法林岳之「ケータイレビュー」 サイクロイドスタイルでワンセグを存分に楽しめるAQUOSケータイ「905SH」 革新的な製品を次々と開発し、国内外のケータイ市場をリードしてきたSHシリーズ。今年も業界初のVGA液晶を搭載した904SHが発売され、各方面で高い評価を得ているが、これに続き、シャープの高い技術力とブランド力を最大限に活かしたもうひとつの最強モデル「905SH」がいよいよ発売される。『AQUOSケータイ』の名が冠された905SHの実力をチェックしてみよう。

ワンセグを活かすための新しいカタチ「サイクロイドスタイル」

3D VIEWER マウスをドラッグしてサイクロイドポジションへの動きを確認できます

液晶を90°回転させてワイド画面でテレビを楽しむことができるサイクロイドスタイル

液晶ディスプレイ部がヒンジ部分に接したまま、スライドするように回転する。また、ホイップアンテナは360度、回転させることができる

オープンポジションでワンセグ放送を視聴するときは、下半分にデータ放送の内容を表示する

カフェやレストラン、オフィスなどで905SHを囲みながら、番組を楽しむことも可能

 今年4月から正式なサービスが開始され、注目を集めている「ワンセグ」。今回発売されたシャープ製の新端末「905SH」は、このワンセグに対応したケータイだ。

 ワンセグは薄型テレビなどで視聴している「地上デジタル放送」と同じ内容の番組が携帯電話やパソコン、カーナビなど、モバイル機器で楽しめるテレビ放送サービスだ。従来のアナログテレビ放送と違い、電波(テレビ放送)の届く範囲であれば、移動中でも安定した高品質な映像を楽しめるという特徴を持つ。デジタル放送であるため、端末側の消費電力も少なく、地上デジタル放送と同じように、データ放送も楽しめるなど、さまざまなメリットがある。

 このワンセグを存分に楽しめるようにするため、905SHは今までのケータイと違った新しいカタチでアプローチをしている。それが「サイクロイドスタイル」と呼ばれるスタイルだ。「サイクロイド」という言葉はあまりなじみがないが、ひとつの円が直線や曲線の上を転がるとき、円周上にある一点が描く軌跡のことを表わしている。

 現在、多くのケータイはメールやコンテンツの閲覧に適しているため、縦長のディスプレイが装備されているが、テレビなどで利用される映像は一般的に横長だ。そこで、905SHでは通常の折りたたみデザインをベースにしながら、ワンセグ視聴時などは液晶ディスプレイ部分を90度、回転させ、横長のワイド画面を利用できるというユニークな構造を採用している。サイクロイドスタイルは液晶ディスプレイ部がただ90度、回転するのではなく、液晶ディスプレイ部がヒンジ部分に接したまま、スライドするように回転する機構となっている。通常の縦長表示のオープンポジションでも液晶ディスプレイを回転させたサイクロイドポジションでもヒンジ部分と液晶ディスプレイが接した状態で端末を利用することが可能だ。しかも端末を開き、オープンポジションからサイクロイドポジションに変更するだけで、テレビ機能を起動するため、観たいと思ったときにすぐにワンセグが視聴できる。

 905SHはサイクロイドスタイルを採用したことにより、ワンセグ視聴から通常のケータイの利用まで、幅広いシチュエーションとユーザーのニーズに応じて、使いやすい環境を実現している。たとえば、屋外や移動中など、端末を手に持って、ワンセグを視聴するとき、他のワンセグ対応端末では少し不自然な持ち方をしなければならないものがあるが、905SHなら、サイクロイドポジションに移行しても基本的には通常の折りたたみデザインのボディ形状のため、自然に持つことができる。しかもチャンネルの変更などの操作は、通常のテンキー部分などを利用できるため、非常に操作しやすい。ワンセグのデータ放送を確認したくなったときは、サイクロイドポジションからオープンポジションに移行すれば、縦長画面を上下に分割し、下半分にデータ放送の内容を表示することができる。

 カフェやレストラン、オフィスなど、屋内に移動したときは、同じサイクロイドポジションのまま、端末を開く角度を調整して、机などに置くことができるため、安定した状態で視聴できる。905SHに内蔵されているホイップアンテナは360度、回転させることができるため、机に置いた状態でもアンテナを自然な向きに伸ばすことが可能だ。液晶ディスプレイは300:1の高コントラスト、上下左右160度の広視野角のものを採用しているため、友だちや同僚といっしょに905SHを囲みながら、番組を楽しむことも可能だ。ちなみに、905SHには3Dサラウンド対応のステレオスピーカーが内蔵されており、ワンセグ視聴時にはニュースやスポーツ、映画など、放送されるジャンルに応じた7種類のサウンド効果を設定できる。

 ワンセグ対応ケータイにはいろいろなスタイルが考えられるが、905SHのサイクロイドスタイルは通常のケータイの利用も十分に考慮しながら、ワンセグを存分に楽しむために、もっとも適したデザインというわけだ。

 録画もできる一歩進んだワンセグ環境

液晶ディスプレイはAQUOSで培った液晶技術を応用した2.6インチのワイドQVGA(240×400ドット)対応モバイルASV液晶を採用

 サイクロイドスタイルというケータイの新しいカタチを実現した905SHだが、カタチだけが新しいわけではない。ワンセグやケータイの基本的な機能を活用するための環境もしっかりとサポートされている。

 905SHには「AQUOSケータイ」という名前が冠せられているが、その名の通り、シャープの液晶テレビ「AQUOS」で培われた数多くの映像技術が応用されている。液晶ディスプレイはAQUOSで培われた技術を応用した2.6インチのワイドQVGA(240×400ドット)対応モバイルASV液晶を採用する。300:1の高コントラスト、上下左右160度の広視野角、周囲の明るさに合わせて見やすい映像を表示でき、節電効果も高い明るさセンサー、6色カラーフィルタによる屋外での見やすさと色再現性、彩度強調の制御技術による自然な肌色など、ケータイとしてだけでなく、テレビを存分に楽しむための性能を兼ね備えた液晶ディスプレイが搭載されているわけだ。

 また、905SHはワンセグ対応ケータイとしては初めて、miniSDメモリカード(別売)に番組を録画する機能が搭載されている。録画は放送中の番組をリアルタイムで録画する方法に加え、番組表からの予約録画にも対応している。深夜番組や会議中など、どうしても観られない番組については、miniSDメモリカードに録画しておき、時間的な余裕ができたときにじっくりと楽しむことができるわけだ。しかもうれしいことに、早見・早聴き再生機能も搭載しているので、限られた移動時間などを利用して、録画番組を楽しむ、といった使い方もできる。

本体右側面にはminiSDメモリカードスロットを搭載。ワンセグ対応ケータイとしては初めて、miniSDメモリカードに番組を録画することができる

テレビ視聴中にメールを受信すると、画面の最上段にテロップのようにメッセージが表示され、オープンポジションに移行するだけで、縦長画面の下半分にメールの内容を表示させることができる

テレビ視聴中にマルチジョブを呼び出し、テレビを視聴しながらメールの作成をすることもできる



 ちなみに、miniSDメモリカードにワンセグ放送とアナログ放送を録画できる時間は別表の通りとなっている。905SHはフルに充電した状態で、ワンセグを最大4時間の連続視聴、連続録画は3時間できるが、録画中に電池残量が不足することを防ぐため、miniSDメモリカードへの録画は付属の急速充電器を接続しておくのがおすすめだ。

miniSDメモリカードの録画時間の目安

メモリカード容量

ワンセグ放送

アナログ放送

64MB

約20分

約18分

128MB

約40分

約36分

256MB

約1時間20分

約1時間12分

512MB

約2時間40分

約2時間24分

1GB

約5時間20分

約4時間48分

 外出中でも高品質な映像を楽しめるワンセグだが、905SHは当然、ケータイであるため、番組の視聴中に電話が掛かってきたり、メールが届くこともある。905SHはこうしたコミュニケーションの環境についてもよく考えられている。

 たとえば、テレビ視聴中にメールを受信すると、画面の最上段にメールを受信した旨がテロップのように流れる。表示内容は名前やアドレス、件名などから設定でき、非表示にも設定することも可能だ。サイクロイドポジションで番組を視聴中、メールが届いたときは、オープンポジションに移行するだけで、縦長画面の下半分にメールの内容を表示させることもできる。つまり、番組の視聴を中止することなく、メールの内容が確認できるわけだ。

 一方、音声着信については、サイクロイドポジションで着信したとき、[通話]キーで応答するほか、オープンポジションに移行して、着信に応答できるようにしたり、テレビ画面を表示したまま、通話をするように設定することも可能だ。通話終了後は自動的にテレビ視聴画面に戻るしくみになっている。

 また、905SHには複数の機能を切り替えながら利用できる「マルチジョブ」という機能が搭載されているが、これを利用し、テレビ視聴中に他の機能を呼び出すこともできる。たとえば、オープンポジションでテレビ視聴中、ショートカットボタンを押して、マルチジョブ機能を呼び出し、メールの新規作成をすることもできる。さらに、テレビ画面を切り替え、カレンダーでスケジュールを確認したり、ボーダフォンライブ!にアクセスするといったことも簡単にできる。

 ワンセグについては、今年中に全国サービスが提供される予定で、エリアは順次拡大中だが、905SHにはアナログテレビチューナーとFMラジオが搭載されており、ワンセグが視聴できないエリアでも便利に使うことが可能だ。

ワイドで楽しめるエンターテインメント

 サイクロイドスタイルという新しいカタチ、AQUOSケータイというネーミングなどからもわかるように、ワンセグ視聴機能が強調されている905SHだが、従来のSHシリーズと同じように、使いやすさや楽しさの面も充実している。

 まず、最近のSHシリーズで好評を得ている「カスタムスクリーン」に対応しており、待受画面やメール送受信画面、表示アイコン、サウンドなどをトータルコーディネートでカスタマイズすることが可能だ。出荷時には3種類のデータがプリインストールされているが、カスタムスクリーンのコンテンツサイト「カスタモ」には人気キャラクターやクリエイター系コンテンツ、ペット、アニメなどの905SH専用コンテンツが用意されている。ディスプレイ周りでは、ワンタッチで文字サイズを変更できる「でか文字モード」に対応しており、待受画面で[文字]キーを長押しするだけで、切り替えることが可能だ。個別にはメールなども最大5段階で文字サイズを変更できるが、シャープ製端末でおなじみのLCフォントが採用されており、小さい文字はクッキリ、大きな文字はなめらかに表示できるようにしている。文字の太さも好みに合わせて、三段階で選ぶことができる。

プリインストールカスタムスクリーン

Luminous

 

Vertical

 

Simple

カスタモでダウンロードできるカスタムスクリーン例

ウルトラマン
©円谷プロ

 

ガッチャマン
©タツノコプロ

 

大怪獣ガメラ
©角川ヘラルド映画

202万画素CCDカメラを内蔵。ワイドサイズの画像を撮影することも可能だ

液晶の上部には、サブカメラと照度センサーを内蔵

TVコールのイメージ。決定ボタンでどちらにも変更できる




 カメラはボタン部背面に202万画素CCDカメラを内蔵しており、最大1224x1632ドット(サイクロイドポジション時のみワイド撮影1200×720ドットが可能)の静止画、VGAサイズの動画を撮影できるようにしている。撮影時にディスプレイをサイクロイドポジション(横長)に切り替え、1200×720ドットのワイド撮影をすることも可能だ。撮影時の機能としては、明るさ調整や画質調整といった標準的なものに加え、シーン別撮影やオーバーラップ連写、ブラケット連写なども搭載されている。Bluetooth® 機能や赤外線通信機能を利用し、撮影した画像をプリンタにワイヤレスで出力することも可能だ。

 サイクロイドスタイルの活用という点では、TVコールの表示も工夫されている。横長のサイクロイドポジションでは相手画像と自画像を横に並べて表示でき、縦長のオープンポジションでは縦に同サイズで並べて表示することが可能だ。配置については中央の[決定]ボタンを押すだけで、切り替えることができる。

 音楽再生については、SD-Audio規格に準拠したセキュアAAC/セキュアMP3に対応しており、パソコンで音楽CDから取り込んだ音楽データに加え、ニフティが提供している音楽配信サービス「MOOCS」でダウンロードした楽曲の再生もできる。これらに加え、ノンセキュアAACやHE-AACの再生にも対応してしており、パソコンから音楽データを簡単に書き込むことができる「Music Manager」も付属する。パソコン以外の環境も考慮されており、別売の液晶リモコンを使用したり、別売の光デジタル変換ケーブルを用意すれば、ミニコンポなどのオーディオ機器からデジタルで録音することも可能だ。ちなみに音楽の連続再生時間は約13時間となっており、長時間にわたって音楽視聴を楽しめる。

 エンターテイメント機能も充実している。905SHはワンセグ視聴などに便利なサイクロイドスタイルを採用しているが、実は横長のワイド表示に対応したVアプリのゲームもプリインストールされている。液晶ディスプレイを横向きに利用するゲームは過去にもいくつか登場したことがあるが、905SHのサイクロイドポジションは方向キーやテンキーが通常通り利用できるため、こうしたゲームも非常に操作しやすく、今までのケータイ用ゲームよりも楽しく遊べる印象だ。また、Bluetooth® を利用した対戦ゲームやチャットなどの機能も搭載されている。Bluetooth® を利用したゲームやチャットは、10メートル程度の近距離での利用に限られるが、ネットワークを経由したものに比べ、通信料が掛からないうえ、レスポンスも高速なため、手軽に遊べるのがポイントだ。

ワイド画面対応ゲーム プリインストール例

   

2006 ゲームロフトリアルサッカー(体験版)  提供:ゲームロフト
©2006 Gameloft,All Rights Reserved. Gameloft is a trademark of Gameloft in the U.S. and/or other countories.

   

頭文字D 3 Restore(体験版) 提供:講談社  ©しげの秀一/講談社 ©講談社/ナツメ

   

ニンジャウォーリアーズ(製品版)  提供:タイトー ©TAITO CORP. 1987,2006

   

リアルテニスLIVE(製品版) 提供:セガ ©SEGA

ワイド画面対応ゲーム その他、有料コンテンツ(例)

   

人生ゲーム大統領になろう!
提供:株式会社T2i エンターテイメント
©1960 LINK RESEARCH CORP. ©1990 MILTON BRADLEY COMPANY. ©2006 タカラトミー ©2006 T2i Entertainment ©スペースアウト

Bluetooth® を利用した対戦ゲーム<体験版>プリインストール例

SuperボンバーマンBT
提供:ハドソン
©HUDOSON SOFT

 

対戦パックマン
提供:バンダイナムコゲームス
©NBGI

 

アルカノイド-LINK-
提供:タイトー
©TAITO CORP. 1986,2006

EX野球ミラクル対戦
提供:元気モバイル
©2006 GENKI & ©Genki Mobile

 

最強!エアホッケー
提供:日本エンタープライズ
©Nihon Enterprise Co.,Ltd.

 

メテオスモバイル
提供:キューエンタテインメント
©Q ENTERTAINMENT
©NBGI 2005

 ボーダフォンがサービスとして提供中のおサイフケータイ「Vodafone live! FeliCa」、パソコンのブラウザ上でも電話帳が編集できる「Vodafone Address Book」、絵文字や顔文字を利用したメールが楽しくアニメーションする「デルモジ表示」、ケータイマガジンが自動的に配信される「Vodafone live! CAST」にも対応する。Vodafone live! FeliCaのセキュリティについてはICカードロックに対応し、メールや電話によるリモートロックも可能なため、安心して利用することができる。端末そのもののセキュリティについても顔認証機能が搭載されている。1件のユーザーに付き、最大5枚までの顔画像を登録できるため、メガネの有無や明るさなどの違う画像を登録することにより、本人確認の認証をしやすくしている。

ワンセグを思いきり楽しむなら「買い」

 今年のケータイやデジタル製品で、もっとも注目度の高い「ワンセグ」。今年はサッカーW杯が開催されるだけでなく、プロ野球もWBCで世界一の称号を得たこともあり、ペナントレースも盛り上がりを見せており、ワンセグの活躍するシチュエーションも数多くありそうだ。もちろん、スポーツ観戦だけでなく、ニュースやドラマなど、日常の利用にも十分に役立つサービスであり、これからのケータイには欠かせない機能のひとつになりそうだ。

 905SHはサイクロイドスタイルというケータイの新しいカタチを取り込むことにより、ワンセグを思う存分、楽しむことができるケータイだ。しかもワンセグだけでなく、通常のケータイとしての使い勝手にもサイクロイドスタイルを活かすなど、SHシリーズならではのさまざまな工夫が随所に見られる。ワンセグを思いきり楽しみたいユーザーはもちろん、ケータイの新しいカタチを体験したいユーザーにもおすすめしたい。


FeliCa は、ソニー株式会社が開発した非接触ICカードの技術方式です。
・FeliCa は、ソニー株式会社の登録商標です。
・「アクオス」および「AQUOS」、「サイクロイド」および「Cycloid」はシャープ株式会社の登録商標です。
・QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
・miniSD はSDアソシエーションの商標です。
・Bluetooth は米国Bluetooth SIG,Incの登録商標です。
・Vodafone、Vodafone live!およびスピーチマークデバイスはVodafoneGroup Plcの登録商標または商標です。
・TVコール、Vアプリ、カスタムスクリーンはボーダフォン株式会社の登録商標また は商標です。

関連情報
・Vodafone 905SH製品サイト(ボーダフォン)
 http://www.vodafone.jp/japanese/products/model_3G/v905sh/

・Vodafone 905SH製品サイト(シャープ)
 http://k-tai.sharp.co.jp/products/v/905sh/

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法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP SP2対応 基本編 完全版」や、「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impressTV)も配信中。