法林岳之執筆  ワイドVGA液晶で  ワンセグケータイの最高峰を目指した  AQUOSケータイ「912SH」
2006年4月のサービス開始以来、ケータイで楽しめる新しいエンターテインメントとして、注目を集めている「ワンセグ」。そのワンセグケータイの市場をリードし続けているのがシャープ製端末「AQUOSケータイ」だ。そのAQUOSケータイの最新モデルとなる「SoftBank 912SH」がソフトバンクから発売された。ワンセグケータイの最高峰を目指したAQUOSケータイの実機を見ながら、その内容をチェックしてみよう。

ワイドVGA液晶で進化したソフトバンク向けAQUOSケータイ 3rdモデル

サイクロイドスタイルを踏襲し、三代目となるAQUOSケータイ「912SH」
800×480ドット表示が可能な3.0インチワイドVGA液晶を搭載した

 シャープの液晶テレビ「AQUOS」の名を冠したワンセグ対応端末「AQUOSケータイ」。2006年5月、旧ボーダフォン(現在のソフトバンク)から発売された「905SH」は、サイクロイドというユニークかつ斬新な機構を採用し、今までのケータイにはなかった新機軸を打ち出すことに成功した。2006年11月には3インチのワイドQVGA液晶を搭載し、ボディをスリムにまとめた「911SH」を発売して人気を獲得した。その後、他事業者からもAQUOSケータイが登場し、AQUOSケータイとその独特のサイクロイド機構は、ワンセグケータイの代名詞的な存在になりつつある。

 今回、ソフトバンクから発売された「912SH」は、従来のAQUOSケータイで培われたノウハウやそこで得られたユーザーからの新たなるニーズに応えるため、一段と大きな進化を遂げたモデルだ。

 912SHでの最大の進化と言えるのが480×800ドット表示が可能な3インチワイドVGA液晶を搭載したことだ。すでに、国内で販売されているケータイでは911SHをはじめ、3インチのワイド液晶を搭載するモデルがいくつか登場したが、480×800ドット表示が可能な3インチワイドVGA液晶はトップクラスということになる。もちろん、液晶パネルはAQUOSで培われた技術をフルに活かしたモバイルASV液晶が使われており、「SV(Super Vivid)エンジン」「6色カラーフィルター」「明るさセンサー」を採用することで、屋内外のどちらでも美しい映像を楽しめるようにしている。

サイクロイドスタイルの新たな活用を創り出す3インチワイドVGA液晶

ワイドQVGAの4倍の描画クオリティを持つワイドVGAの一覧性(上が911SH、下が912SHの表示イメージ)
©2007 Yahoo Japan Corporation
ワンセグを見ながらPC向けウェブサイトを閲覧する
ワンセグを見ながらYahoo!ケータイを閲覧する
ワンセグを見ながらメールの受信、作成、送信をする

 高品質なワイドVGA液晶が搭載されたことはユーザーにとって、非常に魅力的なことだが、912SHはただ単にワイドVGA液晶を搭載するだけでなく、それを活かすための『仕掛け』をきちんと用意しており、ワイドVGAを実感できる環境が整っている。

 もっとも特徴的なのは、ワイドVGAの高解像度表示を活かし、サイクロイドポジションで横画面を左右に分割表示することで、ワンセグを視聴しながら、他の操作をできるようにしている。たとえば、ワンセグを視聴中、ショートカットボタンを押して、ショートカット画面を表示し、メールを作成したり、Yahoo!ケータイのコンテンツを閲覧するといったことが簡単にできてしまうのだ。面白い番組を見つけたら、すぐにメールで友だちに連絡したり、番組内で気になる話があれば、Yahoo!ケータイで検索する、PCサイトブラウザでパソコンのサイトを閲覧するといった使い方もできる。このとき、横画面の左半分にはワンセグの画面が縦に表示されているが、[マルチジョブ機能/マナー]ボタンを押すことで、メールとワンセグの全画面表示に切り替えることもできるため、大切なシーンも見逃すことなく、複数の機能を利用できる。

 同様に、ワイドVGA液晶の高解像度表示を活かし、PCサイトブラウザやドキュメントビューアがワイドVGAの高精細な画面で利用できる。912SHのワイドVGA液晶はワイドQVGAに比べ、ディスプレイの解像度が4倍になるため、PCサイトブラウザでパソコン向けのホームページを閲覧するときはより広いエリアを一度に表示でき、ドキュメントビューアでもMicrosoft® WordやMicrosoft Excel®、PowerPoint® PDFなどの文書を広く閲覧できる。しかも表示は縦横のどちらにも対応しているため、PCサイトブラウザやドキュメントビューアで表示する内容に合わせ、ディスプレイを回転させながら、縦表示と横表示を切り替えて利用可能だ。

 なかでもPCサイトブラウザは、ハードウェアも強化されたため、一段と実用性が高くなっている。ユーザーインターフェイス面ではパソコンと同じようにポインタを表示する「ポインティング機能」が強化され、マルチガイドボタン(方向キー)を8方向にポインタを動かしながら、リンクなどを選択できる。これに加え、912SHはソフトバンクが提供するHSDPA方式による「3Gハイスピード」に対応しているため、対応エリア内であれば、下り方向で最大3.6Mbpsでの高速通信が可能になる。つまり、パソコン向けホームページのように、容量の大きなページでも快適に閲覧できるわけだ。

サイクロイドポジションを活かすユーザーインターフェイス

3ペインのメール送信フォルダ+メール本文表示画面
2ペインのスケジュール表示画面
2ペインのアドレス帳表示画面
2ペインのデータフォルダプレビュー表示画面

 905SHから続く、AQUOSケータイの特徴でもあるサイクロイド機構は、液晶ディスプレイを横に回転させることで、ワンセグを自然に見られるように環境を実現した。今回の912SHではワイドVGA液晶を活かし、サイクロイドポジション(横画面表示)をワンセグだけでなく、他の用途にも広く利用できるように、ユーザーインターフェイスを大幅に改良している。

 たとえば、前述のように、サイクロイドポジションではワンセグとメールといった組み合わせの画面表示ができるが、横画面表示のままでも通話履歴、カレンダー、メール、スケジュール、アドレス帳、電卓、音声発信、データフォルダのプレビューなどができる。これらの内、メールならフォルダ画面とメール一覧、メール本文が3ペイン(3分割)で表示され、アドレス帳はグループと登録された相手の2ペイン(2分割)表示、スケジュールも2カ月分のカレンダーと並べての表示など、ワイドVGA液晶の高精細な横画面を活かした表示が可能だ。しかもこれらの表示は設定なども不要で、ワンセグを視聴するときと同じように、液晶ディスプレイを回し、サイクロイドスタイルに変更するだけで、自動的に縦表示が横表示が切り替わるというしくみだ。利用する機能に応じて、自分の使いやすいように、縦でも横でも表示できるのは、非常に便利だ。

 また、サイクロイドポジションでの横表示はこうした各機能だけでなく、これらの機能を使うためのメニュー画面も横表示に対応する。通常のメニュー画面はもちろん、[TV]キーの長押しで切り替えられるシンプルメニューも横表示が用意されており、各機能のガイドを表示しながら、メニュー画面を操作できるようにしている。

 SHシリーズでは従来からメニュー画面やアイコン、サウンドなどをトータルコーディネートできる「カスタムスクリーン」という機能がサポートされており、912SHにも受け継がれているが、このカスタムスクリーンのコンテンツも横表示に対応したものが用意されている。縦横どちらの表示でもカスタムスクリーンのカスタマイズが再現されるのはうれしいが、待受画面のアニメーションなどはディスプレイ回転時に従来とはひと味違った雰囲気が楽しめるものもあり、カスタムスクリーンをさらに楽しめそうだ。

タイムシフト再生などに対応したワンセグ

データ放送や字幕表示などに対応した多彩な画面表示とサイズが用意されている
スコアを拡大表示したイメージ
選手の成績を拡大表示したイメージ
オープンポジションでの、ワンセグ拡大表示(左側)とデータ全面表示イメージ(右側)
A2DP規格に対応したステレオBluetooth®ヘッドセットは、別売りで用意されている
カメラ下の本体両サイドには、ヤマハの高音質化記述を採用したステレオスピーカーが搭載されている

 912SHは高精細表示が可能なワイドVGA液晶を搭載することで、従来以上にコンテンツを楽しめる環境が整っているが、AQUOSケータイの本質であるワンセグについてもさらに機能UPしている。

 まず、ワンセグの連続視聴時間については、従来よりも若干、容量の大きい電池パックを採用したこともあり、最大5時間20分の連続視聴を可能にしている。SV(Super Vivid)エンジンや明るさセンサーなどによる最適な画質調整は従来モデルから継承しているが、画面表示モードは前述のような分割表示モードに加え、横表示画面の一部を拡大表示できるモードも用意されている。たとえば、スポーツ中継などでは上下左右の四隅にスコアや選手の成績などが表示されることがあるが、これらが拡大表示で見られるというわけだ。ちなみに、画面表示モードはサイクロイドポジションでは[マルチジョブ機能/マナー]ボタンを押すことで切り替わる仕様となっている。

 また、ワンセグの録画機能についても強化されている。AQUOSケータイは従来モデルから視聴中の番組の録画だけでなく、番組表からの予約録画にも対応していたが、912SHではワンセグ視聴中に音声着信があったとき、視聴中の番組を一時的にmicroSD™メモリーカード(別売)に記録/再生するタイムシフト再生に対応している。通話終了後は1.33倍の速度で記録した番組内容を再生する追っかけ再生も可能だ。

 さらに、従来は録画した番組でmicroSD™メモリーカードがいっぱいになると、消去するか、新たにmicroSD™メモリーカードを用意するしかなかったが、912SHではmicroSD™メモリーカードに録画した番組をパソコンに移動し、管理ができる「SD-MobileImpact」というWindows®用のアプリケーションが付属する。パソコンにバックアップした録画データはパソコンで再生したり、microSD™メモリーカードに書き戻し、端末上で再生することもできる。

 ちなみに、SD-MobileImpactは従来のSD-Audioの機能もサポートしており、音楽CDから楽曲を取り込んで、912SHに転送して、音楽プレーヤーとして活用することも可能だ。912SHとパソコンを接続するときは、USBケーブルが必要になるので、SD-MobileImpactを活用したいユーザーは、ぜひ用意しておきたい。

 音楽再生機能はSD-AudioによるAAC形式やAAC+形式、iTunesで取り込んだノンセキュアAAC形式などをサポートし、ヤマハの高音質化技術「Sound Tuning System」の採用により、クオリティの高いサウンドを楽しむことができる。音楽の連続再生時間も17時間まで伸びている。

 音楽再生を楽しむときは、付属のマイク付きステレオイヤホンを利用するが、従来からオプションとして販売されている「マイク付き液晶オーディオリモコン&イヤホン」に加え、新たにBluetooth®のA2DP規格に対応したことにより、同じくオプションとして販売される「ステレオBluetooth®ヘッドセット」も利用することが可能だ。ステレオBluetooth®ヘッドセットはコンテンツ保護技術の「SCMS-T」にも対応しているため、912SHとの組み合わせでは音楽再生だけでなく、ワンセグの音声もワイヤレスで楽しむことができる。もちろん、リモコン部分で音量調節なども可能だ。ワンセグを存分に楽しみたいのなら、ぜひとも用意しておきたいアイテムだ。

カメラも3.2Mピクセルでパワーアップ

最大1536×2048ドットの静止画が撮影できるAF対応320万画素のCCDカメラを搭載
サイドボタン、microSD™スロットは本体左に配されている
フレームレスキーを採用し、タイピングのしやすさを追求した

 ワンセグなどのエンターテインメント以外の機能では、カメラ機能が強化されている。従来は2.0Mピクセルのカメラを搭載し、パンフォーカスのみの対応だったが、今回の912SHでは3.2MピクセルのCCDカメラが背面に搭載されている。機能的には、オートフォーカスや手ブレ補正といった機能もサポートされており、一段グレードアップしたことになる。910SHに搭載されている500万画素カメラには一歩譲るものの、国内ではトップクラスのスペックであり、一段ときれいな写真を撮影することが可能だ。なかでも面白いのはパノラマ撮影で、カメラを水平、もしくは垂直にゆっくりと動かすことで、横や縦に長いパノラマ写真を撮影することが可能だ。撮影時は画面上にガイドラインや動かす速度などのアラートも表示されるため、初心者でも気軽にパノラマ撮影が楽しめる。

 ボディデザインについては、905SHから911SHへ進化したときにグッとスリムになったが、今回はボタン部背面にオートフォーカス対応3.2Mカメラやステレオスピーカーを搭載しながら、911SHと比べ、わずか1mm増に抑えられている。ボディデザインはエッジをなくし、フラットに仕上げられたミニマリズムデザインでまとめられており、非常にスッキリとしたイメージに仕上げられている。トップパネル側には96×39ドット表示が可能な有機ELを採用したサブディスプレイが装備されており、点灯時のみ、本体表面に文字が浮かび上がるように時計などの情報が表示される。ボタン類も従来から若干、見直されており、ボタントップを大きくできるフレームレスのキーを採用し、タイピングしやすい環境を整えている。

AQUOSケータイを超える新AQUOSケータイ 912SH

 SHシリーズのAQUOSケータイは、その完成度の高さと使いやすさ、わかりやすさにより、ワンセグケータイの市場をリードしてきた存在だ。今回発売された912SHは、従来モデルで培われたノウハウを活かしながら、SHシリーズが掲げてきた「半歩先」戦略による強化を加えることにより、ワンセグケータイの最高峰を目指した端末だ。ワイドVGA液晶を活かすサイクロイドポジションでの表示、PCサイトブラウザやドキュメントビューアの快適な利用、ワンセグをさらに楽しむための使いやすい環境、3Gハイスピードなどのソフトバンクの提供するさまざまな最新サービスへの対応など、ケータイを存分に楽しむための機能やハードウェアが網羅され、なおかつスタイル良くまとめられている。ワンセグはもちろん、ケータイの機能をフル活用したいユーザーにおすすめしたい完成度の高い端末だ。

カラーバリエーションは6色がラインアップ。左からメタルグレー、メタルブラック、メタルブルー、メタルレッド、メタルピンク、メタルシルバー

■関連情報
□「912SH」製品情報(ソフトバンク)  http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/912sh/
□「912SH」製品情報(シャープ)  http://www.sharp.co.jp/products/sb912sh/

■関連記事


□3型ワイドVGA液晶搭載の新AQUOSケータイ「912SH」
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/34603.html
□ソフトバンク、夏モデル12機種発表
 http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/34593.html

■プロフィール

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。asahi.comでも連載執筆中


*PCサイトブラウザ、マルチジョブ、3G HighSpeed、カスタムスクリーンはソフトバンクモバイル株式会社の登録商標または商標です。
*Microsoft、Windows、PowerPoint、Microsoft Excelは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登録商標です。
*WindowsはMicrosoft Windows operating systemの略称として表記しています。
*Microsoft® Wordは、米国 Microsoft Corporationの商品名称です。
*「Yahoo!」及び「Yahoo!」「Y!」のロゴマークは、米国Yahoo! Inc.の登録商標または商標です。
*SOFTBANK及びソフトバンクの名称、ロゴは日本国及びその他の国におけるソフトバンク株式会社の登録商標または商標です。
*「アクオス」及び「AQUOS」、「AQUOSケータイ」、「サイクロイド」及び「Cycloid」、「サイクロイドスタイル」はシャープ株式会社の登録商標です。
*iTunesは、Apple Inc. の米国及び他の国における登録商標または商標です。
*microSDはSD Card Associationの商標です。
*Bluetoothは米国Bluetooth SIG,Inc.の登録商標です。