ケータイの新しいボディデザインとして注目を集めているのが「スライダー」とも呼ばれるスライド式ボディだ。スライド式は常に液晶ディスプレイが前面に露出する構造のため、折りたたみデザインの開閉のような操作をすることなく、着信の有無や自動配信されるコンテンツ、時計などをすぐに確認できる。カメラを起動したときにメインディスプレイを大きなファインダーとして利用できたり、ボディをスライドさせるだけで利用可能な状態に切り替えられるなどの特徴も持ち合わせている。折りたたみデザインやスウィーベルスタイル(二軸回転式)などとは、少し違ったテイストのデザインを求めるユーザーに支持を拡げつつある。
しかし、その一方でスライド式は、ディスプレイ部とボタン部という2枚の板状のボディを重ねた構造になるため、方向キーとダイヤルボタン部の段差が気になったり、ボディサイズが厚く、大きくなってしまうなどの制約もある。そこで、SHシリーズではこの夏、「FLAT FACE×FULL SLIDER」というコンセプトに基づき、従来のスライド式デザインとは一線を画した新しいデザインの「913SH」を発売し、好評を得ている。
今回発売された「SoftBank 816SH」は、スタンダードなスライド式ボディを採用し、スライド式本来のメリットを活かしながら、コンパクトなボディに使いやすい操作環境を組み合わせた「コンパクトスライダー」として、仕上げられた端末だ。
スタンダードなスライド式ボディを採用した816SHだが、実際に端末を手に取ると、少し変わった印象を受ける。
まず、ボディそのものは非常にコンパクトであり、手のひらにすっぽり収まるサイズにまとめられている。寸法幅約48mm×高さ約101mm×薄さ約15mm、重量は約93gというスペックだが、これは折りたたみデザインの812SHや814SH/815SHなどと比べ、わずか数mm程度しか変わらないレベルに仕上げられている。つまり、持ち歩くときの感覚は通常のコンパクトな折りたたみデザインの端末と同等か、それよりもコンパクトに感じられる。
ボディカラーも非常に印象的で、ボタン部側を中心としたカラーにインモールド成形された表面パネルが組み合わさることで、落ち着きと華やかさをバランスさせた質感の高いカラー展開を実現している。華やかなゴールドやビビッドピンクだけでなく、落ち着いたブラックもラインアップされており、今までの日本のケータイにはあまりなかったテイストが感じられる仕上りとなっている。
スライドの開閉については、親指でディスプレイ部側を押せば、内部のスライドアシストとともにスムーズに端末が開く。閉じるときも少しボディをスライドさせるだけで、うまくアシストが効いて、端末が閉まるようになっている。スライド機構の動きはスムーズにできていることもあるが、ボディそのものが軽量コンパクトであるため、開閉操作も軽快で操作しやすいという印象だ。この開閉のしやすさなら、手が小さく、指の力が弱い女性ユーザーにも操作しやすいだろう。
ダイヤルボタン部分はボタントップのサイズこそ、標準的であるものの、ボタントップ中央を少し盛り上げた形状に仕上げ、各ボタンもわずかにカーブを付けるように配列することにより、うまく操作感を確保しようとしている。スライド式でもっとも気になるディスプレイ部横に装備された方向キーなどとの段差については、ディスプレイ部が非常に薄く仕上げられているうえ、[クリア/バック]ボタンも押しやすい形状にすることで、一定の操作性を確保している。
SHシリーズとしては、今夏に発売された913SHに続き、2機種目のスライド式ボディとなった816SHだが、単純にスタンダードなスライド式ボディを採用したのではなく、スライド式を活かすための機能や操作系の工夫も用意されている。
スライド式の端末は折りたたみデザインの端末と違い、端末を閉じた状態でもディスプレイ横に装備された方向キーなどの部分が露出する。そのため、何もしないまま、ポケットなどに入れると、誤動作(誤操作)をしてしまう可能性がある。そこで、816SHではスライド連動の誤動作防止機能を搭載している。スライド連動をONに設定しておけば、スライドを開いた状態では通常通りの操作ができ、スライドを閉じて、クローズポジションにすると、誤動作防止機能が働き、誤ってボタンが押されるのを防ぐことができる。スライド連動をONに設定し、端末を閉じた状態でもマルチガイドボタン中央の[決定]ボタン(誤操作防止ボタン)を長押しすれば、一時的に誤動作防止がOFFになるため、端末を閉じたままの状態で、メールやYahoo!ケータイのコンテンツを閲覧したり、サイドキーを長押しして、カメラ機能を起動して、クローズポジションのまま、カメラ撮影をすることもできる。
スライド連動は誤動作防止以外に、機能とも連動している。たとえば、着信があったとき、端末のボタンを操作しなくてもボディをスライドさせ、オープンポジションに移行するだけで、応答することが可能だ。逆に、通話が終了したときもボディをスライドさせ、クローズポジションに移行すれば、通話を終了することができる。逆に、いずれの場合も設定を変更することで、スライドを開いても着信に応答しないようにすることも可能だ。
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PCサイトブラウザを閲覧するときに便利な「ページナビ」機能
816SHは今夏に発売されたSHシリーズの中でももっともコンパクトなモデルのひとつだが、ボディがコンパクトだからと言って、スペックや機能面に妥協はない。ハイエンドモデルとして活用できるだけの機能が搭載されている。
まず、通信機能ではソフトバンクが展開するHSPDA方式による3Gハイスピード(※4)に対応しており、下り方向で最大3.6Mbpsの高速通信が利用できる。3Gハイスピードはサービスの展開が開始されたばかりで、対応エリアは全国の政令指定都市及び主要都市などに限られているが、急速にエリアを拡大しているうえ、対応エリア外では通常のW-CDMA方式の端末として利用することができる。パケット通信料も変わらないため、端末をある程度、長く利用することを考慮するのであれば、3Gハイスピード対応端末を購入しておいた方が賢明だ。
3GハイスピードはYahoo!ケータイのコンテンツ閲覧時などが快適になるが、PCサイトブラウザ(※2)(※3)を利用するときにも効果的だ。PCサイトブラウザはパソコンのホームページを閲覧できるフルブラウザで、パソコンと同じようにポインタを表示して、リンクや画像をクリックするポインティング機能、複数のページを同時に読み込みながら、タブ形式で切り替えながら閲覧できるタブ切替機能、ホームページ全体のどの位置を表示しているのかを確認できるページナビ、ページの一部を見やすくできる拡大・縮小などの機能が用意されている。ちなみに、フルブラウザはソフトバンクのパケット通信料定額制サービス「パケットし放題」を契約していれば、月額1029〜5985円で利用できる。
また、816SHはGSM方式にも対応しており、国際ローミングにより、日本で利用している電話番号のまま、海外でも利用することができる。ちなみに、ソフトバンクの国際ローミングは通話やSMSだけでも世界177の国と地域で利用でき(2007年8月9日現在)、TVコールやS!メール、ウェブが利用できる地域も増えている。海外で利用することを考慮し、816SHにはレート換算に対応した簡易電卓、2カ所の時間を表示できる世界時計などが搭載されている。
ビジネスやコミュニケーションに役立つ機能も充実している。Microsoft® WordやMicrosoft Excel®などのオフィス文書を閲覧できるドキュメントビューア(※1)が搭載されており、本体メモリーやmicroSD™メモリーカード(別売)に保存した文書を外出先で閲覧することができる。コンパクトなボディを実現するため、液晶ディスプレイは2.2インチと標準的なサイズだが、QVGAのTFTカラー液晶で、SHシリーズではおなじみとなっている、液晶画面でも見やすいLCフォントなどととも相まって、非常に視認性のいい環境を実現している。
カメラはメインが2.0メガのCMOSイメージセンサーを採用し、背面に装備されている。オートフォーカスに対応し、最大1200×1600ドットの静止画、240×320ドットの動画を撮影できる。静止画の撮影では連写や効果付き撮影などができるが、カメラを水平、または垂直に動かすことで、縦長や横長の静止画を撮影できるパノラマ撮影にも対応する。さらに面白いところでは、すでにいくつかのSHシリーズにも搭載されている名刺読み取り機能。従来の文字読み取りは1行づつカメラで読み取っていたが、SHシリーズの場合は記載されている内容のほとんどを一括して読みとれる。しかもメモリダイヤルにそのまま登録できるという優れものだ。もちろん、従来モデルからおなじみのQRコード読み取りなどにも対応する。
エンターテインメント機能では音楽再生に対応し、SD-AudioによるセキュアAACに加え、ノンセキュアのAAC形式にも対応する。音楽管理ソフトは音楽配信サイトで提供されている「MOOCS PLAYER」や付属のミュージックマネージャーを利用することが可能だ。音楽を実際に聞く際は、オプションで提供されるマイク付き液晶オーディオリモコン&イヤホンが利用できるが、Bluetooth®にも対応し、A2DPやAVRCPなどのプロファイルにも対応しているので、Bluetooth®対応のステレオヘッドセットを使うこともできる。コンパクトな816SHはポケットなどに入れても持ち歩きやすいが、やはり、音楽再生などはワイヤレスで利用できた方が便利だ。
コミュニケーション機能では、メール関連の機能がさらに充実している。文字入力はSHシリーズで定評のある「ケータイShoin5」が搭載されているが、専門用語などを追加できる「ダウンロード辞書」、カナ英数を直接変換できる「カナ英数ダイレクト変換」、他社のケータイに絵文字を送る際に便利な「他社送信用絵文字」などもサポートされている。メールでは件名や本文に特定の絵文字が含まれているとき、メールの背景にアニメーションが表示される「アニメビュー」、絵文字やテキストなどがアニメーションしながら表示される「デルモジ表示」などの楽しい機能も用意されている。対応機種が限られるが、少し変わったところでは、受信した側が読み終えると、自動的に受信ボックスから消去される「自動消去設定」、いったん送信したメールを受信側の受信ボックスから消去できる「送信済みメール取消」、受信した側がメールを読み終えると、返信を求めるメッセージを表示できる「返信リクエスト」、受信した側が転送や削除をできないようにする「転送/削除NG」、クイズに答えないとメール本文を読めない「クイズ」など、面白いメールの機能も搭載されており、今までと少し違ったメールによるコミュニケーションを楽しむことが可能だ。
画面周りでは、これもSHシリーズでは定番となっているカスタムスクリーンに対応しており、シャープが提供するサイト「カスタモ®」からコンテンツをダウンロードして、利用することができる。メニュー表示も一般的な標準メニューのほか、機能を絞り込んだ「シンプルメニュー」、表示する文字サイズを大きくした「でか文字メニュー」が用意されており、起動時の選択に加え、[文字]ボタンを長押しすることで、いつでも切り替えられるようにしている。
ケータイの新しいデザインとして、着実に支持を拡げているスライド式。そのスライド式のメリットを活かしながら、コンパクトなボディにまとめ、充実の機能を搭載した816SHは、スライド式ケータイの新しいスタンダードモデルと言えそうだ。3Gハイスピード対応や国際ローミング対応など、ネットワーク面もしっかりサポートされており、将来的にも安心して使うことができる。コンパクトに、スタイリッシュに、多彩に使いたいユーザーにおすすめしたいモデルだ。
カラーは全6色。左からブラック、ブルー、グリーン、ゴールド、ピンク、ビビッドピンク
■関連情報
□「816SH」製品情報(ソフトバンク) http://mb.softbank.jp/mb/product/3G/816sh/
□「816SH」製品情報(シャープ) http://www.sharp.co.jp/products/sb816sh/
□ソフトバンク、「816SH」を25日発売
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/35974.html
□コンパクトなスライド型3Gハイスピード対応機末「816SH」
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/34602.html
■「SH Blog」 話題の夏モデルを一挙に使いまくり■
http://ad.impress.co.jp/special/sh_blog/
法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows Vista」、「できるポケット LISMOですぐに音楽が楽しめる本」(インプレスジャパン)、「お父さんのための携帯電話ABC」(NHK出版)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「。
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*「LCフォント」「スウィーベル」「スウィーベルスタイル」「サイクロイド」はシャープ株式会社の登録商標です。
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