL SLIDERで  ケータイの新しいスタイルを目指した  FULLFACE SoftBank 913SH
次々と魅力的な端末を投入し、ラインアップを広く展開するSHシリーズ。特に、今夏は相次いで新機種を発売し、今まで以上にユーザーの目を楽しませてくれている。そんなSHシリーズに新しいワンセグ対応端末「SoftBank 913SH」が登場した。SHシリーズとしては初となるスライド式端末だが、今までにない斬新なデザインを採用している。実機を見ながら、今までのスライド式にはない新しい魅力を探ってみよう。

新しいスライド式デザインの創造

フラットフェイスを採用したAV機器のような913SH
サイクロイドスタイルを採用した912SH

 ケータイのボディにはいろいろな形状がある。ストレート、折りたたみ、フリップ式、回転式、二軸回転式、スライド式などが採用されてきた。こうしたケータイのボディデザインは、本誌でも良く語られているように、ケータイの新しい機能やサービスが登場するときに変化すると言われている。

 たとえば、通話が中心だった時代はストレートやフリップ式が人気を集めたが、メールやコンテンツ閲覧といった使い道が登場したことで、ディスプレイサイズを大きくできる折りたたみデザインが普及した。カメラ付きケータイが普及し始めると、カメラ機能を使いやすくするため、回転式や二軸回転式、スライド式などの新しいボディデザインがケータイのバリエーションに加わっている。

 そして、昨年からサービスが開始されたワンセグでは、従来の二軸回転式などが注目される一方、シャープは同社の液晶テレビ「AQUOS」の名を冠した「AQUOSケータイ SoftBank 905SH」で、液晶ディスプレイを回転させる「サイクロイド」といユニークかつ斬新なメカニズムを採用し、今までのケータイにはなかった新機軸を打ち出している。その後、サイクロイド機構を搭載したAQUOSケータイは、他事業者向けのSHシリーズにも採用され、ワンセグケータイの定番的な存在として認知されるほど、定着している。

 しかし、サイクロイドだけがワンセグ対応端末のデザインではない。ワンセグをはじめ、オーディオやビジュアルなどのコンテンツをもっと手軽に見やすくしながら、ケータイとしても使いやすく、なおかつスタイリッシュで美しい端末はできないだろうか。こうした考えに基づいて、SHシリーズが新たに創造したのが「FLAT FACE×FULL SLIDER」を採用した「FULLFACE SoftBank 913SH」だ。

FLAT FACE×FULL SLIDERとは?

コンパクトで見た目もスマートだ
オープンポジション
フルスライダーでありながらスリムな筐体

 では、913SHで採用された「FLAT FACE×FULL SLIDER」とは、どのようなボディデザインなのだろうか。

 まず、その形状を見てもわかるように、基本的なボディデザインはスライド式となっている。スライド式は元々、「大画面ディスプレイを搭載できる」「端末を開かなくても情報が閲覧できる」「端末を閉じていれば、ボタンを誤操作しない」などの特徴を持つ一方、「ディスプレイ面に装備された方向キーと、ダイヤルボタンで段差ができる」「ボディが厚くなってしまう」などの制限も持ち合わせている。

 特に、ディスプレイ部とダイヤルボタンの段差については、ユーザーがもっとも頻繁に利用するメールなどでの日本語入力に大きな影響がある。多くのスライド式ではディスプレイ面に方向キーが装備されており、ダイヤルボタンで文字を入力後、変換操作のためにディスプレイ面まで指を大きく移動させなければならなかったり、段差部分に爪先が当たる、変換操作時に方向キーを誤操作してしまうなどの制限を抱えている。

 そこで、913SHではディスプレイ面の方向キーなどをなくし、その代わりに軽く触れるだけで操作ができるセンサーキーを内蔵している。これにより、スライド式ボディを閉じた状態ではまったくのフラットな形状、つまり、「FLAT FACE」に仕上げている。

 そして、スライド式ボディを開くと、そこにはダイヤルボタンに加え、マルチガイドボタン(方向キーと決定ボタン)がレイアウトされた構造となっている。これにより、文字入力などの操作に重要な方向キーとダイヤルボタンが通常の折りたたみデザインの端末などと同じようなレイアウトになり、従来のスライド式にはなかった快適な操作環境を実現している。

 このレイアウトの秘密となっているのが913SHで採用されている「FULL SLIDER」という構造だ。通常、多くのスライド式端末はディスプレイ部のスライド幅が約35〜45mmであるのに対し、913SHは約60mmもスライドさせている。スライド式ボディのスライド幅がこれだけ大きくなると、端末を開閉するときのスライドの操作感が気になるところだが、913SHはスライド機構にアシストが付いており、非常にスムーズに開閉操作をすることが可能だ。

 SHシリーズ初となる913SHは、「FLAT FACE×FULL SLIDER」というデザインによって、「閉じるとAVプレイヤー」「開くとケータイ」という二つの顔を実現することにより、今までにない新しいスライド式デザインのケータイを創造しているわけだ。

AVプレイヤーとしてのFLAT FACE

側面のAVメニューボタンでメニューが表示される
サイドボタン類は本体の右側に配されている
miniSDメモリカードスロットは本体左側に配されている
テレビスタンドのような卓上ホルダー(同梱)
Bluetooth®ヘッドセット(別売)に対応

 913SHのFLAT FACE×FULL SLIDERというデザインは、AQUOSケータイで採用されてきたサイクロイドにも負けないユニークさを持つが、使い勝手やユーザーインターフェイスもよく考えられている。

 本体の顔でもある液晶ディスプレイは、2.8インチワイドQVGAモバイルASV液晶を採用しているが、方向キーなどはすべてボタン部側に装備されているため、前述の通り、スッキリとした「FLAT FACE」に仕上げられている。そして、側面の[AVメニュー]ボタンを押すと、画面には「AVメニュー」が表示され、ディスプレイ横のセンサーキーが青く光り、「メディアプレイヤー」「カメラ」「デジタルTV(ワンセグ)」「TVプレイヤー」の各機能を呼び出すことができる。ちなみに、センサーキーは側面の[AVメニュー]ボタンを押すと青く点灯し、もう一度押すと消灯する。点灯している時のみ操作できる仕様となっており、操作の有効時間は5秒/10秒/30秒/1分/常時の中から設定できる。

 AVメニューから起動できる機能の内、ワンセグはワイドQVGA液晶を活かした迫力のある映像を楽しむことができる。連続視聴時間も約6時間と長く、画面サイズも標準表示や全画面表示など、6種類から選択可能。ワンセグは端末を閉じたままのAVスタイルでの視聴はもちろん、スライドを開いた電話スタイル(タテ画面表示)でも視聴できる。電話スタイルではデータ放送を利用したり、メールやアドレス帳など、他の機能と2画面で同時表示しながら操作したいときに便利だ。パッケージに同梱されている卓上ホルダーにセットすれば、電池残量の心配をすることなく、デスクの上などに置いてじっくりとワンセグを楽しむこともできる。ちなみに、卓上ホルダーは縦横両方に回転し、角度の調節もできるテレビスタンドのような構造となっている。

 また、ワンセグの視聴中、センサーキーの[□]ボタンを長押しすれば、すぐにmicroSD™メモリカードへの番組の録画を開始することができる。録画については視聴中の録画に加え、日時やチャンネルを指定しての録画、電子番組表や番組情報からの録画にも対応する。

 録画した番組を見たいときは、AVメニューから「TVプレイヤー」を選ぶが、このときも端末を閉じたAVスタイルのまま、視聴することができ、[Λ]ボタンや[V]ボタンを操作することで早送りや早戻しをしたり、早見・早聴きをすることもできる。

 913SHではワンセグや録画した番組だけでなく、音楽や映像も同じようにAVスタイルから楽しむことが可能だ。従来のSHシリーズ同様、AACデータのほか、SD-Audio準拠のセキュアAACファイルの再生にも対応しており、パソコンで音楽CDから取り込んだ音楽データ、音楽配信サイト「MOOCS」で配信されている音楽データ、Yahoo!ケータイで購入した着うた®や着うたフル®、撮影したお気に入りの動画などを再生できる。

 こうした映像や音楽は本体前面のディスプレイ部横に内蔵されたスピーカーから再生したり、付属のマイク付きステレオイヤホンを利用することになるが、913SHはBluetooth®にも対応しているため、ワイヤレスでクリアな音質の音楽を楽しむこともできる。Bluetooth®のプロファイルもA2DPやAVRCPに対応しているため、オプションのステレオBluetooth®ヘッドセットを利用すれば、リモコン操作で曲送りや曲戻し、音量調節などもできる。

名刺読み取りも便利なカメラ機能

2.0メガピクセルのCMOSカメラを搭載
サブカメラは11万画素CMOSカメラを搭載

 FLAT FACEを活かす機能として、もうひとつ便利なのがカメラ機能だ。AVスタイルでAVメニューからカメラを起動すれば、2.8インチの液晶ディスプレイをファインダーとして使い、さまざまな撮影を楽しむことができる。

 カメラは2.0メガピクセルのCMOSを採用しており、本体背面に内蔵している。カメラ部横には接写切り替えスイッチとモバイルライトを備える。カメラの多機能さは他のSHシリーズから受け継がれているが、913SHには、912SHから継承した機能の他、いくつか新しい機能が搭載されている。

 たとえば、旅先などで拡がりのある風景を撮影したいときに便利なのが「パノラマ撮影」だ。カメラ機能でパノラマ撮影を選び、端末を水平、あるいは垂直方向に動かすだけで、カンタンに迫力のあるパノラマ写真を撮ることができる。この他にもシーン別撮影や連写など、便利な撮影機能が数多く用意されている。

 「写真を撮る」という純粋なカメラ機能ではないが、「名刺読み取り」もかなり注目できる新しい機能のひとつだ。従来もカメラを利用した文字認識機能はあったが、そのほとんどが1行ずつ文字を認識させるという手法を採用していた。これに対し、913SHに搭載されている名刺読み取り機能は、名刺をカメラで撮影すれば、それを読み取ることができる。しかも読み取ったデータはそのまま、アドレス帳に登録できるというスグレモノだ。認識率も従来の文字認識などに比べれば、格段に良く、十分に実用性がある機能となっている。

名刺読み取り機能は認識率もよく優れもの

スライド連動などの実用的な機能も充実

指の動きにあう、ゆるやかなカーブを描いたキー配列
わずかな段差をつけることで、押しやすにも配慮した

 FLAT FACEを活かしたAV機能やカメラ機能が搭載されている913SHだが、ケータイとして必要とされる基本機能も充実している。

 まず、日本語入力はSHシリーズでおなじみのケータイShoin5が採用されている。ボタンはFULL SLIDERという構造を採用したことにより、マルチガイドボタン(方向キー及び決定ボタン)とダイヤルボタンが使いやすい位置にレイアウトされているが、ダイヤルボタンも指の動きに合わせて、少し緩やかなカーブを付けて配列されており、キーの形状もわずかに付けられた起伏によって、操作しやすい環境を実現している。スライド式ケータイとしては、かなり操作しやすい部類に入ると言って、差し支えないだろう。

 画面表示についても通常の「標準メニュー」、基本的な機能だけに絞込み、文字も一括で大きく表示する「シンプルメニュー」、使える機能はそのままに、文字サイズを一括で大きく表示する「でか文字メニュー」から選ぶことができる。これらのメニューの選択は電源ON時にできるほか、起動後も待受画面で[TV]ボタンを長押しすることで、切り替えることが可能だ。スタイリッシュなデザインの端末でありながら、シニア層やケータイリテラシーの高くない人たちにもやさしいユーザーインターフェイスを採用しているのは好印象なポイントのひとつだ。

 同じく画面周りでは、これもSHシリーズでおなじみのカスタムスクリーンに対応しており、カスタモからダウンロードしたコンテンツなどを設定し、待受画面からメニュー画面、発着信画面などを一括して、カスタマイズすることができる。ケータイを長く楽しむための機能のひとつと言えるだろう。

 FULL SLIDERに連動した機能も用意されている。たとえば、着信があったとき、スライドを開いて応答、通話後にスライドを閉じて終了といった使い方ができる。ちなみに、着信時には通常、相手の電話番号やアドレス帳の登録名などがディスプレイに表示されるが、プライバシーに配慮し、スライドを閉じている時にこれらの情報を表示するか、非表示にするかを設定できるようにしている。これに加え、スライドを開いた電話スタイルでメールを作成したり、閲覧しているとき、端末を閉じると、「操作中画面あり」の表示と共に待受画面に戻り、端末をスライドさせて、電話スタイルに戻すと、メールなどの操作が継続できる「操作保留中待ち受け」という機能も搭載されている。さらに、スライドを閉じた状態の時、設定した時間中は、着信などに対してディスプレイのバックライトが点灯しないように設定できる「ディスプレイマナー」にも対応。どれも、スライド式端末での実利用をよく考えた機能だ。

 この他にも複数の機能を切り替えながら利用できる「マルチジョブ機能」、Microsoft® WordやMicrosoft Excel®などのオフィス文書を閲覧できる「ドキュメントビューア」(※1)、パソコンのホームページを閲覧できる「PCサイトブラウザ」(※2)(※3)など、ケータイをしっかりと活用するための機能が充実している。さらに、携帯電話ネットワークへの対応も最新の3Gハイスピード(※4)(HSDPA)対応となっているため、着うた®や動画などの大容量のファイルもスピーディーにダウンロードできる。

全画面スタイル&フルスライドで魅せる新しいケータイのカタチ

 話すための道具として生まれたケータイだが、搭載される機能や提供されるサービスの進化とともに、ケータイ本体のデザインも少しずつ変化してきた。折りたたみデザイン全盛だった日本のケータイ市場において、スライド式や二軸回転式、サイクロイドなど、いくつかの新しいデザインが登場してきた。

 913SHはディスプレイ部のボタン類をなくし、フラットでスタイリッシュなボディに仕上げながら、そのディスプレイ部をフルにスライドさせるという斬新な機構を採用している。全画面スタイルとフルスライドというコンセプトにより、これからのケータイの進化を期待させてくれる新しいカタチにチャレンジした端末だ。

 もちろん、デザイン面だけでなく、機能的にも従来のSHシリーズで培われてきたものを継承しながら、FLAT FACE×FULL SLIDERを活かすための機能を搭載し、使いやすさと使いごたえを両立させた端末として仕上げられている。

 今までのスタンダードなケータイを一歩踏み出し、新しいケータイのカタチを体験したいユーザーには、ぜひおすすめしたい端末と言えるだろう。

カラーバリエーションは全8色、左からブラック、シルバー、ピンク、ビビッドピンク、グリーン、ライトブルー、オレンジ、ゴールド

■関連情報
□「913SH」製品情報(ソフトバンク)  http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/913sh/
□「913SH」製品情報(シャープ)  http://www.sharp.co.jp/products/sb913sh/

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 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/35643.html
□ワンセグ、HSDPA対応AVケータイ「FULLFACE 913SH」
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/34604.html

■「SH Blog」 話題の夏モデルを一挙に使いまくり■
 http://ad.impress.co.jp/special/sh_blog/

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」、「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中

*PCサイトブラウザ、カスタムスクリーン、マルチジョブ、3G HighSpeedはソフトバンクモバイル株式会社の登録商標または商標です。
*SOFTBANKおよびソフトバンクの名称、ロゴは日本国およびその他の国におけるソフトバンク株式会社の登録商標または商標です。
*microSD™はSD Card Associationの商標です。
*Bluetooth®は米国Bluetooth SIG,Inc.の登録商標です。
*Microsoft、Excelは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標です。
*「Yahoo!」および「Yahoo!」「Y!」のロゴマークは、米国Yahoo! Inc.の登録商標または商標です。
*着うた®、着うたフル®は株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの登録商標です。
*「サイクロイド」および「Cycloid」はシャープ株式会社の登録商標です。
*「アクオス」および「AQUOS」、「AQUOSケータイ」はシャープ株式会社の登録商標です。

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